旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

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戦いの後!

───ダァン ダァン ダァン

 

 

 

海に向かって弔銃が斉射される。

 

 

 

あの第二次野蒜沖海戦から3日、野蒜鎮守府では合同慰霊祭が行われていた。

 

 

陸・海・空各自衛隊、海上保安庁、警察、消防、海軍、民間……全てが全力を出し切って、この鎮守府、ううん。この街の人々は守れたんだ。

 

 

 

「………提督、お疲れ様でした」

 

 

東北統合隊を代表して根本陸将と私の弔辞を捧げ、演台から戻ると三笠さんが『歩いて』私の隣に来てくれた。

 

その後東北方面音楽隊による演奏にあわせて、合同慰霊祭は終わった。

 

 

 

 

死者100名

 

負傷者1300名

 

 

■被撃沈・被撃破(主要戦力)

 

 

艦娘「鈴谷」 海軍

 

DDH-143「しらね」 海自

 

PM「なつい」 海保

 

PC「うみぎり」 海保

 

CL「しらはぎ」 海保

 

 

AH-1S 3機(損害により帰投後廃棄)

 

F-2 1機(地上撃破)

 

T-4改 4機(地上撃破)

 

F-1CCV 2機(地上撃破)

 

 

FH70 12門

 

機動戦闘車 5両

 

 

他大破・損害多数

 

 

 

 

首都の人達は口を揃えて褒め称えた

 

「歴史的大勝利だ!」と

 

ともに戦った人達は口を揃えて労ってくれた

 

「犠牲の多い戦いだった」と

 

 

 

 

ハワイ攻略作戦も『まるで部隊が引き抜かれた』かのように穴のある敵防衛線を突破している。

 

 

この決戦に勝利して、ベストに近いベターを掴み取ることに私達は成功した。

 

成功……したんだ……

 

 

「提督、式典は終了です。帰りましょう」

 

 

三笠さんが手を握ってくれる。離したくない、このぬくもりは、絶対離したくない。

 

強く握り返してしまう。もう、これ以上失いたくない。

 

 

「大丈夫です、三笠は何時も提督の側に。何処迄も、何処へでも」

 

 

ありがとう三笠さん。ちょっとだけ、ごめん、ちょっとだけこのあとの予定ずらしていい? 少し落ち着きたい……

 

 

 

「はい。富士さん、根本陸将と宮藤空将補に連絡をよろしくお願いします。一時間程度打ち合わせ時間をずらしてくださいと」

 

「了解した……提督、急いで来なくて良いからな」

 

 

ごめんね、いつも通り、いつも通り振る舞えるようにするから、だから少しだけ時間ちょうだい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───陸上自衛隊 仙台駐屯地

   樋口一佐

 

 

 

 

「まずは……市ヶ谷も今回の『命令の曲解』については不問とするそうだ。上申もあげていたし、こちらを全力で持ち上げて首都決戦に関わるゴタゴタは全て無かった事にしたいのだろうね」

 

 

 

東北統合隊司令かつ陸上自衛隊東北方面隊総監の根本陸将が、大きくため息をついた後そう話し始めた。

 

 

この会議室には私達前回の作戦会議に参加した各組織の長が居た。

 

……海自は東郷一佐の戦死により副官も務めていた上村ニ尉が参加している。他に階級が上の者は居たが、事情を深く把握しかつ各艦艇への艦長職などを兼任していないため、彼が選ばれた。

しかし……指揮官戦死と残弾なし、あまり有効打でなかった遠距離からの砲撃戦のみであった事もあり完全に海自はお通夜状態だな。

 

 

「勝つには勝ちました。えぇ、世間一般的に見れば大勝利でしょう。いえ、歴史に残る大勝利ですからね。なにせ海上戦力だけで言えば巡視船3隻、重巡艦娘1隻、旧式護衛艦1隻他『多少の損害』で水鬼含む空母・戦艦あわせて23隻を含む合計60隻撃沈したのですから」

 

 

トゲのある口調で話す上村ニ尉。こちらもマスコミや政府広報、軍上層部などありとあらゆる方面から『祝電』を受けている為気持ちは痛いほどわかる。

 

 

「日本海海戦の時もそうだった……ワンサイドゲームともてはやし取材に来た人が大勢居たなぁ、勝った勝った『被害なしの大勝利』と大騒ぎしたが実際には水雷艇3隻沈没、戦死117名戦傷583名……一度あの時の艦上の光景とかを見れば、あの広報も今回のあんな無神経な事はできなかっただろうさ」

 

 

艦娘富士が顔を歪めて舌打ちする。あぁ、確かにアレは酷かった。

 

 

そう、海戦後半日だろうか? 突如ヘリでやって来た政府広報班とやらがなんの許可もなく撮影やレポートを始め、そしてたまたま近くで艦娘姿で瓦礫撤去をしていた山本提督にマイクを向けてこう言ったのだ。

 

 

『たった1隻の艦娘と1隻の旧式護衛艦の被害のみでこれだけの大戦果をあげた救国の英雄山本提督! いえ、艦娘摂津! 勝利の秘訣はなんですか!?』

 

 

誰かの手が出る前に『恥を知れ!!』と怒鳴りつけた艦娘がここに居る艦娘富士だった。

 

結局この後、本人の意思で海戦後無理をおして動いていた山本提督も強制的に『隔離』して休ませる事になった……ああいう輩から山本提督や艦娘達を守るのは我々陸自の仕事だったんだが、あぁ、しくったなぁ。

 

 

「政府と市ヶ谷にはあまり騒ぎ立てないでほしい……なんて言ったって無理でしょうよ。なんたって自分達は痛い目見てないですからねぇ……戦意高揚だか知らんがあの配慮のかけらもない広報班とやらは断固松島には入れんぞ!」

 

「多賀城も同じく。特に特科の損害が甚大な仙台もそうでしょう。しかしある事ない事勝手に書かれウロチョロされるぐらいなら、あえて私で良ければ対応してやりましょう。ちょうど私はこうして負傷しているわけですし」

 

 

復旧作業中の松島基地に押しかける記者や政治家にイライラを募らせる宮藤空将補にあわせて発言する。

 

利き手を骨折している以上、まぁ、ああいう輩の相手をするのも悪くはないだろう。なによりこれだけ不快極まる任務を他の者にやらせなくてすむからだ。

 

 

「……県警としては末端の功績ある者に対しての表彰などは行わせてほしい。祝う空気でないのはわかっているのだが、内陸部など今回避難対応にあたった者などはせめてそれぐらいしてやりたい」

 

「民間協力者に関しても我々独自で先に動くべきではないでしょうか? 空気を読まない対応をされれば今後の協力に影響が……」 

 

「県としても速やかかつ広範囲を『深海棲艦災害』に指定するよう政府へ強く働きかける必要があると考えています。そのためにはお気持ちはわかりますが多少歩き回らせるのも止むを得ないかと……」

 

 

 

会議室がまた沈黙する……皆これ程の被害を出したのは10数年前以来だろう。それだけ艦娘達によって平和がもたらされていたという事だ。

 

 

 

根本陸将が立ち上がり全員を見渡す。戦いの前のように険しい表情だった。

 

 

「山本提督が一度狙われた以上、次があるかもしれない。だからこそまずなすべきは次に備えることだ。そのためにはありとあらゆる努力を惜しまない。

 

残弾不足がいかんともし難い今、まずなすべきは艦娘戦力の早急な回復と施設やインフラの復旧作業だ。

 

だからこそこうした仕事は我々が引き受けようじゃありませんか……樋口一佐、この件は貴官に一任する。対外交渉・広報の折衝などはまずは独自の判断で動いてくれたまえ」

 

 

 

ボロボロの野蒜やその周辺

 

外部から『取材』や『現地視察』で次々と訪れる人々

 

回復していない戦力、枯渇した兵装

 

未だ動きを見せない日本国内の山本提督に対する魔の手

 

燻る諸外国の陰謀

 

 

やる事は沢山だ。だからこそ、だからこそやり遂げねばならない。

 

全部一人で背負わせてやるものか。山本提督もまた我々が護るべき国民の一人なのだから。

 

 

 








今年一年ありがとうございました。

誤字脱字指摘いただき、また評価やコメントなどたいへんありがたかったです。


来年もよろしくお願いします。
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