………不知火です。
この野蒜訓練鎮守府において唯一のまともな感性と倫理観を持っている不知火です。
常日頃から『提督を産みたい』などとぬかしていた鈴谷
『私がいないと駄目なんですから』と人を駄目にしようとする三笠教官
普段は常識枠なのに提督への愛があふれると二人きり(監禁系)に発想が飛んでいってしまう浅間教官
三笠教官しか見えていない見島教官
普段はキリッとしているのに陰ではフニャフニャになりながら提督へ手を出そうと企む富士教官(嫁宣言)
思い立ったらドアをふっ飛ばして駆け回る楢
提督に『ままぁ〜♪』とすり寄る甘えたがりのイニコ
そんなイニコにオギャる山本提督
………………この鎮守府は地獄でしかありません!!
わかりますか!? 各自衛隊や民間の方達から「いや、あっちは今話しかけづらい状況だからつい不知火さんに……」とか! 「山本提督が気持ち悪いのでごめんなさい、不知火さんお願いできますか?」とか言われたり相談される不知火の苦労が! 気持ちが!!
不知火は……不知火は唯の艤装試験駆逐艦です。秘書艦ではありません……
しかし、しかしです! 今回山本提督が新たに艦娘を建造してくださったおかげでもしかするといや一人でもまともな艦娘がいるかもしれませんええそうですともでなければ不知火はもう頑張れませんですから早速確認しに行きましょうこれに伴い業務が一時滞りますがこれはコラテラルダメージつまり不知火の今後の業務のため致し方ない犠牲なのです!
「……なんだか不知火がブツブツ言いながら出てっちゃったネ」
「不知火さん……大丈夫でしょうか……」
「不知火もバブみが足りてない……? 三笠さんもオギャる?」
「それは提督だけだろう。そんなことより早く決済してくれ」
なんだか後ろからあれこれ言われている気がしますが知りません! いざ艦娘寮へ!
「ドイツ艦娘! なぜ逃げるんだ!? なぁ訓練しようぜ? なぁなぁ!」
「ヤダーーー!! シュレ助けて!」
「どうして? 訓練するだけじゃない。なぜ姉妹揃って逃げるの?」
「カナダ殿、我らは前弩級戦艦ゆえ砲撃訓練の相手は務まりませんよ。それに貴殿のその獲物を見る目、それはいけません。シュレが怖がります」
「ならカナダ、シュレ、私に向けての砲撃訓練はいかが? これなら大丈夫でしょう?」
「お主ら自分の趣味嗜好の為だけに我らを玩具にしようとしてはおらぬか……? 怪しい……怪しいのぅ……」
ちょうど中央建屋からすぐのところで英国艦娘の3人とドイツ艦娘の3人が居たので物陰から調査します。
どうか……どうかまともな艦娘が居ますように……
「まぁ良い。我の身体で済むのなら好きにするがよいて「駄目です」……なんじゃ? やらんのか?」
「駄目です、標的艦は私の仕事です。そんなおいし……大変な仕事は旧式のドイツ艦には任せられません」
「ほう、ならば我の標的艦としての実力を示さねばならんのぅ。よしリヴェンジ! カナダ! 我らを早う撃て!!」
んん……? なぜか話の流れがおかしい方向に行ってませんか?
「いや、いきなり撃てと言われても───「なんじゃ、撃てんのかぇ臆病者」あん?」
「そうね、英国淑女として引くわけには行きません。リヴェンジ、さあ早くごほ……標的として撃ちなさい」
待ってください。センチュリオンとヘッセンの様子が変です……待ってください、ねぇ、お願いだから待ってください。
「ほれ、数を数えてやろうか? じゅーう、きゅーう、はぁーちぃ、ふふ、ほれほれ? 撃たんのかぇ?」
「何をしているのリヴェンジ、早く私を撃ちなさい。もちろん徹甲弾でバイタルを狙うの。わかる?」
「えっ、なんだお前ら怖いんだが……シュレ! カナダ! なんかコイツらおかしくなっちまった!!」
顔を赤らめて呼吸は速く……この二人ドM!? 標的艦ってそういう事なのですか!? 待ってください、そうすると標的艦でもある山本提督も……? 確かに富士教官に壁ドンされた時にフニャけてたとは聞いたことがありますがまさか……
「えっ……いいの? ヤルわよ? 全門斉射よ?」
「……そこまでおっしゃられるなら、ドイツ帝国海軍の威信を守る為、衝角戦でよければ」
そこでカナダさんなんで喜んでるんですか? そしてその両手で両頬を覆いながらうっとりしてるのはなぜですか?
そしてまとも枠最有力候補だったシュレスヴィヒ・ホルシュタインさんは真面目な顔してなぜ大破どころでは済まない衝角型パイルバンカーをにぎにぎしてるのです?
顔は真面目ですが艤装の煙を見るに機関出力が上がっているので絶対に内心楽しんでいますね……そんな……
し、しかし小動物枠のシュレジェンさんが───「近接戦? 近接戦? ねぇ、今近接戦やるって言った? アハッ」駄目ですかぁああーーー!?
勝手に盛り上がってゆく場。唯一リヴェンジさんだけオロオロしている。
ふと目が合う。最初シュレジェンさんを追い回していた時の楽しそうな表情はすでになく、目には涙が………「し、不知火! 助けて!!」
しかしその声の直後、訓練と言うにはあまりにも血なまぐさい演習が始まり、砲声と水柱にリヴェンジさんは消えていった……後で一緒に飲みましょう。
さて、まだ詳しく話せていませんがおそらく常識枠であろうリヴェンジさんが見つかりましたのですこし心が穏やかな不知火です。
せっかくなので甘味でも───「お義姉さん! 三笠さんを自分にください!!」えぇ……
声のした方を見れば、鎮守府内にある沼の縁に建てられた茶室で、見島教官が敷島さんと朝日さんに土下座しています。
「お姉ちゃん権限で三笠ちゃんは渡せません。あの子は私達の妹です!」
「人の妹貰おうとは……いい度胸だ。気に入った、殺すのは最後にしてやろう」
「それでも、たとえ無理とわかっていても……愛ゆえに、三笠さんを愛するがゆえにお義姉さん達と戦わせていただきます!!」
「「お義姉と呼ぶなぁ!!」」
凄まじい殺意とともに艤装を展開する朝日さん、笑った表情のまますっと立ち上がり茶室に飾られていた日本刀を抜刀する敷島さん。
駄目だ! やっぱり石炭炊きの戦艦艦娘はみんな喧嘩っ早い危ない人しかいない!?
───ゾクリ
背筋に急に生命の危険を感じさせる気配を感じる。
とっさに艤装を展開し主砲を向け───「むふふ、不知火お姉ーちゃん♪ なーにしてるの?」
はい、山本提督。不知火お姉ちゃんは大丈夫です、問題ありません。
「提督に胸揉まれてるのにあの表情ネ」
「真顔なのにぶんぶん振れてる犬の尻尾が見えますねぇ」
「まぁ、不知火も疲れてるんだろうさ。すこし提督と二人にしてやろう」
大丈夫です。不知火に落ち度はありません。
大丈夫です。大丈夫です。
リヴェンジ……強く生きて……