撃ち上がる祝砲
通りに出て喜びまわる市民たち
大歓声で迎えられる艦娘と各部隊
テレビではハワイ作戦の成功にわく映像が繰り返し映し出されていた。
一方こちら野蒜訓練鎮守府ではプレハブ小屋の臨時提督室(陸自普通科1個小隊と機動戦闘車1両、それと日本語が片言な筋肉ムキムキスラブ人とアメリカ人数名に守られている)
で半分艦娘で半分提督な私、山本摂子はのんびりコタツに入りおせんべいを食べながらお茶をすすっているのであった。
「提督、お茶のおかわりいる?」
うーん、ぬるめのでがらしでいいからもういっぱいちょうだい〜
「やぼーるですって!」
んなぁ〜 すごい、なんにもする事がない。正しく言うと先日の会議の後自宅療養を一週間命じられてしまったのだ。
鎮守府内を出歩くのも駄目と言うことで、コタツでテレビ見たり映画見たりする以外は屋内で自転車トレーニングするぐらいしか全くやる事がない。
それなのに『お手伝い』としてイニコや浅間さんがやってきては甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだ。
あぁ〜だめになる〜
「はい! ずんだ餅もどーぞ♪」
イニコ〜イニコや〜
「なんですって?」
いにこ〜まみゃ〜
「ふふっ……提督は甘えん坊さんですって」
あ〜……やっぱり鈴谷の言ってた事に間違いはなかった。小学校低学年の体から溢れ出るこの凄まじいママみ力でいろんな悩みとか疲れとかが浄化されてゆく……
「提督失礼します、急ぎと言うほどのことでもないのですが先に……提督?」
あっ、書類を読みながらノックなしでドアを開けてきた(落ち度)不知火さんに見られてしまったあわわわわ
まって、こたつの前で片膝立ちしつつ持ってきたお盆を片手で持ちつつもう片方の手で仰向けにふやけてる私の事を撫でているイニコと、絶賛ふやけてる私。
これはギルティ! ギルティです! あわわわわわ
……ち、違うの不知火さん! これは、そう……ノーカウント!ノー「不知火ではだめですか!?」ぎゃふん!?
「イニコや浅間教官ばかりずるいです、不知火では駄目なのですか! また不知火に甘えてはくれないのですか!」
いや、ちが……まって、不知火さん、顔近っ───
───陸上自衛隊 多賀城駐屯地 大会議室
野蒜訓練鎮守府 戦艦『富士』
「艦娘戦力の異動要請……まぁ俺達は『訓練鎮守府』と言うには少し戦力過剰だからな」
多賀城駐屯地の会議室で、東北統合隊の再編成についての担当者レベルの会議を行っていた。
主な議題は海上保安庁の規模縮小と対戦車ヘリ部隊の拡充。併せて野蒜鎮守府艦娘の分散配置だ。
正直いくら前弩級戦艦を含むとはいえ訓練鎮守府を名乗るには戦力が多くなりすぎた。
艦娘の異動が本人の承諾があれば可能なことから、少しでも説得してくれというところだろう。
「まぁ、お前たちがあの脳味噌お花畑にお熱なのは百も2百も承知だ。無理なのはわかってるさ」
「しかし足の遅い石炭炊きの戦艦を前線となる中南部太平洋方面に展開させて、足の速い艦娘を横須賀など本土に配置しておきたいのはわからんでもないな。まぁ、だから何だって話だけどよ」
「巡視船の本来の使い方がされるのなら北方や日本海への再配置はまぁ納得できますね……しかしハワイ攻略によりミサイルの安定供給が米国から可能になったとはいえ、いささか中部太平洋からの戦力削減が早すぎる気がします」
タバコに火をつけずくわえて話す樋口一佐や、両手を腕組みしながら椅子を傾けて話す宮藤空将補、真面目そうにしているものの眠そうにしている上村ニ尉
随分と緊張感がないじゃないか、らしくもない。
「どちらにせよ通常戦力の再配置しか我々は納得できないし実現は不可能だ。そこで艦娘富士、貴様らなら何か妙案があるかと思ってな」
確かに、実際のところ浅間と俺で考えた野蒜ならではの運用法は考えてある。
しかし……それでも中部太平洋の戦力としては過剰だ。納得はさせ辛いし、それならハワイに中部太平洋の主力を配置すべきという反論に対して準備ができていないのだ。
「まぁそう深く考えんなや。この問題は東北統合隊の話……ひいては国防の話だ。お前さん達だけにおっかぶさせねぇよ」
「海自は山本提督傘下であることが、この鎮守府の艦娘戦力の条件だと考えています。分散配置や転籍など断固反対ですからね」
なるほど……物分りの良い同僚がいると助かるよ。
まあようするに俺達がこのまま野蒜に居続けるために潰す理由は
①訓練鎮守府としては過剰戦力であり、艦種が偏りすぎ
超弩級戦艦 3隻
(リヴェンジ カナダ センチュリオン)
弩級戦艦 1隻
(摂津)
前・準弩級戦艦 7隻
(敷島 朝日 三笠 富士 シュレースヴィヒ・ホルシュタイン シュレジェン ヘッセン)
海防戦艦 1隻
(見島)
装甲巡洋艦 1隻
(浅間)
駆逐艦
(不知火 楢)
潜水艦
(U-125 zwei)
……ほぼ主力艦、しかも戦艦ばかりだ。補助艦艇が少なすぎるな。
だか艦艇時代と違い、艦娘では大きく運用を変えることができるし、敵駆逐艦に対して護衛艦によるサポートを得る事もできる。戦力という意味では問題ないが、やはり訓練鎮守府とは言い難い。
②野蒜訓練鎮守府の位置
東北のちょうど中央に位置し、北部・中部太平洋への展開には適している。
しかしながら先日のハワイ攻略戦により北部は完全に奪還し、中部もキリバス方面への追撃する段階まで来ている。
横須賀に大規模な鎮守府がある以上、野蒜の位置にこれほどの戦力を配置する必要があまりない。船団護衛するにも駆逐艦や軽巡が不足しているし、なによりそれならば大湊の海防艦達で十分だ。
という2つの点を解消しなければいけない。ではどうするか。
「俺達はせっかく東北統合隊として、ほかの海軍とは全く異なる関係性で動いている。だからこんな案はどうだろうか?」
大型モニタに三笠が作成した資料を映す。3人の目の色が変わった。
「……確かに、山本提督だからこそこれは可能だな」
「陸海空完全協力、おもしれぇじゃねぇか」
「艦艇を飛ばす……あのジェットブースターパックがこんな事に使えるとは」
そうさ、俺達は艦娘。人のサイズだ。そして山本提督は提督として前線で指揮をとりつつ戦える。
だからこそ『空母型護衛艦りゅうほう』による強襲用ブースターパック装備戦艦艦娘による突破・打撃艦隊
りゅうほう搭載ヘリによる艦娘・特殊部隊ヘリボーン
松島基地からのC-130による空挺降下
俺達は訓練鎮守府であり、強襲・特殊作戦部隊として近接格闘戦の得意な遊撃戦力として動く。
副砲と対空火器により同時に行動する普通科の歩兵を守ることもできる。戦車であり対空自走砲であり沿岸砲撃する戦艦なのだ。なんなら前弩級組はそのまま上陸して艤装火器が使えなくても格闘で戦える。
そして妖精さんを含めて簡易的に鎮守府ごと『りゅうほう』で進出し強襲する。空母型護衛艦の格納庫に入居ドックや装備開発プラントを簡易的に造ることができればこの移動鎮守府も現実味が出てこないだろうか。
「母港は野蒜、たとえ提督が出撃しても野蒜では訓練鎮守府しての運用は問題ないようにするんだな」
「標的艦や訓練に長けた艦娘が多いから分散可能、しかも戦闘させるわけではないから野蒜残留の艦娘が全力を発揮できなくても大丈夫ということか」
「艦載機は露天駐機かぁ……サビがこえぇからいっそはなから積まないかF-35Bを4機程度に抑えるかだな」
近々マーシャル諸島方面への攻勢もある。俺たちのお披露目にはちょうどいいんじゃないかな?
そして会議は休憩をはさみながらまる一日に及んだ。
そして疲れた心を癒やそうと俺は提督室に向かうのだっ───「艦娘富士、まずはそのだらしのない顔と鼻血を止めてからにしろ。そのナリで私の駐屯地を歩き回るな馬鹿者」はい……
ペース落ちて申し訳ないです。
誤字脱字指摘いつもありがとうございます。すみません。