旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

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大変長らくオマタセシマシタ(白目)



某社製のヘリは絶対に墜ちる?

 

───仙台駐屯地 多賀城駐屯地司令 樋口一佐

 

 

「なるほど、悪い方向に強行してきたか」

 

 

 欧州からの急報に対し、東北統合隊幹部は再び仙台駐屯地の大会議室に集合していた。

 

 

「しかしコレで山本提督たちは世界の敵、我々も疑惑の対象に。さて、どうしたものかな?」

 

 

 私の座る机に積み上がったFAXや手元の紙資料にはヨーロッパの新聞やテレビが報じたニュースが翻訳されて印刷されていた。

 テレビのテロップに手書きで要約された翻訳が書いてあるFAXなど、現地で慌てて作って送ってきてくれたのだろう。

 

『日本の提督が率いる艦娘達がNATO関係者ほか欧州議会議長などが乗客の輸送機を撃墜! 北海の深海棲艦と連携し世界を敵に回した!?』

 

『航空機撃墜、欧州重鎮多数行方不明、ハプスブルク家当主も』

 

『国際的陰謀、日本は何を考えているのか』

 

『スクープ! 練習艦隊を襲った北海の深海棲艦は日本の陰謀か!?』

 

 

 あれだけ警告があったが結局輸送機は飛び立ち撃墜された。分かりやすく山本提督たちの展開していた海域から発射された『対空砲』によって。

 警告を受けていた側からすると、ミサイルで来ると思ったが発射煙は報告書によると見えなかったらしい。そして洋上にも関わらずすぐさま欧州各国の報道機関が報じている。その撃墜された瞬間という写真、どう見ても艦娘ではなく通常の潜水艦の潜望鏡から撮影されたものだ。

 

そして現代の海戦ではほぼ使われていない艦砲ですらない対空砲射撃ということもあり、艦娘による犯行という見方はかなり優勢だ。

 

 さて、無事全世界の敵扱いになりつつある山本提督たちだが、現在連絡は不通、どんな魔法を使ったのやら米軍の通信衛星にも写らないらしく各国は頭を抱えているそうだ。

 

 ……ドアの外から大人数の小走りの音がする。想定より少し遅かったかな?

 

 

「人類の裏切り者である野蒜鎮守府及び東北統合───なっ!?」

 

 

 ドアを蹴破って突入してきたのはどこの所属かもわからないよう階級章含め何もつけていない警務隊と海軍の特別警察隊。ざっと20人で完全武装でといったところ。ふむ、完全武装とはいえライトボディアーマーかな?

 

 東北統合隊の幹部会議を抑えて『反乱分子』首脳部を一網打尽で一発クリアとでも思ったんだろう。御生憎様、確かにここで会議していたよ、私以外はモニタとPCを置いたゼーレスタイルのweb会議だがな。

 

 

 「どうしたのかね警務官、それと海軍の皆様。会議中に突然の訪問だ。まずは自己紹介しておくれよ。それとも私から紹介したほうが良いかね? 『失敗クーデター軍の諸君』」

 

『なんと……本当でしたか、これは早速報道しなければ』

 

『ライターの準備はできてるな! 一面ニュースだぞ!!』

 

 

 モニタから東北の地場報道機関の連中が出す大きな声がする。あちらの関係者も既に招待済みだったのだ。Web会議様々だな。

 

 実際のところ昨今の反攻作戦成功により深海棲艦の活動が大幅に抑制され、各国、特に日本も国家非常事態の一部解除や今まで見逃してきた内部腐敗の綱紀粛正をはかろうとしていた。

 

 そういった勢力からすると、現在の『勝ちすぎ』な状況と、山本提督が北海で鈴谷とおぼしき深海棲艦との接触を持たれてなんやかんや融和モードになると困るわけだ。

 

 なんと言っても彼らの『飯の種』だった国防上国家存亡に係る非常事態として許されてきた、見過ごされてきた事が継続困難になるようだからな。

 

 

「ほら、声明は読まなくて良いのか? お涙頂戴の愛国心を鼓舞するような声明をな。どうせ用意してるんだろう、報道各社に今なら直で繋がっているぞ? どうした、そんなに震えて。コチラはか弱い乙女一人だそ? ん?」

 

 

「お、おま……死ぬ気で……」

 

 

 先ほど驚いていた警務官とは違い、後から拳銃を持って意気揚々と入ってきた恐らく佐官がみるみるうちに顔色を悪くする。

 コチラは非武装のか弱い女性である私一人なんだがなぁ。

 

 

 まぁ部屋一面にピカピカとLEDが通電状態である事をアピールしている爆薬がこれでもかと仕掛けてあるからかもしれないな。

 

 

「どうした、御国の為に命をとせるだろう? ほらこのスイッチを───「た、退避ーーーーー!!!」ふんっつまらん」

 

 

 握るタイプの手元スイッチに手を『握ったまま』見せつけた瞬間敵兵は脇目も振らず遁走し始める。これでまともに銃撃戦をせずに捕縛できるというものだ。

 

 

 部屋の外からしばらく格闘戦の音が聞こえた後、慣れ親しんだ多賀城駐屯地の皆が部屋に入ってきた。無事全員捕縛できたようで後ろ手に縛って先ほどのクーデター軍を部屋に押し込む。

 

 

「樋口司令の献身的自己犠牲により無事全員捕縛に成功しました。いやぁ、肝が冷えましたなぁ」

 

「うるさい、無事こうして全員捕縛できたんだから良かったじゃないか高野一尉」

 

 

 そう、部屋の外で身を潜めていたのは高野一尉が選抜した大和・仙台・多賀城駐屯地のレンジャー徽章持ち連中だ。相手が100人ぐらいの襲撃も想定して実は機動戦闘車も待機させていたが、無事コレで捕縛できたんだから良しとしよう。

 

 

「銃撃戦になればこうも無傷で簡単にはいかなかっただろう?」

 

「いくら信管をつけてないからといってこんな大量のC4部屋には本官は一分でも居たくありませんね」

 

「確かに」

「まぁ私も」

「そりゃそうでしょう」

「我らが基地司令の肝っ玉は東日本イチですよ」

 

 

 レンジャー共が口々にぼやく。まあ当然、信管は抜いているし、手元スイッチを離すと入口に仕掛けてある演習用の音響手榴弾が爆発するだけだ。

 タネと仕掛けがわかってなんだかモゴモゴ喚いているヤツが床にたくさん転がっているがほおっておこう。

 

 

「さて、市ケ谷へ連絡だ。嵐が吹くぞ、粛清の大きな嵐がな」

 

 

 

 

 

 

 

3時間後、動画配信サイトに1本の動画が配信された。

 

 

『我々は、欧州議会議長を含めた要人を襲撃し、北海の深海棲艦と手を組み世界支配を目論む不穏分子共と、それらを野放しにしてきた上層部、そして未だ国防上の安全が保たれていないにも関わらず目先の票稼ぎの為に防衛費の削減や指揮権限の剥奪を目論む政治家に対し、高度国防国家として───』

 

 

 10分にわたる『犯行声明』ののち、首謀者と思われるその人物は自決をとげた。

 

 主要な作戦目標の確保にほぼ全て失敗し、ある意味の潔さを発揮したのかもしれない。だが一時的に複数箇所の警察施設と通信社が占拠されただけで、それも警察力によって鎮圧されるという結果に終わった。

 

 生存をかけた国家総力戦体制から少しずつ平和になるのかもしれない、そう信じていた国民に強烈ではあるが影響を最小限しか与えられなかったクーデター騒ぎは『日本』においては沈静化したのであった。

 

 

 

 

 

 

───シーランド公国(自称) フォート・ラフス地下 山本提督

 

 

 

 みかしゃしゃーん! だぢげでぇーーーーー!!

 

 

「ええい! 往生際が悪いですよ!」

 

「なんで英国艦がシーランドに……いや違う、ここは元は英国の要塞だから里帰りを果たした? いや違う……」

 

「大丈夫かぇこやつら。それはともかく提督は諦めるのじゃ」

 

 

 私達野蒜鎮守府分艦隊と、艦艇ほか『世界の敵容疑者』は撃墜された『NATO関係者ほかハプスブルク家の皆様や欧州議会議長』らと、三笠さんの生まれ故郷の諜報機関に導かれて、洋上の要塞へと匿われていた。

 

 でもここ暗いー! 狭いーー! 怖いーーー!

 あと出先なのに業務用端末で仕事させようとしないでヤダーーーー!

 

 

「日本の艦娘や提督はみんなこんな感じなのか……?」

 

「多分例外だと思うわ、日本にいる時こんなの他では見なかったもの」

 

 

 一緒に来てくれたドイツ海軍艦娘のケルンさんがカナダさんと日本での様子について話していたり

 

 

「さてさて、これでいよいよ対深海棲艦特例に伴うNATOの指揮権を利用したアレやコレが始まるのか。しかしヨーロッパの人間としてやはり見過ごせんな」

 

「我々の死を利用した不届き者を引っ張り出す作戦は無事成功しつつあるわけですな。後は誰がどう動くのか……」

 

「シーランド公国は皆様を歓迎しますよ。動きがあるまで狭いですがごゆるりと。えぇ、我々『シーランド公国』はね」

 

「……自称公国とはいえ、まぁ、その、助かったよ」

 

 

 向こうのデスクではなんか王族?の人とかNATOの偉い人とかなんか怪しいおっさん達が会議してるし……

 

 やだーーー! ココからだしてーーー!!

 

 

「駄目です、事態が動くまでは暫くの辛抱ですよ」

 

「撮影した潜水艦についてはまぁわかるがの、『対空砲』でいくら低高度とはいえ輸送機を撃墜した方法を掴むまでは動けんからのぅ」

 

「連絡機はドローンレベルでも飛ばすのは危険と考えたほうが良いでしょうね」

 

 

 シュレさんとヘッセンさんに両側から挟まれてロズウェル事件のエイリアン状態になる私。

 三笠さんはにっこにこの笑顔で業務用端末をずいと押し付けてくる。

 

 

「大丈夫ですよ提督、通信は繋がっていないので今のうちにローカルに落としておいた分だけ処理しておくだけですから」

 

「山本提督、普段から三笠は大変なのよ。少しはその大変さを実感したら良いのでは? 苦痛もたまには良いものよ」

 

 

 そして前後を三笠さんとカナダさんに挟まれる。うーがー! 真面目モードはもうむーりー! あと暗くてジメジメするの無理ーーーむりぃーーー!!

 

 

 

「まぁこの策略に付き合ってもらっているのです。少しは大目に見てあげては?」

 

「こんな時は何かしらさせておいたほうが良いものです」

 

「そうですな、ところでロシア海軍の借り物艦艇はどうかね?」

 

「あぁそれなら───」

 

 

 ……落ち着きはしないけど、業務用端末の『三笠メモ♪』と命名された資料を諦めて確認する。

 

 内容はこの騒ぎについて関係図や諸々の簡易資料だ。コレだけおさえておけばアチラの偉い人達の会話に入れるということだろう。

 

 

 さてさて。話は少し戻り今回の撃墜事件だか、当然撃墜される側のお偉い人達は撃墜事件が起こるのを分かっていたので、当初乗る予定だった輸送機(無人飛行)とは別にイギリスの潜水艦娘に護衛されながら潜水艦で移動していたのだ。

 

 飛行機は無事? 撃墜され、世界は大騒ぎ。

ロシア軍から提供を受けていた私達の艦艇はドイツの港で勾留。出撃中だった艦娘と私はこうして潜水艦といっしょに英国沖の自称公国を名乗る寂れた海上要塞で匿われているのでした。

 

 

「欧州議会は大荒れ、NATOも上から下まで犯人探しで大騒ぎ。世界中が北海の深海棲艦どころではなくなっておるのじゃ、これで提督も邪魔者が入らず手がうてるのぅ」

 

「はい、勾留中の艦艇も『貸し』のあるドイツ政府が『国外退去』させてくれるようですし、一発勝負になりますが北海、行けそうです」

 

「英国としても故郷に錦を飾って上陸してほしいからね。さらなる大戦果を期待しますとも……ふふふ」

 

 

 

あー怖いー! うちの娘と大人たち怖いーーーー!!

みかしゃしゃーーーーん!!

 

 

「提督、いいわ、すごくいい」

 

「カナダ、そのポーズは怖いのじゃ」

 

「恍惚のヤンデレポーズ、ですよね」

 

「ドイツ艦娘にはわからない? ゾクゾクするわ」

 

 

 ブリスカヴィカさんがジト目でカナダさんを見ているところで、大人たちの会議が終わったようだ。

 ナチュラルに私じゃなくて三笠さんがあっちの会議に代表で出てるあたりなんというか、なんというか……

 

 

「提督、今後の方針が決まりました。我々野蒜鎮守府遠征艦隊は、要人たちを乗せた潜水艦を英国スカパ・フローまで護衛し、その後艦艇部隊と合流後英国空海軍、ノルウェー・スウェーデン・デンマーク連合海軍と共同で北海の深海棲艦の巣を撃破します」

 

「北海の巣を撃破した英雄を卑劣にも罠に嵌めようと企んだ悪は、正義の大人たちによって社会的にも滅びる……肥大化した軍の影響力を排除するには少々荒っぽいが、引き続き頼むよ」

 

 

 三笠さんとなんだかヨーロッパよ王族でもすっごい偉い人が一緒にこちらへきて報告してくれる。

 欧州艦娘は最敬礼してるし、ちょっとこちらも背筋を正しして敬礼して出迎えっと。

 

 

「ふふっ……提督、凛々しいですよ」

 

「かわいいくせ毛だね。日本の女性は実にキュートだ」

 

 

 

うぎぎ、せっかく真面目にしたのにぃ

 

 

「さて提督、それでは英国料理をこちらでいただいたら出発ですよ」

 

「『英国料理』とは心外な、『公国料理』ですよ」

 

「ニシンのパイみたいなゲテモノが英国以外にあってたまるか」

 

「なんだとジャガイモ艦娘」

「あぁ?なんだと干し鱈」

「け、喧嘩しないで───「「ポルスカは黙ってて!」」グスン」

 

 

 ノルウェー艦娘のオーディンさんやドイツ艦娘のケルンがぎゃあぎゃあし始めたところを仲裁しようとしたポーランド艦娘のブリスカヴィカさんが見事な連携プレイで撃沈され涙目に。

 艦娘達がワイワイし始めて偉い人達はそれを微笑ましく見ている。

 なんだかちょっと未来は明るいなって思えた。

 

 

 




短いですがリハビリはこの辺で。
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