悠久の機甲歩兵・・・もしも、序盤からもう1人パイロットがいたら・・・ 作:てとるマン
◼︎眠い・・・それが男の意識が覚醒した時に感じだ最初の感覚であった。
いつ眠ったのかはその男は理解していなかった。もしかしたら、昨日かもしれないし10年も前かもしれなかった。何故ならその男の目につく範囲に日付や時間を示した物はない。そして俺は眠ったで"あろう"時の姿だった。
『第34被検体の覚醒を確認しました。生体組織正常、アストラル体の定着確認、記憶情報ダウンロードに重度のエラー……エラー修復を実行、失敗、エラー修復を再度実行、失敗……エラー修復不能、シーケンス省略……』
無機質な声だと思った。
3回ほど聞こえただろうか。ぼんやりと広がる視線の先は、曲面を描くガラスのようだった。
『第34被検体の保存プログラムを終了。現在稼働中のプログラム1件有り、生命保管システムは、現在を持って最終シーケンスへと移行。なお最終シーケンス完了まで推定で約156日です。繰り返します……』
その曲面ガラスはゆっくりと開いた。新鮮、かどうかはわからないが今までとは違う空気が鼻につく。
指先から力を込めて、ゆっくりと体を起こす。痛みはない、ということは怪我や病気で眠っていたわけではないのだろう、と考えた。
周囲を見渡せばやけにボロボロの室内で、あちこち化粧板が剥がれ落ちて屋内配線がむき出しとなっていた。
床に降り立ってみれば、足の裏がひやりと冷たい。
「裸足……というか裸だな」
見事に一糸纏わぬ姿に、これはどうしたものかと考えた。誰かと会ってこの混乱を解決しようと思っていた矢先、いきなり難易度が跳ね上がった現実を突きつけられた。
改めて周りを見回しても服らしきものはなく、それどころか布切れひとつ見当たらない。俺は何故こんなところにこんな格好で居るのかが、甚だ疑問となってくる。
先ほどまでの無機質な声が答えてくれるならよかったが、誰か居るか、と叫んでも何事も返ってこない。
「はぁ、マジかよ勘弁してくれよ・・・こんな格好じゃ本当は動きたくないんだがな・・・」
男が決心して、扉がある方向に歩こうとした時。
「おはよーっす」
「は……?」
その開いた扉を前に俺は茫然と立ちすくむしかなかった。
白い肌、という言葉があるが、炭酸カルシウムのような白を指す言葉ではなかったはずだ。
つまるところ、目の前にはあまりに軽い挨拶をやってのけた“骨”が居た。
「思ったよりいい体してんなぁお前」
カラカラと乾いた音を立てながら喋る骨。
あぁそうか、と納得した。
「俺ぁ死んじまったのか?」
ここが死後の世界でなら裸でいようが恥ずかしくなんかないかのかなぁ、と骨の登場で一瞬にしてオーバーヒートした思考回路は訳の分からない演算結果を口から吐き出す。
すると骨はカッカッカッカ!と大きく笑って見せ、そして改めて俺を見た。
「この状況で服を着ていない事を気にするとはアンタもだいぶヤベェ奴だな!俺は骨だがこれでも生きてんだぜ?まぁ、生きながら骨になっちまうより、肉のボディのまま死んだ方がよかったのかも知れんけどな!」
これは、本来なら1人の機甲歩兵と1人動く骨から始まるはずだった旅に本来なら存在しなかった。もう1人の機甲歩兵が加わる旅の話である・・・