悠久の機甲歩兵・・・もしも、序盤からもう1人パイロットがいたら・・・ 作:てとるマン
戦闘描写ってくそ難しいですね。上手い表現の仕方が思い浮かばなくて竹氏さんの原作を見返してみたりするのですが、凄く描写が丁寧で改めて感動しました。
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過去に何度か報告例があると彼女は語った。
基本的には1個体で出現するはずのミクスチャが、一定の集団を形成するものを指すらしい。
数は数十体ほどに膨らむが、単体の能力は1個体のミクスチャに劣る。脅威なのは連携して行動することであり、数の暴力で対抗する人間にとっては非常に厄介な相手と言える。
地面を埋め尽くすようなブラッド・バイトの大群が恐れる存在と言われれば、数人の人間で対応ができるとはとても思えない。
未だレーダーの光点に過ぎない不明生物は、確実に接近してきている。判断の猶予はない。
俺と恭一はシューニャを連れて車内に戻ると、予定通りに武装を装着する。
「おい恭一、ゼロ、お前らまさかこのままやる気か?」
退避してから作戦を考えるべきではないかとダマルは言う。
無論、それで状況が変わるならばいい。だが、所詮こちらに打てる手は、手持ちの武装という枷から離れられず、出せる火力も同じで相手も未だ不明だ。
むしろ、今しかチャンスはないのだ。
『今ならブラッド・バイトの群れを攻撃している敵を分断できるかもしれない。それに、ミクスチャがこちらに気づいた様子もないし、奇襲するには絶好だ』
『そうだな、シューニャの言う通りなら、マキナでさえ真正面から戦えばやばい可能性はあるからな、そう考えたらこれ程のチャンスはないだろ』
恭一は荷物室の中でも最も長い銃身を誇る携帯式電磁加速砲(パーソナルレールガン)を取り出し、使い捨て式の蓄電池を装填。蓄電池の状態を保存から解放へ切り替えている。
俺はいつも使っている対マキナ狙撃銃の弾薬を装填し、安全装置を外せば何時でも射撃出来る様に整える。
「確かになぁ、玉匣じゃ恐らく足手纏いになるかも知れねぇ。後方待機が妥当だろうな」
制圧火力にはなるんだが、とダマルはため息をついた。
今回の敵はどう見ても俺達よりも多いから出来れば戦力は多い方がいい…が、玉匣を動かすのとチェーガンを撃つ事が出来るのは俺と恭一を除けばダマルだけだ。
それに非戦闘員のシューニャ達も乗せている。マキナを除けば一個人が国を滅ぼすミクスチャという化け物を相手に対抗するのは明らかに無理があるからしょうがない。
結局戦えるのは、翡翠と黒鋼を纏っている恭一と俺だけということになる。最悪の事態を考えて、玉匣だけは死守しなければならないという条件付きだ。まぁ恭一と俺とで分担すれば特に問題は無いのだが…正直俺には不安が付き纏っていた。
この感覚…まるで帝国兵達が襲って来た時の感覚に似ている。ブラット・バイトの時には問題は無かったので大丈夫だとは思うが妙に胸騒ぎがする。
『…大丈夫かい?』
俺の挙動が不振だったのだろう、恭一が心配そうに尋ねてくる。…何でマキナ越しに分かるんだよ、普段は鈍い所が目立つのに。
『あぁ…この前の時と似た感じがしてな…勘違いならいいんだかな』
「おいおい、大丈夫かよ?今からそれじゃ幸先不安だぜ」
ダマルが少し茶化し気味に俺に言ってくるので少し、むっ、となるがダマルが「まっ、無理はすんなよ」と言ったのでこいつなりに俺の事を心配してくれているのかと察した。
その後、恭一は後部ハッチに集まって心配そうな視線を此方に向けてくるシューニャ達の方に歩いていく。
俺はというと、何故かは分からないが彼女達から一歩離れて接した方がいいような気持ちだった。俺が単純に人と接するのが苦手なのか、それとも…
「大切な物を失うのが怖いってか?」
その言葉に俺はギョッ!?なり後ろを振り返れば、さっき運転席に戻った筈の骨が立っていた。
『…何で、そう思ったんだ?』
「ただの勘さ、見てた限りオメーはシューニャ達とは最低限の会話しかしてない気がしたからよ」
俺は骨の言葉に頭をハンマーで殴られたかの様な衝撃に襲われるが、何故か胸にスッと全く抵抗がなく染み込んでいた。
『…そうだ。うん、俺は怖いんだ…昔の記憶がそうさせるかは分からないがな』
「ならビクビク怯えてるよりかは、娘っ子達に俺が守ってやるの一言でも言ってやりな」
恭一はもう言ってるみたいだぜと骨は付け加えて言う。
ま、確かにな。まだ俺は不安に駆られていたが彼女達だって不安なのだ。なら、俺くらいは少しでも頑張らないといけないな。
俺はそう思いながら、一歩…中々踏み越えれなかった一歩を踏み出すのであった。
◼︎
後部ハッチから外に出た俺と恭一はレーダーを使い、ミクスチャらしき大群に近づく。ブラット・バイトの群れの後方は偶に抵抗していた様だが、直ぐミスクチャにやられる為か、群れを分散させ逃げる方針に切り替えたらしく、それを追いかける様にミクスチャ達も分散している様だった。
俺と恭一は東に逃げている群れに近づいていた。どうやら時折破れかぶれで反撃するブラッド・バイトを相手取っているのか、やや速度が遅い。
岩陰から長距離スコープ越しに状況を覗き見る。
それは奇妙な生物、いや、生物と呼称していいのかがわからない化物の群れだった。
4本の脚で地面を歩き、その上に不自然に乗っかったような胴体からは8本の腕が生え、頭らしきものはみえないのに足と胴体のつなぎ目には、尖った歯に囲まれた大きな口が開いている。
赤紫色の体色で、人間と大差がない大きさ。だというのに、ブラッド・バイトを軽々しく持ち上げて、その8本の腕で左右に引き裂いている。
目も、鼻も、耳もない、異形の化物たちの姿がここにあった。
反撃に転じたブラッド・バイトが、突出していた1体に大顎で喰らいつく。あんな大顎で噛み付かれたら装甲車であろうが無事では済まなそうな光景なのだが現実は違う。
喰い殺されたと思えたミクスチャがブラットバイトの頭を花を咲かせる様に突き破りながら、無傷の姿で現れる。その後すぐに別のターゲットの追跡を始めていた。
『ありゃ何でできてるんだい……』
『化物に相応しいじゃねえか。カバの一撃に耐えるってことは、外的な圧力には極端に耐性があるらしい』
『いや、化け物過ぎて俺笑うしかないんだが』
実際のところ、笑うどころか冷や汗ダラダラである。なんせ普通の生物なら獲物を仕留めればそれで終わりだが、ミクスチャは捕食もよりも殺戮を優先している様に見えるし、全く疲れた様子を見せずに目の前の獲物を惨殺していく。
正直、生物ってよりも殺戮ロボットって言われた方が納得する様な光景が広がっており、成る程これなら国一つ滅ぼしたという話にも頷けるし、人類共通の敵とシューニャが言っていたのも納得である。
俺は片膝を立てながら座り、目の前にある小さめの岩に銃身を預け、対マキナ狙撃銃を構える。
恭一の方も準備が出来たらしい。電磁の力で物体を超音速にまで加速するリニアモーターのカタパルト。その摩擦高温に耐えるための耐熱質量弾を腹に抱え、鉄道線路のように突き出した銃身を囲むコイルがアーク放電を飛ばし始める光景が目に入った。
スコープ越しに狙うのは、後方でやや遅れている1体だ。俺と恭一は重複して攻撃しないよう、戦術データリンクで互いがマークしたターゲットを確認する。ミスクチャの生態は知らないが、恐らく何かあった時のカバー要員であろう群れから離れたそいつの胴体中央にレティクルの中央を合わせた。
深く息を吸う、ゆっくりと吐く。肩の力を抜いて、安全装置を外し、トリガに指をかける。
『攻撃、開始』
『攻撃開始』
俺は恭一の合図に復唱しながらトリガーを引いた。
その瞬間にまるで砲撃をした様な轟音とマズルフラッシュにより弾丸が射出され、反動で少し体が後退する。
既に恭一が放ったパーソナルレールガンは命中している様だが一拍おいて狙撃銃の弾丸が目標に命中する。深い傷を与えてはいる様だがまだ動ける様なので俺は狙い定め直し、ガキン!!と槌が金床を叩くような音が断続的に響き渡り、3発目で目標は沈黙した。
『やるな二人とも!!流石に電磁加速砲の直撃にゃ耐えれねぇみてぇだが、狙撃銃を直撃させても動けるたぁ、やっぱぁ化け物だな』
手を叩いて喜ぶダマルと、そのわきから小さく漏れる、すごい、というシューニャの言葉に、俺と恭一は一応安堵の息を吐いた。
仲間がやられたためか、それともレールガンによる衝撃波に危険を感じたのか、ミクスチャの動きが一斉に止まった。
かと思えば、先ほどまでブラッド・バイトに集中していたはずの個体が、突如として進路を変え、目視できていないはずの距離からこちらへと向かって走り出す。
その瞬間、俺の耳から前にも聞いたノイズの様な音が鳴り始めた。
なんでだ!?この前のブラット・バイトの時には何も起きなかったのに!!
俺は少しパニックになりかけたが、敵が迫って来ている。俺の狙撃銃はオートマチック式であり、連射に問題は無いのだが恭一のレールガンは威力はあるが構造上連射は難しく、すぐに銃身たるレールが加熱するので15秒程のクールタイムが必要になる。その為、俺達は逃げ撃ちに移行しなければ潰し切れないと判断し、その場を移動する。
俺は何とかノイズが散らつく視界で改めて目標を狙いを定め直し、恭一もレールガンの再チャージを始めていた。
『っ!第二射装填開始』
『……ふぅ』
だが、なんで俺達の位置が分かったのか。発射音が聞こえたりマズルフラッシュが見えた言うなら納得だが、レーダーで見る限り明らかに視認外の敵も、此方に真っ直ぐ向かって来ている。
そんな事を考えている余裕も無いようでミクスチャとの距離が段々と縮まり出す。俺は止まっている暇はないなと判断し、行進間射撃に入った。
トリガー引き、轟音とマズルフラッシュのすぐ後に弾丸が飛翔し目標に当たるが先程と同じように1発では足りず、動きは止まりはするが直ぐに追跡を再開する。先程よりも早い感覚で連射をするが流石に止まっていた時よりも精度が良くなく、5発目で一体を仕留める。
恭一もチャージが終わったレールガンの2発目を放ったが目標の横を掠めるように弾丸が通り過ぎ、その衝撃で何体かはひっくり返るが直ぐに立ち上がり追跡を再開する。そんな中ダマルから悪い知らせが飛んでくる。
『こいつぁ不味いぞ……なんでか知らんが、他のところで遊んでた連中までお前達の方に向かってる!』
『分断は失敗かい。面倒なことになったね』
恭一はそういいながら3発目を放ち先程狙っていたであろう1体を撃破し、俺も1体に狙いを定め、4発の弾丸を浴びせ確実に潰していく。
俺は空の弾倉を地面に落とし、新しい弾倉を装填しながら残弾数を確認し恭一に伝える。
『恭一!!狙撃銃の残弾数60!!』
余り心許ない残弾数に対し、恭一は了解と短く返答しながら4発目を放ち敵を撃破する。
俺はというと先程よりも視界とノイズの音が強まり、段々と思考が悪い方向へと染まっていくのを何とか無視しながら、狙撃銃を放ち、狙っていた1体が3発目で動かなくなる。
順調に敵の数を減らしていたのが、恭一が5発目を放った時、問題が発生した。
『銃身加熱……!?早すぎないか』
『一応特殊保管庫に入ってたとはいえ、800年も経ってりゃスペック通りにゃ動かねえか!冷えるまでは使えねえし、冷えたってまともに動くかわからねえぞ』
エンジニアのやや無責任な言葉に舌打ちが聞こえてくる。流石にスペック通り動くとは思ってなかったが、予想よりも早くレールガンが使えなくなってしまった。
しかし恭一はすぐに思考を切り替えたのかレールガンから背中に背負っていた突撃銃に持ち替えながらいう。
『ゼロ!!僕が突撃銃を使って動きを止めるからその間に潰していけ!!ミクスチャの数が2体まで減ったら、戦力評価の為近接戦闘に切り替える!!』
『分かった!!』
俺が返答した後恭一は突撃銃を連射して近くまで一番近づいていた1体を釘付けにし、俺はその個体を射抜いていく。流石に相手が止まっているから狙う余裕もあり、距離も近づいて来た為、2発浴びせれば地面に倒れ伏す。
その繰り返しをし、残り2体だけを残し第一陣を潰すと、恭一から近接戦闘用意!!と合図が飛び、俺と恭一は背中から光輝く収束波光長剣(レーザーフランベルジュ)を引き抜く。両腕に固定されたハーモニックブレードと比べてかなり大型で、対装甲車両戦闘を目的に作られた近接装備だ。
ハーモニックブレードと比べて扱いに熟練が必要で、発光するという特徴から敵に発見されやすく、昔の戦争において接近戦は殆ど発生しなかった為か、一般的な機甲歩兵隊では余り使われる事はなかったらしい。まあ、恭一が言うには夜光中隊では標準装備で、よくこれでマキナとか装甲車を切り刻んでいたよと笑顔で言うもんだから、俺は苦笑いをするしかなかった。
そんな訳で今回の相手たるミクスチャは狙撃銃の攻撃にある程度耐える様なのでハーモニックブレードでは威力不足になるかもしれない為、使う事にした。
その時、ノイズがより一層強くなり俺は軽くふらついてしまい。その隙をついてくるかの如く、ミクスチャが掴みかかってくる。俺は咄嗟にサブアームに搭載していた突撃銃を前に出し回避しようとするが、掴まれた突撃銃がサブアーム事握り潰されてしまった。
『嘘だろ!?突撃銃がサブアームごと握り潰されちまった!!』
『マジかよ!!』
『ゼロ!大丈夫かい!』
『ああ、なんとかな』
俺はそういいながら目の前にいるミクスチャに光剣を突き刺し、絶命させる。どうやら恭一の方は既に終わっていたらしく、袈裟斬りにされた1体が転がっていた。
『思った以上手強い相手だね、これなら王国のマキナ(ヴァミリオン)が撃破されたのも納得だよ』
『そうだな…ダマル…そっちは大丈夫か?』
『こっちの心配は要らねぇよ…それよりゼロ…オメーの方がやばいじゃねぇか?』
『…バレちまったか…あぁ、帝国兵の時と同じだ…段々とノイズが強くなっていってる』
『ゼロ…君は一度玉匣に帰還した方がいい、このままだと状況が悪化するかも知れない』
『あぁ?心配しすぎだぜ。俺はまだ大丈…』
俺はそれ以上言葉を紡ぐ事が出来なくなっていた。何故ならノイズが先程の何倍も強くなり、音も視界もノイズで埋まってしまったからである。
恭一が何か言っている気がするが何も聞こえない。ただ今、感じる事は俺に向けられた強烈な殺意と憎しみとノイズの音だけである。
俺はその元凶らしき方向をノイズの隙間から覗いて見てみると、先程と同じミクスチャの集団が接近して来ており、その中で1体だけ見た目が違う個体がいて、そいつから強い殺意と憎しみが溢れ出していた。
そういえば…シューニャが言っていたな…
『ミクスチャというのは、見た目も大きさも特性もバラバラ。でも共通した特徴がある。それは人間種もそうじゃない生物も見つけ次第、見境なく襲う事。あと、なぜか人間種以外の生物は、襲った後に必ず捕食するけど
俺はノイズの正体が分かった気がした。それは人間を殺そうとする殺意や恐怖が昔の戦場に重なり、今の俺を塗りつぶし、昔の俺に戻ろうとしているだけだったのかも知れない。
だが、今はそんな事はどうでもいい。今、俺の目の前にいるのは…敵だ、憎くて…憎くてたまらない…抹殺しなければならない敵だ!!!
なんで殺すか?簡単だ!!殺さなければ奪われるからだ!!俺の大切な物がまた、奪われる前に殺さなければならないからだ!!
俺は敵を全て殲滅する為…大切な物を奪われない為に。そして、アイツにたどり着く為に…一歩を踏み出そうとする…が。
『駄目だよ!!』
俺はその声に驚愕し、目の前にノイズだらけの、何かが立っていたのだった。
次回後編!!ミスクチャ編完結の巻!!(予定)