悠久の機甲歩兵・・・もしも、序盤からもう1人パイロットがいたら・・・   作:てとるマン

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誤字報告がすごくありがたいです・・・一応何回も確認しているんですけど見落としたり、うまく文章書けなかったりです。報告してくれた方ありがとうございます。


不自然な存在

 

 俺は今コレクタの落伍者がいるらしき方向に走っていた。後数百メートルの位置まで来ると恭一から無線が飛んできた。

 

『生存者を目視した。ザトウムシに襲われている。これから救援に入る』

 

 俺も急がなければと軽く跳びブースターを点火し加速する。

 

 恭一から指示されたポイントまで来ると直ぐ近くでザトウムシが群がる場所を見つけ、その中心に翡翠を確認する。俺は助走をつけてもう一度ブースターを点火し今度は大きくジャンプをしてザトウムシの群れを越え、翡翠に飛び掛かろうとしていた、ザトウムシ踏み抜きつつ着地する。

 

 

『こちらも追いついた。これより支援に入る!!』

 

 まあ、恭一一人で事足りると思うが。

 

 

 気を取り直して駆除をするのだが隣で戦っている恭一は踊るように、群がってくるザトウムシを切り裂いていく。どうやら恭一はマキナの近接戦闘において徒手格闘を取り入れていたと言っていたが、その動きが人間離れしている。

 俺もマキナを操ってるからこそわかるが近接戦闘に於いては恭一との技量は雲泥の差があるだろう。勿論、俺は恭一みたいな動きは不可能なので地道に足で踏み抜きながら飛びかかってくる奴を切り裂いていく。

 そんな事を考えている内に群がってきたザトウムシどもを殲滅した。まだ周りには100匹近くいるのだが仲間が呆気なくやられるせいか及び腰になって近寄ろうとしない。

 そんな中、恭一が先程潰したザトウムシを1匹手に持った状態で立っていた。

 恭一が一歩踏み出すと、群れがその分後退する。

また一歩踏み出すと後ろにいた奴が逃げ出していた。

そして最後の一歩で手に持っていたザトウムシを群れの中に投げたかと思うとザトウムシどもが蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

 ウン……キョウイチ、コワイ(震え

 

 取り敢えず恭一は怒らせない方がいいと深く胸に刻みこんだ。

 

 人喰いザトウムシが逃げ散って、俺と恭一は一先ずの安全が確保できたことに安堵し振り返る。

 目の前には人間の少女と、人間に獣の部位が生えたような少女が居た。仮に獣の少女と呼ぶが、彼女は明らかに人間の少女を守るように巨大な剣を構えている。

 ザトウムシとの戦闘は苛烈だったらしく、獣の少女の肌のあちこちに出血が見られる。しかし幸いにも彼女には致命的な傷は見当たらず、出血さえ止めれば命に別状がなさそうだった。

 その背後、獣の少女が命がけで守っていただろう人間の少女は、必死で短剣を握りしめている。彼女もまた汚れてこそいるが怪我らしい怪我は見当たらなかった。

 

 凄いな。

 

 と、純粋にそう思った。

 生身の人間があんな化け物染みたザトウムシを群れ相手に戦い、あの窮地を乗り切って見せた。俺が同じ立場なら直ぐにやられていたかも知れない。

 恭一もそう思ったのか声がいつもよりも優しく彼女達に声を掛けていた。

 

『大丈夫かい?』

 

 途端にビクンと少女たちの身体が緊張する。

 人間の方はよくわからないが、獣の少女は耳の毛を逆立てて尻尾を膨らませた。まるで猫だ。

 

「リビングメイルが……声を」

 

「ほんとだったんですねぇ」

 

 ガチリと板剣が鳴る。腕に力がこもっているのが見て取れた。

 巨大な鉄板とも思えるそれを、システムが分析する。超重量級の剣であるそれを持ち上げている少女を、先ほどまでのザトウムシと異なり自機危険度・極低と記載した。僅かでもマキナを損傷する可能性があると判断したらしい。それならむしろザトウムシから1人を護り抜いたことも納得できる。

 恭一はマキナを含めた体格差を考え、2人の前に片膝をついた。

 

『こちらに敵意はない。剣を収めてくれないか』

 

「……どうしましょう」

 

 板剣は相変わらず切っ先を俺と恭一へと向けていたが、それを握る獣の少女は視線をこちらへ向けたまま膨れた尻尾を横にユラユラ振って背後の少女へ声をかける。

 どうやら此方と敵対する意思は無いらしい、なので俺は両手を上げて片膝をつく。まあ、マキナでこんな行為をしても不気味にしか思えない気もする。

 一瞬、獣の少女が此方に反応してビクッとなったが直ぐに板剣を構え直し、翡翠が何やってんだよみたいな視線を送ってくる……なんかすまん。

 小柄な人間の少女は表情が読めない視線を俺と恭一交互に投げてくる。正確には青白くセンサーが輝く翡翠と赤くセンサーが輝く黒鋼の頭にだが。

 しばらく沈黙が続いた。

 獣の少女は額から汗を流しながら、それでもこちらの一挙手一投足から目を離さないように、そして俺たちの首元に向けた切っ先を外さないように。またこちらも、相手を刺激しないように動かず、物音1つ立てないように気を配ってどれほどの時間が経っただろう。

 周囲は光を月明かりに頼るようになり、肉眼では地形の輪郭を把握する程度しかできなくなりつつある。

 ふと、小柄な少女は息を吐いた。

 

「ファティ、下ろして」

 

「シューニャ?……いいんですか」

 

「このまま永遠に固まっている訳にもいかない。それにやろうと思えば、構えていたって私たちは殺されている」

 

「んー……それも、そうですね。ぷあぁ~」

 

 ファティと呼ばれた少女は下ろせと言われれば、いっそ清々しく切っ先を地面まで下ろした。そして今まで呼吸を止めていたかのように大きく息を吐いて座り込んでしまった。緊張の糸が一気に切れたらしい。

 

『ふへー、よかったよかった俺も気が抜けたぜ』

 

『ありがとう。まずは怪我の治療が必要だろう』

 

 

 シューニャと呼ばれた少女は俺のセリフで一瞬目を丸くしたが恭一の言葉にコクンと小さく頷くと、腰につけた小さなポーチから包帯を取り出し、座り込んでいる獣の少女に巻こうとして、あ、と声を上げた。

 

「水がないから洗えない」

 

「あー……ボクも飲んじゃいましたからねぇ」

 

 炎天下の行軍で全ての水を使い果たしてしまったらしく、シューニャは眉をハの字に曲げて困り顔をし、獣の少女は他人事であるかのようにぼんやりした表情をする。

 戦闘が終了すればすぐに玉匣に戻るつもりだった俺と恭一は、水など持ってきているはずもない。手元にあるのは武装だけで、他のすべては荷物室に眠ったままだ。

 逆に言えば、動く我が家に戻りさえすれば薬でも水でもあるのだ。でも大丈夫のなのだろうか?武器は下ろしてはくれたがもしかしたら、玉匣に戻った時を狙って攻撃して来るかもしれない。とはいえ、この血まみれの女性を放置して『現代における社会的一般情報等の確保』という目標達成ができるはずもないよなと俺は思い、俺は恭一に声を掛ける。

 

『どうする?このまま一緒に行くか?』

 

『……そうだね。僕もそう考えてたし、そうしよう』

 

どうやら意見は一致したようだ。そうと決まればと恭一は彼女達に声を掛ける。

 

『近くに僕らの住処がある。そこへ行こう』

 

「住処?」

 

 ピクリ、とその言葉に反応したのはシューニャだった。どうやら興味関心が深いのは彼女の方らしい。逆に獣の少女は、リビングメイルにもお家があるんですねぇと面白そうに言う。こちらはどうにも好奇心の方が強い。

 一瞬シューニャは躊躇う様子を見せたが、どうせ他の手段もないかと切り替えたらしく、獣の少女に肩を貸しながら歩き始めた。

 

 

 ■

 

 無線で呼びつけた玉匣は近くに生えていた異様に幹の太い大樹の下に停車していた。

 さっきの戦闘が行われた場所から少し離れており、死臭も漂ってこない。日も落ちており、ダマルは既にキャンプ地としての整備を始めていた。

 俺はと言うと、シューニャが途中から肩を貸すことにも体力的な限界を迎えていたため、代わりに獣の少女を抱え上げて連れてきていた。気づいていなかったが、太ももにできた傷が思ったより深かったらしく、出血も未だに止まっていない。そして恭一は体力的に限界だったシューニャは抱えて歩いていた。

 そんな俺らを知ってか知らずか、ダマルは外で待っていた。それもどこで見つけて来たのかご丁寧に麻袋ドンゴロスを頭に被って作業をしているのだから、何から突っ込んでいいかわからなくなった。

 

「おう、お帰り」

 

『ただいま……なんだいそれ』

 

「いや、びっくりさせちゃいかんと思って俺なりに工夫を」

 

『おいおい、逆に怪しさ満点じゃないか……』

 

 いくら中身が骨だからってそんな変装はないだろう、俺だってもう少しマシな変装をするぞ……

 

「まぁまぁ俺のこたぁいいんだよ!そっちの女たちだろうが、怪我してるんだって?」

 

 見ればダマルは医療嚢からあらゆる治療薬を引っ張り出しており、それを両手一杯に抱えて待機していた。こちらの物資にも限りがあるというのに大盤振る舞いだ。そこまでしなくてもと思わないでもない。

 もしかしなくても、ダマルは女性を連れていくと言ったときに興奮していたので、理由は聞くまでもないだろう。

 

「すごいお薬ですね。お金持ちなんでしょうか」

 

 腕に抱えられたままの獣の少女も目を丸くしている。

 シューニャに至っては何かふらふらしていた。

 

『ダマル、必要なのは消毒液と軟膏、あとはガーゼと包帯だけだ』

 

「消毒液と軟膏とガーゼと包帯だな!すぐにやってやるから待ってろヨ!」

 

 恭一が必要な物を指定するとダマルはガチャガチャと腕の中を漁り、骨をカラカラ言わせながら指定されたそれらを選別して、ついでに獣の少女にこいこいと手招きする。

 

 こいつ……骨の癖に下心で怪我の治療をしようとしているか。うん、目の前のスケベ野郎にはあるんだろうな。

 流石に初対面でセクハラは流石にいかんだろうと思っているとシューニャを地面に下した恭一はダマルの薬をひったくってシューニャに渡した。

 俺がやるってぇ!と言っていたダマルを恭一が引き摺って玉匣の中へと連れ込まれた。

 

 はあ、と俺はため息をつきつつ獣の少女を下ろしてやると、ダマルが準備を進めていたキャンプの焚き火に枯れ木を入れ、腰を下ろした。

 

『ん?遠慮しないで、座って治療しな』

 

不躾な上、マキナ姿でそんな事を言えば怯えてしまうかもと思ったが彼女達も焚き火の近くで座り手当てを始め、俺は焚き火を弄る。

 

 ……ち、沈黙が痛い。俺はコミ障なのに置き去りにしやがって。何か話すべきかと思っていると恭一とダマルが戻ってきた。どうやら翡翠のヘッドユニットだけを外してきたみたいだ。

 

 

 だが、恭一を見てシューニャがすごい勢いで後ずさった。まるでエビのようだ。

 

「ひ、人……!?」

 

「あ、そうか」

 

 よく考えれば、今回は中身が人間だとは一言も言っていない。

 どうやら中に人間が入っていたのが予想外らしいシューニャの反応は、化物の中から化物が出てきたそれだった。

 逆に獣の少女は、おー、と気の抜けた声を発するだけで、特に逃げたり身構えたりすることはない。むしろ楽しんでいるように見える。

 なんなのだろうか。このリアクションの差は。

 

「その、僕らは人間だ。君たちがリビングメイルと呼ぶこれを……使っている」

 

 恭一がマキナについて説明しようとしているがマキナのどころか恐らく機械文明が消滅している世界の住人にどう説明していいか、分からないだろう。

 俺はそもそも論外なので恭一に説明は丸投げしたい。

 

「とりあえず、自己紹介をしておきたいんだが……構わないかな」

 

「ボクはいーですけど、シューニャ、怖がりすぎです」

 

「ふ、ファティが怖がらなさすぎる!」

 

 ブンブンと両手を振って、シューニャが常識的なのは自分だと主張する。その小柄な体躯も相まって、完全に子供のように見える。

 逆に落ち着いてしまった獣の少女はわざとらしくため息をついてから、すっとこちらを見上げてきた。

 

「ボクはファティマって言います。見ての通りキメラリア・ケットです。さっきは危ないところを助けていただき、感謝です」

 

 そう言ってファティマはペコンと頭を下げると、橙色をした頭髪から突き出た、大きく分厚い耳が同時に左右へとわかれる。同時に外ハネのショートカットから尻尾のように伸びる細長い三つ編みが揺れた。

 変わった髪型だが、それ以上にその耳や腰巻のスケイルプレートの下から伸びる本物のような尻尾のほうが気になる。

 

「キメラリア・ケット……ってなんだい」

 

「僕みたいに、人みたいだけどちょっと違う人間のことですよ。ケットがつくのは僕みたいに猫っぽい見た目の人間です」

 

 恭一が質問すると彼女は自信満々にそんなことを言う。いや、それを自慢だと思っているようだった。

 揺れる金色の瞳はまさしく猫のようで、顔立ちも愛らしいとの表現が当てはまる。しなやかに伸びる四肢は細く見えるがきちんと鍛えられており、筋力があるのに女性らしい見た目を一切損なっていない。体つきも女性らしい起伏が平均的な大きさで現れており、その中でも目立つ下腹部の括れは、所謂へそだしの服装によって晒され、彼女の健康的な魅力を引き立てていた。

 人とは違う人間種、キメラリア……どこかで聞いた気がする。データではそんな情報は無かったが。

 

 

「それでこっちが」

 

「しゅ、シューニャ・フォン・ロール……コレクタ所属のブレインワーカー」

 

 まだ少し怯えと混乱が混在した様子の人間の少女はそう告げた。

 均整の取れた体のファティマと比べて、彼女の体つきは全身を覆う茶褐色のポンチョでまったくわからない上、年齢が離れているのか小柄だった。エメラルドのような瞳を持つ、ショートボブのブロンド美少女であることに疑いはないのだが、その丸顔気味で白い肌の童顔は、まだ年端もいかないと表現できるほど幼く見える。

 それもあと数年すれば立派な美女になるだろうか。

 そんなバカな事を考えていたら強烈な視線を感じた為、思考を中断する。

 

「僕は天海恭一。君たちがリビングメイルと呼ぶこの鎧、マキナの操縦者だ。で、こっちは僕と同じマキナの操縦者の」

 

『ゼロだ、よろしくな。んでこっちのドンゴロスヘッドが』

 

「ダマルってもんだ。よろしくぅ」

 

 ダマルはカラリカラリと骨をこっそり鳴らして、チャラそうにその手を振る。

 ファティマの方はよろしくです。と頭を下げた。だが、シューニャの方は物凄く難しそうな顔で恭一と俺の方を穴が開く程見つめてくる。

 ブレインワーカーだと言っていたが、まだ子供であろう彼女が一体なんの頭脳労働をしていたのかが気になり、その事について聞こうと口を開くより先に恭一が話を始めた。

 

「シューニャさん、だったね。すまないが色々と質問をさせてほしい。いいかい?」

 

 正直、俺は頭は残念なので口は挟まない方がいいかと考えつつ、この邂逅が吉と出るか凶と出るか分からないが一つ分かる事があるとすれば……夜はまだ始まったばかりである。

 




次も2日以内に頑張る
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