悠久の機甲歩兵・・・もしも、序盤からもう1人パイロットがいたら・・・ 作:てとるマン
さて、俺達は一路、バックドサークルと呼ばれる闇市へと進む。
そんな中、シューニャが先程見せていたコンデンサについて質問してきた。
俺は軽い整備などは分かるが細かい部品や使い道の事は全く分からないので、取り敢えず恭一に丸投げする。
そして恭一は年齢に関する事で彼女の逆鱗に触れたのか刺激臭を放つ木の実を投げつけられ、トンデモナイ匂いを放ち俺とダマル、特に鼻がいいらしいファティマを苦しめたりもしたが旅は順調だった。
特にする事もなく、俺は音楽を聴きながら横になっていると恭一の鋭い声が飛んできた。
「ダマル、警戒態勢!停車してくれ!」
キャタピラが地面を抉り、土煙を上げながら玉匣が急停止する。砲塔の上で日向ぼっこを続けていたファティマが転げ落ちそうになったのか、彼女の悲鳴が聞こえてきた。
俺は散らばってしまった道具を片付けてからダマルがいる運転席に向かう。運転席のモニターには集落らしきものが映っており、まだ遠くてはっきりとは分からないが人間らしき集団が動いてる事が分かる。
「テント村って感じだな」
同じ状況をモニター越しに確認するダマルは、多数展開している天幕の方をズームして言う。近くには牛や鹿に似た生物が多数繋がれており、遊牧を行っているらしいことも見て取れる。
「シューニャ、確認してくれ」
「ん」
まあ、シューニャが言っていた景観と一緒なので十中八九間違い無いだろうが念のため確認は必要だろう。
危うく振り落とされかけたファティマも、いつの間にか砲塔の下に戻ってきており、どうですかぁ?とやっぱり気の抜けた声で聞いてくる。
「当たり」
「ってことは、これがバックサイドサークル」
遠目から見て円形に広がるテント村は、その名に違わぬ市場らしい。
そうとわかれば一時的に玉匣を隠すことにする。付近に岩壁が侵蝕を受けて浅い洞を形成している場所を見つけ、そこに玉匣を駐車した。
以前酒場に入った時と違い、交戦状態でもないのにマキナを着装していくわけにもいかないなと、恭一は言いながら歩兵装備を引き出す。それもできるだけ自衛能力の高い物を選別したのだろう、いつもの軍用作業服の上にボディーアーマーを着込み、ホルスターに拳銃を突っ込み、一般的な個人防衛火器のブルバップ式小銃に銃剣をつけて肩から提げたところでできあがった様だ。荷物を持ち帰るための麻袋が、驚くほど似合っていないがこればっかりはしょうがない。
「なんか、物々しいなお前」
「仕方ないじゃないか……安全が最優先なんだから」
悪目立ちしそうだと苦言を呈するダマルだったが、万が一があるかもしれないからなと俺は思いつつも、正直に言えば恭一は武装してなくても持ち前の徒手格闘を使えば人間くらいは軽く一捻り出来る事を俺は知っている。
ま、それは今置いておくとして、この後の行動としては俺とダマルは居残りということになった。このドンゴロスヘッドでうろつかせてもいいのだが、完全武装した恭一以上に悪目立ちしそうなのと、なんらかの理由で骸骨の存在がバレたときに、そこにいる人間全てが敵となるのはあまりにも危険だとシューニャに止められたのである。
俺は特に理由はないのだが、一応人通りのなさそうな洞に車体を隠しているとはいえ、誰かが発見しないとも限らない。安全策として、玉匣の管理は俺とダマルがやる事になった。
あとの2人は特に変わらず、ファティマは板剣2本を背中に結いつけ、シューニャは短剣を腰に差してただけで準備を終えた。
手慣れたものだと感心するが、彼女達はこれが普通なんだなと改めて理解する。
そうして恭一達は俺とダマルを残し、徒歩でバックサイドサークルへと足を踏み入れたのだった。
◼︎
「ほへぇ〜、凄まじいなぁキメラリアって奴はよぉ〜」
双眼鏡片手に恭一とファティマの戦闘を俺とダマル眺めていた。あれから時間も経って用事が済んだらしく、恭一達が帰ってくるのが分かったのだが、途中で何故か模擬戦を始めたので取り敢えず経過を観察しているという状況である。
「マキナの運用に特化した高月師団麾下第三機甲歩兵大隊。そこが抱えてた特殊作戦部隊SOF、通称夜光中隊。ヤベェ奴が集まってたって聞いてたが、そんな連中の隊長をやってた奴だから弱くはねぇとは思っていたが…こりゃ相当な化け物だねぇ」
ダマルが俺に対して解説してくれている。恭一とは数回程度、模擬戦をした事があるのだが、結果としては毎回恭一は無傷で俺は地に這いつくばって動けなくなるの繰り返しである。
今回は身体能力の高いであろうファティマであるが見た感じ、力任せで戦っているので恭一の敵ではないだろう…何故戦っているかは分からないが。
そんな感じで恭一達との戦闘を眺めていると俺はある違和感に気づいた。
「なぁ、ダマル。あの辺に何かいないか?」
「あぁ?どこだよ?」
「ほら、あそこ」
俺は違和感があった場所を指差して骨に聞く。
「んん?わかんねぇなぁ…」
どうやら、ダマルには分からなかったようなので俺が「恭一達が戻ってきたら見に行ってみる」と告げて双眼鏡を構え直した。
◼︎
結果から言おう、俺達はどうやら誰かに目を付けられたらしい。
俺があの後、違和感があった場所に確認しに行った所、恭一達とは違う足跡が人間一人分あったのである。恐らく誰が放った密偵の可能性があると思い、俺はダマルに相談をした。
「…そうだなぁ、今は恭一達に伏せておくかなぁ」
「話さないのか?」
「今はつったろう?取り敢えず、明日は恭一達にとっちゃあ大事な試合が控えてるんでな。不安になるような事を言うのは時期尚早って奴だろうが」
「…そうだな」
何でもコレクタユニオンという組合で恭一はどうやらトップの人物にファティマを頂くと豪語し、明日決闘をする事になり、さっきの模擬戦はその準備の一環でもあったらしい。
ファティマから聞いた話と恭一から聞いた話では大分食い違いがあったが、概ね一緒だろうと俺は解釈した。何がどうしてそういう経緯になったかは分からないが、もしかしたら彼女が前に言っていた、自身が奴隷だったということに関する事なのかも知れない。
「にしても、恭一はケモ耳趣味なのかねぇ?俺は断然、ボンキュボンの姉ちゃんなんだがねぇ」
「いや、お前の性癖については聞いてないんだが…」
「そういうお前はどうなんだよ?好みのスタイルとかねぇのかよ?」
骨にそう言われて考えてみたのだが・・・
「特にないな」
「カァーーー!!そりゃ人生損してるぜぇ!!」
骨が額を抑えながら大声で俺に言う。
「いいか?確かに中身も大切だがよぉ、外見が伴ってなきゃなぁ「そこで何の話をしているの」
スケベ骨が俺に力説をしようとしたところ冷え切った声がそれを遮る。骨が関節人形の様な動きでギギと後ろを振り向き、俺はそっと目線を逸らす。
そこには氷点下と言っても差し支えのない目線を送ってくるシューニャが立っていた。
「どんな話をしてたかって聞いてるの」
俺とダマルが黙って立っている木偶の坊になっていたからか、彼女はもう一度言ってくる。俺はそっと気配を殺しながら逃げる。
「…えーとな、しゅ、シューニャさんよぉ…これにフカ〜イワケがあってだなぁ…て、おい!!ゼロぉ!!どこに行きやがった!!」
「問答無用…ファティ」
俺は気配殺しながら去っていくと背後から無慈悲な命令を繰り出すシューニャとそれに喜び反応するファティマ、そしてこんの裏切り者ぉ!!と叫ぶ骨の断末魔が響いただけだった。
◼︎
俺とダマルは洞から抜け出すと、近くの高い崖の上から双眼鏡を使って昨日の模擬戦の時と同じ様に試合の様子を眺めていた。
どこかで人に見られて騒ぎになると不味いので、頭にはいつも通りのドンゴロスをダマルがかぶっている。このところ暇な時間が多いこともあったからか、やや頭に被りやすく、周囲の視認がしやすいよう改良したようであった。
「まぁ、だろうと思ったぜ」
昨日は心配そうなことをわざわざ口にしていたが、本心では恭一の心配など微塵もしていないという風に骨が言う。
俺も恭一の戦いぶりや昔の戦闘での撃墜スコアを確認した限り、近接だろうと遠距離だろうと撃墜王の名にふさわしい功績だっだが僅かに近接戦闘記録が上回っていた。近接戦闘での記録が射撃戦に並んでいる時点でおかしいのだ。
まあそんな事もあり、相手が人の形をしているのであれば勝ちはほとんど確定だった。まあ、トップらしいババァは恭一が勝ったというのに不適に笑っていて不気味すぎる。
本来、負けた相手が悔しそうにしているのなら違和感がないのだが、あの笑みから伝わってくるのは、まるで計算の内だったかのような余裕の笑みである。
もしかしたら、恭一を試し何かに巻きこうもとしているのか?と考えていると突然。
ザザッ
頭の中にノイズの様な音が聞こえた、それと同時に軽く頭痛がしたので手を額に翳すと同時に背後から気配を感じた。
「……こんなところで何の用だ?」
双眼鏡を下ろすと振り向かずにダマルは言う。
伸びた影は一瞬驚いたかのように硬直すると、直ぐにダマルと俺に襲い掛かった。その手にはやけに使い込まれた短刀が握られ、太陽を反射する刀身が濡れていることも見て取れた。
影が逆の手で懐から抜いた投げナイフを俺は咄嗟に回避したが、そいつはダマルに素早く駆け寄る。首元目掛けて短刀を突き刺そうとするところで、空気が抜けるような音が数回響いた。その途端、影は糸が切れたように崩れ落ちた。
「話を聞かねえ野郎だな。おい、ガキでも知ってるぞ?最初は挨拶からだってな」
ダマルが消音装置サプレッサーから青白く硝煙がくすぶる機関拳銃サブマシンガンを、倒れて短く息をする影に突き付ける。俺も避けた際に懐から出したサプレッサー付きの拳銃でそいつの足を射抜いていた。
全身黒ずくめに目だけが隙間から覗くそいつは、恐らく昨日俺が見つけた違和感の正体だろう、まさか昨日今日で行動を起こすとは思わなかったが。
「毒しみ込ませた布に剣か。これが何の毒かはしらねぇけど、まぁ単純に行けば痺れか眠りかそんなとこだろ。軽く傷つけて倒れさせようってか。随分甘く見られたもんだなぁオイ?さて……自己紹介でもしてくれよ、俺はトモダチを作るのが得意なんだぜ?」
密偵をするなら声を出さないように訓練されているはずだろうに、そいつはダマルの凶悪な雰囲気による恐怖に悲鳴を上げている。そいつの期待に応えてやるため、俺もダルマに続きゆっくりとそいつに近づいた。
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その後、俺は仲良くなったそいつを埋める事になった。
どうやらこいつは帝国軍所属する軍隊の百兵長が放った密偵だった様で既に俺達については伝わっているらしく、こいつが戻らなかったら今日にでも動き出すだろうと言っていた。
だが所詮現代の軍隊だ、マキナを持つ俺達には到底敵うはずもないだろうと俺は考えながら作業が終わったのでダマルが待つ玉匣に帰ることにする。
ザザ…タ・・・イ
…まただ…また何か、ノイズが頭の中を走る…それに何か声のような物も聞こえた気がした。風邪でも引いたのかねぇと俺は思いつつ、深刻に捉える事なく俺はこの場を後にするのだった。
早くて明日には出してたい(無理かも