悠久の機甲歩兵・・・もしも、序盤からもう1人パイロットがいたら・・・   作:てとるマン

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ふへぇ〜何とかできたぁ、この話の構想は元々考えてたので早く形にしたくて頑張りました…うまく書けたかはわかりません(白目


忘却の彼方

◼︎

 

 暗闇に閉ざされた荒野を、玉匣はライトもつけずに疾走する。

 前後左右に揺れる車内では、速やかに鍋の中身を減らすべしとファティマお手製の具沢山スープを、こぼさないよう各々が必死で支えながら食事が行われていた。

 ハンドルを握るダマルも、片手で木椀を掴んでそれを口の中へと流し込みながらの運転だった。

 

 

 だがそれも仕方がない、何故ならお友達になったあいつから聞かされた、お客さんが俺達に会いにきたからである。

 恭一達が無事に高額の依頼を貰い戻って来た時に依頼の内容とお友達が来た内容を共有し、ファティマが夕飯を作り終えたタイミングでレーダーに感があったのだ。

 飯を食べながら玉匣に乗り込み、その場を直ぐに離脱したのだが奴らはアンヴと呼ばれる馬と鹿の間のような動物に騎乗し追いかけてきたのである。

 そのアンヴは最速で70キロ近く出せるらしく持久力も高いみたいだ。そんなこんなで中々距離が開かないと思った矢先にさっきまで雲に隠れていた月が荒野を照らし出して玉匣の姿を完全に見らてしまった。

 そのため、俺達を追って来た百兵長率いる騎馬隊を生かして帰すことが出来なくなったのである。

 

 現在、恭一が砲手席に乗り込み射撃態勢に入っており、俺は黒鋼に乗り込みいつでも出撃できるようにしていた。

 まぁ、シューニャが敵の隊長格をモニターで確認したところ、小悪党という事がわかったので特に慈悲をかける必要はないなと恭一は言う。

 

 

 「先ずは敵の足を止める。チェーンガンで敵の先頭を撃破して動きが止まり次第、僕とゼロはマキナで出撃、マキナに動揺してる隙にファティマが隊長格を襲撃、玉匣は念のため退避って流れなんだけど大丈夫かい?」

 

 恭一が俺達に向けて作戦の説明をし、確認を求めてくる。

 

『ああ、問題ない』

 

「俺もそれでいいぜ」

 

「やった〜久々のお仕事ですね〜」

 

 三者一応に答える一方でシューニャは少しだけ不安な様子で俺を見ていた。

 

「ゼロ…何か隠してない?」

 

『?…隠すってなんだ』

 

「今朝見た貴方と今の貴方、様子が…何か違う気がした」

 

 シューニャがあやふやな事を言っているが俺は特に異常はないんだがなぁ…

 

『気のせいじゃないのか?まぁ、今から人を…うん、殺しに行かないといけないからな…気が余り進まないというのもあるからかな』

 

「そう…ならいい」

 

 シューニャがまだ不安な表情をしていたのでどうしたものかと俺は考えていると恭一から合図が飛んでくる。

 

「それじゃ、パーティーといこうか」

 

 そのセリフの後にチェーガンから3発の弾丸が射出され、綺麗に敵の先頭に命中し、敵の足が止まる。

 

『敵の進軍が止まったのを確認、出撃する!!』

 

 まさか、シューニャの不安が的中するなんてこの時の俺は思いもしなかったが…

 

 

 俺が玉匣から出撃し、右往左往している騎兵隊の群れに近づくにつれてノイズのような耳鳴りがしだした。

 

 何だ?無線機が壊れたのかと思い、恭一達に無線を送るが特に異常ない。気を取り直して騎兵隊との距離が50メートルまで近づいたかの距離で、一旦俺は止まることにした。

 

「リビングメイル!?くそ!!情報ではリビングメイルはこの付近にはいないはずではなかったのか!!」

 

 騎兵隊の誰かが大声で何か喚いていてる。

 …あぁ、懐かしなこの雰囲気、やっぱり俺にはこういう場所が馴染む…待て?何を考えているだ?

 雰囲気も何も俺は昔の事を全部忘れているはずなのに…この俺に向けられている敵意や恐怖が何故か懐かしく感じ…と俺はそこまでの思考を突如遮られる。

 

 ダァン!!

 

 その音がした後に騎兵隊の先頭にいた奴が吹き飛んでいた。誰が撃ったのか俺には分からず左右を確認してみると…俺の着装している黒鋼から伸びたサブアームの突撃銃から煙が漏れていた。

 途端、視界にノイズが走り始め、耳にもノイズの音が煩く聞こえ始める。

 

 何故、俺は今撃った…?そんな誰も答えるはずのない疑問に答える声が聞こえた。

 

 ナゼウッタノカ?ヤツラガニクイカラダロ。

 

 憎い?今日初めてあった奴らがなんで憎いんだ?

 

 俺の視界のノイズが段々と酷くなりノイズの音で周りの声が全く聞こえなくなっていた。

 

 アァ、タリナイ…タリナイ!!コロセ!!コロセ!!ニクキヤツラヲコロセ!!

 

 お前は…誰なんだよ!!

 

 俺の頭は既にこの声が誰か理解していたが、理性が…それを否定していた。

 

 オレハ…お前だ。

 

 その瞬間、視界が真っ白になったのを感じた。

 

 

 

◼︎

 

 

 白んでいた視界が段々と晴れ渡っていくのを感じる。

 周りにはマキナを着込んだ企業連合の軍人やそれに相対する共和国のマキナが争っていたり、時折ミサイルや砲撃が降ってきて地面が焼かれているのを感じる。

 

 此処は…思い出した。此処は戦場だ…企業連合と共和国が戦う最前線だ…

 

 俺が他の事を思い出そうとすると、目の前に10体ほどのノイズが走った何かが現れた。普段の俺なら分からないかもだが…今の俺には分かる…あれは。

 

 

『共和国の…マキナ!!』

 

 そうだ…俺は憎い奴らを全て殺す為に此処に立っているんだ!!

 

『殺す』

 

俺は黒鋼のブースターを点火し、一瞬で肉薄する。そのマキナを俺が側に来たことに気づくとハーモニックブレードを振り下ろしてくるが余りに遅く、俺はゆっくりと避けながら振り下ろした腕を掴む。

 

『この腕は…邪魔だな』

 

 俺はそう言うと右腕のハーモニックブレードを展開し、マキナの腕を切り飛ばす。そして間髪入れずに倒れるそれの首を一閃する。余りも呆気なく、一体がやられたのを見て動揺していた他のマキナ達であったが、今度はその場の全員が俺に襲いかかってきた。

 

 遅いな…と俺は思いつつ、近づいてきた一体を足で引っ掛けて転ばせ、そのまま頭を踵で踏み抜く、その間に切り込んできたマキナのブレードを左手で受け止めながらその頭にブレードを振り下ろす。そうこうしている内に左右から5体のマキナが襲い掛かってくる。

 俺は右側の2体をブレードで切り裂きながら、左側の3体をサブアームの突撃銃を横薙ぎに撃ちながら対処した。

 すると残りの2体程が明らかな逃走を始めたが、俺は最初から一人も逃すつもりはない。

 

 ブースターを使い、ジャンプをして先回りをして逃げるそいつらの前に出る。俺が目の前に現れると、そいつら地面にへたり込み何かを言っている素振りをするが俺には…何も聞こえない。

 俺は右手と左手でそいつらの頭を掴み持ち上げ、そのまま握り潰してやった。動く敵は周りにはもういないが俺はまだ…足りなかった。

 

 

『…足りない。全然足りない!!そうだ、憎い奴らを全て殺すんだ!!こんな所で足踏みしてなんかいられない』

 

 そうだ、こんなことじゃ俺の腹の虫が治らない…それに。

 

『こんな調子じゃ…アイツに…いつまで経ってもたどり着けない!!』

 

アイツに会うまでは俺は死なない!!アイツに会う為にもっと憎き共和国の連中を殺す!!…アイツって誰だ…?

 

 俺は誰に会う為に憎い奴らと戦っているだ…?そもそも俺は今まで何をしていたんだ?

 

 疑念と矛盾に思考が支配され始めた時、俺の肩に誰が触れた。

 

 俺が振り向いた瞬間、戦場だった周りの景色は弾け、暗闇に包まれた荒野が現れた。

 

『どうしたんだい?さっきから無線に応答がないからなにかあったのかと思ったよ』

 

『…え?…あぁ、心配かけたな』

 

『とりあえず、隊長格も潰したから戻ろうか』

 

 仕事が一段落ついたらしい恭一が声を掛けてきたので、戸惑いつつも返事をした。視線を周りにやると帝国軍の首が飛んだ死体や頭が砕かれた死体が目に入ってきた。

 

 

◼︎

 

 

 その後離脱する前にダマルから一人生き残りレーダーに映っているといわれその現場に行ってみれば、キメラリアらしき兵士が岩の隙間に隠れていた。

 今のレーダーの性能だと遮蔽物があれば正確な探知が難しくなるので仕方ないのだが問題は別だ。実はそのキメラリアの兵士は武装解除をして投降してきたのである。

 流石に武装解除をした人間を殺す訳にはいかないので取り敢えず捕虜として連れてきたのだが緊張の糸が切れたかのように気絶してしまい、名前も何も聞けないまま、現在は俺の向かい側でベッドロールに縛られて放置されている。

 

 帰還した後のあれこれから少し時間が経ち、既にダマル達は寝てしまった。俺は何をしているのかというと、見張り兼黒鋼の掃除をしているのである。黒鋼は全身返り血塗れで、ダマルから掃除は自分でしろよなと言われたのだ。

 

 はぁとため息つきながら黒鋼の腕まわりを掃除しながらさっきの戦闘で起きた事を考え始めた。

 

 あれは昔の俺だったのだろうか…だとしたら、俺は狂ってしまっていたのか…もし、俺が記憶を完全に取り戻したら一体どうなるのだろうか…

 

俺は答えが出ない堂々巡りの状態でさっきの異常な出来事を思い返す。そんな俺に声を掛けてくる奴がいた。

 

「隣…いいかい?」

 

「…ああ、いいぜ」

 

 どうやらまだ眠ってなかったらしい恭一が、俺の隣に座りにきた。

 

「…何かあったんだろ?」

 

「分かるのか?」

 

「分かるよ…って言いたいけどさっきまで気づかなかったんだ。シューニャが出撃する前に君の様子が少し変だと言っていたのと、戦闘が終わった後の君の様子が明らかにおかしかったからね…ダマルも心配していたよ」

 

「…そうか、心配かけてしまったな」

 

 どうやら俺は隠し事が下手らしい…このまま隠していてもいずれボロが出そうなので、さっき経験したフラッシュバックの事を恭一に話すことにした。

 

「…そうかい、昔の事を少し思い出したんだね」

 

「ああ…かなり胸糞悪かったがな」

 

 実際、あの時の思考はまるで狂人のそれだった。いくら憎いとはいえ戦争に私情を持ち込み殺戮をするのは軍人として失格だ。それにあの時のセリフも気になった。

 

「『アイツにたどり着けない』ね…俺は一体誰に会いたかったんだろうか」

 

 恭一は黙って俺の話を聞いている。

 

「なぁ、恭一」

 

「何だい?」

 

「もしも、俺が昔の事を完全に思い出して狂ってしまい、お前達に襲い掛かるようになったら…その時はどうする」

 

「…そうだね」

 

恭一は深く考えながら俺を見据える。

 

「…もしも君が僕達を襲うような事があった時は…僕は容赦はしないよ」

 

 恭一はハッキリと答える。

 

「…ふふっ、ははは」

 

 俺はその解答に安心して安堵の笑いが込み上げてきた。

 

「そんなに笑える事を言ったかな?」

 

「俺にとっては十分笑えるんだよ」

 

 ま、俺が狂った時はこの色男が何とかしてくれると思えば、これ以上悩む必要ないなと俺は気を取り直す。

 

「なぁ恭一、実はなこの掃除終わりが見えないんだよ…手伝ってもらねぇか?」

 

俺は返り血がたっぷり付いた黒鋼に指差しながら言う。

 

「えぇ?…一つ貸しだよ」

 

 恭一は文句をいいたげな表情だが手伝ってくれるようだ。

 全く…この男に頭が上がらなくなりそうだなと俺は思いながら、夜の闇が深くなっていくのを感じつつ、掃除を続けるのであった。

 

 

 




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