MFリリカル・パン屋さん   作:mom

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管理局襲撃

「艦長、このままステルスを維持。高度を維持したまま、南方へ移動後待機。合図があり次第、回収を頼む」

 

 初老の艦長に後を任せれば通信を終え、カタパルトの合図を待つ。一呼吸置いて、グリーンシグナルが点灯された。

 

「これがクロスボーン・バンガードの力だ。いくぞ」

 

 ドレルからの命令により、有人機がそれぞれ三機の無人MFデナン・ゾンを引き連れ行動を開始する。小隊の一つはアークへ。もう一つはクラナガン周辺に。最後に、ドレルはクラナガン中心へと。

 

 

 

 

 

早く、MF部隊を出撃させろ!……構わん、ここが落とされてはどうにもならん、急げ!

 

「やられた……」

 

 口を噛み染み震える、八神大佐。本局から独立した体系を持って運用されているため、独自にクロスボーン・バンガードに対する調査を行っていた。人材不足と呼ばれる管理局の中でもとりわけ、異質なこの部隊は人材難からは逃れることは出来ていた。

 

「人材がおっても、機体がな……」

 

 優秀な魔導師は私の限り得る力で揃えることができた。けど、MFジェガンなんかじゃ対抗なんてできない。エース級の魔導師が力一杯扱える機体の開発が間に合ってないんや。それにあの無人MFの機体性能の高さに装備の違い。ビームを防がれたあのシールドもこっちは標準装備なんてしとらへん。

 

「実質……1対15。厳しすぎる」

 

 机をドンっと叩き、悔しさを滲ませるはやて。だがそこに悪い知らせは続く。

 

「八神大佐、こちら整備班。高町大尉のロングレンジライフルは修理中で使用できません。機体は出撃可能ですが、オプションパック無しの基本フレームのみになります」

 

 最悪や……。あのシールドを難なく貫通できる切り札が使用不可。つまり、接近戦で何とかせえっていうことやないか!

 

「こちら、ハンガー。八神大佐、高町大尉が発進許可を求め「割り込み失礼、八神大佐、迷ってる場合じゃありません。ここが落ちたらそれで終わり。味方の援護にいかないと、全滅だよ」

 

「分かってる。でも、接近戦しか勝ち目ないんよ。いくら新型MFいうたって「分かってるよ。はやてちゃん……優しいからね」

 

「高町大尉、今は「分かってる。はやてちゃんの立場は、もの凄く辛くて大変な決断を強いられるんだってこと。だからね、私はそれに応えたい。だからここにいるんだよ、はやてちゃん」

 

 

 零れ落ちそうな思いをぐっと堪え、命令を下す。これは、戦争なのだと。今回は負けは許されないと。

 

「ありがとう、なのはちゃん」

 

 聞こえるか分からないほどの呟き。だがそれは、なのはには確実に届いていた。

 

「みんなが帰る場所を消されるわけにはいかんで。高町大尉、発進を許可する」

 

「了解、カタパルトお願い!」

 

「了解でさぁ、高町大尉、御無事で」

 

「ヴァイス曹長も御武運を」

 

 ハンガーからカタパルトへ移動するなのは。そのわずかな時間に準備は進む。

 

「レイジングハート、同期確認、魔力回路接続、フレームの機動を確認。お願いね、レイジングハート」

 

 バイザーにはもちろんとの文字が流れ出る。新フレームにはAIとしてレイジングハートが移植された。前まで私のデバイスとして共に闘ってきただけのことはあり、MFの運用に大きな貢献をしてくれている。もちろん、音声による会話も可能だ。

 

 そうこうしているうちに、カタパルトへと到達。前には開けた空が眩しい。

 

「シグナルグリーン、発進どうぞ」

 

 ぐっと、膝を曲げ、これから来るGに備え、いつも通りの台詞。

 

「高町なのは、F90RH、行きます」

 

 後ろに引かれるような感覚と共に、Gが身体を襲う。魔力で緩和しているとはいえ、やはりきついものはきつい。だがそれも一瞬。次にはいつもの大空に機体は飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「機体数は互角。でも性能は……これじゃあ、いつまで持つか分からないよ」

 

 

 次元世界を管理する程の力と人員を持つ、管理局がここまで苦戦を強いられるのはいくつか理由があった。まずはMFを扱い切れる魔導師が多くないこと。魔力量に関しては多いことにこしたことはないが、如何せん扱いが難しいのだ。生身の方が動きやすいと答える者が圧倒的なのだ。情報処理能力がモノをいうべきか、AIがいくらかは処理してくれるとはいえ、それを扱うのは生身の人間。魔力が尽きれば落ちるMFを効率よく運用できなければ、ただの外部装甲にしかならない。

 

「それにMFにはMFを……これは相手にも言えることだけどね。どういう技術かはわからないけど、魔力を流したMFは普通の魔導師では傷一つ付けれなかった。つまり、MFが相手なら、MFでなんとかしろってこと」

 

 

 嘆いたところで何かが変わることはない。けれど愚痴の一つくらいこぼすくらい、いいでしょとばかりに、深いため息を吐く。でも、やるしかないのは事実。

 

「例え、苦手な接近戦でも、やるしかないんだから。みんなが帰ってくる場所を守らなくちゃ」

 

 

 

 無人MFに圧されるジェガンを援護すべく、ビームライフルが放たれる。トリガーは軽く2度引かれ、桃色の閃光がデナン・ゲーに降り注ぐ。だが、展開されたビームシールドによって防がれてしまう。

 

「高町大尉、ありがとうございます」

 

「感謝はあとで。やっぱりビームは効かないね」

 

「いえ、大尉の機体のならば、相手をよろめかせる事は可能です。残念ながら、我々の機体では接近戦しか……」

 

「それは私も同じ。シールドさえなければ、多分簡単に落ちるんだろうけど」

 

 会話をそこそこに、F90RHとジェガンは左右に散った。ドレルが引き連れた無人機の2機がこうしてビームマシンガンを連射し、二人の間を割った。

 

「はやく、なんとかしないとこっちが危ない。えっと、名前は……」

 

「ケーラ少尉です、大尉」

 

「ケーラ少尉、まずは一機落とします。私が動きを止めますから、接近戦でなんとか」

 

「了解です、大尉」

 

 なのはがMFを使用するまでの戦闘スタイルは鉄壁の防御と超高火力による殲滅。しかしMFの開発が進んでいるとはいえ、なのはのポテンシャルに見合う機体は中々見つからなかった。だがF90はそれに見合った性能を持っている。だが、超高火力と鉄壁と言えるほどの防御は今だに手に入らない。

 

「空戦魔導師の力……見くびらないでね」

 

 だが、彼女には武器があった。高機動戦闘。ただでさえ多い彼女の魔力に新フレームは高機動という形では応えた。ジェガンなど追随を許すことのない機動力はデナン・ゲーを上回る。

 

 

「いい加速。それに、そっちだけのモノだと思わないでね」

 

 

 ビームライフルでの牽制と、あわよくば撃墜を狙って、細かく機動を変えながら、攻撃を開始する。バイザーに送られてくる情報をマルチタスクで処理し、的確に回避、攻撃に移る。機体性能で唯一勝っているのは私の機体だけ。だから私が引きつけて、止めを刺してもらえばいい。止めは危険だけど、少尉の動きならいける。

 

『マスター、相手のAIに負荷をかけてはいかがでしょうか』

 

「レイジングハート、でも、どうやって?」

 

 ビームマシンガンを回避しながら、少尉の方に注意が向かないように2機を誘導しながら交戦を続ける。だが1対2で接近戦は危険すぎる為、なかなか踏み切れないでいた。

 

『未知との遭遇というやつです、マスター』

 

 

「……つまり、新しいものを見せるってこと?」

 

 肯定とばかりにバイザー内に情報が流れ込む。

 

「なるほど。ただ、相手の武装の性能が不明な以上、一か八かだよ。けど、そういうの嫌いじゃないよ、レイジングハート」

 

 減速と同時に、ビームバルカンもビームシールドの前に無力化された。けど、本命はこれじゃない。

 

「少尉、合わせて」

 

「大尉……了解です」

 

 ただの突撃……ケーラにはそう見えた。だが速度を殺し気味なことに少し違和感を感じる。接近戦なら高速で飛びこんでいく方がまだいいはず。

 

 迎撃するように、ビームマシンガンを放つ2機を前に悠々と距離を詰めるなのは。

 

「大尉、危険です!あれにあたれば、いくら大尉といえども」

 

「その賭けに勝たないと落とせないでしょ。それに……」

 

 無人機に意思があるのならば、ぎょっとしただろう。動きが一瞬止まった。

 

「こっちにだってビームシールドがあるんだから。まさか、想定外だったりした?」

 

 左手付近から展開されるのは桃色のビームシールド。サナリィが急ピッチで開発したF90の装備の一つだ。データが不足しているため、有効なのかは分かってはいなかったが、ぶっつけ本番で、性能の高さを証明することになった。

 

「そこ、もらった」

 

 たじろぎからの復帰よりも早く、ビームが機体を貫通していた。なのはに合わせて詰めていたケーラの一撃は機体を捉えていた。

 

「大尉、流石ですね」

 

「まだ、もう一機。いける!!」

 

 一気に距離を詰め、右手にビームサーベルを構える。シールドで防ぎながら、間合いに飛び込み、上段から袈裟切りに振り下ろす。対応に遅れたデナン・ゲーはシールドで押さえるも、じわじわと押されはじめ、

 

「少尉!!」

 

「分かっています。ええい」

 

 機体を押しやり、後ろへ下がると、背後に回り込んでいたケーラのビームサーベルがエンジン部分を貫いていた。機体からは音が消る。ケーラも爆発から回避すべく、サーベルを消し、退避に移ろうとする。

 

 

『マスター、新手です』

 

 

「大……尉……。あ……あ……サラダを……」

 

 

 声の方を見ると、ジェガンの腹部に槍のようなモノがまるで生えていたかのように突き刺さっていた。そして無人機の爆発に巻き込まれ、ケーラは戦死した。

 

 

「少尉ーーーーーー。くっ、誰が少尉を!!」

 

 

 槍が飛んできたであろう方角をみれば、そこには無人ではなく有人のMF。紫と手にもつ槍のような、ショットランサーが特徴的な、UMFベルガダラスとドレル・ロナだった。

 

「管理局の白いやつか。だがエースとはいえ、私を含めた3機に勝てると思うか」

 

 悲しみと怒りをかき消すように、冷静な思考が私を駆け巡る。正直なところ、勝ち目は薄い。それに、あの真ん中の機体。有人機もクロスボーン・バンガードにはある。それにあの機体は私たちのものとは感じが違う。

 

「ほう、目の前で、仲間が死んだ割には冷静なようだな。管理局にも平和ボケしていないのもいるじゃないか」

 

 

 ビームマシンガンが降り注ぐ。相手に情報を与えたくはないが、そんな余裕などなかった。ビームシールドは常時展開。隙を見つけては反撃に出るも、全て防がれてしまう。

 

 

「高町大尉、残存魔力量、30%を切りました」

 

 

「なのはちゃん……他の部隊は何やっとるんや!?」

 

 

「八神大佐!アークにむかった部隊は全滅。それに首都近辺の部隊も40%まで消耗」

 

「どないせいっちゅうねん!!」

 

 

 ほぼ負けが確定したような状況に思わずキレてしまいそうになる心をなんとか我慢するが、絶望的なことに変わりはない。まだ、なのはが頑張っているが、それも時間の問題。この状況を打破するには、大きな力が必要……だがそれは今この手にはない。悲壮感漂う指令室に一つの報告が飛んだ。

 

 

「八神大佐、アークの……アークの機体が消滅しました!!」

 

 その報告を同じく、それはドレルの耳に届く。これ以上は無意味と判断したドレルはすぐさま後退を開始した。だが追ってくるものなど誰もいない。

 

 

「助かった……の……」

 

 

 全身から汗を噴き出し、魔力を絞りだして戦ったエースはハンガー近辺の敷地へと辛うじて着陸。そして意識を手放した。

 

「はっ、救護班、大尉を!!整備班、急いで整備や!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドレル、報告は以上か」

 

「はっ、以上です」

 

 

「そうか、やつは死んだか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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