((((………どっからどう見てもガキんちょにしか見えねェ))))
それが"白ひげ海賊団"幹部達の総意であった。
"ロジャーの娘"を保護したなどとマルコが言うもんだから興味本位で見に来たものの、その興味は急速に失われつつあった。面倒見の良いマルコだったからこそ相手をしていたようだが、もし拾っていたのが他の幹部達であったならば、一笑に付して聞く耳を持つことはしなかったろう。
「おいハナッタレの小娘、おめェの言う"ろじゃー"ってェのはどんな男だ?」
「ハナッタレとは何じゃ!?儂の名はサクヤじゃ!覚えておけッ!」
「威勢はロジャーの奴にソックリなんだがなァ……」
確かに肝っ玉が据わっているのは認めるべきだろう。幹部である隊長達に加え、大海賊"白ひげ"を前にしておきながら全く怖気付いた様子が微塵も見られないのだから。その点だけで言えば、時には死闘を演じ、時には交流を深めた、かの"海賊王"を彷彿とさせるのは確かであった。
「んな!?ち、父上を知っとるのかッ!?」
「おれが知る"ロジャー"とハナッタレの言う"ろじゃー"が同一人物なのかは分からねェがな………グララララ」
「ハナッタレではないと何度言わせるんじゃこのジジイッ!!」
実際にロジャー本人から聞かされていたからこそ、"ロジャーの娘"と名乗る人物が現れても大して動揺する事は無かった"白ひげ"だが、いざ実物を目の当たりにすると、サシで酒盛りした日に聞いた話は冗談だったのかと疑いたくもなる。
こんな
『そういやァ面白ェ女に出会ったんだよニューゲートッ!
『
『年がら年中嵐に囲まれてる島でな、その島に住んでた女共がこりゃまたえらく強かったんだ!!』
『負けたのか?』
『おれが負ける訳ねェだろバカ野郎!!』
『だろうな……それでどうしたってんだ?わざわざ話したからにはなんかあるんだろう?』
『おうッ!しこたまヤりまくってきた!!』
『は?』
『今頃はおれ達の子供が山ほど産まれてるだろうよ!おでんの子は何人いるか分かったもんじゃねェぞ!』
『何してやがんだあのバカ弟は……それにおれに挨拶もしねェでワノ国に帰りやがって……てめェの所為だぞロジャー!』
『良いじゃねェか別に!それでよ、おれの相手はウズメだったんだが…ありゃあ良い女だぜ!強かったしな!きっとおれに似た強い子を産んでる筈だ!』
『さらっと流しやがったなこいつ……』
『興味あるか?行き方を教えてやるぞ?お前ほど強い男なら歓迎してくれると思うぜ』
『興味ねェ、聞いても行かねェよ』
『何だイ〇ポか?』
『ブチ殺すぞてめェ!!』
あの酒盛りから既に二十五年程の年月が経過している。ロジャーがいつ
見た目は完全に
「おい
「こ、今度はちんちくりんじゃと!?馬鹿にしおってェ~~!!」
「答えてくれりゃあロジャーについて詳しく教えてやる」
「二十六!!」
「グララララ!」
もうここまでくれば正解は出たようなものだ。"見聞色"で探りを入れてみても、嘘を言っているような気配も感じられない。寧ろ、見ればわかるだろう?何言ってんだおまえ?と言わんばかりの自信満々な感情が読み取れる。幼女達の一族では、二十六歳はまだまだケツの青い子供であるらしい。
こうまで状況証拠が揃ったとなれば、最早疑いようもないだろう。"白ひげ"は確信を持ちつつ、未だ驚いたまま固まっている息子達にも分かるように、続けてサクヤへと問い掛ける。
「どうやら間違いなさそうだな……おい
「そ、そうじゃ!!
「ああ、お前の父親から聞いた。母親がウズメって女だって事もな」
「お、おォ~~~~!!じゃ、じゃあ──ッ!」
まさか外界に自分の存在を知っていて、偉大なる父は当然としても、まさか母の名前まで知っている者がいるとは思ってもいなかった。サクヤは只々驚く事しか出来ず、この男なら父の行方を知っているのではないかと、興奮冷めやらぬ中そう思い至る。
男は軟弱で子種を吐き出すしか能のない弱者という、
もし叶うならば、一目だけでも見てみたい。その願いは、サクヤを始めとした"ロジャー海賊団"を父に持つ子供達全員が抱いている願いでもある。
あと一歩。
目の前の男は、きっと父の居場所を知っている。行方を問う言葉を投げ掛けさえすれば、父が何処にいるのかが判明する。そう確信したサクヤは意を決して、"白ひげ"に父の居場所を問うべく口を開いた。
「ち、父上は!父上は今何処におるのじゃ!?知っておるのじゃろう!?教えてくれ!
………………………………………………………………………えっ?」
だが戻ってきた返事は、サクヤが最もあり得ない可能性だと除外していた言葉であった。
◇
「……さて、やるかね」
船を降りて海岸に上陸したウズメはまず真っ先にサクヤの慣れ親しんだ気配と、先客の実力及び人数を把握するべく、"見聞色"で島全体を覆い尽くして隅々まで調べ上げることから始めた。
「なかなか骨のありそうな男共が居やがるな……」
残念ながらサクヤの気配は感じられなかったが、島の中央に複数の強い気配が纏まっているのを感知した。そして驚いた事に、その内の二人は自身に匹敵乃至凌駕する程の実力を持っている事までも判明したのである。この事実に、ウズメは警戒心を強めていく。すぐ傍の密林にも何人か隠れているようだが、特に強い気配もしなかった為、ウズメは無視する事にした。
「は、はなせェ~~!話が違うじゃねェか!!」
「えェ~~?嘘は言ってないわよ、『解放させてやる』って言ったじゃない♡」
「フザけんな!そっちの意味での解放じゃねェ!!や、やめ───あああぁぁぁ~~~ッ♡♡♡」
上陸するや否や、ここぞとばかりに逃げ出そうとした男だったが、逃走劇は僅か数秒で呆気無く終わりを告げた。その場で服を引ん剝かれスッポンポンにされた男の姿は、小麦色に焼けた裸体を惜し気も無く晒した女達に押し倒され、あっという間に見えなくなっていく。
密林の茂みに隠れてコソコソと様子を窺っていた"赤髪海賊団"の船員達は、その一部始終を見て盛大にドン引きしていた。確かに傍から見れば羨ましいとも思える場面だが、明らかに嫌がっている男の態度を顧みると、とてもそうは思えなかったのだ。
あれは多分捕まったら最後、死ぬまで搾り取られる奴だ。
「お、おいどうすりゃあ良いんだ?このまま監視すんのか?」
「それしかねェだろ!お頭達が来るまで見張ってるんだ!」
「さっきの男みてェに襲われたらどうすんだよッ!?」
「そ、そんときゃあ……出すもん出して往生するか……?」
アラバスタ王国最速の動物と言われる"超カルガモ部隊"に負けずとも劣らない速度で、"赤髪海賊団"の船員達がすたこらさっさと逃げていく。恐らく逃げた男達は下っ端なのだろう、行き先は島の中心部のようで、自分達では敵わないと見て中心部に居る強い男達に助けを請いに行ったと思われる。
「族長様~、追わなくて良いの?」
「ほっとけ。船はアタイ等が抑えてんだ、どの道逃げられやしねェ」
向こうの男連中が何かしらのアクションを見せるまで、ウズメは一先ず夜営の準備をしておけと女達に命令し、男達が乗ってきたであろう二隻の船の方へ歩いていく。
船首に竜を象ったキャラベル船。名は"レッド・フォース号"……"赤髪海賊団"の船である。
「……アタイの干渉を突っぱねやがったのはお前で二隻目だよ」
先程の"百獣海賊団"の船は問題なく破壊し海に沈める事が出来たのだが、この船を破壊する事は叶わなかった。二十六年前のロジャーの時もそうだった。何か良く分からない力に"フネフネの実"の干渉を妨害されて、結局引っ張る事しか出来なかったのだ。
(確か…おでんとか言う益荒男が面白れェ話をしてたな…)
二十六年前。出航前夜の宴の場でその話をしたら、一人で数十人の女の相手をした光月おでんという男が面白い話をしていたのを思い出す。
『大切にされた物や道具には神が宿るって話だ。"オーロ・ジャクソン号"もそうなんじゃねェか?』
その話を聞いた時、ウズメは馬鹿馬鹿しいと言って聞く耳を持たなかったが、流石に一度ならず二度までも破壊出来ない船に遭遇したとなれば、否が応でも認めざるを得ないだろう。
「いざとなりゃあ人質にしようと思ってたが、しょうがねェか……んで問題はこいつなんだよなァ………」
ウズメは"レッド・フォース号"から視線を移動させ、傍らにプカプカと浮かぶ物体を見る。
何処からどう見ても棺である。
否、正確に言えば"棺を模した小舟"が正しいかもしれない。
帆は黒く、
「………ダメだな、ちっとも反応しやがらねェ」
名前から察する通り、"フネフネの実"は船に関する事ならば大抵の事は何でも出来る。破壊するのも海に沈めるのも解体するのも動かすのも全てが自由自在なのだ。流石に宙に浮かせるのは不可能だが。
しかしそれを発揮する為には、能力者本人がこれは"船"だと強く認識しておかなくてはならない。ほんの少しでも、『いや、これは船じゃないだろ棺だろ』と思ってしまえば、"フネフネの実"は途端にそっぽを向いて一切何も反応しなくなってしまうのだ。
"フネフネの実"唯一の明確な弱点だと言えるが、実際のところ今回のような特異な船と遭遇すること自体稀有なので、あまり気にする必要は無いと考えても良いかもしれないが。
「族長様~~男達がこっちに向かってきてるよ」
「あァ分かった…さてどんな男共が出てくるかねェ」
◇
時刻は黄昏れ時に差し掛かる。
干乾びて骸を晒すスッポンポン男さえ居なければ、一枚の写真に収めて額縁に入れて飾りたい程に、茜色に染まった美しい砂浜が広がっている。その砂浜ではサクヤと同い年の複数の幼女達が砂遊びをして遊んでおり、母親らしき女達の指導の元、精魂込めて作ったであろう立派なオブジェを見て満足気に頬を染めていた。
茜色に染まった美しい砂浜に、黒光りする立派な砂の男根がそそり勃つ。
「「「「子供になんてもん作らせてんだてめェら!!!?」」」」
砂浜へぞろぞろと姿を現した"赤髪海賊団"の面々が、条件反射的に総ツッコミを入れる。その声に反応して、幼女達の砂遊びを見守っていた女達が"赤髪海賊団"の前に集まってくる。幼女達は砂遊びの手を止めて、興味深そうに成り行きを見守っている。
「あのドレッドヘアーの男、私好みかも♡」
「私はオールバックの男かなぁ…♡」
「あの入れ墨グラサンはオレが貰うぜッ!」
「じゃ~~……ウチはお肉食べてる子にしよっと♡」
「……本当に男とヤる事しか考えてねェんだな」
「だから言っただろうが…ッ!」
集まってきた女達が自分達を舌なめずりしながら品定めしているのを見て、ベックマンは苦虫を噛み潰したような顏でそう口にした。道中でシャンクスから件の
「よし行けベックマン!お前の自慢の頭脳で女達を追っ払えッ!」
「分かった!分かったから押すなシャンクスッ!」
女たちの前にグイグイと己の右腕である副船長ベン・ベックマンを、まるで生贄にでも捧げるかのように残った己の右腕で押し出していく。それでもベックマンの背後にピッタリと張り付いて着いてきているところを見ると、一応は一蓮托生の思いを抱いているのだろう。
「……?──アンタが船長か?」
シャンクスに押されながら前に出て来たベックマンにウズメが問い掛けた。
「あァ~~…いやおれは船長じゃねェんだが…」
予想していた男とは違う男が出て来た事に、ウズメは訝しげにベックマンに視線を注ぐ。この男も相当強いようだが、それでも先ほど感知した二人には及ばない。ウズメは男の背後に引っ付いてコソコソと此方を覗いているシャンクスに視線を向けた。
(…何で隠れてんだ?)
二人の内の一人がこの男であるのは間違いない。もう一人は集団の隅の方で腕を組み、射殺すような視線で此方を観察している。男連中から一歩離れて成り行きを静観しているところを見ると、恐らくはあの男が薄気味悪い小舟の持ち主なのだろう。
(……あの頃とちっとも変わってねェな、歳取らねェのか?)
二十六年も経過していれば顔の一つ位忘れていても不思議ではないのだが、シャンクスの脳裏に刻み込まれた
しかし、及び腰ながらも
「それでアンタらはどうしてこの島に?見て分かる通り、この島には何もねェが…………」
「娘を探していてな、あっちの子供達と同じぐらいの背丈のアタイの娘さ。この島に上陸してんじゃないかと思ったんだが…見てねェか?」
「いや、見てねェな…此処数日はこの島に滞在しているが、子供が流れ着いたって報告も受けてねェ」
「…嘘はついてねェみたいだな」
今にも男に飛び掛かりそうにウズウズしている女達を抑えつつ、ウズメはベックマンから極々平和的な方法で情報を引き出すことにした。事前に"見聞色"で実力を測っていたからある程度把握出来ていたが、実際にこうして相対すると少しばかり上方修正が必要だと認識を改めたからだ。
この男達は強い。
ウズメとしても負けるつもりは毛頭ないが、それでも戦闘に発展すれば相応の被害を受けるのは間違いないだろう。もしそうなれば、最早娘を探すどころの話ではなくなってしまう。あくまで優先事項はサクヤの確保にあり、そのついでに女達にガス抜きの為に"男漁り"をさせているだけに過ぎないのである。
(記憶を読み取ったのか…?いやそうだとしたらシャンクスに反応しねェのはおかしい…感情の機微を読み取って嘘かどうか見抜いたってところか)
対してベックマンも、冷静にこの状況を分析していた。
シャンクスの話では、二十六年前は"海賊王"に完敗していたとのことだが、それでも真正面から殴り合って"海賊王"にかすり傷程度の傷を負わせていたと言う。その時点でとんでもない化け物だと断言出来るが、二十六年経った現在、どのぐらいの成長を遂げているか未知数…少なくとも"四皇"と同格と見て間違いないのは確かだ。
(……敵対するのは得策じゃねェな)
"見聞色"で見る限り、他の女達もかなりの実力者であることが窺える。"赤髪海賊団"の幹部には少々劣るようだが、末端の船員まで含めるとなると平均アベレージは向こうの方が上。"覇気"も当然の如く習得していると見て良いだろう、幼女達が造り上げた例の黒光りする砂のオブジェ…驚いたことに"武装色"でコーティングされているのだ。
幼女達で相当なレベルの"武装色"を習得しているのだ、指導する立場である女達の"覇気"のレベルの高さも相当なものだろう。波に攫われても平然と聳え立つ黒光りする砂の男根がそれを如実に物語っている。
「………なァ娘を探してるって言ってたが…そりゃァもしかしてロジャー船長の娘か?」
「ん?お前ロジャーを知ってんのか?」
恐る恐ると言った様子でシャンクスが前に出る。ウズメ本人が女達を抑えていると分かったからか、相変わらず及び腰のままではあるが、それでも船長としての責務を全うする為に勇気を振り絞って前に出る。
「…あァ、二十六年前の時におれも乗ってたからな……」
「んんんん??言われてみりゃあその赤髪…見た記憶があるな」
正面に立つシャンクスをまじまじと見つめるウズメ。しかし記憶の中の二十六年前の"ロジャー海賊団"の面々とシャンクスを見比べていくが、なかなか一致する男が出てこない。
「…ん?あれアンタ……あの時の子じゃないかい?」
「──げっ………」
そうして思い出そうと頭を悩ませていたウズメの後方から、シャンクスの事を思い出したであろう女が声を掛ける。
「あらあらまぁまぁ…随分と大きくなっちゃって………………時ってのは残酷だわねェ」
「それはてめェだけだ!!!」
「おォ~~サギリの相手してたチビッ子か!?大きくなったから分かんなかったぜ!」
なるほどこりゃ分からん訳だと、ウズメは納得する。当時のシャンクスはまだ小さく、成長期を迎える前の年頃だったのだ。左目に走る三本の傷、無精髭、一端の男としての貫禄と風格を備えた今のシャンクスと比べても、分からないのも無理はない。
当時、シャンクスを犯し尽くしたサギリと言う女でも思い出すのに時間が掛かったのだ。"赤髪海賊団"が砂浜に姿を見せた時に、ざっと観察して自分好みの男が見つからなくて興味を失い見向きもしなくなったのが理由とかではない。多分。
「ククリ~!こっちに来なッ!」
小さい頃のシャンクスにトラウマを刻み込んだサギリと言う女が、複数いる幼女達の中から一人の幼女を呼ぶ。
「…………ま、まさか」
その幼女の正体に心当たりがありすぎるシャンクスが、顔を引き攣らせながら一歩二歩と後退る。名前を呼ばれ、此方に走ってくる幼女の特徴的な赤い髪、顔立ちも心なしか自分に似ているような気さえする。こうも外見的特徴が一致していると、最早疑いようも無い。シャンクスは幼女が走ってくる光景を只々眺めている事しか出来ない。
「おい、あのチビッ子もしかして………」
「あァ…こりゃァたまげたぜ……」
「母親似だが…お頭の面影も少しあるな……」
「髪だけは見事にお頭の遺伝子に染まってやがる……」
「呼んだかオフクロ!!」
サギリと言う女の前に立ち止まった幼女がキラキラとした瞳でシャンクスを見上げている。自分と同じ赤い髪の男に興味津々な御様子だ。わざわざ母が呼んだということは、間違いなくこの男は自分に関係のある男、それを直感で悟った幼女の心は期待に満ち溢れていた。
そして、決定的な一言が、サギリの口から発せられた。
「アンタの子だよ!!」
「そうだと思ったよ!!!」
一方その頃の麦わらの一味は…
・ウィスキーピークでゾロがバロックワークス相手に百人斬りを達成する。
・ウィスキーピークでルフィとゾロが本気の勝負をする。巻き込まれてウィスキーピークが崩壊。
・ウィスキーピークでビビが麦わらの一味に一時加わる。←今ココ。