あとタイトル変えようかなって考えてたり
あとあと前話を少し修正してたり
「沈められた軍艦は……計十九隻!!犠牲となった海兵は千人強……!!極めて危険な存在です!」
「………」
"白ひげ"と"赤髪"の接触に備え、少なくない数の海兵達が"新世界"へ向かい警戒を強めているその一方。普段の喧騒が嘘のような静けさに包まれた海軍本部マリンフォードではとある会議が行われていた。
参加者はセンゴク元帥と海軍大参謀おつる。そして、世界中のありとあらゆる情報を搔き集め分析し、それを基に対策を講じる役割を持つ情報分析班の面々。
「現在"楽園"で暴れ回っているどのルーキーよりも低い額ではありますが、初頭手配の時点で比べれば誰よりも上…!!それになにより、他の海賊と群れようとしない"赤髪"が行動を共にしている事実を加味した上での額です!!」
つい先程完成したばかりの手配書が会議参加者の前に置かれていく。写真には黒光りする一本角が特徴的な女の顔。
「ガープ中将に確認して頂いたところ、二十六年前に一度姿を現した女で間違いないとのこと。名は──ウズメ」
「部下の女達も手強いと報告を受けています。此方も情報が揃い次第、順次危険度の高い者に懸賞金を──……」
ウズメ。"海賊王"の娘を産んだ可能性が最も高い女。
「………」
判断材料が"海賊王"と"
すぐさま事実確認、及び事実であった場合には可及的速やかに殲滅を目的とする艦隊が編成される。その戦力はバスターコールで収集される艦隊を優に凌駕する程の大艦隊であり、"海賊王"の血筋を必ずこの世から抹消せんとする海軍の決意の表れでもあった。
これで一安心、誰もがそう思っていたに違いない。当時の海軍の総戦力の内の、実に一割に近い戦力が差し向けられたのだ。そう思ってしまうのも無理は無いだろう。だが、それだけの戦力でありながら、結果的に誰一人として無事に帰還出来た者は居なかった。
『……ぜ……いん食われ……た……♡』
それが最期の通信で、最後に報告された言葉であった。
『………致し方なし。嵐の中から出て来ぬなら……"鬼"共はそのまま眠らせて置く他あるまい』
苦渋の決断であったのは言うまでもない。有象無象の海賊達と"海賊王"の遺児。どちらを優先するかなど秤に掛けるまでも無く分かり切った答えだろう。だが、女達を守るように存在する嵐が前者へと秤を強引に傾けさせている。軍艦数百隻を瞬く間に冷たい海の底へ引き摺り込んだ嵐が、最大の障壁となって侵入を阻んでいるのだ。
それだけではない。
仮に"海賊王"のように運よく突破し、侵入出来たとしても、その先に待ち受けるのはこれまた船を一方的に破壊できる能力者──"船壊のウズメ"本人という悪夢。連日、再度艦隊を派遣するか否かの議論が交わされたが、最終的に世界政府最高権力"五老星"が出した結論は──触らぬ"鬼"に祟りなし。
事実上の敗北宣言と言えよう。
以降、下手に刺激しないように必要最低限の監視任務が設けられたが、二十六年という月日は一度も姿を見せない監視対象を監視する任務が形骸化するには十分な期間であった。次第に真面目に監視任務に就く海兵は姿を消し、いつしかその監視任務は格好のサボり場だという認識にすり替わってしまう。
それから二十六年後。
こうしてウズメ達は海軍に察知されぬまま外界へ踏み入り、"赤髪"と接触したのである。勿論、碌に監視任務に就かずウズメ達を見逃してしまった海兵達は、こっぴどく叱られた上に減給、降格処分を受けたのは言うまでもない。
「"船壊"の額は問題ない、それで発行してくれ」
「了解しました!」
「あァそれと………」
「??」
「単独行動している一本角の女の目撃情報が無いか洗い出せ。年は二十代半ば………"船壊"の娘だ」
「ということは……まさか……!!」
「まだ確証は得られていないが、その可能性は非常に高い。…混乱を避ける為、此処での話はくれぐれも他言無用だ」
「りょ、了解しました!!!」
情報の重要さを何よりも理解している彼等なら情報漏洩の心配は無いだろう。ぞろぞろと部屋から退出していく情報分析班を見送ったのち、センゴクはおつるへと向き直る。
「……そろそろか?おつるさん」
「あぁ、"レッド・フォース号"の足の早さを考えたらそろそろだね」
最早"赤髪"と"白ひげ"の接触は止められない。"四皇"同士の接触は過去何度か発生しているが、その度に多大な影響をこの世に齎している、勿論悪い方向にだ。今回の接触も、何かしらの悪影響を世界に与えるのは必至だと思われる。
「……来たね」
どたどたと慌ただしく走る足音が徐々に大きくなり、センゴク達のいる部屋の前でピタリと鳴り止む。その直後、間髪入れず扉が豪快に開け放たれた。
「失礼しますセンゴク元帥ッ!!!"赤髪"と"白ひげ"がとうとう接触をッ……!!!」
「………何が起きても対応出来るよう厳戒態勢で監視を続けろ」
「了解しましたッ!!あ、センゴク元帥、もう一つご報告が!!」
「まだあるのかァ!?」
「ガープ中将の船がウォーターセブン方面へ向かっているのを目撃したと復興作業中のエニエス・ロビーから報告が……!!」
「~~~あ、あのバカ者がァ────!!!!!!!」
◇
数十隻もの海賊船が二隻の船を招き入れようと進路を譲っていく。誘導するように形成されていく進路の先には、島の入り江に建設された巨大な港の姿。その中には一際大きな造船所があり、開け放たれたままの扉からウズメ達を覗くのは白い巨体が眩しい"モビー・ディック号"だ。
「……さて、バカ娘は何処にいるのかね」
港には数え切れない程の船が停泊しており、黒い"モビー・ディック号"の姿も複数見受けられる。目視出来る範囲に娘の姿は見られないが、"見聞色"で島全体を隈なく調べれば何処に居るかは直ぐに判るだろう。
ウズメはゆっくりと眼を閉じ、"見聞色"を展開した。
(………何だよ居ねェじゃねェか)
シャンクスの部下の新入りからは、娘の特徴にピタリと一致する幼子が"白ひげ"の肩に乗っていたと聞いている。だが、どういう訳か娘の慣れ親しんだ気配は感じられない、既に立ち去った後なのだろうか。
どうやら、少々遅かったらしい。入れ違いになってしまったようだ。
「ま、あのジジイに聞きゃァ何処に行ったか分かるか」
"モビー・ディック号"の前で仁王立ちする貫禄のある男とウズメの視線が交差する。そして次の瞬間、ウズメ達だけに向けられた指向性を持つ"覇王色"の覇気が襲い掛かる。
(──!!)
初めて見る物ばかりではしゃぎ回っていた子供達が一瞬驚いた顔を見せたが、意識を失うまでには至っていない。ウズメも女達も何食わぬ顔で平然と佇む様子を見て、白ひげがにやりと笑う。どうやら、自身の前に立つだけの資格はあるとウズメ達を認めたらしい。その後はゆっくりと視線を移動させ、先に会談予定だった"赤髪"へと向き直る。
(へへっイイ男だなアイツ)
衰え知らずな鋼の肉体。全身から迸る覇気。どれも魅力に溢れていてイイ男だ。ロジャーより早く出会っていれば、産み落とした娘はこの男の娘だったかもしれないなと思う程に。そんな事を考えながら、未だに男の品定めに夢中になっている女達を急かして下船の準備を進めさせるウズメであった。
「やりやがった!!戦争か!?」
「そりゃしねェつってたろ、お頭は……」
港に降り立った場所のすぐ傍で会談の様子を眺めていた"赤髪"海賊団の幹部の会話が聞こえてくる。どうやら、"赤髪"と"白ひげ"の会談は決裂という形で終わりを告げたらしい。激突した二人の"覇王色"によって天が割れ、周囲一帯に暴風が吹き荒れる。今の行為は会談の結果を分かりやすく内外に知らしめる為のものだろう。
刀を腰に収めながらシャンクスがウズメ達の元へ戻ってくる。交渉が決裂したからか、心なしか殺気を滲ませている。
「……派手にやったな、もう良いのか?」
「ああ、おれの目的は終わったよ。ま、見て分かる通り決裂しちまったけどな」
「んじゃ、次はアタイの番だな」
「なァ、おれも聞いてて良いか?」
「??──アタイは別に構わねェよ」
「ありがとよ、じゃあ行こうぜ…白ひげも待ちきれねェ様子だしな」
己の獲物を地面に突き刺し、腕を組んで仁王立ちする白ひげが二人に視線を向けている。彼自身も何かしら話をしたい様子なのだと見受けられるが、その内容は十中八九サクヤに関する内容だろう。それに、全ての隊長達が集結している中で唯一見られない一番隊隊長の姿が無い事も関係していそうだ。
「グララララ………おめェがサクヤの母親か」
「アタイの娘が世話ァ掛けたようだね……ウズメってんだ、宜しく頼むよ」
「気にしちゃいねェ、ガキは暴れてる方が可愛げがあるってもんだグラララ!!」
大きく笑いながら、"白ひげ"は自身の背後で顔を覗かせる"モビー・ディック号"を見上げた。視線につられウズメとシャンクスも白い巨体を視界に収めると、よくよく観察すれば細かな傷が至る所に刻まれているのが分かる。"白ひげ"の口ぶりから察するに、恐らくサクヤが暴れた結果付けてしまったものだろう。
「……理由は大体想像つくが…ロジャーが既に死んでることでも伝えたか?」
「なんだおめェ知ってたのか?」
「医者の爺さんと…本人の口から余命一年って聞いていたからね」
「サクヤの奴にゃァ伝えなかったんだな」
「あァ~~~なかなか言い出せなくってよ………いやァ悪かったね」
初めて産み落とした愛娘の悲哀に沈む顔を見たくなかったが為に、ウズメは意図的に真実を隠してサクヤの追及を躱していたのであった。とは言っても、毎晩のように父の話を強請るサクヤに話す事と言えば、淫らに交わりあった七日間の内容か、もしくは出発前夜の宴の場での話しか無いのだが。
娘から父との情事の内容を強請るなど外界では考えられないだろうが、女達にとっては至って普通のこと。ウズメは何度も何度もロジャーとの情事を思い出しては如何に素晴らしい男であったかを、就寝前の子守唄代わりに聞かせていたのであった。
その結果がこれである。まさか闇夜に紛れ島を抜け出そうと考える程に、父に会いたいという想いが溢れていることをウズメは見抜けなかったのだ。
「正直ロジャーの話も聞きてェところだが、またの機会にしとくよ」
「そう悠長にしていられる時間はねェ、海軍の奴等もまだ監視してるしな」
「ああ、分かってる。本題に入ろう。アタイの娘は何処に行っちまった?」
"海賊王"の
「サクヤなら弟を探しに行ったぞ」
「「…………弟???」」
白ひげの放った言葉にシャンクスとウズメが疑問符を浮かべながら首を傾げた。「誰の」を付け加えない随分と勿体ぶった言い方である。
「グラララ…エースのことさ」
「あ、あいつロジャー船長の息子だったのかよ!?」
「なんだよロジャーの奴…もう一人仕込んでんじゃねェか、ホントに余命一年だったのか?」
「余命に関しちゃァおれも本人から聞いていたが…ま、余命でくたばる前に処刑されちまったからどの道関係ねェがな」
「そうか…てっきり病気で逝っちまったもんと思ってたが」
「文句の一つも言えやしねェ鮮やかな勝ち逃げしやがったぜあの野郎」
「驚いたな…エースとサクヤが血の繋がった兄妹って事になるのか…ん、いやサクヤの方が姉か?」
白ひげの話では二十四年前に海軍によって処刑されてしまったとのこと。海賊団を解散させた後は暫くの間行方をくらませていたようだが、恐らくは息子を仕込んだのもその時期だろう。その後は歴史に刻まれている通り、死に際に放った一言で世界は大海賊時代を迎える事になる。
「……──話が逸れたな、サクヤならおれの息子と一緒に今頃は楽園に入ってる頃だろうよ」
「姿が見えねェなと思っていたが…そういう事か。居たら勧誘しようと思ってたんだがな」
「息子にちょっかい掛けてんじゃねェよアホンダラ」
「なるほどね…あんたの息子は信用していいんだよな?」
「グララララ!!おれの自慢の息子だ!!そこらの海賊にゃァ負けやしねェから安心しろ!!」
「そこはおれも保証しよう。実力も申し分ねェ、楽園に居る海賊じゃあロクに太刀打ち出来ねェと思うぜ」
「……なら良いんだ。だが、声だけは聞いておきてェ」
「待ってろ、今掛けてやる」
白ひげだけなら親の贔屓目を疑っていたが、シャンクスもその息子なる人物の実力を認めているなら問題は無さそうだ。この二人を疑っている訳ではないのだろうが、やはり母親としては声だけでも直接無事を確認しておきたいところなのだ。
『………──もしもし、オヤ『んん!!!んん!!ん~~~~うめェ!!』
『ふぁふふぉ!!んん!!はふはふはふ!!!うん~まい!!』
『サクヤちゃんイイ食いっぷりだな!!飯作る甲斐があるってもんだ!!』
『おいアホコック、こっちにもメシ寄越せ』
『あァ!?てめェは其処らへんの雑草でも食ってろアホ剣士!!!』
『……"不死鳥"が何故楽園に…?それにあの子は…』
電話に出たマルコの声が掻き消されると同時に聞こえてきたのは、随分と騒がしい複数の人物達の声であった。