「父さん、この石像は何?」
「これはな、いつ誰が何のために作ったのか分からない像なんだ。」
数十億年前、一体の神により世界は創られた。その神は、後に創世神アルヴァラと崇められた。だが、その神はひとつの過ちを犯し呪神と呼ばれ禁忌とされた。その過ちとは、ある存在を生み出してしまったからだ。
災禍乃魔獣 ヴァル・テン・ダー、創世神アルヴァラによって創られた破壊の限りを尽くす獣。人の負の感情を動力としているがそれが無くても身が朽ちる事は無く恐れられた。数千年前に王国が派遣した精鋭部隊を蹂躙した後、女神ア・ウルの加護をもつ当時の王女の命と引き換えに退魔の石版に封印された。封印された退魔の石版は今も世界のどこかに眠っているらしい。
とある地下祭壇にて。
「退魔の石版に封印されし存在よ、永きその眠りから目を覚ませ。教祖アルヴァラに変わり第159代アルヴァラ教総大司教┈┈┈が命ずる。汝を拘束する忌々しい封印を打ち破りその姿を表わせ。」
ここは王都から遠く離れた辺境の地、カムル。自然豊かなこと土地では農業が盛んに行われている。辺境伯であるコーラル・リサムズは穏やかでその地のものを1番に考え市民からの信頼も絶大だ。そんなコーラルとその嫁であるイコル・ラ・リサムズの間にひとつの命が誕生した。その子の名をエルサム・リサムズ。エルサムは幼少期から剣術、魔術、学術に長けていた。その才能を大臣に見込まれ、王直属の近衛騎士団へ配属、誰もが羨むスピード出世コースに乗っていたエルサムだった。あの日までは…
現国王が信仰するア・ウル教と対立するアルヴァラ教の教徒により王宮が襲撃され、エルサムは命を落とした。それと同時に…
(俺は死んだのか。暗い、クライ、クライ。)
その男は真っ暗な空間の中、とあるものを見た。
(なんだこれは、何が見えている、誰の記憶だ。……)
男はそのまま目を閉じた。
「俺、生きてたのか。体が軽いな。」
男は状況を理解しないまま起き上がり、ベッドの横に鏡を見つける。その鏡を覗き込むと、
「誰だ、これ。俺…なのか?」
しばらくボーっとしていたが意識がハッキリしていくに連れて、おかしい事に気付く。ベッドから飛び上がり鏡に顔を擦り付ける。
「明らかに違うよな。冷静になれ、冷静にぃ。…さっぱりわからない。」
そうドタバタしていると、部屋の扉が開く。
「お目覚めになられたのですね、兵士様。お体の具合はいかがでしょう?」
「そういえば体は全く痛くない。……死んだと思ってたのに。」
「詳しい事はお師匠様に聞いてください。案内します。」