お師匠様とはどの様な人なのか、第一この女は誰なんだ。ここは何処だ、分からないことだらけだ。
「お師匠様は大賢者ロンド・ミルコスの血を継ぐものとして時に優しく、時に冷酷に影から世界の調律を図っていました。お師匠様の姿を見た事あるものは数人しか存在せず巷では神に近しいものとして崇めている人すらいますが…。」
その女が立ち止まり、仰々しい扉を開ける。すると酒の匂いがブワッと出てくる。思わず鼻を手で押えてしまう。この匂いだけでも酔ってしまいそうだ。
「おぉ〜目が覚めたかぁー!ウィッ、」
「見て分かるように、ただの酒臭ジジイですよ。」
この顔、何処かで見た事ある?様な…
しばらくすると、さっきまで酔ってよろよろだったその男が何も無かったかのように立ち上がり、
「わしの名前はドノル・ミルコス。昔は大賢者なんて呼ばれとったが今はちょっと魔術の得意な老いぼれじゃ。」
それからドノルは、つらつらと話し始めた。
ミルコスの血を継ぐものは代々、器と魂を定着させる魔術が使えてな、もちろん亡き人を生き返らせたりする訳じゃから多大な魔力を使うのじゃがな。
お主の今入っている器は、エルサムと言う地方から国王の近衛にまで上り詰めた秀才のものじゃ。
昔からエルサムの事はよく知っていての、じゃが…エルサムが死んだと聞いた。わしはすぐに転移し術を使った。だが、何かのイレギュラーでお主の魂がエルサムの器に入ってしまったという訳じゃ。
そのイレギュラーには何か理由があるとわしは睨んでおる。
「とまぁお主がその体に入っている理由はこのようなものじゃ。そこでお主に頼みたい事がある。現在アルヴァラ教の信徒が不穏な動きを見せていてな。今回の王宮襲撃にも関係があるかも知れない事じゃ。奴らの目的は恐らく……災禍乃魔獣ヴァル・テン・ダーの復活。お主にそれを止めて欲しい。」
「正直まだこの状況を理解出来た訳じゃない。けど、ドノルさんのおかげで今こうして生きていられる。その話受けさせてください。俺にどこまで出来るか分かりませんが。」
「おぉそうか!感謝する。」
ドノルは俺の方を強くバシバシと叩いた。
「来たか、待っていたぞ。信徒達よ。さぁ今ここに宣言しよう。災禍乃魔獣は今ここに復活する!さぁ儀式の準備だ、第三位階以上の者は各地に飛び暴虐の限りを尽くせ!この世界を負の感情で埋め尽くす!!」
----------------------------------------------------------------あの話から3日、俺はとうとう出発の時を迎えた。その時ドノルは1つだけ守ってほしいことがあると言ってきた。
それは、他人と干渉しすぎないこと、だ。本来なら俺は死んだ存在であるからだ。
「そうじゃ、お主の名前を聞いとらんかったの。」
「俺に名前なんてありませんよ、」
「そうじゃったのか、なら…リベリックと名乗れ。わしの大切な友人の名じゃ。」
「リベリック…ありがとうございます。それでは…行ってきます。」