「しゃらくせぇっ! アッ、ちょっ! やめてぇ!!」
コメント
:即 落 ち 2 コ マ
:弾くのうめぇと思ったけどそら無理よね
:防御系使ってないのか
:聖騎士の首飾りあるけど指定だから使えない
:防御系はレアだしソロじゃ使うだけ損
:かわいそうww
三体のゾンビから同時に放たれた
原作では呪文攻撃は防御系呪文使ったり、その効果が付与されてるアイテムを持ってないと防げない。でも、このMODではピンポイントに剣で切り裂けば無効化が可能だ。それで一撃は防いだが、残り二発はモロに食らった!
「うぉおおおおおっ!!」
しかしポケットのカードを確認してるヒマは無い! その間にも敵は攻撃してくるんだから……! 俺は急いで三体のゾンビに駆け寄り、円を描くようにしてちまちま剣で切りつける。マ〇クラのゾンビは中距離攻撃手段を持たないから、距離が開いてると呪文を撃ってくるけど。近づきさえすればバニラのように殴ってくるだけのザコだ。
何発か攻撃を受けながらも、俺は三体のゾンビを倒すことに成功した。
「はぁ、はぁ、やってくれるぜ……」
コメント
:必死で草
:これってゾンビが呪文カードドロップしたりしないの?
:しないぞ
:敵MOBはスペルカードを使ってるんじゃなくて、スペルと同じ効果の攻撃をしてくるって仕様だからドロはバニラと一緒
:何その鬼畜仕様ww
:だから残弾切れるの待っても意味ないぞ。距離開いてる限りずっと石投げてくるぞ
チラッとコメントに見えた通り、ゾンビが落としたのは腐肉だけだった。ドロンと音を立ててカード化したそれを無視して、俺は
「頼むぞぉ……」
コメント
:何割られた?
:食料系ならマシ
:金と呪文消えてたら痛いよな
:ちょっとレア割れてて欲しい自分がいるw
:最初はみんな思ってたぞ、もう見飽きたから応援してるだけだぞ
:草ァ
「金は……よし、大丈夫。何が破壊された……?」
カードが入っていたハズの空欄に何を入れていたのか思い出せない。マ〇クラの手持ち常に把握するのって無理くない?
「…………一つは焼き豚だな、オーケー。あと一つ……あっ」
コメント
:飯ならまぁ
:レアカード割られた?
:言うてフリーにそんな痛いのあったか?
「"孤独なサファイヤ"だ、Bランク指定ポケットカードの……」
俺に指定された9種のカードには入ってないけど、全100種の指定される候補カードの一枚だ。ランクは高くないが、基本的に指定ポケットカードは高く売れる。ちょっともったいないな……。と思っていたら
コメント
:孤独なサファイヤwww
:ええやん割れてww
:そうなの?どんな効果?
:ざっくり言うと、これ持ってるやつは富豪になれる代わりに一生一人で過ごすってアイテム。
:草
:だからコラボ出来なかったんだな!
:良かったやんw
「そんな理由でボッチしててたまるか!! もしそうならこのMOD呪いのゲームやんけ!!」
俺が嘆けば嘆くほどコメント欄には草が生え散らかしていく。ちくしょー、これで全額投げて宝くじした後、一坪の海岸線出なかったら手のひら返すんだぞこいつら。サファイヤ売った金で出たかもしれないのになぁって具合に。
「もういい、ちゃっちゃかショップ行こう。サファイヤが割れたってことは俺は孤独じゃなくなる。つまりゲームクリアしたお祝いにコラボのお誘いが来るってワケよ!!」
コメント
:空元気いいぞ~
:スーパーポジティブで草
:ポジティブってか現実逃避
視聴者がうるさいがどんな煽りも華麗にスルーし、俺は目的地のカードショップにたどり着いた。一直線に店員の元へ向かって、まずは1パック購入する。さぁガチャの時間だぜ……!
「よっしゃいくぞぉ!! お
コメント
:殺す気ですか?w
:ちょっと悪いこと起きたら全部お前のせいにするからな
:次の枠から視聴者減ってたら察しろ
:みんなちゃんと分けてて草
:や さ い せ い か つ
「1パック目、ドロー! キタァアア
コメント
:展開が速い
:そんなポンポンでんのかw
:ロトリー自体はランクGの低レアだから
:まとめて買ったほうが効率良くない?
:良くない。カード化限度枚数の関係で1パックずつ買って1枚ずつ使ったほうが当たる確率高い
:めんどくさそうやね
「……んー、ゴミ!!」
コメント
:お口悪いですよ!
:実際ゴミ
:他の呪文は悪くないけど。移動系は重要
ロトリーで当たったカードは使い道のないアイテムだった。換金するのも面倒なレベルなのでその辺に放っておく。しばらくしたら勝手にアイテム化(マ〇クラのドロップアイテムと同じ
「まぁまぁまぁ。まだ一回目だからね、金はたんまりある! どんどんいくぞぉ!!」
コメント
:サファイヤパイセン仕事してたんやな
:がんばえー
:今回こそ出て欲しい
:もう爆死芸見飽きました
その後、俺は金にものを言わせてパックを購入し、
「ドロー! よし来た、
30分、1時間……2時間…………。大量購入して一気に使用するという時短が出来ないので、時間だけがどんどん過ぎていく。完全に爆死動画の様相を呈していた。
「
コメント
:これはひどい
:知ってたけどねww
:最初からこうなると思ってました
:意外でも何でもない
:だからあれほどリスタートしろと
こういう配信は何回かやってるので、リスナーも慣れたものだが……やはりここまで応援してもらった以上、クリアするところを見て欲しいのだ。諦められねぇ……!
「最後の金だ、ドロー……!」
コメント
:ラスト1パックかぁ
:そろそろ配信も終了ですかね
:今日も良い空元気だった
:誰も期待してなくて草生えますわ
:お?
:二枚あるやんw
:ロトリー出ないまであったのにこれはラッキー
最後の1パックから
「よ……よし行くぜ。お前ら、出がらしになるまで運を寄こせ!!」
コメント
:声震えてるww
:しょうがないにゃあ
:持ってけ つ運
:はい つウン
:ウンを押し付けてやるなよw
「
二枚のうち一枚目を発動すると、それは……。
コメント
:ん?
:来たか?
:いやハズレだな
:えっ、ちょっとw
:まてまてまてww
:これはwww
チャット欄がざわめき出す。俺が
「り、リスキーダイス……!!」
コメント
:やるしかないww
:これは持ってる間違いない
:なにこれ?
:20面ダイス。一面が大凶で他は大吉。大吉が出るとめっちゃ良いことが起こる。大凶出すと高確率で死ぬ。
:草草の草
:つまりどういうことだってばよ
:リスキーダイスで大吉出す→ロトリー使う→一坪の海岸線が当たる
:そういうことかww
:厳密に言うとそうはならんけど、願掛けにはならぁねw
:確かにアツいな
「いや分かるけど! 俺もワンチャンあると思ったけどさぁ!!」
原作だとこのコンボじゃランクAが上限なんだが、最後の一回、ゲン担ぎに投げるのはありかも……? とは思わんでもないけど!
このゲーム、原作リスペクトでハードコアだ。つまり、プレイヤーに
ニ十回に十九回大当たりが出ると言えば聞こえはいいが、ニ十回に一回は死ぬ可能性がある、まさに
だが俺の葛藤も露知らず、コメントは大いに盛り上がっていた。
コメント
:ハイハイハイハイ!
:ヒビキくんの!ちょっといいとこ見てみたい!
:あったなぁそんなネタ
:もう一回!もう一回!
:ハイハイハイハイもう一回!
「うわぁああああああっ!!」
コメント
:ノリノリで草
:これもう振るやんww
:これは流行る
:切り抜き確定
:ついにコラボしたい切り抜き以外の切り抜きが……?
ノリのいいリスナーのおかげで原作再現でき、興が乗ってしまった俺は決心した。これで決めたるでぇ……!
「っしゃいくぞオラァ! リスキーダイスをゲイン! てぇいっ、コロコロコロ! ……よぉし大吉ィ!!」
コメント
:セルフSEは草
:まぁここはね
:言うて19/20で当たるから
:さぁこっからですよ
ごくりと喉を鳴らし、最後の
「
コメント
:どうだ?
:ハズレだったら連番1ズレであって欲しい
:分かるww
:そこまで行ったら逆に愛されてるww
思わず閉じていた目を恐る恐る開き、俺はそのカードを凝視した。変身したカードは……?
コメント
:おぉ
:マジか
:ファー↑w
:U C
「……でっ。でっででで出たァアアアアア!!」
コメント
:うっさ
:うっさ
:鼓膜返して
:あれ、急に音聞こえなくなった
:イヤホンなのにリビングの家族全員に凝視されてんだが
チャットがうるさいが知らん! キタ! 一坪の海岸線!! 指定ポケットカード9種類揃ったぞぉおお!!
「クリアだぁああああ!!」
震える手でマウスを操作し、俺は手元の"一坪の海岸線"を最後の指定ポケットに収めた。その瞬間画面が暗転し、クリアムービーが流れ出す。お、終わった……!! G・IMODのソロ動画は割と動画サイトに上がってるけど、No2含めてのクリアは多分俺が初だ、これは嬉しい……!!
コメント
:おめでとう
:素直に称えよう
:よくやったよマジでww
:全枠見届けた俺たちも称えられるべき
:ひびきが必死こいてドローロトリーするの眺めるだけの配信だからw
:こんな変わり映えしない枠も終わると思えば寂しいもんだ
「やぁありがとう、ホントに。お付き合いいただき感謝! ライバーのみんなのおかげで何とかここまで来れました!」
コメント
:思い出したようにファンネーム使うな
:そういやそんなんでしたね
:なんでライバー?
:リスナーをライバー扱いして一人でもコラボをしていると言い張っていた時代があってだな
:草
:泣ける;;
はっはっは、今は何と言われようが気にならない。清々しい気分だ……。まぁこのMODはマルチで呪文バトルするのが醍醐味であって、クリアしたところで特にめぼしい特典は無い。そのワールドで唯一
「長かったねぇ……。やぁでもイケるもんだな!」
コメント
:条件だけなら二週間前から同じだったぞ
:褒めてやらんこともない
:金貯めるのも楽じゃないからなぁ……
:ゾンビスポーンぶち当たった時の絶望感ねw
:投石のエフェクトで画面埋まるからな
原作に登場するキャラをスキンで再現したキャラが登場し、ちょっと喋っては消えていくエンディングを眺めながら、俺はリスナーとこのゲームの思い出を語り合った。感慨深いような寂しいような。そして次はなんのゲームやろうかなぁという、久しぶりの切実な悩みも。
ぐっと背伸びをして、いよいよムービーも終わるそんな折。
突如としてそれは訪れた。
コメント
夕張ユラ:ヒビキ先輩クリアおめでとうございます! ずっと応援してました!
:えっ
:!?
:ユラちゃん来とるw
:ずっと見てたのかw
:これは燃える(予言)
「
夕張ユラちゃん。VSの四人いる三期生のうち一人だ。彼女がコメントした通り、一応は俺の後輩ということになるけど、もちろん形だけ。事務所に入った時は共通のグループチャットで挨拶を交わしたが、その程度で特に親交は無い。なんで急に……? というか、ずっと見られてた!?
「えっと……あ、ありがとう。なんとかクリア出来たよ、うん」
コメント
:さすがに動揺が隠せない様子
:なんならリスナーも困惑してるからw
:これは歴史的瞬間ですよ
俺も、何故か同調して視聴者も困惑する中、ユラちゃんはこうコメントするのだ。
コメント
夕張ユラ:ヒビキ先輩がクリアしたら、勇気を出してお願いしようと思ってたんです!
夕張ユラ:私と、コラボしてくださいっ!!
:コラボ依頼キターー!!
:体育館裏で頭を下げて告白する夕張後輩見えました
:ぐぅわかる
:おい固まってないでなんか言えw
:気持ちは分かるけどねww
:さっきのスーパーポジティブフラグだったじゃんw
:ユラちゃん待ちぼうけやぞ
夕張ユラ:どきどき……
:意外に図太いなこの娘
:それが良い
思わぬ展開に頭が真っ白になった俺は、僅かに残った思考回路をフル活動させてなんとか一言答えた。
「……か、考えさせてくだしゃい」
直後、大量の罵倒コメントが流れたのは言うまでもないね! 傷ついた様子もなく、ユラちゃんが「良いお返事期待してますっ」と返してくれたのが救いだった。