「あ~あ、どうせなら勝ちたかったな」
頭の後ろに手を当て、孫策は軽く嘆いてみせる。
その頭と手越しに、海の深さを称えた瞳が中央を突破してきた左近を見返していた。
「で、どうする? 追ってくる?」
「……やめておきましょう。不慮の奇跡をアテにする以外で、あんたらを討てる気がしない」
「そ? じゃあ遠慮なく。……そっちも、せいぜい気をつけなさい」
そう言って指示を飛ばすや、神速をもって殿軍の孫策たちは引き上げていく。
まさか嫡子が最後尾にて任ずる方も任ずる報だが、あっさりと立場を差し置いてそれを受ける方も大概である。
が、無鉄砲さや奔放な家風がどうにも嫌いにはなれない。戦となれば容赦はしないが、それは別として絶対的な敵と見なせない。
もし同性同士であったのなら、さぞ気の合う友垣となれたであろうに。
退かせた勝頼と、一瞬目が合った。
そちらとは、言葉を交わさなかった。一瞬未練気な青年の目をしたが、左近は首を振ってそれを袖とした。
敵軍の姿が遠くとなった。武と熱の塊が退いていく。
体温が下がったかのような、逆に恐怖から解放されて上がったかのような、熱病に近い名状しがたい感覚が左近を襲っていた。
が、安堵の息を漏らし肩を力を脱いている暇はなく、後事を憂えるのが軍師の仕事である。
特に、違和感のようなものを肌身で感じている、この状況は特に。
「左近」
シグルドが名を呼ぶ。戦巧者たる彼もまた、同じ感覚を抱いたらしい。
左近は頷いて大剣を担いだ。
「えぇ、どうにも行儀が良すぎる。むやみに追わない方がいいでしょう」
と言うよりも、追撃態勢の整う状況でもあるまい。
すっかり牙の抜け落ちたまま、自分を取り戻せていない焔耶を盗み見て、そう判断した。
それに、あの最後の孫策の言葉。
『
あれは、どういう意味であったのか。単なる悔恨から発せられたものだったのか。
それにしては語調はあまりに軽く、そして……まるで
思いを巡らせる左近がふと持ち上げた視線の先、はるか向こうの周瑜、孫権の旗が入った。
ただ風に煽られるままに揺れ、不動の構え。
だが瞬間、雷で打たれたかのような衝撃が左近を襲い、その頭脳は刺激を得て高速で回り始めた。
張郃が、
「灘さん、孫権と周瑜は」
「いませんよ! あれ、擬兵です!」
不世出の名将と歴戦の軍師の危機感は合致した。
「やられた」
口の中で嘆く。
孫権、周瑜のことゆえ武に頼らずして何かを仕掛けてくると思って警戒していたのが、逆に仇となった。
むしろ敵は、そんなおのれらの思惑を逆用し、戦の始まる前よりすでに仕掛けていたのだ。
「撤収準備を急げ! 長沙城へ戻るぞ!」
常の飄然とした仮面をかなぐり捨て、左近は鋭く雄々しく令を下した。
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「左近、どうした? ずいぶんと早い帰城ではないか」
「えぇ、ちょっと気になることがありましてね」
主君、三成が困惑して出迎えた。
ひとまずは長沙それ自体は無事だ。楽観的な見方をすれば、敵に先んじて抑えることができたともいえるが、そうではなかった場合、状況が最悪の方向性に進んでいることが考えられた。
「変事が起こったということ、でしょうか。であれば諜者に命じましょう」
「それは退却の際に切り離した黒山の皆さんにやってもらってます」
紫苑の懸念を遮るような性急さで左近は言った。と同時に、その焦燥を自嘲する。
黒羽たちの成果を待つしかないのに、今更気だけを急いてなんとするというのか。
そも、左近の想定する『最悪』の結果であれば、事はすでに済んでいて、何もかもが手遅れになっているというのに。
「だが、どこへ飛ばしたというのだ。敵の狙いとは」
軍議の席に腰を下ろした左近は、そう尋ねた主に、
「北へ」
とのみ、短く言った。
シグルドも、紫苑もそして問うた三成自身も、それぞれの聡明さをもって敵の真の狙いを悟り得たようだった。
戦は一応の勝利で飾ったというのに、最大級の警戒態勢を解かない中で、黒羽たちは程なくして帰還した。
「……孫権軍により、
顔を青くした彼女によってもたらされたのは、その最悪中の最悪。
ただただ敵の見事さとこちらの見通しの甘さに笑うしかない凶報であった。
没キャラ紹介(半分以上冗談です)
ビッグボスの二人;MGS
そもそも大集団戦に向かないというかダンボールどうすんの
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そろそろ猿先生が死んだこと忘れるかサイボーグ化させるかして復活させそう
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やってみたら絵面がヤバかった
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恋姫がエ○ゲになっちまうー!