雷の鳴る所には雨が降る   作:秋月 了

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第十八話 再会

 飛鳥はある任務に出ていた。そこで俺は驚いた。

当初想定していたより呼吸の型の威力が上がっていた。

雷、炎、水、風、岩は勿論、雨の呼吸や日の呼吸も格段に成長していた。

特に日の呼吸は異能の鬼や下弦の鬼でも軽々頸を落とすことができるし

異形の鬼やまだそこまで人を喰っていない鬼なら頸ではなくても

人間の致死に至る部分を切れば消滅するし

そうでなくても傷の治りが極端に遅くなる事が分かった。

元々他の呼吸と違い日の呼吸は鬼に対して別格に威力を誇る。

だがここまで凄いとは思わなかった。

俺は積極的に日の呼吸を使う事に決めた。

そうすれば無惨は俺を脅威に感じてより強い鬼を差し向けるかもしれない。

日の呼吸に関して飛鳥はまだ誰にも話していない。勿論御館様にもだ。

理由は習得方法を話す事が出来ないからだ。

夢で見たと言って信じてもらえるとは到底思えないし、

頭がおかしいとか病んでいると思われて鬼殺隊から遠ざけられては本末転倒だ。

一番手っ取り早いのは雨の呼吸の指南書に一緒にかかれていたという事にするのが

納得してもらいやすいと考えて今制作中だ。

その日の任務を終えて血を抜き取り猫に預けて津次の場所に向かう。

そこは静岡の大きな街だ。そこで別の隊士二人と待ち合わせして鬼を討伐する。

待ち合わせ時間が昼時という事もあり定食屋で待ち合わせする。

鴉にここまでの案内を頼み飛鳥事前に調査をして店の前で待つ。

暫くすると遠くから見覚えがある人影が歩いてくる。

錆兎だ。隣にはもう一人いる。

 

 

 

 

 

 

飛鳥視点

 

「久しぶりだな、飛鳥。そうだ。柱昇進おめでとう」

 

「ありがとう、錆兎」

 

「そうだ、紹介するぞ。こいつは冨岡義勇。俺の同門だ」

 

「よろしく」

 

「よろしく。俺は清水飛鳥だ。飛鳥と呼んでくれ。俺も義勇と呼ぶから。

とりあえず飯でも食わないか?お前達もまだだろ?」

 

「まだだ」

 

店に入り注文を済ませる。

因みに義勇は鮭大根、錆兎と俺は天ぷらの定食を頼んだ。

食べながらこれまでの事を話す。

 

「お前達はどうしていたんだ?」

 

「俺は近畿を中心に任務だった。義勇もだ」

 

「それでなかなか会えなかったんだな。俺は東京周りから東北まで回っていたから」

 

「カナエも柱に昇進したと聞いた。俺達も焦らないとな」

 

「ああ。」

 

錆兎は気合を入れ直すように言うが義勇はどこか冷めていた。

よく言えば冷静悪く言えば何かに悩んでいて心ここにあらずといった感じだろうか?

 

「御馳走様。さて任務の話をするぞ」

 

「そうだな。たのんだ」

 

「頼む。」

 

「合流するまでにいくつか回って目撃情報を集めてみた。

それと関係者に確認して死亡した人の死亡場所と日時を確かめてきた。

鬼は複数存在するかその手の血鬼術の可能性が高い。

理由は一日に起きている事件の件数が異常だという事が主だ。

この街でこの手の事件が起き始めたのが一週間前。

それから二日から三日に一度に十件以上

旅人や捜査に来た警官後はこの街の人間の中でも男性限定で狙い

首から上を残してすべて消えるという事件が多発しているという事だ。

この街はかなり広い。たとえ飛行能力の血鬼術をもってしても

それは不可能だと判断した。二人はどう思う?」

 

「飛鳥の推測で合っていると思う。義勇は?」

 

「(俺も錆兎同様に飛鳥の意見に同意だ。だから)そう思う。」

 

「なら手分けするか?たとえ現れても協力は出来ないだろうが」

 

「鴉も含めればそれなりの捜索範囲になるだろう。鬼を見つけ次第

鴉は近場の俺達の誰かに連絡する。俺達はそれに合わせてその場に急行する感じでいいだろ」

 

「飛鳥の策でいいだろ。この人数じゃそれしかないしな」

 

「・・・」コクッ

 

「なら日没まで待とうぜ」

 

そこで義勇が立ち上がった。

 

「飛鳥一つ頼みがある」

 

「なんだ義勇?」

 

「俺と手合わせしてほしい」

 

「急にどうした?」

 

「(俺は最終選別で鬼を倒さずに合格した。殆ど気を失っていただけだ。

そんな今の俺が錆兎やお前と肩を並べていいはずがない。

だから真に鬼殺隊士として俺は二人と肩を並べたい。

だからこそ既に柱であるお前と戦えば前に進める気がする。)頼む。」

 

「なんかかなり省かれた気がするが、分かった。近くの山に昇ろう」

 

それから俺達は近くの山に向かいそこの中で開けた場所を見つけて

互いに丈夫でちょうどいい長さの木の棒を構えて向かい合う。

 

「俺が見届けさせてもらうぞ。

一本の判定は面、胴、篭手、と頸への寸止めのみとする。では始め。」

 

始めの合図と共に互いに近づき刀を振るう。

 

「(雨の呼吸 弐の型 五風十雨)」

 

義勇の突きを回避技である五風十雨で躱す。

そこからすぐに返すように呼吸なしの払い斬りが来るがそれも流れで躱す。

それでもあまり距離を話さない様に攻撃してくる。

義勇は俺が雷の呼吸を使う事を知っておそらくだが霹靂一閃を警戒しているのだろう。

距離を話してしまえば詰める速さでは霹靂一閃が一番早い。

だからこそ義勇は距離を詰めてきている。

 

「(水の呼吸 壱の型 水面斬り)」

 

「(雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷)」

 

棒を真一文字に払う攻撃を斬り上げて態勢を崩そうとする。

それでも義勇は跳ね上げられた棒をそのまま振り下ろす。

それを躱してまた攻撃を仕掛けようとしたときに

 

「(水の呼吸 拾壱ノ型 凪)」

 

「(あの技はまずい)」

 

攻撃を躱す為に下がる。

だがそこからさらに追撃をかけてきた。

 

「(水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き)」

 

水の呼吸最速の突き、これで決めるつもりだろう。

見事だ。だがそうはいかない。

霞の構えを取りその技を繰り出す。

 

「(雨の呼吸 漆ノ型 奥義 天翔ける龍の如く)」

 

高速で接近しての十五連撃。

その全てが義勇の面、頸、胴、篭手に当たる。

攻撃を受けた義勇はそこで倒れた。

 

「勝負あり。勝者、飛鳥。」

 

倒れた義勇も立ち上がる。

 

「すごかったよ。途中から完全に読まれていた。」

 

「(お前も(最後の正確に放たれたあの五連撃には全く反応出来なかった。

あれほどの攻撃はそうそう出来るものではないと思う)凄かった。」

 

「そうか。痛みはないか?」

 

「(お前が手加減してくれたから)ない。」

 

「それならよかった。」

 

義勇の顔は手合わせを始めたころと違いどこか晴れやかな雰囲気だった。

見た目は仏頂面のままだがそんな感じがした。

 

「よし。なら夜まで休め。本題はこれからなんだ。」

 

「そうだな、錆兎。これからだ。」

 

「ああ。」

 

 

俺達は休息を取りつつ夜を待った。

 

 

 

 


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