その日蝶屋敷に一人の隊士が運ばれてきた。
名前は不死川 実弥。全身傷跡だらけの男だ。
彼とはそこそこ知り合いだった。
数年前に風の呼吸の育てを尋ねた時に出会い鍛練の一環で呼吸有りの試合を行い
結果的に勝利したがかなり危ない所まで追い込まれた。
それから実弥にとって俺より強くなる事が目標になったと聞いた。
そんな彼だが今回兄弟子の粂野匡近と共に下弦の壱と遭遇。
二人で対決した。下弦の壱は退治したが実弥は片腕骨折、裂傷が数か所以上という怪我をおい、
匡近という人は即死。
実弥は全治一か月で済んだ。
完治次第実弥を風柱として新たな柱に任命されることになった。
全ての話を聞いた俺はそ実弥の元を訪れた。
「実弥」
「おう、飛鳥か。悪いな。こんなざまで」
「気にするな。それより兄弟子の事は残念だった。」
「・・・・・・俺はよォ、匡近と出会って鬼殺隊を志すようになったんだ。」
語り始める実弥。
「あいつには沢山良くしてもらった・・・沢山の物を貰った
なのにまだ、なんにも返せてねェのによォ・・・」
実弥はうつろな目で外をを見つめる。
深い哀しみと僅かな怒りを滲ませて。
「・・・なんで、なんでアイツが死ななきゃならなかったんだ・・・教えてくれよォ・・・畜生ォ・・・!!」
涙を流し、震えながら声を絞り出す。
一瞬、どう声を掛けるべきか迷う。
「実弥少し残酷な事を言うがな。力がない者は失いながら生きていくしかないんだ。
大切なものを失いたくないなら強くなるしかないんだ。」
「………………俺が弱いっていいてえのか?」
「そうだ。お前はまだまだ弱い。守りたいものを守れないほどにな。」
顔に悔しさを滲ませ、拳を握りしめる実弥。
本当は怒りで反論したいだろう、こっちに掴みかかりたいだろう。
だが、それをしない。
それは傷がまだ塞がっていないからといった理由ではない。
実弥もまた、自分自身で力不足を痛感しているのだ。
「強くなれ、【風柱】不死川実弥。今よりもっとだ」
「・・・俺には、もう・・・」
顔をうつむかせたまま意気消沈した実弥の胸倉を掴み引き寄せて叫ぶ。
「顔を上げろ不死川 実弥。確かにお前にとって粂野匡近という人物は道しるべだったんだろう。
失った者は大きい。だがそれでも失った者ばかり数えるな。ない者はない。
思い出せ。そして確認しろ。お前にはまだあるはずだ。お前の中でその意思を完全に
くじけさせていない者がいるはずだ。それを思い出せ。
お前に残っている者はなんだ?」
ハッ、とした表情をうかべる。
「玄弥。弟の玄弥がいる」
実弥の口から度々聞いていた弟の名前だ。
離れ離れになった弟を実弥は想い続けているのだ。
「そうだ。今のままではそれすら失うぞ。お前はそれでいいのか?」
「言い訳ねえ。弟の幸せは最後の希望なんだ。」
希望を折れない意志を見つけた実弥を見て少し微笑む。
「なら、やる事は決まっただろ。」
「おう・・・俺はもっと強くなる。守りてェもんを守るためになァ。」
実弥の瞳に光が宿る。
もう、大丈夫だろう。
「飛鳥。もう一つ聞いていいか?」
「ん?なんだ?」
「御館様についてだ。」
「それがどうした?」
「あァ。御館様はよォ・・・命を賭して闘う俺らの頭領に相応しい人間なのかァ?」
「そういうことか・・・」
実弥の疑問は最もなものだろう。
御館様をよく知っている人物で無ければ尚更だ。
「あの方は、俺達とは別の場所で戦っていらっしゃる」
「別の場所ォ・・・?」
「そうだ。確かに御館様は前線に立ち、刀を振るわれることは無い。かといって隊士を引き連れて
前線で指揮を執る事もない。だがな、それは鬼舞辻の呪いによって
お身体を蝕まれているからだ」
「そうか。」
「だがな、御館様はそれで何もしていないという訳ではないんだ。
あの方は当主になられてから亡くなった隊員の名前、
生い立ちを全て記憶してらっしゃるんだ」
「・・・!」
「それだけじゃない。亡くなった隊員の墓参りは毎日欠かさず、
存命の隊員の心に寄り添ってくれる。俺もそうしてもらった身の人間だ。
俺の悲しみをあの方は自分の事のように共有して下さった。
御館様は俺達にとって親の代わりなんだ。だからこそ俺達はあの方の為に命を懸けられる」
「・・・信じて、いいんだなァ?」
「ああ。」
「お前が言うなら間違いねェだろ。信じるぜ、俺はァ。」
「そうか。納得したならいい。」
話を終え、実弥が横になる。
「悪ィ。なんか眠くなってきちまった。」
「構わない。しっかり休んで傷を治せ。また次の柱合会議でな。」
「おォ。」
実弥の病室を後にする。
外でカナエが待っていた。
「悪いな。うるさくしちまった」
「気にしないで。ああしなければ実弥君は立ち直れなかったわ」
「そうかもな。それでもさ。前に進まなければならないんだと俺は思う。
それが生きてるものの務めであり、今の自分を作る過程で死んだ、いや
守れなかった人たちへの手向けになる俺は思ってる。」
「そうね。その通りだわ」
一週間後
実弥が歩けるまでに回復したタイミングまで待ち柱合会議が模様された。
いつも通りの定例会のようなものだが、今回は実弥との顔合わせも兼ねたものだろう。
「最後に・・・実弥、これを」
「・・・?これは?」
「匡近の遺書だよ。これは君に渡すべきだと思ってね」
「匡近の・・・!?」
実弥が御館様からそれを受け取り、その場で封を切る。
それを読み終えると同時に涙を流す実弥。
「匡近ァ・・・!」
「実弥、辛かっただろう?けどね、君に想いを託していった人がいることは忘れないでね。
道を共にする仲間がいることも。当然、私もそのうちの一人だからね」
「お心遣い、痛み入りまする・・・!」
震える声で礼を述べる実弥。
柱合会議を終え、それぞれがそれぞれの持ち場に戻る。
去り際、実弥が話しかけてくる。
「俺は必ず強くなるからなァ」
「そうか、いいんじゃあねえか?」
「・・・いつの日か、お前と肩を並べてみせるからよォ。
そんときまで首洗って待っとけやァ」
「・・・楽しみにしている。その時はまた戦うぞ」
「おォ。」
不死川 実弥登場です。
名前のみだったのでようやく出せた。正直嬉しい。
次回もよろしくお願いします。