雷の鳴る所には雨が降る   作:秋月 了

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第二十九話 栗花落カナヲ

時間は少しさか昇り無一郎を救い出す一月前。

しのぶとカナエが女の子を連れてきた。

体中汚れて髪も蚤がわいているのではないかと言う程汚い。

 

「どうしたんだ?その子。」

 

「買ったの。」

 

「は?」

 

とんでもない発言がカナエから飛び出して驚く俺。

この時代まだ人買いは完全になくなっていない。

貧しい家が娘を売るなどまだある。

そこから遊郭に売られていくのだ。

だがそれをカナエがするとは思ってもいなかった。

見損なったという目で見ているとカナエが慌てる様に口を開いた。

 

「あ、勘違いしないでね。人助けをしたのよ。

決して奴隷にしようと考えた訳じゃないの。」

 

「そう言う事ならいいけど正直驚いたよ。」

 

「ごめんなさい。」

 

「もういいよ。」

 

その時女の子を風呂に入れていたしのぶが女の子を連れて入ってきた。

 

「姉さん、飛鳥この子全然だめだわ」

 

「どうした?」

 

「言われないと何もできないの。食事もよそうよ。

食べなさいと言わなきゃずっと食べようとしないの。

すっとお腹鳴らして」

 

「まあまあそんなこと言わずに。

姉さんはしのぶの笑った顔が好きだなあ。飛鳥もそうよね?」

 

「そうだな。心配なのは分かるが少し落ち着け。」

 

「だって」

「自分の頭で考えて行動できない子はだめよ。危ない。

一人じゃ何も出来ないのよ。」

 

「じゃあこの銅貨を投げて決めたらいいわよ。」

 

そう言いながらカナエはどこからか銅貨を出してきてカナヲに渡す。

 

「姉さん!!」

 

「そんなに重く考えなくていいんじゃない。カナヲは可愛いもの!可愛いは正義よ!!」

 

「理屈になってない!!」

 

「確かに。」

 

曖昧な理論で大丈夫というカナエにしのぶが怒る。

大体この姉妹は喧嘩?になるとこの構図になる。

 

「きっかけさえあれば人の心は花開くから大丈夫」

 

喧嘩の最中でも特に何も動くことなくずっと二人を見ているカナヲ。

これはどこに売っても厄介払いされただろう。

この屋敷に来てよかったかもしれない。

 

「いつか好きな男の子でも出来たらカナヲだって変わるわよ」

 

「それまでうちで面倒見ればいいだろ。柱が二人もいるんだ。金は問題ない。

少しずつ自分で考える様にさせていけばいい。てか何でカナヲ?」

 

「今思いついたわ。かわいいでしょ?カナヲにピッタリだわ。」

 

「そんな適当でいいのか?」

 

「それより苗字を考えないと何がいいかしら?」

 

それからアオイやすみ、なほ、きよも加わって幾つか候補をみんなで考えた。

まずみんなの苗字として胡蝶、清水、神崎が上がり

それから栗花落や山本、田中なども出た。

その中から現状どこまで自分の意志を出せるか知る為にカナヲに選ばせた。

するとカナヲは栗花落の名前に決めた。

途中アオイが妹が欲しかったのか神崎の名前をごり押ししていたが

それをほぼ無視して栗花落の名前にすると決めた。

 

「それでいいんだな?」

 

「うん。」

 

「なら今日から君は栗花落 カナヲだ。いいね?」

 

「うん。」

 

今日から新しい家族が蝶屋敷に出来た。

 

 

 

 

 

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