一年が過ぎた。
蝶屋敷は場所が割れているという事で場所を移動させることが決まった。
場所は全く違う場所で初代花の呼吸の柱の屋敷にすることとなった。
上弦の弐が蝶屋敷の場所をどうして突き止めた原因は直ぐに分かった。
上弦の弐が出現した場所のすぐ横の部屋には血まみれの隊服が置かれていた。
それは翌日に縫製係に回して使いまわす予定だったものだったらしい。
まだ推測の段階だがそこに鬼舞辻の血が混じっていたのではないかという事だ。
そこら辺も色々対処していくことが決まった。
今日もいつも通り早紀を育てつつ担当区域を巡回している。
早紀は入隊当時と違い格段に強くなった。
既に階級も乙に上げている。
炎の呼吸も全集中・常中もかなりの練度の者として
期待できる。
最近では階級の低い隊士を率いて鬼の討伐を行えるまでには成長している。
そう考えていた時にある任務が舞い込んできた。
それは赤城山と言う場所。そこに鬼が潜んでいるという報告を受けた。
そこで俺としのぶが向かう様に指令が来たのだ。
赤城山を直ぐに登り始める。
するとすぐに鬼を見つけた。
明らかに何かを我慢するようにうめいている。
服装を見れば鬼殺隊の隊服を着ている。
恐らく鬼にされた隊士なのだろう。
刀を抜き近ずく。その時鬼が此方を見た。
「啓。」
「飛鳥さん。」
その隊士は隠の啓だった。
啓は親を鬼にされて俺がその親を殺して行く場所がないという事で
俺が鬼殺隊に連れてきて暫く面倒を見ていたが才能がなくどの呼吸とも合わず
結局隠として働いていて無一郎を助けた時も同行していた隊士だ。
隠になってからも良く不在がちな俺の鳴屋敷を掃除してくれたりしてくれたり
時々お裾分けと言って自分で作った料理を持ってきてくれるとてもいい奴だった。
ここ数日見ないと思っていたがまさか鬼になっているとは思っていなかった
「飛鳥。彼はまさか」
しのぶも気づいたのだろう。此方に問いかけてくる。
「ああ。俺が連れてきた奴だ。名前は立花啓。啓、なぜ鬼になった」
「なりたかったわけじゃないんです。でも家に帰る途中に
男と出くわしてそれから酷い痛みを受けたと思ったら
鬼になってて、それで、飛鳥さん、恩をあだで返すようですが
お願いです。俺を・・・殺してください。誰かを殺す前に。
もう限界なんです。しのぶ様を見てから頭の中に喰え喰えと響くんです。
お願いします。」
「………………………………分かった。今楽にしてやる」
俺は近づき構える。
「(水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨)安らかに眠れ、啓」
「飛鳥さん。ありがとうございます」
啓は塵となり消えた。
今まで数々の鬼を切り殺してきた。中には元鬼殺隊士もいたしその中には
顔見知りもいた。だがこれほどつらかったことは無い。
気が付くと刀を落とし膝を付いて泣いていた。
「啓、すまん。俺がお前を鬼殺隊に入れたばかりにお前を苦しませてしまった」
勿論その言葉は近くにいるしのぶにしか聞こえていない。
だが謝らずにはいられなかった。
「飛鳥、今は」
「分かってる。俺は前に進まなくちゃいけない。お前の為に泣くことが出来ない。すまない。」
立ち上がりお館様の屋敷へ向かう。
鬼になった隊士を滅した時はお館様に直接報告する事になっている。
「お館様、失礼します」
「飛鳥、どうしたんだい?」
「ご報告に参りました。本日深夜赤城山にて隠を一名発見。
鬼化しておりましたので討伐いたしました。名前は立花啓でございます。」
「分かったよ。報告ありがとう。つらかったね」
「いえ。お館様お願いがございます。」
「なんだい?」
「あいつの墓を建てさせてください。お願いします」
「任せるよ。それと飛鳥、数日休むといい。今回は飛鳥も精神的に参ってしまっているだろう?」
「ありがとうございます。ですがそれは不要でございます。
他の隊士が休まず働いているというのに俺だけ休むわけにはいきません。」
「そうか。なら墓の件は頼んだよ」
「お気使い感謝いたします。では失礼いたします」
お館様の部屋を後にし屋敷に帰りその日はたらふく飲んだ。
翌日には墓を手配しまた仕事に向かう。
数日後墓が完成したと聞いて丁度休みだったことも有り
墓参りに向かった。
戦死した鬼殺隊士専用の墓が一つずつ並んでいる。
まずは象山さんの墓に手を合わせてそれから啓の墓に向かう。
綺麗な墓には南無阿弥陀仏と書かれている。
「啓、こんな事しか出来なくて済まない。だが約束する。
お前の仇はきっちりとるから。だからさ。今だけお前の為に泣かせてくれ」
盛大に泣いた。親や姉の時と同じように。誰もいない事をいい事に泣いた。
それだけ啓とは絆があったという事なんだと思う。
暫く泣いてから泣き止んだ俺はまた来ると言って墓を出た。
それからまた鬼を狩る為に刀を振るう。
今まで以上に早く一人でも多くの鬼を殺すために。
第三十二話いかがだったでしょうか?
ここで人物紹介です。
名前 立花 啓
年齢 十三歳
誕生日八月十四日
呼吸 なし
家族 なし
所属 隠
三年前に親を鬼にされて飛鳥に助けられて暫く飛鳥の下で
世話を受けた後鬼殺隊になるために入隊しようとするが
才能がなく隠として働く。
真面目で責任感が強く受けた恩を決して忘れない。
隠部隊になってからも暇を見ては飛鳥の所有する
鳴屋敷を自分から掃除しに行ったりわざと料理を多めに作って
お裾分けと言って持って行ったりとかなり飛鳥になついている。
しかし任務帰りに鬼舞辻に出くわし鬼にされるが
精神力で食人衝動を耐える。
そして飛鳥が来ない事を祈りながら赤城山の山中で必死に耐えていたが
結局飛鳥が来てしまい嫌だったが飛鳥に介錯を頼み
飛鳥がこれに答えて首を切られて死亡。
その時の顔はひどく穏やかだった。
以上です。
次回一気に年月が飛びます。
そこはご了承ください。
次回もお願いします。