第三十六話 那田蜘蛛山
教団での任務から一週間。飛鳥は真菰と共に任務完了報告の為に本部に向かっていた。
そこに鴉が飛んでくる。かなり疲れているようだ。
「那田蜘蛛山ニテ隊士達数名ガ襲ワレタ!! 至急救援!救援!!」
「那田蜘蛛山か。ここからすぐだな。了解、すぐ向かう」
飛鳥と真菰は走り出すが飛鳥に比べて真菰は遅い。
飛鳥が早すぎるだけで決して真菰が遅いという訳ではないがやはりおいて行かれてしまう。
「飛鳥。先に行って私は飛鳥より足遅いから」
「悪い先に行く」
返事を聞くことなく飛鳥は走る速度を上げていく。
願わくば一人でも多く、生き残っている事を祈りながら。
飛鳥視点
目の前に那田蜘蛛山が見えてくる。
前を飛んでいる鴉を見て、
「他に救援に向かっている隊士は?」
「癸ノ隊士ガ三人先程山二入ッタ!後ハ水柱ト蟲柱ガ向カッテイル。ダガ飛鳥ノ方ガ早イ!」
「鬼の数は?」
「マダ分カッテナイ。」
山を登りつつ気配を探って鬼と生き残りを探す。
木々を飛びながら探していると大きな鬼の気配がする。
それと同じところに小さくなりつつある人間の気配も同時にして来た。
「(急がないと。)」
大きな気配に向かってい走ると
二メートルはある鬼に首を掴まれている猪頭の鬼殺隊士を発見する。
「(雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃 。)」
まず腕を切り落とし猪頭を助ける。
「グアアアアアァァァ。俺の家族に手を出すなああああ。」
もう一方の腕での薙ぎ払いを体を躱して
「(水の呼吸 水面切り)」
刀を真一文字に払って攻撃し首を落とした。
鬼が消滅するのを確認していると起き上がった猪頭の鬼殺隊士が、俺に刀を突き付け呟く。
「俺と戦え、青羽織」
「は?」
俺は首をかしげてしまった。
「(こいつは隊律違反だというのを分かっていないのか?)」
その間にも猪頭の鬼殺隊士は話し始める。
「お前は十二鬼月を倒した!だからお前を倒せば俺の方が強い」
医療に関して素人の俺でもわかるほど猪頭の鬼殺隊士は重傷だ。
「(あいつが十二鬼月?どうやったらそういう結論になる?
目に数字も刻まれてなかったじゃないか。
まあ、いいか。とりあえず)」
俺は加速し、猪頭の後方に回り首筋を柔らかく叩き意識を落とす。
そのまま猪頭は意識を失った。
「後は隠しに任せるか」
そう呟いてから納刀し、この場を走りで後にした。
気配を探りながら山を登っていく中で俺は強烈な気配を感じ取った。
「(かなり強い気配。それと弱りかけた人間の気配。まずいな急ぐか。)」
考えながら速度を早める。
気配のする場所にたどり着けば蜘蛛の糸を操る鬼と動けない隊士がいた。
鬼の方もかなり消耗している事が見るだけでわかる。
俺は鬼と隊士の間に入る。
「何お前、僕の邪魔をしないで。」
俺は鬼の言を無視して
「よくここまで耐えた。後は任せろ。」
無視され鬼は
「(血鬼術 刻糸輪転)」
血鬼術を放ってきた。
俺は冷静に
「(雨の呼吸 肆ノ型 斬雨)」
飛んでくる赤い蜘蛛の糸を切る。
「今何が。糸が飛んできたと思ったのに散らばった」
後ろの隊士がそんな事を言っていた。
「(普通の奴には見えないんだな。義勇も真菰も見えたからまだまだだと思っていたが。
まそれはいいか。今はとりあえず。)」
俺は高速で近づき、鬼の腰に向けて型を繰り出す。
「(雨の呼吸 参の型 五月雨)」
「うっ。」
鬼は咄嗟に防御の体制を取るがそこに刀は来ることはなかった。
鬼が困惑していると頸に刀が通り鬼の頭が落ち消滅した。
俺は鬼が完全に消滅したのを確認し隊士の方を向く。
最初は鬼の影響と気配が小さすぎて気付かなかったが隊士の近くに鬼の少女がいた。
「(雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃。)」ガキィィンッ「なっ。」
型を繰り出すが義勇さんがそれを防ぐ。
「どういうつもりだ、義勇。そこにいるのは鬼だぞ。」
「・・・・・・。」
無口にもほどがあるだろ。イラつきながらも義勇を問いただすのを諦めて後ろの隊士に聞く。
「君も何のつもりかは知らんがその女の子は鬼だ。分かってるだろ?どうしてその鬼を庇う?」
その時、義勇の後ろからしのぶが鬼の女の子に切りかかる。
だがそれも今度は別方向から現れた真菰によって防がれる。
しのぶは若干驚きながら俺の隣に立つ。
「真菰さん邪魔しないでください。冨岡さんも何故飛鳥と対峙しているんですか?
状況だけの判断はしたくは無いですが鬼を庇うその子を守っているかの様な立ち位置ですよ?」
「・・・・・・・・・。」
しのぶの問いに対してもだんまりを決め込む。
今度は後ろに倒れている少年を説得する
「坊や。坊やが庇っているのは鬼ですよ。早く離れて下さい。」
鬼だと区別が出来てない可能性を洗うための問いを受けて隊士は慌てて
首を振りながらしのぶへハッキリと答えた。
「違うんです。禰豆子は鬼ですが妹なんです。」
「そうですか、それは大変ですね。なら苦しまない様、優しい毒で殺してあげますね」
冷たい殺気と共にしのぶの細く尖った日輪刀が煌めく。
それを合図に俺は一瞬で隊士の後ろに回り切りかかる。
だがそれを真菰が受け止める。
「炭治郎動ける。動けなくても頑張って。そして妹を連れて逃げて。
飛鳥は強いから長くは持たない。」
「足止めするつもりか、真菰。いくら義勇や錆兎の同門でも俺は容赦しないぞ。」
炭治郎と呼ばれた少年禰豆子を連れて逃げていく。
俺は炭治郎の追跡を諦め真菰と対峙する。
炭治郎視点
真菰さんと冨岡さんのお陰で何とか逃げ出せた俺はとにかく禰豆子を連れて逃げる。
「(痛い、つらい、でも冨岡さんと真菰さんが稼いでくれている時間を無駄には出来ない。)」
その時俺の目の前に何かが落ちた。
「炭治郎だったか?逃げるのはそこまでだ。」
そこにいたのは無傷で立つ強いあの人と地面に押し付けられ気を失う真菰だった。
「いくら何でも早すぎる。」
俺には絶望しかなかった。
飛鳥視点
早々に真菰を無力化した俺は炭治郎に向き合う。
「炭治郎だったか?逃げるのはそこまでだ。」
炭治郎も一様刀を向けてくるが絶望した目をしている。
その目の中に少しだが諦めてない光がある。
「(周りを見回している。妹だけでも逃がそうと必死なんだな。)」
俺は一つ溜息をつく。
すると炭治郎は妹と箱を下ろし切りかかってきた。
俺は炭治郎とつばぜりあう。
「禰豆子、逃げろ。」
炭治郎は振り向き禰豆子に逃げるように言う。
「君の気持ちが分からない訳じゃないがこちらも任務だ。」
俺は炭治郎を引き寄せ首筋を叩き意識を落とす。
そのまま禰豆子を押さえつけ切りつけたその時、
「伝令‼伝令‼カァァァ伝令アリ、炭治郎及び禰豆子両名を拘束。本部ヘ連レ帰ルベシ。」
鴉からの伝令に俺は禰豆子を離し箱を持って来る。
「もう傷つけないからとりあえずここに入ってくれ。本部に連れていく。」
最初は威嚇してきていたが素直に入ってくれる。
待っているとカナヲと隠が来てくれた。
「悪い。縄かなんか持ってるか?持ってるならこの箱に巻き付けてくれ。
あとそこの隊士2人も傍ってくれ。」
「はい。」
「箱を本部まで運んでくれ。カナヲはそれを見張れ。何かあれば中の鬼は殺していい。」
隠は少しビビりながら箱を持ち、
カナヲは頷いて隠の後を付いて行く。
「さて真菰と炭治郎君の二人か。」
「(あそこまで派手にやっといて正直気まずい。)」
俺が悩んでいると義勇としのぶが歩いてきた。
義勇さんは黙ってそのまま真菰を担ぐ。
炭治郎をおんぶしながら一つ溜息をつき落ちかけた炭治郎をおんぶしなおす。
すると炭治郎が目を覚ました。
「うっ、ここは?」
「目覚めたか?炭治郎。」
俺が話しかけたことで炭治郎は自分の状況を悟ったようだ。
「うっ、禰豆子は?」
「大丈夫だ。妹はあそこにいる。」
俺はカナヲの近くの隠の背負う箱を指差す。
「とりあえず今は妹は殺さない。君も怪我もすごい様だし今は休むといい。」
「すみません。」
炭治郎はかなり疲れていたのかそのまま眠ってしまう。
「また眠ってしまいましたか。よほど信頼されているのですね。」
「疲労が勝っただけだろ。それより本部に戻ろうぜ。」
「そうですね。冨岡さん逃げずについてきてください。」
「分かっている。」
俺達はそのまま本部へ向かうのだった。