「飛鳥話があるの。」
約二ヶ月ぶりに屋敷に帰ってきた俺に待っていたのはカナエのこの言葉。
「(俺何かしたか?)」
考えているが特に思い当たる節がない。
考えても分からないので聞いてみる事にした。
「どうしたんだ?改まって?」
「ええ。言おうかどうか迷たんだけど実は妊娠したの。」
「まじか。」
「うん、本当。もうすぐか月になるらしいわ。」
「しのぶや他のみんなは?」
「もう知ってるわ。みんな祝福してくれたわ。」
「そうか。それは良かった。なんか安心した。
あまり無理だけはしないでな。俺も出来る限り協力する。」
「うん。よろしくね。」
まじかー遂に俺も父親かよ。
本家の爺さんから孫はまだかーとかいう手紙がひっきりなしに来るからとてつもなく
面倒臭かったんでよなー。
そうしてしのぶを加えた三人で今後の事も考えながら決めていく。
暫くカナエは仕事を休むこととなりその間しのぶとアオイで蝶屋敷に来る患者を観る事となった。
それ以外の事も簡単にだが決めていきすべてが決まった後炭治郎の下に向かった。
「炭治郎、怪我大丈夫か?「あの人。」はっ?」
炭治郎俺を指さしてくる。
その前にいるタンポポ髪の子が睨んでくる。
如何やら最悪と言っていい時に俺は会いに来てしまったようだ
「なんだ。俺がどうかしたのか?」
何となく予想はつくが聞いてみる。
「善逸がカナエさんがかわいいとか言ってたんですけど、
すでに既婚者だって教えたら相手は誰だって叫んで教えようとしてました。」
「なるほどさっきから睨んできてるのはそれでか。」
自分で言うのもなんだが、カナエ程綺麗な女性に惚れて
それが既に誰かと結婚してたらなんとも言えない怒りが湧いてくるわな。
「とりあえず改めて自己紹介させてくれ。
俺は雨柱の清水飛鳥。飛鳥と呼んでくれ。君が我妻善逸だろ?師範から聞いてるよ。よろしくな。」
「我妻善逸です。よろしくお願いします。」
「あっ俺も改めて竈門炭治郎です。よろしくお願いします。
あっちで寝てるのは嘴平伊之助です。」
「ゴメンネ、ヨワクテ。」
「どうした、あいつ。なんかすっげーしょぼくれてるな。」
「負けた事がないらしくて初めて負けたことがかなりショックで落ち込んでいるらしいです。」
「なるほどな。これはそこら辺から鍛え直すか。」
「え?どういうことですか?」
「ああ。炭治郎と善逸と伊之助だったか?は機能回復訓練の後、しばらく俺と訓練だ。
基本の立ち回りから全部見直していく。きついと思うけど頑張ってくれ。」
「はい。頑張ろうな、善逸。ん?どうした善逸。」
目の前まで行き顔の前で手を振る。
「どんな想像したのか知らんが訓練がきついと聞いて気絶したようだな。」
「えーーー!」
「仕方ないこのまま寝かせてやるか。炭治郎も今は傷を癒すことに専念するんだ。」
「わかりました。」
「とりあえず君も治療を受けろ。」
「はい。」
それから数日後
炭治郎君と伊之助は少し早く機能回復訓練に参加していた。
見ていれば分かるが二人とも全集中・常中を習得できてない。
それでも伊之助はアオイやなほたちには勝ててるが
炭治郎君は誰にも勝てていない。
「(常中を教えるのは善逸君も参加してからでいいか)」
その日は任務だったので俺自身は参加せず任務へ向かった。
その更に十五日後
再び稽古場に向かってみればそこにいたのは炭治郎君だけで他の二人がいない。
アオイ曰く最初の内は他の二人も来ていたらしいが二日前から来なくなったらしい。
「放置していた俺も悪いとは思うが二人ははどこ行ったのかな?」
「すみません。」
「君が謝る必要はないよ。ただ二人の居場所を教えてほしい。」
「すみません、わかりません。」
「そうか。ならいいよ。本当は二人も含めて教えるはずだったんだけど
君にだけ教えよう。なぜ君がカナヲやアオイに勝てないか。
それは全集中・常中を習得してないから。」
「全集中・常中ですか?」
「全集中・常中というのは全集中の呼吸を四六時中続ける技術の事。」
「えっ?」
「それが出来るのと出来ないのでは天と地程の差が出来るんだ。
例えば基礎体力に大きな差が出来る。体力が上がればできることも当然増える。」
「そんなのがあるんですか?全集中の呼吸は少し使うだけでもかなり辛いんだが・・・
それを四六時中ですか?」
「最初はかなりきついと思うけど庭も好きに使うといいから頑張って。
炭治郎は芯の部分が他の二人より随分強いと思うから期待しているよ。」
「はい。やってみます。有難うございました。」
炭治郎は笑顔でお礼を言ってくれる。
正直この笑顔を見ているとほっこりする。
歳はそんなに変わらないけどこの少年だけは何としても守らないと。
そんな気持ちにさせてくれて少し心が穏やかな気持ちになった。
炭治郎視点
出来ない。全っ然出来ない。
飛鳥さんが教えてくれた全集中・常中はかなりきついのは分かっていた。
だけど全く続かない。長くやろうとすると死にそうになる。
苦しい、肺と耳が痛い。
「はぁはぁ・・・・あっ。」
耳を抑えその後両手を確認する。
「(びっくりしたー。今一瞬耳から心臓が飛び出たかと思った。)」
全然だめだ。こんな調子じゃ困った時は基本に立ち返れ。
呼吸は肺だちゃんと出来ないのは肺が貧弱なんだ。もっと肺を鍛えないと。
それから走り込みも並行して行っていく。
「ふがいなし」バチンッ
一度頬を叩き気合を入れてまた全集中・常中の習得へ向けて励む。
お昼時になって飛鳥さんがおにぎりを持ってきてくれた。
「疲れたろ、さあ食べるといい。お腹減っただろ。」
「ありがとうございます。頂きます。」
飛鳥さんのご飯はとても美味しい。
これを食べるだけで午後からも頑張ろうと思えてくる。
おにぎりはおいしかったがさっきから隣に置かれている瓢箪が気になった。
最初はお酒かと思ったがそんな匂いはしない。
分からないので聞いてみることにした。
「その瓢箪なんですか?」
「これ?これはただの瓢箪じゃなくて普通のより硬くてね、
これを吹いて破裂させて訓練をするんだ。
カナヲもやってたから君もやってみるといい」
「へぇー・・・・・・(破裂・・・?)」
「えっこれ?これを?あんな華奢な女の子が?」
「そう。そして割れたら段々大きくしていく。
因みに今カナヲが破裂させてるのはあれな。」
そう言いながら飛鳥さんは居間の端に置いてあるとても大きな瓢箪を指さす。
「(でっか!!・・・・・頑張ろ。)」
「まあ、最初からあれを破壊しろなんて無茶は言わないよ。
一つずつ確実にやっていくといい。」
「はい。おにぎり有難うございました。美味しかったです。」
「それは良かった。じゃ、頑張って。」
飛鳥さんは立ち上がり皿を持って去ってしまった。
「(飛鳥さん。いつも優しい匂いがしていい人だなあ。
でもやっぱりその匂いの中に微かに恨みの匂いがする。
何かあったのかな。)」
俺はその時はあまり気にせず鍛練に戻った。
数日後
鍛練を終えて風呂に入るため風呂場向かっていた俺は禰豆子の部屋の前で
カナエさんと飛鳥さんを見かけた。
「分かってるんだあの子が悪い鬼じゃない事は。でもやっぱりだめだ。
済まないけどしばらく一人にさせてくれ。」
飛鳥さんはそのまま奥へ向かっていった。少し泣いていた。
禰豆子の事を言ってるのはすぐわかったけど今話しかけられる雰囲気じゃ無かった。
「(今度カナエさんに聞いてみよう。)」
その時はそのままその場を後にした。
その日飛鳥さんからはいつもの優しい匂いは消えて悲しみと恨みの匂いがした。