雷の鳴る所には雨が降る   作:秋月 了

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第四十八話 吉原遊郭

吉原遊郭

日本に幾つかある花街の中でも最も有名な花街で、

その歴史は江戸に幕府があったころからの歴史を持つ。

遊郭は男と女の見栄と欲、愛想渦巻く夜の街。

その名の通りその手の店で一つの街が形成されており

そこに住む遊女の大半は貧しさや借金で売られた者が殆どでたくさんの苦労を背負っている。

その代わり衣食住は保証されており遊女として出世すれば裕福な家に身請けされることもある。

中でも遊女の中でも最高位である花魁は別格であり美貌、教養、芸事、

全てを身につけている特別な女性であり位の高い花魁には中々会えず、

客は逢瀬を果たすために莫大な金を使い足しげく通う。

噂だが 原の花魁に入れ込んだせいで夫婦関係が壊れたり

大きな商家が傾いたりすることも有るらしい。

 

「それが遊郭だ。分かったか?炭治郎。」

 

「はい。」

 

遊郭が何かわかっておらず無知かつ天然で色々質問してくる炭治郎。

その中には答えにくい質問もあり飛鳥は少し顔を赤くしながら答える。

藤の花の家紋のある家に着いてからこのやり取りが続いている。

その内家主への指図を終えた天元が戻ってきて五人がそろう。

 

「遊郭に潜入したら、まずオレの嫁を探せ。オレも、鬼の情報を探るから。」

 

 お茶やお菓子を食べていた善逸が「とんでもねぇ話だ!」と声を上げる。

 

「ふざけないでいただきたい!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとか!?」

 

「はあ!?何を勘違いしてやがる!」

 

「いいや言わせてもらおう!アンタ見たいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!

だがしかし!鬼殺隊員であるオレたちがアンタの嫁探しなんて!」

 

「馬ァ鹿かテメェ!オレの嫁が遊郭に潜入して、鬼の情報収集に励んでんだよ!

定期連絡が途絶えたから、オレも行くんだっての!」

 

天元の言葉を聞いた善逸は、体を硬直させた。

そして、それから口を開く。

 

「そういう妄想してらっしゃるんでしょ?」

 

「クソガキが!――これが鴉経由で届いた手紙だ!」

 

天元が、届いていた手紙を善逸に投げる。

束で縛られている手紙の数は、かなりの分厚い。

 

「ギャアアァァアァ――!」

 

手紙を当てられた善逸は、叫び声を上げた。

 

「随分多いですね。かなり長い期間潜入されているんですか?」

 

炭治郎がそう聞く。

 

「違う違う。天元さんには三人いるんだよ、嫁。」

 

飛鳥の発言に再び善逸がさけぶ.

 

「三人!?嫁……三人!?テメッ……テメェ!何で嫁三人もいんだよ!ざっけんなよ!」

 

善逸の腹部を殴る宇随。

善逸は「おごぇっ。」という声を上げながら吹っ飛んだ。

 

「つーか、清水も嫁が二人いるだろ。しかも姉妹で!」

 

「………知ってるけどなぜか飛鳥さんを責める気になれないんだ。」

 

蝶屋敷に住む人たちは皆優しい。

善逸が菓子を盗んでも伊之助が窓ガラスを割ろうがその時は怒りはするが

それ以降はそれを長く引きずることは無い。

それにこれだけ迷惑をかけているのに少し前から屋敷に

住まわせてくれて三人に分け隔てなく接してくれる。

帰る場所のない炭治郎や善逸にとって蝶屋敷は

いつの間にか安らぎの場所だった。だからこそなのか

善逸は飛鳥は胡蝶姉妹を妻にしている事をとやかく言う事が出来なかった。

一方善逸が宇随と喧嘩?をしている間、真面目に手紙を呼んでいた炭治郎は話を進める。

 

「あの……手紙で、来る時は極力目立たぬようにと何度も念押ししてあるんですが、

具体的にはどうするんですか?」

 

「そりゃまあ、変装よ。不本意だが地味にな。お前らにはあることをして潜入してもらう。

あ、清水は女装で決まりな。お前、客として入れないだろ。」

 

飛鳥は肩を落とした。飛鳥は過去に何度かこのような遊郭や女性の方が潜入しやすい場所に

派遣されたことが何度かあった。

理由としては単に柱の中で一番器用で女装が形になった事が理由だった。

宇随や悲鳴嶼は体格的に無理だし、煉獄や義勇や時透や伊黒や獪岳も性格的に無理があった。

不死川は体中傷だらけだし女性であるしのぶは他にも多くの仕事を抱えていた。

もう一人の女性である甘露時や継子の早紀は潜入が出来るほど器用ではない。

そこで白羽の矢が立ったのが飛鳥だった。

元々中性的な顔立ちであり、身体の線も細くそれでいて単独で下弦や上弦とも戦えるし

演技もそこそこ出来る。

まさに当時の鬼殺隊にとって最も欲しい人材だった。

それにより鬼殺隊柱と産屋敷家関係者によって

飛鳥は女装の為の指導が行われた。

ちなみにその時担当したのがこうだ。

 

化粧担当及び指導  産屋敷あまね・胡蝶カナエ

必要道具の用意   胡蝶しのぶ(本人と姉の私物)

着付け指導     甘露寺蜜璃・産屋敷あまね

演技指導      宇随夫妻

飛鳥監視役     柱の男性陣

最終確認      全員

 

こんな感じになった。

逃げようとする飛鳥に最初は心配した女性陣だったが

いざ指導を始めると呑み込みの早い飛鳥につい舞い上がって熱を入り

演技指導の時に声を変えるコツを指導した為、

当初ばれない程度でよかったのが完璧な女性に仕上がってしまった。

しかも声に至っては声帯模写と言っても過言ではないレベルだ。

それを見た男性陣は当初飛鳥だとは分からず、

天元は後に「くのいちとしてもやっていけるな。」と言っていた。

だが飛鳥本人は余り女装が好きではなかった。

 

「既に怪しい店は三つに絞ってあるから、お前らはオレの嫁を探して情報を得る。

ときと屋の「須磨」。荻本屋の「まきを」。京極屋の「雛鶴」だ」

 

「嫁、もう死んでんじゃねぇの?」

 

伊之助がそう呟くと、天元の右手拳が腹部に突き刺さる。

それから家の主人が「ご入用の物をお持ち致しました」と言って、襖が開けられる。

どうやら天元が、女装用の品を見繕うように頼んでいたらしい。

ともあれ、各自が着物に着替え、再び集まる。

 

 

暫くして四人が集まる。

飛鳥は勿論、他の三人も飛鳥によって綺麗に化粧がされて綺麗に着付けられている。

 

「前見た時も思ったが清水お前本当に男か?」

 

「ていうか、本当に飛鳥さんですよね?」

 

「そうだよ。一緒にここまで来たよね?炭治郎?」 

 

「いやあ。分かってはいるんですけど本当に疑いたくなるというか。声も少し違うし。」

 

目を丸くする炭治郎たち。

その声は、どことなくカナエに似ていた。

ちなみに、潜入する時の名前は、炭子、猪子、善子、由衣だ。

普段通り偽名を使う事にし

また宇随の提案でそれぞれ潜入した遊郭で聞き込みするときは

行方不明になった三人の事は姉という事で聞く事にした。

そして潜入捜査がはじまる。


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