雷の鳴る所には雨が降る   作:秋月 了

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第六十三話 黒死牟対飛鳥、行冥

 黒死牟は切られた腕を再生させながらつぶやいた。

 

「驚きだ。血鬼術を使わずに斬撃を飛ばす者がいるとは」

 

「それだけ鍛えたからな」

 

「六年前よりずいぶん強くなったと見える。蒼月の末裔よ」

 

「よく気づいたな」

 

飛鳥は笑った。

 

「簡単な事。お前の気配はあいつに似ている。その笑みもな」

 

「組んでかかるぞ。油断するな」

 

「わかってます。それに油断して勝てる相手じゃない。他の上弦とは格が違う」

 

二人とも刀を赫くして最初に飛鳥が切りかかる。

 

「(日の呼吸 拾弐ノ型 炎舞)」

 

「(この型は、それにこの動き)」

 

黒死牟は飛鳥の攻撃を刀で受けた。

そこに悲鳴嶼の鉄球による追撃が襲い掛かる。

 

「(この二人さっきの二人とは連携の練度がまるで違う。さらに赫刀も習得しているか。

甘くはないな。だが月の・・・)」

 

黒死牟が反撃を加えようとするが悲鳴嶼はさらに斧まで投げてそれを阻止する。

 

「(武器を離した。月の・・・)」

 

「(岩の呼吸 弐ノ型 天面砕き)」

 

悲鳴嶼が鎖を踏み、投擲していた鉄球を黒死牟にたたきつける。

それをかわした黒死牟に飛鳥が追撃を加える。

 

「(日の呼吸 漆ノ型 斜陽転身)」

 

「(月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月 )」

 

「(日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹)」

 

今の攻防の間に悲鳴嶼も攻撃態勢に入り攻撃に加わる。

 

「(岩の呼吸 肆ノ型 流紋岩・速征)」

 

「(月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月)」

 

悲鳴嶼は顔に斜めに傷を受け黒死牟は無傷。

 

「哀れだな、人間。そんな傷鬼であれば無傷と変わらない。

そこまで鍛えられた肉体。なくすのには惜しいな」

 

「何が言いたい?」

 

「無駄とわかっているが貴様も鬼になるがいい」

 

「本当に無駄だな。そのようなものにはならない」

 

「そうか。わかっていたとはいえ残念だ」

 

少し落胆したのち再び刀を構える。

 

「これは無惨の時まで温存しておきたかったのだが・・・フー」

 

「!」

 

「ここで負ければ元の木阿弥。今使うもやむなし」

 

悲鳴嶼の両腕に岩に出来た亀裂のような痣が浮き上がった。

 

「悲鳴嶼さん、できたんですか!」

 

「リスクは聞いていたからな。わざと出さないままにしていた」

 

「心拍数は・・・・・大丈夫ですね。なら行きますよ」

 

飛鳥の痣の色もさらに濃くなる。

 

「そうか。そちらの日の呼吸をつける剣士だけでなくお前も痣の者・・・残念だ」

 

「残念とは?」

 

「見た所・・・お前の・・・年の頃合いは・・・二十七と・・・いったあたりか・・・」

 

「それがどうした?」

 

「喪失を・・・嘆いている・・・。

痣の者は例外なく・・・二十五の歳を迎える前に死ぬのだ。

痣を出現させ・・・力を向上できたとしても・・・所詮寿命の前借りに過ぎない。

お前は二十五を超えて・・・痣を発言させた・・・。

今宵のうちに死ぬだろう・・・。」

 

「・・・」

 

「日の呼吸や雨の呼吸を習得している蒼月の末裔にも言えた事だが・・・

これほどまでに・・・研鑽し極められた肉体と技が・・・この世から消えるのだ。

嘆かわしいと思わぬのか・・・」

 

「思わない。その話も痣の者たちは既に承知済み。その対策もしている」

 

「知って・・・いたか・・・。それに対策?」

 

「例え痣が出なかったとしても鬼殺隊である限り明日の命の保証はない。

何を今更己の命など惜しもうか。

そのような生半な覚悟で柱になる者などおらぬ。

甚だしき侮辱だ。腸が煮えくり返る」

 

悲鳴嶼はまっすぐな怒りを黒死牟に向けた。

 

「命云々のつまらぬ話をしているのではない・・・・・・。

鬼になることで肉体の保存・・・技の保存ができるのだ・・・。

なぜそれが分からぬ・・・愚かな・・・」

 

「わかるはずもなし我らは人として生き人として死ぬことを矜持としている。

貴様の下らぬ観念を至上のものとして他人に強要するな」

 

「ほう」

 

今まで話していた二人だが互いには動いた。

同時に飛鳥も動く。

 

「(日の呼吸 拾弐ノ型 炎舞)」

 

「くっ」

 

飛鳥の攻撃を受けて左腕を切られながら黒死牟は初めて体制を崩した。

そこに悲鳴嶼と治療を終えた実弥と杏寿郎も痣を出して加わって追撃する。

四人は畳みかけた。黒死牟の攻撃は変幻自在で見切ることは難しい。

だからこそここで決着をつけるつもりで動いた。

その時悲鳴嶼に変化が起こる。

 

「これは」

 

盲目で敵の気配を頼りに戦っていた悲鳴嶼の目に透き通った黒死牟の筋肉が見えていた。

訳も分からずだが悲鳴嶼はそれを利用して動きを予想し追撃する。

 

「(悲鳴嶼さんもしかして透き通る世界が見えてるのか?)」

 

飛鳥もそれに気づいた。

悲鳴嶼の動きが明らかに変わっている。

 

「(なら好都合だ。日の呼吸 肆ノ型 灼骨炎陽)」

 

痣を発現させた四人、うち二人は透き通る世界でかくじつに動きを見切った動きに

さしもの黒死牟と言えど対応出来なくなっていた。

 

「(とどめだ。岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極)」

 

「(こちらも炎の呼吸 伍ノ型 炎虎)」

 

「(風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹)」

 

「(日の呼吸 拾弐ノ型 炎舞)」

 

完全なすきを突いた四人の技が合わさり黒死牟の首を落とした。

 

 

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