何度も殺す為に首を切る。だが切られた淵から回復して切りかかってくる。
この状況は無惨が鬼を増やし始めた当初から懸念していたことだ。
その為の呪いだったというのにそれさえ外された。
しかも無惨は飛鳥に大量の血を与えてしまっている。
その量は炭治郎に撃ち込まれた量の三十倍。
血の濃度も計算に入れれば黒死牟と比べても二十倍に相当する。
どれほど鬼とした強化されているか計り知れない。
そんな飛鳥が敵に回ったのだ。
無惨にとって絶望でしかない。
さらに先ほどから得体のしれない斬撃が無惨の体を傷つけている。
それに対処したいが飛鳥がダメージ無視の攻撃を加えてくる。
しかも日の呼吸と赫刀を使い一撃、一撃が必殺で自分の脳と心臓を切り裂いていく。
先ほどまではそこまで脅威には感じていなかった。
だが今は違う。鬼化して身体能力が上がった上に呼吸による身体強化。
さらに必殺の一撃。もはや無惨にとって縁壱以上の脅威となっていた。
「無惨を攻撃しろ。飛鳥は敵ではない。味方だ」
さらに追い打ちをかけるように先ほどまで飛鳥の鬼化で呆けていた柱達が
悲鳴嶼の叫びを聞いて我に返り攻撃に参加する。
このままではどうしようもないと考えた無惨は全周囲攻撃を敢行した。
吹き飛ばされる柱。誰もが怪我をして気絶する。
それは飛鳥も同様だった。
目の前には偶々攻撃の隙間にいたカナヲがおり座り込んでしまう。
無惨はカナヲに攻撃しようとする。
「(ヒノカミ神楽 輝輝恩光)」
「(日の呼吸 拾ノ型 火車)」
攻撃しようとした腕と背中の管が切り落とされる。
「まだ来るか!」
「お前を滅するまでなんでも立ちはだかる」
「終わりにしよう無惨」
炭治郎と飛鳥がカナヲを守った。
「(日の呼吸 円舞、碧羅の天、烈日紅鏡、灼骨炎陽、陽華突)」
飛鳥は再び超近距離状態で攻撃する。
炭治郎も反対から攻撃する。
「常に無惨を挟むように立ちまわるんだ」
「わかりました」
勢いを増す炭治郎と飛鳥だが無惨の攻撃はどんどん遅くなっていた。
無惨は人戻しの薬を完全に分解した。
だがその裏に隠れていた老化の薬やその他の薬に気づかなかった。
今無惨は急速に老化している。それを食い止めるために力を使い
飛鳥からの圧力もあり本来取るに足らないはずだった
炭治郎をいまだに殺せずにいる。
そして無惨は今一分間に五十年老化している。
そして薬が効果を発揮しだして三時間以上。
つまりは無惨はこれまでで九千年、歳を取っていた。
その兆候はあった。現に今の無惨は白髪だ。
そこに飛鳥と炭治郎が攻撃する。
「(日暈の龍・頭舞い、斜陽転身、飛輪陽炎、輝輝恩光、火車)」
「(日の呼吸 飛輪陽炎、輝輝恩光、碧羅の天、火車)」
「ちょこかまと跳ね回るな」
無惨は炭治郎を切り裂いた。だがそれは残像。
かわした炭治郎に気を取れられるうちにまた一つ、また一つと飛鳥により心臓や脳をつぶされる。
「くそ、貴様もいい加減に」
無惨に切り裂かれるがそれを無視して切り込む。
さらに無惨にとって不幸は続く。
しのぶと珠世と愈史郎の三人によって治療され意識を取り戻した柱達が戦線に復帰する。
最初に復帰した小芭内と甘露寺は炭治郎たちとは対角の位置から切り込む。
「(飛鳥にばかり負担をかけさせない)」
「(飛鳥さんすごいわ。私も役に立たないと)」
さらに義勇、錆兎、実弥、無一郎、獪岳も戦線復帰した。
攻める柱に遂に無惨は追い詰められた。
「(仕方がない)」
無惨の左腕が膨れ上がった。
「分裂する。無惨が逃げようとしている」
炭治郎は叫んだ。
飛鳥を先頭に柱が切り込む。さらに隠れて攻撃していた真菰、伊之助と善逸も攻撃に加わる。
だが膨れ上がる腕を切り落とせない。
誰もが万事休すかと思ったが膨れ上がるのが突然止まった。
「(分裂できない?先ほどからの動きの鈍化と言い珠世は何の薬を撃ち込んだ?
くそっ、珠世を取り込んだが手だけではわからん)」
実際はこれに細胞破壊の薬も加わる
産屋敷邸襲撃の際、珠世を吸収しようとしたが、すんでのところで飛鳥に邪魔され、失敗した。
それに成功していれば、取り込んだ珠世の細胞から記憶を読み取り、
薬の正体を知ることも出来ただろうが、それはないものねだりに過ぎない。
分裂がないとわかった柱達とは一気に畳みかけた。
伊之助と獪岳と善逸と無一郎が背中の管を切り落とし
実弥と小芭内で右の腕を切り落とし真菰と錆兎が両足を切り落とし
甘露寺がその膂力で衰えと細胞破壊の薬で弱まった腕を引きちぎった。
そして飛鳥と義勇、炭治郎が突きで無惨を建物の壁に貼り付けにした。
無惨は体を縦に割り炭治郎を食おうとするが小芭内がその間に入り阻止する。
その時東の空から太陽が昇り始めた。
徐々に無惨と飛鳥の体に焦げたようなあとができ始める。
「(瓦礫の下へ。いや体を縮めれば一瞬で灼き尽くされる。肉体の守れ。肉の鎧を)」
無惨の体は膨れ上がりまるで巨大な赤ん坊のような姿になった。
さらにその時に炭治郎を取り込んでしまった。
無惨は日陰を目指して進む。
『日陰に入らせるな!!落とせ!!』
遠方からの輝利哉の指示を受けて、一般隊士達が建物の中から本棚を無惨に向かって落とす。
そして次から次へと無惨の動きを止めるべく手を尽くす。隠が自動車を無惨にぶつけ、
路面列車を押し付ける。
「退がるなぁぁ!抑え続けろぉぉぉ!」
隠に混ざって列車を押す玄弥が叫ぶ。
「怖くない!!みんな一緒だ!!」
『死ぬな一旦退がれ!!次の一手は僕が考えるから!!』
輝利哉の想い虚しく無惨の拳が隠達に叩きつけられる。が、その寸前で実弥が割って入る。
「(風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風)」
「しぶてェんだよ糞がァァ!!さっさと塵になりやがれェ」
腕を斬られた無惨は、叩くのではなく列車に乗っかり、押し潰そうとする。
「うわぁぁ!乗っかってきた!!」
さらにそれを阻む者が。片脚を失いつつも、獪岳に、隠に支えられながら悲鳴嶼と甘露寺と天元が
鎖を無惨の首に巻き付け、必死に引っ張る。
無惨は後ろに転がる。無防備に日光に晒され、表面から塵になっていく。
「━━土に!!攻撃して無惨の体力を削れ!!」
「(水の呼吸 拾ノ型 生々流転)」
「(水の呼吸 肆ノ型 打ち潮)」
「(水の呼吸 参ノ型 流流舞い)」
義勇が、錆兎が、真菰が。流れるように無惨に攻撃を仕掛ける。
「(風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪)」
「(霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り)」
実弥が上から降らせるように浴びせ、無一郎が潜り込むように斬る。
(もう全員が限界だ、頼む死んでくれ早く。)
悲鳴嶼の想い虚しく、無惨を締め付ける鎖が音を立てて千切れる。無惨はすぐさま地面を掘り、
光からその身を隠そうとする。
「終わりだ無惨(雨の呼吸 漆ノ型 奥義 天翔ける龍の如く)」
全身の半分が焦げている飛鳥によって押し戻され
再び全身に光を浴びさらに唐突に顔面から血が吹き出し醜く泣き叫ぶ。
「ギャァァァァァア!!!」
その場にいた全員の耳を劈くような悲鳴が辺りを襲う。降り注ぐ光は容赦なく
無惨の身体を灼き、そして無惨の身体が完全に消失する。歓喜の声が辺りに満ちる。
喜び、泣きながら宿敵の死を、自分たちの勝利を噛み締める。
「勝った」
「終わった、か。」
悲鳴嶼が安堵と共に、その場に崩れ落ちる。
「悲鳴嶼さぁぁん!獪岳くぅぅん!私たちとうとうやったよおおお!」
「甘露寺、痛え。」
悲鳴嶼と獪岳の首に手を回し泣きながら喜ぶ甘露寺。
「まだ終わりじゃない!!怪我人の救護だ!!これ以上誰も死なせるな」
即座に怪我人の手当に回る隊士達。
「兄ちゃん!時透さん!」
「やっと終わりだ・・・!」
「あァ、俺達の勝ちだァ。」
手当を受けながら勝利を分かち合う不死川兄弟と無一郎。
「杏寿郎、無事か?」
「うむ!何とかな!」
「派手にやってやってぜ」
と言いつつよろける杏寿郎。それを肩で支え手当を受けるべく隊士達の元へと向かう伊黒と天元。
「鱗滝さん、俺達やりましたよ・・・!」
「もう動けないよ・・・」
遠方の師に想いを馳せる錆兎と真菰。
それは遠方の産屋敷邸でも同様だった。
「父上!私は、私は・・・・・・!」
「よくやったね、輝利哉。君と子ども達が頑張ってくれたお陰だ。」
顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、泣きついてくる息子達を優しく受け止める耀哉。
無惨が死んだと同時に、己を蝕む病魔が消えたのを確信している。
誰もがこの勝利に喜んでいた。
だが一人だけしのぶはその中に加わらずに飛鳥を探していた。
しのぶも飛鳥が鬼になったのは知っている。
珠世からあらかじめ鬼を人に戻す薬をもらい
それを飛鳥に撃つために探していた。
そして太陽に当たりながら壁際に座っている飛鳥を見つけた。
そこには先ほどまであった焦げ跡はなくなっていた。
何と飛鳥はこの短い時間で太陽すら克服してしまったのだ。
「しのぶか?」
「相変わらず、無茶したわね」
「悪い」
「直ぐに人に戻すわ腕を出して」
「すまんが頼む・・・・・・・・いやちょっと待ってくれ」
「どうしたの?」
「まだ脅威は過ぎていないようだ」
「え?」
「炭治郎が鬼にされた」
「そんな」
まだ厄災は終わらない。