雷の鳴る所には雨が降る   作:秋月 了

9 / 69
第九話 蛇

飛鳥視点

 

 

二日後準備を整えて槇寿郎さんと煉獄邸を出る。

 

「行こうか、飛鳥君。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

俺にとって今回が初めての補佐としての仕事。

因みにだが柱補佐とは何か?気になるだろ?

単純に言ってしまえば次期柱候補という事だ。

柱になるためには二つの条件をこなす必要がある。

一つは柱の一つ下の階級である甲であること。

もう一つは十二鬼月の討伐。

もしくは鬼の討伐数が計五十を超えるか

この二つである。

基本的にはこの条件を満たす頃には十分な経験が積まれると考えられているのだが。

中には運悪く?いや運がいいのか?人によるだろうが俺の様に最初から強い鬼に当たり

速く階級を上げる奴もいる。

そう言う奴は総じて経験が足りずに柱にしてもすぐ死んでしまう。

そこで作られたのが柱補佐だ。

強い鬼と戦う事が多い柱の元で経験を積み、柱とお館様が十分経験を積んだと判断されれば

柱になれる。名実ともに柱予備軍という訳だ。

先程の条件を満たしている事も勿論だが

任命権もお館様にのみ存在する。

それも柱に推薦された者だけがなれる。

現在この地位につくのは俺と水柱の男性の下で補佐をしているカナエのみ。

だがやる事は変わらない。鬼を見つけて殺す。これだけだ。

 二人で八丈島にわたる事が出来る船がある港へ向かう。

そこで槇寿郎さんが番頭さんを見つけて話しかける。

 

「突然失礼する。八丈島に渡りたいのだが船を出してもらえないだろうか?」

 

「構わねえがそんなとこ行ってどうするんだ?」

 

「仕事でな!行かねばならないんだ。」

 

「そうなのか。だが金はあるのかい?」

 

「金ならある。」

 

そう言いながら槇寿郎さんは金の入った袋を出して揺らす。

それはジャラリと金のなる音がした。

それを聞いた番頭さんは満足した顔で

 

「金があるなら俺の行けるとこならどこでも連れてってやるよ。

だが八丈島に渡るなら夜まで待ってくれ。」

 

「どうしてですか。」

 

「住民が面倒な奴らばかりなのさ。俺は面倒だけはごめんだね。」

 

「承知した。なら夜また来る。金はその時に。」

 

「わかった。ならそれまでに準備しておく。」

 

俺達はそこで分かれた。

夜までまだ半日ぐらいあるので港町で

八丈島に関する情報を集めておく。

そして夜なり同じ港で番頭さんに金を渡し船に乗せてもらい八丈島に向かう。

 

「もうすぐ八丈島だ。しかしここまで来て言うのもなんだが

今、八丈島に向かうのは余りお勧めしないぞ。」

 

「何故だ?」

 

「あの島には化け物が潜んでるって噂だ!実際何人か行方不明にもなってるって話だ。」

 

「そんな話、港でも聞きましたね。」

 

しかし化け物・・・

鬼だろうか?

やはり行かない訳にはいかないな。

 

「なんだ知ってたのか。それでも行くのか?」

 

「ああ。それが仕事なのでな。」

 

「そうか。さあ、着いたぜ。帰りはいいんだな?」

 

「ああ、迎えが来るようになってるのでな。」

 

「そうか。気負付けてな。」

 

「有難うございました。」

 

番頭さんは船を出し去っていった。

 

「飛鳥君は気配の探知に長けていたのだったね。」

 

「はいかなりの範囲を探知することができます。」

 

「なら今回は君が前を歩くんだ。後ろは任せてくれ。」

 

「分かりました。」

 

俺を先頭に歩き出す。

少し歩くと槇寿郎さんが話しかけてきた。

 

「そのまま話せるかな?」

 

「はい。大丈夫です。」

 

「そうか。ならば飛鳥君は今回の一件どう考えている?」

 

「鬼を崇拝する一族なのではと考えています。聞いた話だとよそ者を拒絶しているようですし。」

 

「うむ。俺も一緒だ。となると

問題はどうやって接触するか。それは暫く観察しながら考えるしかないな。」

 

「分かりました。! 人の気配です。その奥に更に多くの気配がありますが

どんどん消えていってます。」

 

「急ぐぞ。」

 

「はい。」

 

全速力で走る。

すると向こうから口元に包帯を巻いた少年が此方に走ってくる。

何かから逃げているような、そんな様子だ。

 

「槇寿郎さん、あれ。」

 

「気になるな。保護するぞ。」

 

その少年の元に向かう。

近くで見てみると背丈が近いことが分かる。おそらく同年代だろうか。

事情を聞いてみる。

 

「君、何があったんだ?」

 

「誰だあなた達は。」

 

「俺は清水飛鳥。」

 

「俺は煉獄槇寿郎。君は?」

 

「俺は・・・なんて言ってる場合じゃない!早く逃げないと!」

 

「逃げる・・・?何から?」

 

「怪物だよ!いつか食われるために俺は生まれた時から閉じ込められてたんだ!」

 

怪物。食われる。

読みは当たっていたようだ。

 

「安心しろ。その怪物を倒すのが俺たちの仕事だ。」

 

「うむ。君は下がっているといい。」

 

「・・・?あなた達は一体?」

 

「問題が解決したら改めて教えるとしよう。」

 

と、その瞬間。

屋根を突き破り屋敷の中から異形が姿を現す。

下半身が蛇のようになっている巨大な女の鬼だ。

最終選別の時のあの鬼のような異形の鬼とみて間違いないだろう。

 

「待てええぇぇえええ小芭内いいいいいいい!」

 

「来た!」

 

「ふむ、でかいな。」

 

「ええ、ですが図体が大きい分鈍いですね。」

 

「貴様ら・・・鬼狩りか!!」

 

「その通りだ。お前を斬りに来た。」

 

「ほざけえええええ!」

 

鬼が半狂乱になりながらこちらに襲いかかる。

振り下ろしてきた爪を即座に抜刀し受け止める。

それなりに力はあるようだ。

重い衝撃か降り掛かってくる。

だが上弦の壱程の素早さはあるか?否

鋭さはあるか?否。重い攻撃か?否。

全てにおいて上弦の壱をはるかに下回る。

大丈夫だ。いける。

 

「槇寿郎さん、ここはおれが。」

 

「うむ。お手並み拝見といこう。」

 

槇寿郎さんが少年を連れ、更に距離をとる。

それを確認し、鬼の攻撃を振り払って間合いを確保する。

 

 

 

 

三人称視点

 

飛鳥が再び刀を納め居合の構えをとる。

そして呼吸によって血の流れを加速させる。

 

「(雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃。)」

 

確保した間合いを爆発的な加速で詰める。

雷を纏った斬撃が鬼に迫り、すれ違いざまに斬り刻む。

鮮血が飛び散る。

鬼は辛うじて頸は守ったがそれでも両腕を切り飛ばされる。

 

「があ・・・!おのれええええええ!!」

 

狂ったように叫びながら尻尾で薙ぎ払う。

大きく振りかぶっての一撃だったため相当の威力があるだろうが、

動き自体は単純なので飛鳥は簡単に読み切り躱す。

 

「(水の呼吸 捌の型 滝壺。)」

 

流れ落ちる水とともに振るわれる刃。

鬼の身体より高い位置から振り下ろされた刃は尻尾を切断するのには十分な威力を誇っていた。

 

「おのれええええ。」

 

鬼は噛みつこうとするが遅かった。

 

「(雷の呼吸 弐の型 稲魂。)」

 

雷の五連撃のすべてが鬼の頸に当たり頸が飛ぶ。

 

「ああああああ!!畜生おおおおお!!楽園がああ!!私の楽園があああああ!!!!!」

 

「お前のような屑には地獄がお似合いだ。口を開くな気分が悪い。」

 

追い討ちのように口の当たりを斬り裂いて頭部をさらに二つに分ける。

もう蛇の鬼が言葉を発することはない。

そのまま鬼は消滅した。

 

 

 

飛鳥視点

 

 

「見事な戦いっぷりだ飛鳥君。お疲れ様。」

 

「ええ、後ろありがとうございました。」

 

「・・・・・・」

 

「さて、まだお前の口から直接名前を聞いていなかったな。」

 

「・・・俺は伊黒小芭内。」

 

「そうか。よろしくな、小芭内。」

 

手を差し出すと、小芭内はキョトンとした表情でこちらを見つめる。

生まれた時から閉じ込められていた、と言っていたか。

なら握手についても知らないか。

 

「握手と言って、友好の証だ。今日から友達になろう、小芭内。」

 

「友・・・達。」

 

「そうだ。ほら。」

 

弱々しくもしっかりと手を握ってくる。

 

「ちょっと!あなた達誰よ!」

 

すると、屋敷の中か数人の人が出てくる。

女性しかいないようだ。

 

「俺は鬼殺隊の清水飛鳥。鬼を斬りにきた。」

 

「鬼・・・何よそれ?」

 

少し沈黙が流れ、その人が何かに気づいたのか焦り出す。

 

「ちょっと・・・あの方はどこよ!?」

 

あの方とはおそらくあの蛇の鬼の事だろう。

やはり鬼を崇拝していたのか。

 

「あの蛇の鬼なら、今しがた俺が殺したが?」

 

それを聞いた人々が顔面蒼白する。

本当にあの蛇の鬼を崇拝していたようだ。

 

「いやあああああああ!!」

 

「そんな、そんなあああああ!」

 

阿鼻叫喚、といった様子だ。

その様子を小芭内は槇寿郎さんの背に隠れるように見ている。

何かを後ろめたいような表情だ。

すると、小芭内に気づいた女性が詰め寄ってくる。

 

「あんたのせいよ小芭内!!あんたが逃げたせいで大勢死んだ!!

そしてあの方もいなくなった!!!あの方のおかげで私たちは生活出来ていたのに!」

 

「え・・・」

 

「あんたのせいで皆死んだのよ!!どうしてくれるのよ!!!」

 

「そうよ!!あんたのせいだ!!」

 

「黙れ!!!」

 

あまりの勝手な物言いに耐えられず殺気を向けながら怒鳴りつける。

 

「お前達は自分が助かる為そしていい思いをする為に小芭内を犠牲にしようとしていた。

さらにはこうなったのも全て小芭内のせいだと?ふざけるな!!!

自分たちの保身の為に他者を盾にしようとしていた奴らに人を責める権利などない!!」

 

「ひっ・・・」

 

「恥を知れ!!!」

 

「飛鳥君。」

 

「行きましょう。」

 

「そうだな。」

 

「・・・俺は。」

 

「私達と一緒に来るといい、小芭内君。こんなところにいてはダメだ。」

 

「・・・分かった。」

 

小芭内を連れ、海岸へ向かう。

すると、そこには数人乗った舟が。

 

「お疲れ様でした。」

 

隠の人達だ。

槇寿郎さんが鴉で呼んでいてくれたのだろう。

 

「ありがとうございます。あちらまでお願いします。」

 

「はい。」

 

八丈島を後にする。

出会った少年を連れて。

 

「飛鳥。」

 

「どうした?小芭内。」

 

「ありがとう。」

 

「気にすんな!」

 

お礼をいう小芭内に笑いながら答える。

その後安心したのか眠ってしまった。

俺は小芭内おぶって帰った。

 

 




第九話いかがだったでしょうか?

今回から大正コソコソ噂話を入れていきたいと思います。
第一回は主人公飛鳥の水の呼吸について
飛鳥に水の呼吸を教えたのは錆兎なんだ。
最終選別の時に日が出ている時に全ての型を教わったんだよ。
その後錆兎の紹介で鱗滝左近次に会ってみてもらったんだけど
実に見事だと褒められたんだ。因みに真菰にもこの時合ってるよ。
以上です。
後数回のうちに胡蝶姉妹とのからみを入れたいですね。
ではまた次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告