それを見て何となく考えていたら、ゲームのセリフ形式と台本形式の小説のセリフ、確かにジャンルとしては同じですが少し違うよな…よし、ちょっと書いてみよう!と思い立った残念作者なわたしです。
一応史実ネタではありますが、捏造上等で、作者は細かい知識ほぼなしの勢いだけで書いております。おかしいだろうと笑い飛ばすのもダメだろうと批難するのもよしでごさいます。それでは、どうぞ。
※ 9月23日 ご指摘を元に少し編集しました。
陽光が少し傾きながら天の上から降り注ぐ中、幾度も細い金属がぶつかり合う甲高い音が、高い草木のない小島に響く。
一つ一つの音の間隔は短く、短い間に何度もぶつかり合っているのが分かる。
ぶつかり合う金属は、薄く鋭い刃を持つ刀。片や扱う男の腕より長い太刀、片や斬り合う相手の刀よりさすがに短くも、長さの異なる二本の刀。
高い草木のないこの場、二人の剣豪が己の命と信念を賭け決闘をしていると見るべきか、殺し合いを楽しんでいると見るべきかはともかく、互いに傷ついてはいるがどれも致命傷には届かない。
そして仕切り直しと言わんばかりに互いに距離を取る。もう戦いを始めて長いのか、互いに息が荒く、身体中から汗が吹き出している。
野太刀の男
「ぜぇ、ぜぇ…もう終いか?若僧」
二刀の男
「ぜぇ、ぜぇ……まさか。まだ、まだ。これからだ。ぜぇ…あんたこそ、結構な歳だろ?」
野太刀の男
「心は常に、腕白、小僧でなぁ…ぜぇ、ぜぇ。歳などと言い訳ぜず、鍛えた、つもりだ」
二刀の男
「ははは…あんた、やっぱり思った以上だ。さすが、かの巌流。一筋縄じゃ…いかないな」
力のない声で笑う二刀の男、だが声とは裏腹に、表情は鬼とも呼ぶべき恐ろしい形相で、目の光は獲物を狙う獣そのものだ。これで楽しくて笑っているのだから恐ろしい。
野太刀の男は笑みこそ穏やかに浮かべているが、目は二刀の男と大差ない獣の目だ。
野太刀の男
「そう言う、貴様は余裕が、あるのでは?まさか、かの二天の若僧が、船の膾を、決闘に用いるとは、目を疑ったぞ」
二刀の男
「戦いは何でもあり、だ」
野太刀の男
「なんともまあ、嘗められたものだ。貴様ほどの、腕でなければ、とうの昔に斬り殺していた」
二刀の男
「勝てばよし、無理ならば別の手を。オレの全てを、用いて、あんたを殺す」
野太刀の男
「ワシを殺す、殺す、か。はは、ハッハッハ!」
自分を殺す、そう聞いた野太刀の男の表情は口先を吊り上げ獰猛さを表出させる。
佐々木小次郎
「ならばワシを殺してみせよ!この巌流!佐々木小次郎を!ワシも持ちうる全てで貴様を殺す!」
宮本武蔵
「この宮本武蔵、殺すと言われ死せず今ここにあり!二天一流の全て、オレの全て、それであんたを殺す!」
佐々木小次郎
「武蔵ぃぃぃいいい!!」
宮本武蔵
「小次郎ぉぉぉおお!!!」
息が整い何度目か分からない斬り合いが始まる。息が整っただけで体は激しい斬り合いで傷つき消耗している。致命傷こそないがそれだけだ。傷口から血が流れていることに変わりはない。
この戦いは、ただ強くありたいと互いに願い、そのために相手と殺し合い、最後は相手を殺す。互いに相手も強いが自分のほうが強いと思っていた。
だがやってみればなんとも強い!想像以上の強さ、それと相対し未だ戦えていること、未だ殺せないことでまだやれるか!と楽しさや苛立ちが入り雑じり興奮で脳内麻薬が大量分泌されていることだろう。
そんな二人に瞬時何度も切り替わる攻防で酷使されている刀は刃零れを起こす。いつまで持つかは分からない。
佐々木小次郎
「その腰の刀ぁ!使って!みたら!どうだっ!」
宮本武蔵
「手は二つしか!ないのでなっ!こいつは!取って置きだ!」
佐々木小次郎
「その口!刀で塞げば!三刀使えよう!」
宮本武蔵
「そんなやつ!いたら是非とも!拝めたいものだっ!」
動き回り跳び斬り防ぎ斬り、たまに避けたり言い合いしたりしながら切り結ぶ。
その間に楽しくて永遠に続けばいいと互いに何度も思うが、そこで安易に加減をすれば殺されるのは間違いないだろうと考え、加減などせず全力だ。
それでも、互いに必殺の間合いは違うが全ての攻撃に対処してみせる。
離れれば小次郎が、近寄れば武蔵が、互いの得物の長さから攻防の切り替わりは一瞬でも攻めも守りも一瞬では済まさない、済まさせない。互いに名の知れた剣豪、守っていたと思えば離れ攻め、そこを一瞬で詰め寄る。長い野太刀とは思えぬ剣速の小次郎と、二刀を生かした手数に攻防自在の武蔵、どれほど不利な間合いでも、対応してみせる。
宮本武蔵
「うおおおお!!!」
佐々木小次郎
「はあああっ!!!」
とは言え、攻撃の密度が高く、避ける往なすだけでは防ぎきれず、結果として刀で防ぐ機会も多く、刀で刀を防ぐとなると刃零れがやはり気になる。
時間が経つにつれ、互いの刀に刃零れが増えていく。刃が零れ無くなれば切れ味が落ちる。そうなれば斬り殺せなくなる。
そして同時に刀が少しずつ脆くなっていく。どれほど強度があっても、日が頂点に達する前から頂点を通り過ぎる今まで、ほんの僅かな小休止を除き斬り合い続けた刀はその分脆くなり、さらに刀を破壊することを狙った武蔵の一撃が、小次郎の刀を半ばで折る。
佐々木小次郎
「っ!」
宮本武蔵
「!これで」
佐々木小次郎
「まだ刃は残っているぞっ!」
長い野太刀が二の腕より少し短い刃を残し折れる。間合いの長さが取り柄であったがこうなっては武蔵の有利、二刀と短い一刀では手数が違う。武蔵の間合いに入るしか攻め手がなくなる小次郎。だが。
佐々木小次郎
「何より!手はまだある!」
宮本武蔵
「っ!しま…」
佐々木小次郎
「そこ!」
宮本武蔵
「へ…うわっ!がはぁ!」
刀と同様に、肉体もまた酷使されてきた。特に武蔵は両手に一振りずつ持つ二刀流の使い手、攻撃も防御も片手で行っているも同然、両手で刀一振りならばある程度分散される衝撃は、腕一本に集中し小次郎の一撃で一振り弾かれ飛ばされる。
それに武蔵が思わず意識を逸らした瞬間、小次郎は刀を捨て、武蔵に掴みかかり投げ、武蔵は地面に激突する。だがそこまでだった。酷使された肉体は気力で動かすには既に限界を越え過ぎていた。どちらも荒い呼吸をし、小次郎は震えた足で倒れ、既に倒れた武蔵は起き上がれない。
佐々木小次郎
「はぁ、はぁ、はぁ…」
宮本武蔵
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…」
佐々木小次郎
「…み、ず」
宮本武蔵
「めし…」
そう言い残し、二人とも意識を喪う。暖かな陽気の中、長時間激しい動きをすれば、体から水分も塩分も失われ、楽しいからと休憩も挟まず戦い続ければ倒れるのは当たり前だ。
さらに言えば傷だらけのためかなりの出血量だ。このままでは死んでしまうと船乗りや決闘の見届け人は大慌てで二人を運ぶ。
こうなる前に止めればよかったが、あの様子では止めようとしたら自分達が斬られるなと、全員思っていたため止めなかった。
巌流島の戦い、一度目は両者続行不可により引き分けとなり、なんとも締まらない形で幕を閉じることとなった。
なお、佐々木小次郎も宮本武蔵も生きて回復しており、今度こそ勝つと息巻き鍛練を続けている。二度目の対決はそう遠くはないだろう。
何故巌流島の戦いになったかというと、前からなんとなくたまに、キンキンという刀剣がぶつかり合い音って擬音なしでどう表現するかなと考えてました。
そして書こうと思い立ったついでに偶然そのことを思いつき、じゃあどういう内容にするとか考え、イメージを膨らませたら、剣士同士の戦いで何となく宮本武蔵と佐々木小次郎が思い浮かんで、そうだ、いろいろ無視して思いっきりバトルさせてみようとなり、この内容です。オチは最初のほうに思い付いたものを採用しました。
書いてる小説放置してリメイク進まずこんな短編書いていますが、なんとなく触発されて書いただけでなく、リハビリも兼ねて書いておりますし、密かに別のにも手を出していたりします。こんな残念作者ですが、これを面白いと思っていただければ幸いです。ありがとうございました。