今回は敢えてこの二人に密着してみました。
いつかの日、クルシーナを模したような人形をストレス解消に使おうとして、本物の彼女に鮮烈な制裁を加えられたグアイワルたち。
しかし、そんな彼らよりももっとストレスを溜めているものがいた。
それは、クルシーナの相棒にして、コウモリの元ヒーリングアニマルである、ウツバット。
果たして、彼はどのようなストレスを抱えているのか、今回はそんな彼の一日を覗いてみることにしよう。
それは、ある日のこと。人間的に言えば、気持ちのいい朝と言える時間。
「クルシーナ!! クルシーナ!! そろそろ起きるウツ!!」
ウツバットが自室のベッドで眠っているクルシーナを起こしに来ていた。いつもなら自分で勝手に起きてくるのだが、今日に限ってはぐっすりと眠りこけていた。
「う~ん、まだ眠いわよ。あと5分ぐらい~・・・」
クルシーナは起きたくないと言わんばかりの嫌そうな声を出しながら、起きることを拒否する。枕に顔を伏せるような格好でうつ伏せになり、再度眠りに落ちようとする。
「今日もキングビョーゲン様の接見があるウツ。ドクルンとイタイノンだってとっくに起きてるウツ。早めに準備していれば、困ることもないウツ。早く起きるウツ」
「ん~、うるさいわね~・・・」
しつこく起こしにくるウツバットに、クルシーナはイライラしながら払うように右手を動かす。
「起きるウツ!! 起きるんだウツ!!」
起きようとしないウツバットは意地になって、クルシーナの背中にひっつくようにして揺さぶる。
そのような行いをしたが故に、クルシーナの怒りのボルテージは上がり・・・・・・。
「うるさいっつってんだよ!! ぶっ飛べ!!!!」
激怒したクルシーナは飛び起きて目からピンク色のビームを放つ。ウツバットはビームの直撃を受けてそのまま窓ガラスを突き破り・・・・・・。
「ウツゥゥゥゥゥゥゥゥ!!??」
街の空の彼方へと飛んで行ったのであった。
「・・・・・・ふん!」
クルシーナは鬱陶しいものがいなくなったのを確認すると、再びベッドに横になる。
ちなみに自室の壊れた窓は彼女が眠っている間に手下のコウモリたちが修復してくれるため、大した破損にはなっていないのだが・・・。
「酷いウツゥ・・・」
吹き飛ばされた病院から戻ってきたウツバットは自分の家の中に飛び込む。
シクシクシク・・・シクシクシク・・・。
相棒の酷い仕打ちに泣いているようだった。こういうのはいつものことだが、ここ最近は精神力の限界も来ていた。
しかし、そんな彼にも癒しがあった。それは、自分が愛しいと思っているラベンだるまちゃんのポスターだ。
「ラベンだるまちゃん!!」
落ち込んでいたウツバットは数分も経たずに復活した。
それから2時間後、クルシーナはようやく起床。ウツバットによれば、もうすぐお父様・キングビョーゲンとの接見の時間なのだが、行く準備もせずに病院のロビーみたいな場所にいる。
「あ~む・・・ムフフ♪」
寝転がりながら皿に乗っているすこやかまんじゅうを摘みながら、オンボロにしか見えない昭和のようなテレビで番組を見ていた。
彼女が見ているのはこの時間にやっているような実写ドラマである。ここ最近の彼女のお気に入りなのである。
「クルシーナ」
そこにイタイノンがやってくる。
「遅いわよ。もう『悲劇の奴隷公女』の冒頭が始まってるわよ」
「ちょっと寝坊したの」
「楽しみなところを見逃しちゃうネム」
クルシーナが手招きをして呼ぶと、イタイノンは寝転がる彼女の横に座ってテレビを見る。
『あんまりです・・・お母様・・・』
『オーッホッホッホッホ・・・ゴキブリみたいなお前にはお似合いだろうに・・・!!』
テレビの中では、下働きのような格好をさせられている可愛い淑女のような少女が、貴族のような衣装に身を包む貴婦人にいじめを受けている。
「この残酷なおばさんに耐える可愛い少女が健気で素敵よね~」
「おばさんのこの顔は迫力があってすごいの・・・」
「よく作られているドラマネム」
クルシーナの最近のお気に入りは、奴隷となった淑女が仕えている母親らしき人物にいじめられるというドロドロの劇を展開するドラマだ。イタイノンも気に入って、一緒に見ていることが多い。
「バケツの水を蹴り飛ばしたり、洗濯物を汚したりして、日に日にエスカレートをしていくおばさん貴族の嫌がらせも視聴者のハートをがっちりつかんでいるに違いないわね」
「見逃せないドラマなの」
クルシーナとイタイノンは恍惚としたような顔でドラマを評価しながら見る。
しかし、そこに口うるさい余計な奴が現れる。
「また、朝の奥様ドラマなんか見てるウツ・・・」
そう。先ほどクルシーナにぶっ飛ばされたウツバットだ。彼はクルシーナに注意をしようと彼女の前に立つ。
「「あぁー!!!!」」
「そろそろキングビョーゲン様との接見の時間ウツよ」
よりにもよって二人が見ているテレビの前で立つウツバット。今、ドラマがいいところなのに目の前にいるコウモリがテレビを塞いでいるせいでテレビが見えない。
「ウツバット!! そこどけ!! テレビが見えないわよ!!」
「見えないの・・・!!」
「空気を読むネム・・・!!」
二人がクレームをつけるも、ウツバットはそこから退こうとせず・・・・・・。
「こんなドラマなんか見てたら接見に遅刻してしまうウツ。さっさと準備するウツ」
ウツバットはあくまでも真面目にクルシーナに接見に行く準備をするように促す。いつまでも退いてくれない彼に、クルシーナとイタイノンの体から黒いオーラのようなものが発せられる。
「フフフフフフ・・・どうやらこのアタシを本気で怒らせてしまったようね・・・!!」
二人はわなわなと体を震わせながら、さらに黒いオーラを大きくし・・・・・・。
「捕らえろ!!」
「ウツゥ!?」
クルシーナは片手からイバラビームを放ってウツバットを捕まえて、宙に放り投げる。
「ぶっ飛べ!!」
そして、そのウツバットに目がけて目からピンク色のビームを放つ。直撃を受けたウツバットは建物の天井を突き破り・・・・・・。
「ウツゥゥゥゥゥゥゥゥ!!??」
そのまま街の果てにある山の方へと飛んでいった。
「ったく、いいところを見逃しちゃったじゃないの・・・!!」
「本当にお前の相棒はいい迷惑なの・・・」
「うるさい」
「接見までまだ全然時間があるのに、余計なことをするからああなるネム」
クルシーナはイタイノンの抗議の声も跳ね除けて、再び寝転がるとすこやかまんじゅうを摘みながらドラマの続きを見る。
『ほら、さっさとこの生ゴミともをだしてきな! お前の体でね!』
『あぁん、臭いですぅ・・・!!』
ちなみに壊れた天井も、二人がテレビを見ている間に手下のコウモリたちが修復してくれるため、大した破損にはなっていないのだが・・・。
「酷いウツゥ・・・」
吹き飛ばされた病院から戻ってきたウツバットは自分の家の中に飛び込む。
シクシクシク・・・シクシクシク・・・。
またも相棒の酷い仕打ちに泣き伏せる。自分はクルシーナのためにと思ってやっているのに・・・・・・。
そんな肉体的にも精神的にも疲弊している彼の癒しは、自分が愛しいと思っているラベンだるまちゃんのポスターだ。
「ラベンだるまちゃん!!」
またも、落ち込んでいたウツバットは数分も経たずに復活した。
場所は変わって、ビョーゲンキングダム。ここでは幹部たちによる主・キングビョーゲンへの接見が行われている。今日も今日とて幹部たちはキングビョーゲンに今週の地球の侵略活動についての成果を報告する。
地球侵略はいつもプリキュアどもに邪魔されてばかりだが、それでも何らかの成果は残せていた。
ダルイゼンはだるそうに、メガビョーゲンを発生させる場所を変えるなどして大きく成長させることに成功したことを話す。
シンドイーネは、愛しのキングビョーゲンが好みそうな作戦を実行して、侵略活動を大幅に広げていったことを喜々しながら話す。
グアイワルは何やらある作戦を思いついていて、それを実行するなどということを報告していた。
そんな中でクルシーナは・・・・・・。
「ふわぁ~・・・・・・」
「クルシーナ、キングビョーゲン様の前ウツよ」
「うるさいわね、わかってんのよ・・・」
接見中に大きなあくびをするクルシーナにウツバットは注意を促すも、当の彼女は鬱陶しそうにしつつもどこ吹く風である。
そして、接見が終わった後・・・・・・。
「クルシーナは緊張感が足りないウツ。もっとしっかりするべきだと思うウツ」
「何よ、アタシはちゃんとお父様のために尽くしてんでしょ?」
口うるさい帽子のウツバットに、クルシーナは不快感を示す。自分はお父様のためにいろいろと貢献している優秀な幹部で、究極の存在だ。そんな自分に何の不備があるというのか。
「そうやって適当なことをやっているからいつまでたっても地球を蝕めないんだウツ。普段からドクルンみたいに作戦を綿密に立てていれば、地球侵略だってもっとうまく行ってるはずなんだウツ」
ピキッ・・・!!
あまりにも口うるさい上に余計なことをしゃべるウツバットに苛立ちを覚えたクルシーナは被っていた帽子を外すと・・・・・・。
ドゴォッ!!!
「ウツゥ!?」
「昼間っから説教たらしい話をしてんじゃねぇよ、この腐れコウモリが!!!」
ウツバットにストレートに鉄拳を食らわせた。
「な、何するウツ!?」
「お前の口うるささを矯正してやってんだよ!!」
「ぼ、僕はクルシーナのために言ってあげてるんだウツ!!」
「余計なお世話だって何度言わせりゃわかんだよ、このクソコウモリ!! アタシの親にでもなったつもりかゴラァ!!!」
「ウツゥゥゥ!!??」
ウツバットは怒りの形相をしたクルシーナに追われ、二人はすっかり鬼ごっこ状態。特にクルシーナはピンク色のビームを放ちながら腕を振り回し、執拗にウツバットを追いかけ回していた。
その光景を端から見ていたビョーゲンズの幹部たちは・・・・・・。
「またやってんの? 本当に懲りないね・・・」
ダルイゼンは岩場に寝そべりながら、呆れたような感じでだるそうに呟く。
「ウツバットが余計なことを言うから、クルシーナもイライラしてるの」
そのつぶやきにイタイノンも冷めたような感じで見ながら答える。
「あんな見苦しいもの見せられて、こっちもいい迷惑よ」
シンドイーネは心底迷惑そうな表情で言う。
「ウツバットがもうちょっと融通の利くような奴だったらねぇ・・・」
ドクルンは本をペラペラと読みながら、喧嘩を繰り広げる二人を見つめる。
「そういえば、お前・・・アタシが大切にしている携帯にあの変なだるまのストラップつけただろ!!」
「ラベンだるまちゃんウツ!! ウツバットは可愛いと思ったんだウツ!!」
「あんなだるまのどこが可愛いっていうんだよ!!?? あまりの気持ち悪さにビョーゲンズのアタシが戻しそうになったわ!!」
「ちっこくて丸くて、チャーミングウツよ!!」
「お前、一回、目を見てもらえ!! 暗闇で役に立つ目も、そんな不細工なぬいぐるみのせいで節穴になってんじゃねぇの!!??」
クルシーナは従者に文句を言うがごとく、これまでの不満をぶちまけながら追いかけ回す。
「えーっと、ここまであんな不満を言えるなんて、お嬢はさすがっすね・・・」
「無理して褒めなくていいの・・・」
バテテモーダは相棒と壮絶な喧嘩をしているクルシーナを見て、顔を引きつらせながらもおだてる。そのコメントにイタイノンも思わずツッコミを入れている。
「なんで今日に限って、クルシーナはそんなに機嫌が悪いウツ!?」
「それはなぁ・・・お前がアタシの憩いの時間を邪魔するからだよ!!!!」
「女の子なのにだらしないのは良くないウツ!! だから、僕が言ってあげてるウツ!!」
「アタシのどこがだらしないっつーんだよ!? アタシはいつも通りだっつーの!!」
「そんなのクルシーナの偏見ウツ!!」
「うるさいうるさいうるさーーーーいッ!!!!!!」
追いかけっこから煙を立てるほどになり、徐々にヒートアップしていく二人の喧嘩。
「いいなぁいいなぁ~、ヘバリーヌちゃんにもあんな風に殴ってほしいなぁ~♪」
マゾヒストのヘバリーヌが羨ましそうに呟く。
「それからこの前の!! アタシの取っておいたお菓子をつまみ食いしてんのバレてんだよ!!」
「僕は働くからエネルギーがもっと必要なんだウツ!!」
「ほぉ・・・アタシには体力もいらないってのかぁ!!??」
「少し体力がなくなれば乱暴もしなくなるウツよ!!」
「乱暴!? 乱暴っていうのはなぁ・・・!!」
ヒートアップしたまま、いつまでも終わらない喧嘩。それを見かねたグアイワルはわなわなと体を震わせ始め・・・・・・。
「いい加減うるさいぞ!!お前たち!!!! 喧嘩なら他の場所でやれ!! 他の場所で!!!」
我慢ならないグアイワルは怒鳴り声をあげる。それが耳に通っていたクルシーナとウツバットは・・・・・・。
「うるさいのはお前だよ!! 燃えろぉ!!!!」
「うるさいのはお前ウツ!! ウツゥゥゥゥ!!!!」
ビィィィィィィィィ!!!! ビィィィィィィィィィ!!!!
二人息ぴったりにグアイワルに逆ギレに近い形で、怒りの形相で怒鳴り声を上げる。そして、クルシーナは目からピンク色のビームを放ち、ウツバットは開いた口から黒みがかかった赤い光線を放った。
「えっ・・・!?」
これには怒っていたグアイワルも呆然としたような表情になり、引きつったような表情を浮かべたまま・・・・・・。
ドカァァァァァァァン!!!!
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
二種類の攻撃を同時に食らって吹き飛ばされた。
「乱暴っていうのはお前みたいな強引なヤツのことを言うんだよ!!!!」
「だったら、クルシーナも十分乱暴ウツ!!!!」
グアイワルが黒焦げになっている傍ら、喧嘩を再開する二人。
「首なんか突っ込んだお前は本当にバカなの・・・」
グアイワルの様子を見て、イタイノンは呆れたような表情で見ていたのであった。
そして、幹部たちが解散した後、ウツバットは・・・・・・。
シクシクシク・・・シクシクシク・・・。
またまた相棒の酷い仕打ちに泣き伏せる。結局、喧嘩はクルシーナに敗北した挙句、自身もすっかり傷跡を増やして帰ってきた・・・・・・。
そんな肉体的にも精神的にも疲弊している彼の癒しは、自分が愛しいと思っているラベンだるまちゃんのポスターだ。
「ラベンだるまちゃん!!」
またまた、落ち込んでいたウツバットは数分も経たずに復活した。
時間は午後、地球にて・・・・・・。
今日はクルシーナが出撃の日、彼女の帽子となっているウツバットは張り切ってアドバイスをしようとする。
クルシーナはすこやか中学校で素体となりそうな、不快なものを探していた。
「んん~、この辺だと不快なものはないウツね。もっとあっちを探すウツ」
「言われなくてもわかってんだっつの」
ウツバットのアドバイスを鬱陶しそうに返すクルシーナ。彼の言った通りというか、自身の直感に従いながらその場所へと向かう。
校舎内の窓を生徒たちにバレないように覗くと、そこには授業中にも関わらず、漫画を読んだりふざけあったりしている様子が見えていた。
「のんきな奴らねぇ。まあ、こういう場所だから蝕みやすいんだけどねぇ」
「クルシーナものんきに生徒なんか見ている場合じゃないウツ。早く素体を探すウツ」
口うるさい相棒に舌打ちをするクルシーナ。
「わかってんのよ、うるさいわね・・・!」
クルシーナはイライラしながら覗き込むのをやめて、校舎の中へと入っていく。
そして、場所は変わってここは理科室。クルシーナは躊躇なく扉を開くと中に入り、辺りに蝕むものがないか素体を探す。
「おっ・・・!?」
ふとクルシーナが何かを見つけた。それはガラス張りの棚の中に保管されているサボテンだった。
「きれいな花なんか咲いちゃって、ホント生きてるって感じね」
「眺めてるんじゃなくて、早くメガビョーゲンを生み出すウツ!!」
ピキッ・・・!!
うるさいウツバットにクルシーナのイライラは頂点に達して、怒りに変わり・・・・・・。
ドゴォッ!!
「ブヘッ!?」
「わかってるつってんのよ!! いちいちうるさいわね!!!!」
帽子がへこむほどの鉄拳をウツバットにお見舞いするクルシーナ。いつも通りやっていることをどうしてこいつに口うるさく言われないといけないのか意味がわからない。
それは後に置いておくとして、クルシーナは手のひらに息を吹きかけて黒い塊を発生させる。
「進化しろ、ナノビョーゲン」
「ナ~ノ~」
生み出されたナノビョーゲンが鳴き声をあげながら、サボテンへと取り憑いていく。生徒か先生に育てられているであろうサボテンが病気へと蝕まれていく。
「・・・!?・・・!!」
サボテンに宿るエレメントさんが病気へと染まっていく。
そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。
「メガビョーゲン!!」
頭に花を生やし、サボテンを模したような人型のメガビョーゲンが生み出された。
パリンッ!!!!
「メガー!!」
メガビョーゲンは窓を割って、校舎内から飛び出すと口から赤い光線を吐き出して、校舎を病気へと蝕んでいく。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
メガビョーゲンが現れたことに体育の授業をしていた生徒たちは逃げ惑う。
「いいねぇいいねぇ、人間たちが逃げ惑う姿は本当に格別よねぇ」
クルシーナは校舎の屋上でその光景を眺めながら、優越に浸っている。
「相変わらず、悪趣味ウツね・・・」
「あぁ? なんか言った・・・?」
「な、何も言ってないウツ!!」
ウツバットが気が引けたようなコメントをボソリと言い、それを威嚇するような口調で問うクルシーナにごまかす。
「それにしても、単調な素体の割には蝕むもんねぇ。あっという間に校舎をあんなにしたわよ」
「体型が軽やかだからじゃないかウツ?」
クルシーナは不敵な笑みを浮かべながら言う。すると、何かの気配に気づいて視線をそちらに向ける。
「いたよ、メガビョーゲン!!」
「うえぇ!? もうでかくなってるし!!」
「早くお手当てをしてあげましょう!!」
それはいつもビョーゲンズの邪魔をする鬱陶しいプリキュアの三人だった。
「あ~、もうまたあのお邪魔虫どもか・・・メガビョーゲン、とっととそいつらを潰せ」
クルシーナは顔を顰めながら言うと、メガビョーゲンに指示を出す。
「メガァ!!」
メガビョーゲンは両手を突き出しながら、構えるとそこからトゲのミサイルを放つ。トゲは着弾して爆発するも、プリキュア三人は飛んでかわす。
「もう!! 授業中の昼下がりに出てくんなし!!」
スパークルは怪物にぼやけながら、それに目がけて拳を繰り出そうとする。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドゴォッ!!
「痛ッ・・・!」
「メガー!!」
「あぁぁ!!!」
拳を食らわせるスパークルだが、トゲの体が刺さって痛みに顔を顰め、その隙にメガビョーゲンが右手を振るってスパークルを吹き飛ばす。
そのまま地面に叩きつけられるスパークル。
「「スパークル!!」」
「くっ・・・!!」
「メガァ!!」
起き上がったスパークルに、メガビョーゲンは両手のトゲを放とうとする。
「「はぁぁぁぁ!!!!」」
「メガァ!?」
そこへグレースとフォンテーヌが同時に顔面に蹴りを入れ、メガビョーゲンを後ろに倒す。
「大丈夫、スパークル!?」
「う、うん・・・でも、ちょっと手を怪我しちゃったかも・・・」
スパークルは無事と言いながらも、片手の傷をさするように押さえている。
「何よ、言うほど大したことないわね・・・」
「あのメガビョーゲンは失敗作ウツ」
その様子を見下ろしていたクルシーナはつまらなそうな感じで言う。さらにウツバットのある言葉に引っかかった彼女は顔を顰める。
ドゴォッ!!
「グヘッ!?」
「余計なことは言わなくていいんだよ!」
そして、鉄拳制裁を加えるのであった。
「メガビョーゲン、何やってんの! さっさとそいつらを潰しな!」
「メガァ・・・メガァ!!」
クルシーナの怒鳴る声に起き上がったメガビョーゲンは、両手からトゲをプリキュアに目がけて放つ。
ドォン!! ドォン!! ドォン!!!!
「「「ふっ!!!」」」
ミサイルを飛んで避けるプリキュアの三人。
「メガァ!!」
メガビョーゲンは飛んでいる三人に目がけてミサイルを放つ。
「「「ぷにシールド!!」」」
それぞれのヒーリングアニマルたちが叫び、ステッキから肉球型のシールドを展開し、そこにミサイルが着弾して爆発を起こす。
「「「はぁぁぁぁぁ!!!」」」
そして、三人同時に煙の中から飛び出して跳び蹴りのモーションとなり、メガビョーゲンに向かっていく。メガビョーゲンはミサイルをその三人に目がけて放とうとするが・・・。
「メガァ!?」
紙一重で間に合わず、メガビョーゲンは三人のトリプルキックをくらい、再び地面へと倒された。
そして、放とうとしていたミサイルは校舎の屋上にいたクルシーナに飛んでいく。
「いぃぃ!?」
「こっち来るウツ!?」
ドォン!! ドォン!!
ミサイルは校舎の屋上に着弾して爆発を起こした。
キュン!
「「キュアスキャン!!」」
グレースはステッキの肉球に一回タッチして、メガビョーゲンに向ける。ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つける。
「花のエレメントさん!! 右手にいたラビ!!」
そして、三人は3人はミラクルヒーリングボトルをステッキにセットする。
「「「トリプルハートチャージ!!」」」
「「届け!」」
「「癒しの!」」
「「パワー!」」
グレース、フォンテーヌ、スパークルの順で肉球にタッチしていき、ステッキを上に掲げる。すると、花畑が広がっていき、背後には自然豊かな森が広がっていく。
「「「プリキュア! ヒーリング・オアシス!!」」」
3人は一斉にメガビョーゲンへとステッキを構え、ピンク・青・黄色の3色の光線が螺旋状になって放たれる。螺旋状の光線は混ざり合いながら一直線にメガビョーゲンに直撃する。
螺旋状になった光線はそれぞれの色の手へと変化して、3本の手が花のエレメントさんを優しく包み込んでいく。
3色に光るハート状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんをメガビョーゲンから外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンたちは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「「「「「お大事に」」」」」」
花のエレメントさんがサボテンへと戻っていくと、広範囲に蝕まれた校舎は元に戻っていく。
「だぁーもう!! このアタシに向かって攻撃してくるなんて使えない怪物だったわねぇ!!」
クルシーナは攻撃こそ食らわなかったものの、いきなりこちらに攻撃が飛んできたことに激昂していた。
「覚えてろよ、プリキュアども!! この屈辱は100倍にして返してやるからな!! あっかんベぇーだッ!!!」
クルシーナはプリキュアに向かってあかんべえを見せると、そのまま姿を消した。
そして、アジトである廃病院へと帰ってきた二人。
「ああもう、ムカつくわね! プリキュアの奴ら!!」
ドゴォッ!!
クルシーナはイライラしたような口調をしながら、拳をウツバットに叩きつける。
「痛い!! なんで僕を殴るウツ!!??」
ウツバットはそれに抗議の声をあげていた。
そんなウツバットは自分の部屋でこもって、目の前にあるラベンだるまちゃんのポスターに浮かれていた。
「ラベンだるまちゃん♪ ウツツゥ・・・クフフ・・・」
ポスターを見つめながら、翼をパタパタとはためかせて興奮する。ウツバットにはこの愛しのラベンだるまちゃんだけが癒しのひと時。
「ウツバットぉ?」
「!!??」
背後からかけられた苛立ったような声にビクッとなるウツバット。カクカクさせながら振り向くと、それは相棒であるクルシーナのこちらを睨んだ形相だった。
「なんでアタシ以外の奴にうかうかしてるわけ? それにそいつは気持ち悪いから飾るなって言ったろ!?」
「え・・・あ・・・」
ウツバットが呆然と立っていると、クルシーナはラベンだるまちゃんのポスターを引き剥がして、ビリビリに破き始める。
「あぁぁ!? 何するウツ!?」
ウツバットが戸惑うような声を上げる中、クルシーナはビリビリにするとクシャクシャに丸めて窓の外へと放るように捨てる。ポスターは風に乗って、舞うように飛んで行ってしまった。
「へっ!」
ガーン!!!!
「あぁ・・・あぁ・・・」
ウツバットは自分が癒しとして持っていた愛しのぬいぐるみのポスターを破り捨てられてショックを受ける。そして、その顔は徐々に泣きそうな表情へと変わっていく。
「ラ・・・ラベンだるま、ちゃんをぉ・・・」
もはや恥も概念もなく、涙を流していくコウモリ。そして、自分の部屋から飛び出していき・・・・・・。
「ひどいウツゥゥゥゥ・・・!!!!」
ウツバットは泣き叫びながら、クルシーナの自室からも飛び出して行ってしまった。
「あ・・・ふーん・・・」
クルシーナは完全にマジ泣きをしていたウツバットにやりすぎたと思いつつも、そっぽを向く。
「??」
ふとウツバットの部屋の中にあるものが置いてあるのが見えた。手に取ってみると、それは見たことがあるあいつそっくりの、コウモリの形をしたブローチだった。
「・・・何よ、いつまでもこんなもん持っちゃってさ」
クルシーナは憎まれ口を叩きながら、そのブローチを見つめていた。
そして、その飛び出して行ったウツバットは・・・・・・。
「ひっく・・・ぐすっ・・・」
「そりゃひどい話だねぇ・・・」
すこやか市の夜、とある場所にある屋台でやけ酒をするかのようにウーロン茶を飲んでいた。もちろん背は人間よりも小さいので、グラスにストローをさしてそこから飲んでいるのだ。
ここの屋台のおじさんはウツバットを珍しい動物などと怪しまず、うちに来てくれればお客さんだと称して、ウツバットも受け入れてくれたのだ。
「ゴクゴク、ぷはぁ・・・」
涙目になりながら、お茶を飲み干して顔を俯かせようとするウツバット。
「ほら、おごりだ! 食いな!」
そう言っておじさんが差し出してくれたのは、赤くて丸い野菜を刻んで、チーズと一緒に漬けたような料理。
「あぁ! 僕の好きなトマトとチーズのマリネウツ! ありがとうウツ!!」
気が落ち込んでいたウツバットは、好物を出してくれたことにより笑顔になった。
「お茶のおかわりウツ!!」
「あいよ」
ウツバットはウーロン茶を要求し、おじさんはグラスにお茶を注いでいく。
「でもよぉ、そんなひどい相棒だったら別れちまえばいいじゃねぇか・・・」
おじさんはそんなわがまま放題の相棒だったら、いっその事そいつの元からいなくなってしまえばいいと提案する。
「それがクルシーナは根は悪い子じゃないウツ。本当は僕のことも考えてくれているウツ」
ウツバットは料理を摘みながら、その時のことを語り始める。
ーーーーウツバット。
ーーーー何ウツ?
ーーーーアタシがこの任務でやられそうになった時は、逃げなさいよ。
ーーーーなんでウツ?
ーーーーア、アタシはあんたを心配し、なんでもないわよ。
ーーーー??
クルシーナは裏切り者の抹殺を任された時も、ウツバットを気遣うような声をかけようとしていた。この時はわからなかったが、今思えば、彼女は本当は仲間には優しいということがわかるような光景だった。
ーーーーうぅぅ・・・うぅぅぅぅ・・・!!!
ーーーーどうしたの、ウツバット? そんなに泣いたりなんかして。
ーーーーうぅぅぅぅぅぅ・・・!!!!
ーーーー何よ、怪我したの。アタシによく見せなさいよ。
ーーーー本当にドジね。こんなことでいつまでも泣くんじゃないわよ。男でしょ?
クルシーナは怪我をして泣いている自分を、怪我を応急処置しつつも、自分なりの言葉で慰めてくれた。
ーーーーはい、これあげる。
ーーーーこれは、何ウツ?
ーーーー知らない。なんか安かったから適当に買ってきただけ。今思えばいらないから、アンタにあげるわ。
ーーーーよく見ると、僕にそっくりウツね。
ーーーーべ、別に! アンタに似てるから買ってきたわけじゃないわよ! いいから受け取れっての!!
ーーーー・・・うん、ありがとうウツ。
ーーーー!!・・・ふん!!
クルシーナが珍しく自分にプレゼントをくれたこと。ああ適当なことを言いつつも、本当は自分のために買ってきたんだろうと自分はそう思ったのだ。
「僕はそんなクルシーナだから、一緒にいたいんだウツ!!」
ウツバットは昔のことをすっかり思い出したのか、落ち込んだ気分はなくなっていた。
「へぇ・・・いいところあんだな、アンタの相棒」
ウツバットの話を聞いたおじさんは感心したように言う。
「わかってくれるウツ!? 親父さん!! おつりはいらないウツよ!!」
ウツバットは良さを理解してくれるおじさんに明るい声を上げると、札束を一枚取り出すとそのまま意気揚々とアジトへと帰っていく。
アジトへ帰還後、気分を良くしたウツバットはクルシーナの自室へと帰ってきた。
「クルシーナ、帰ったウツよー!」
ウツバットはそう言いながら部屋へと入るが、それに答える返事はない。それもそのはず、当の本人はベッドの横で座りながらも、ベッドに顔を伏しているからだった。
「どうしたウツ? クルシーナ」
ウツバットが彼女に少し近づいて声をかける。すると、少しの沈黙があった後・・・・・・。
「ッッッ!!!!!!」
クルシーナがすくっと顔をこちらに向けて睨みつける。その表情は赤く目を光らせて、怒りの形相をしていた。
「ウツバット!!! お前のせいで一人でストームビョーゲンの世話をさせられたんだぞ!!!! この街の管理がどんだけ大変か、お前もわかってるはずだろ!!??」
「ウツウツウツゥゥゥ!!??」
クルシーナはウツバットをチョップしながら追いかけ回す。見事にウツバットの頭にクリーンヒットしており、たまらずウツバットは逃げまわる。
しかし、クルシーナが何かに気づいて動きを止める。
「ん? スンスンスンスン・・・!!」
クルシーナはウツバットに顔を近づいて匂いを嗅ぐ。すると、そこから漂ったのは食べ物の匂い・・・しかも・・・!!
「おでんの匂いじゃないの!!??」
クルシーナにあっけなくバレてしまい、ウツバットはギクッと言いたげに体を震わせる。
「またアタシに隠れておでんなんか食べに行ったわね!!!!!!」
「ウツゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!??」
当然、どうして誘ってくれないんだと怒り心頭のクルシーナは、チョップ攻撃を再開。全部クリーンヒットし、ウツバットもたまらず逃げ出す。
「ひどいウツゥゥゥ・・・!!!」
心身共にまた傷ついたウツバットは泣きながら自分の部屋の中へと飛び込む。
シクシクシク・・・シクシクシク・・・。
相棒の酷い仕打ちに泣き伏せる。おでんを食べに行ったことの何がいけないのか・・・・・・。
そして、泣き伏せているウツバットが顔を上げると、そこには・・・!!
「クルシーナぁ!!」
まるでアイドルのように妖艶に、格好良くセクシーなポーズで映されているクルシーナのポスターだった。
ウツバットはへこんでいたことも忘れて興奮したように、部屋の中をぶつかるのも気にせずに飛び回る。
「やっぱりクルシーナが一番ウツ!!!!」
興奮が止まらず、思わず大声で歓喜の声をあげるウツバット。
「フフフ・・・・・・」
その様子を外から見ていたクルシーナは、ニタリと歯を見せながら笑みを浮かべていた。
さっき怒ったのは建前、本当はポスターを破いてマジ泣きしたことに罪悪感を覚えた彼女は、ドクルンにお願いして、自分のポスターをわざわざ作ってもらったのだ。これならあいつの癒しになるだろうと。
まあ、おでんを勝手に食べに行ったことはさすがに本気で怒っていたが・・・。まあ、とにかくあいつが元気になって安心した。
「あの二人は仲良しですね、本当に」
「全く見てて気持ちが悪いくらいに、なの」
「ヘバリーヌちゃんも相棒欲しいな~・・・」
その様子を扉越しから、ドクルン、イタイノン、ヘバリーヌは安堵したかのように見つめていた。
これがウツバットの一日、他にも見せられていない光景はあったが、それはまた別の話・・・・・・。