ありふれてない黒と器   作:銀煌

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やって来ましたトータス



これがありがちな異世界召喚

 光が落ち着くと同時に、亜墨は目を開く、目に入ってきたのは巨大な壁画だった。そこには色々描かれていたが、亜墨は胡散臭さを感じで目を逸らして周囲を見渡す。

 やはり、と言うべきか、クラスメイト達も同じ場所にいて、呆然と周囲を見渡していた。

 

「ようこそ、トータスへ。 勇者様、そしてご同胞の皆さま。 歓迎しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。 以後、よろしくお願い致しますぞ」

 

 そう言ったイシュタルは、落ち着ける場所を、と言って別の広間に誘うと、そこにはいくつもの長テーブルと椅子が置かれている場所についた。

 全員は座ると、丁度いいタイミングでメイドが入ってきた。そう、メイドだ。しかも、日本で見る嘘くさいメイドではなく、本当の美女・美少女メイド達。それを見た男子達は興奮気味に凝視して、女子をそれを冷たい目線で見ている。

 しかし、その中で亜墨とハジメは全く違う話をしていた。

 

「さて、メイドも気になるけど、まずは...」

 

「どう見ても、異世界召喚ってやつだよね?」

 

「あぁ、多分な。ドッキリしても手を込めすぎだろ。裁判起こしても余裕で勝てるレベル」

 

 亜墨とハジメは、今の状況を確認していた。オタクである二人にとって本物のメイドを凝視したくない訳がないのだが。状況が状況の為だ。

 

(しかし......あのイシュタルっていう爺さんより...)

 

 ハジメと話している中で、亜墨はチラッと、イシュタルの斜め後ろにいる女性に目を向けた。

 修道服を着ているその女性は、日本では見ないような銀髪で、どことなく人形を感じさせる、作り物の美しさがある。

 

(あの女の方が相当ヤバい感じがする......ッッ!!?)

 

 見すぎていたのか、修道服の女と目が合った亜墨はバッと視線を逸らした。目が合ってびっくりしたのでは無い。目が会った瞬間、とてつもない悪寒を感じたのだ。

 

(んだよ...あれ。鳥肌がやべぇ)

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争をさせようってことでしょ! そんなの許しません! えぇ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 亜墨がイシュタルの話をガン無視で考え事をしている中、そっちでは話が進んでいて、どうやら魔人族と戦争をしてくれと言われて愛子先生がブチ切れたようだ。

 

「お気持ちはお察しします。 しかし...あなた方の帰還は現状では不可能です」

「ふ、不可能って......ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

 愛子先生は叫ぶ。しかし、イシュタルは首を横に振って「帰還できるかどうかはエヒト様の御意思次第」と言う。

 それを聞いて愛子先生は脱力したようにストンと腰に椅子を落とす。周りの生徒も次々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

 

「なんで、なんで、なんで......」

 

 パニックになる生徒達。イシュタルに至っては神に選ばれて何故喜べないのかと言いたげは目で生徒達を見ている。

 すると、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音で静まり返って全員が注目する。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。 ......俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って放っておくなんて俺にはできない。それに、救済が終われば帰してくれるかもしれない。 ......イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。 エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「そうです。この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えてもいいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。 俺は戦う。 人々を救い、皆が家に帰れるように。 俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 拳を握り、そう宣言する光輝。それを見た亜墨は今までにない程の侮蔑の視線を光輝に向けた。

 

「ちっ......分かってねぇのか。 バカ乃河が」

 

 思わず口に出してしまう。ハジメも同じような事を思っているのか。亜墨の事をみて苦笑している。

 光輝は分かっていない。戦争の意味を、魔人族が少し違うだけの人に過ぎないことを。きっと、魔物と同じように獣とでも思っているのだろう。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。 お前一人じゃ心配だからな。 ......俺もやるぜ?」

 

「今のところ、それしかないわよね。 ......気に食わないけど......私もやるわ」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

 

 龍太郎、雫、香織のいつものメンバーが光輝に同意する。龍太郎は脳筋で分かっていないだろうが。雫はどういうことになるか、ある程度察しはついているみたいだ。とは言ってもこの状況じゃ、やれる事は限られているが。

 その後は流れるように全員が戦争に参加する事を認めた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 王宮に着くと、亜墨達は玉座の間に案内された。教会に負けない程の煌びやかな内装の廊下を歩く。ほどなくして、玉座の間の扉に着くと、イシュタルは悠々と中に入っていく。

 玉座の手前に着くと、イシュタルは生徒達をそこに留め、自分は国王の隣に歩いていく。

 そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。

 

 その後はただの自己紹介。国王の名は、エリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃はルルアリア。金髪美少年はランデル王子。王女はリリアーナという。

 自己紹介が終わると晩餐会が開かれた。異世界料理は大体美味しくないと書かれるのだが、普通に美味しかった。

 その時、ランデル殿下がしきりに香織に話しかけてるのを見て、亜墨は「諦めろ、もうそいつが惚れてる男がいるんだ」と合掌していた。

 

 晩餐が終わり解散すると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。豪奢な部屋に亜墨は唖然。衣食住が保証されてるとはいえ、高待遇だなと思い、濃度の濃い一日の疲れを感じ、ベットにダイブしてそのまま寝た。




ランデル殿下...南無
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