ありふれてない黒と器   作:銀煌

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落ちるぜぇぇ


ベヒモスと狙い

「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイルは全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も......」

 

 前も後ろも大混乱、隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。するとその時、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされて転倒してしまった。

 

「チッ、間に合わねぇ!?」

 

 亜墨がそれに気づき動き出すが少し遅かった。トラウムソルジャーの剣が彼女目掛けて振り下ろされる。しかし、それが彼女に当たることはなかった。

 

「早く、前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

 ハジメである。錬成を使ってトラウムソルジャーのバランスを崩したのだ。ハジメを見た女子生徒は元気な声で礼を言うと駆け出した。

 

「南雲! 大丈夫か!?」

 

「うん、国路。だけど、どうしようねこの状況」

 

「パニックになってやがる。まずはそれをどうにかしないと...」

 

「なら、やる事は一つだね」

 

「は? おい、南雲。どこいくんだ!」

 

 ハジメはチラリと光輝達を見たら、一人頷いて、走っていった。光輝達の方へ。

 

「そんな事言ってる場合かっ!」

 

 急いでハジメを追いかけた亜墨の耳に届いたのはいつも大人しいハジメが今までにない乱暴な口調と光輝の胸ぐらを掴んでいる光景だった。

 

「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!

 

 一撃で切り抜ける力が必要なんだ! みんなの恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 光輝はそれに一瞬呆けるが、ぶんぶんと頭を振って頷いた。

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルドさん! すいませ──」

 

 光輝が先に撤退するとそう言おうとした瞬間。騎士団員達が張った障壁が破られ。衝撃波がハジメ達を襲う。その影響で団長や騎士団員達は倒れ、身動きが取れないようだ。

 

「ぐっ......龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が二人に問う。団長達が倒れてる中、自分がやるしかないのだ。

 

「やるしかねぇだろ!」

 

「......なんとかやってみるわ!」

 

 二人そう言い、一歩前に出る。そこで、一人の少年も前に出た。

 

「俺も時間を稼ぐ。とりあえず任せたぞ、天之河」

 

「だ、だけど。お前は──「時間を稼ぐだけだろ?」」

 

 "お前は強くはない"とでも言おうとしたのだろう。光輝の言葉に亜墨は被せる。

 

「今までの訓練で分かったことがある。俺は...受け流しが上手いってな」

 

「............分かった。国路も任せた」

 

 その言葉と同時に、全員が動き出す。光輝は、今自分が出せる最大の技を放つために詠唱を開始した。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!!」

 

 聖剣から放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃する。周りは光で白く染まり、激震する橋に大きな亀裂が入っていく。

 

「はぁはぁ......やったか?」

 

(露骨なフラグ建てんじゃねぇ!)

 

 光輝のセリフに心の中でツッコム亜墨。徐々に光が収まると。その先には...無傷のベヒモスがいた。

 

 絶望で呆ける光輝達、そこにメルド団長が「ボケっとするな!」と叫び声を挙げ正気に戻す。

 

 龍太郎も雫もボロボロ、亜墨も例外ではなく、ボロボロで剣もヒビが入っていた。

 

(完璧に受け流せたとしても、あと数回。どうする?このまま死ぬぞ!?)

 

 焦りで思考が纏まらい亜墨に、ある魔法の言葉が聴こえた。

 

「〝錬成〟!」

 

 錬成、それはハジメが使える最も簡易で、唯一の魔法。その魔法により、ベヒモスの動きが止まる。

 

「坊主の作戦だ! ソルジャーどもを突破して安全地帯を作れ、作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! 坊主がある程度離脱してからだ!魔法で足止めしてる間に坊主が帰還したら、撤退だ!」

 

 それに香織が私も残るとメルド団長に言い慕る。

 

「坊主の思いを無駄にする気か!」

 

 香織は泣きそうな顔になり、それでも詠唱し、光輝を回復させる。復活した光輝が〝天翔閃〟で敵を切り裂く。

 

 生徒達は頼もしい光輝とメルド団長に沈んでいた気持ちが復活する。

 

 そこからはあっという間だった。凄まじい速度で殲滅していき、階段への道が開ける。安全地帯の階段を確保する。

 

 

「皆、待って! 南雲くんを助けなきゃ! 南雲くんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」

 

 

 無能と言われているハジメが魔物を抑えてることに困惑するクラスメイト達。

 

「何だよあれ、何してんだ?」

 

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

 

「そうだ! 坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! トラウムソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

 やっと安全地帯に来れたのに、という表情しているクラスメイト達だが、メルド団長の怒号で戦場に戻る。

 

 その時、檜山の表情を亜墨が見ていたなら、運命は変わっていたのかもしれない。

 

 ハジメはタイミングを見計らった。魔力が尽きていくの感じ、ハジメは最後の錬成をすると同時に、一気に駆け出した。

 

 

「今だっ!!」

 

 

 メルド団長の合図で一気に魔法が飛んでいく。何も出来ない亜墨はただそれを見ているだけだった。

 

 そして、たまたま目に付いた魔法、一つの火球が僅かに軌道を曲げた。ハジメの方に向かって。

 

「くっそ!!南雲ぉお!!!」

 

 亜墨は走り出してハジメの元へと走っていく。吹き飛んだハジメは三半規管がやられたのか、フラついていた。

 

「グルォォォォォオオオオオ!!!」

 

 ベヒモスの咆哮が響き渡る。頭部を赤熱化させたベヒモスはハジメ見据えながら突進した。

 

「ハァァァァッ!!!」

 

 そこに滑り込むように入る亜墨。振り返ったハジメは驚愕の表情をしているが、お構い無しに剣を構える。

 亜墨、一気に集中すると、ベヒモスの動きに合わせて剣を流すように当て、ベヒモスの頭部をズラした。

 

「カハッ──」

 

 同時に剣が折れ、衝撃で吹き飛んだ。直後、ベヒモスの攻撃が地面に当たり、橋全体が振動した。

 度重なる強大な攻撃によって橋が悲鳴を上げ、遂には崩壊した。

 

(ダメだこりゃ...)

 

 吹き飛ばされた衝撃がまだ残っているのか、亜墨は指一本も動かせずにいた。ふと横の方を見ると、掴むところをなくしたベヒモスと共に落ちていくハジメが見えた。

 

(クソが......悪い。南雲、俺のせいで...)

 

 こうして亜墨とハジメは奈落へと転落していった。

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