ありふれてない黒と器   作:銀煌

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展開が少し早いかもしれません




))ラストのハジメ云々の所を少し変更しました。


わー、暗い(現実逃避)

 水の流れる音が聞こえる。頬に当たる硬くて冷たい感触で亜墨は目を覚ます。

 

「うっ......痛ぇ。どこだよここは」

 

 全身が痛むが、なんとか力を込めて立ち上がった亜墨は今までのことを思い出しながら周囲を見渡す。

 

「そうだ...南雲、南雲はどこだ!??」

 

 一緒に落ちたのなら、近くにいるはずと思って周囲を見渡すが、誰もいない。どうやら、落ちた時に遠くはぐれたようだ。

 

「水はある、だけど食料が無ぇ......どの道長くは持たいぞ。早く南雲と合流して、奈落から抜け出さないと」

 

 震える足に喝を入れ、水源の見失わないようにして歩き出した。少し、すると何かの影が見え、近づこうとするが。

 

(くそっ、魔物かよ)

 

 ウサギっぽい魔物が水を飲んでいた。亜墨は一旦足元を見渡し、音がならないように岩陰に身を潜めた。

 

(冷静になれ、ここは奈落、六十五階層よりさらに下。そんな所にいる魔物が弱いはずがねぇ。ゴミカスの俺はすぐにやれるぞ...)

 

 元来た道を戻って反対側を探索する亜墨。すると───

 

「穴...か?」

 

 人一人が入れそうな程の穴があった。警戒しながらそこに入ると、少し奥があって、本当に何もない穴だった。

 

「何も無いけど、よかった。ここならそうそう魔物にバレることはないだろう。ここを一応の拠点にして、南雲も探そう」

 

 この時はまだ知らない。自分と離れた所に落ちたハジメは亜墨より先に目を覚まし、壮絶な経験をしていることを。

 先の未来、魔王と恐れられる者の誕生を、亜墨はまだ知らなかった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 あれから、十日と少しが経った。魔物から隠れながら辺りを捜索、水を飲んで穴に戻る。ずっとそれの繰り返しだった。

 魔物の恐怖や空腹により、亜墨の精神はピークに達していた。

 

(腹、減った。水で生きながらえているけど、もう限界だ...何でもいいから、食べたい。そう、何でもいいから......)

 

 思考はぐちゃぐちゃになり、もはや自分が何をしているのかすら分からなくなっていた。そこで、見つけた、否、見つけてしまった。

 

 ()()()()()を.........

 

「あっ.........肉」

 

 虚ろになりかけいる目でウサギの魔物を見つめる亜墨。きっと、魔物同士の争いに負けた魔物だろう。しかし、そんなことは亜墨にとってはどうでもよかった。

 久しぶりの食べ物、久しぶりの肉、久しぶりのご馳走。そこからの行動は迅速で、ウサギの魔物を抱えるとすぐに穴に戻った。全ての魔法に適性がない亜墨は、地面に魔法陣を描いて、懐にしまってあった魔法行使の効率を上げる魔石を使って〝火種〟を起こした。

 折れた剣で乱雑に皮を剥ぎ、ぶっ刺して肉を焼く。少しして、表面が焼けると、中まで焼けてるかを気にせず食いついた。

 

「うえっ...クソまじぃな。犬のフンの方がマシなレベルだぞこれ。だけど...飯食えるっていいな...」

 

 そう言いながら一気に口に詰めて、急いで水源に向い肉を流し込む。

 

「ん、んぐっ、ぷはぁ。はぁはぁ...よし、これでまた捜索に──ガッ!?」

 

 立ち上がろうとした瞬間、体に変化が生じた。そして、思い出した、魔物を食べてはいけないと言うことを。

 

「ガッ!? アガッァ!!!」

 

 体の内側から破壊されていく感覚、耐え難い痛みで逆に気絶ができず。刻一刻と死へのカウントダウンを進めていく。

 もしここに、ハジメが見つけたよに神水があったなら、亜墨も地獄を味わうが生き残れた。

 しかし、ここに神水は......ない。

 

「ガァァァ!!!?アァァァァ!!」

 

 もはや、人間が出せるとは思わない声を上げる亜墨。段々と意識が薄くなっていく。寝るからではなく、気絶するからでもない。このまま意識が途切れるということは、即ち、死。

 

 ───あーあ、まさか魔物を食べるなんて。

 

 ───勇気あるなぁ...。

 

 ───仕方ない!ここは僕が──

 

 頭の中で誰かの声が響いた。しかし、誰かと問いかけることも出来ず。亜墨の意識はそのまま落ちた。

 

 

 モゾ、モゾモゾ。

 

 倒れた亜墨の下で、()()が蠢く。体の一部が動いてるわけでも、自分の影が動く、というものでもない。

 ゆっくり、ゆっくりと()()は広がっていき、せり上がっている。

 徐々に徐々に、優しく包み込むように。

〝黒〟は亜墨を包み込むと、そのまま動かなくなった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 時は少し遡る。

 

 「〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが」

 

「ユエ? ......ユエ......ユエ......

 

「ああ、ユエっていうのはな、俺の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな...どうだ?」

 

「......んっ。 今日からユエ。 ありがとう」

 

「おう、取り敢えずだ......これ着とけ。 何時までも素っ裸じゃあなぁ」

 

「ハジメのエッチ」

 

 片腕を無く、白髪で、腰にこの世界に無いはずの銃を閉まっている少年が、吸血鬼の少女の助けていた。

 彼は南雲ハジメ、彼女はユエ。 後に魔王と言われるハジメの妻となる少女との邂逅だった。

 ハジメにはもう既にクラスメイトの裏切り者自分を守ると言った誰かの笑顔もどうでも良くなっていた。

 自分を守る為に体を張って一緒に奈落へ落ちた親友のことは()()()()()()()()()()

 もし、ハジメが奈落にいる時にユエ以外の誰かと出会ったらどうなるのか、それは...少し先で知ることになる。

 

 




どうした主人公!! 頑張れ主人公!!
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