ロリっ子と狼おじさん   作:俺のシェービングクリームどこ?

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この駄文は趣味で構成されている。
閲覧の場合は注意されたし。


ロリっ子とおじさん( 前 )

ㅤ太陽の光がさんさんと降り注ぎ、石造りの街を美しく照らす。

ㅤここは駆け出し冒険者の街、アクセル。多くの新米冒険者たちが腕を磨き、そして旅立っていく小さな街だ。

 

ㅤ時刻はお昼を少し過ぎた頃。腹を空かせているであろう相手の顔が頭にぽやぽや浮かび、すぐさま消える。

ㅤたぶん待てなくなったらその場で他の物、食べてるだろうなと思ったからだ。……俺のツケで。

ㅤ腕の中にある紙袋を抱え直しながら、道を急ぐ。また自分の知らないうちに作られた山積みの皿を見るのは勘弁願いたい。あれはちょっとした恐怖体験だ。

 

ㅤそれに俺も腹が減ってる。特にこの、鼻腔をくすぐる匂いがたまらん。紙袋の中から漂ってきてるやつが。

ㅤ野菜たっぷりのクラムチャウダーに魚とチーズのフライ、しかも揚げたてほやほや。焼いたばかりのバゲットもある。

ㅤ手に入ったのは非常に幸運だったと言えるだろう。行列ができるくらい人気だし、いつもなら昼前には完売してるからな。あいつもきっと喜ぶぞ。

 

ㅤ人に紛れ、歩みを進める。右に曲がって、大通りに出たからか、人の流れが一気に多くなってきた。

ㅤほどなくして辿り着いたのは、アクセルの冒険者ギルド。酒場と併設された、この街でも特に大きな建物だ。

 

「いらっしゃいませ。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席にどうぞ!」

 

ㅤ扉を開け中に入って進むと、ウェイトレスのひとりが愛想良く出迎えた。

ㅤこれに軽い会釈で応えて、多種多様な冒険者が行き交う店内を見渡す。

ㅤギルドは建物が大きいだけに中もかなり広い。さてさて、自称成長期の腹ぺこ娘はどこにいるのやら……。

 

ㅤ右か、左か。……いや、斜め後ろか。目より鼻に頼った方が早かったな。

ㅤ目的の少女、めぐみんは店の端にあるテーブル席にいた。紅魔族的格好いいポーズをとり、マントをたなびかせている。

ㅤあと、見知らぬ少年少女と一緒だ。新しいお友達だといいんだが。

 

「我が名はめぐみん!ㅤアークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」

「……冷やかしに来たのか?」

「ち、違わい!」

 

ㅤ反射的に片手で自分の目を覆ってしまう。ああ、めぐみん。お前ってやつは本当に。

ㅤあれほど初対面の相手に紅魔族的格好いい自己紹介はよくないって、ほどほどに言い含めておいたのに。思わずため息をついてしまいそうになる。

 

「……その赤い瞳。あなたもしかして紅魔族?」

 

ㅤ目ざとい少女がめぐみんの正体を見抜き、めぐみんは頷いて自分の冒険者カードを少女に手渡した。

 

ㅤやれやれと首を振り、こっちに背を向けているめぐみんに歩み寄る。わざとらしく足音をたてながら。

「いかにも!ㅤ私は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!ㅤ我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く!」

 

ㅤあーあ、駄目だ。聞こえてねーなこりゃ。

 

「……と、いうわけで、優秀な魔法使いはいりませんか?ㅤ……あー、えっと。今なら最高の弓使いもついてきますよ?」

「人をオマケ扱いするんじゃない」

 

ㅤ俺の売り込みをする時だけ、なぜか自信なさげなめぐみんの頬を引っ張る。

 

「あ痛ぁっ──わ、バーゲストじゃないですか。ね、ね、見てくださいよ、新しくパーティーに入れてくれそうな人たちですよ!」

 

ㅤ振り向き、そう言ってめぐみんは胸を張る。

 

「ね、カズマ、あの人すっごく怪しい感じなんですけど……」

「しっ、聞こえるだろ!」

 

ㅤ見てくださいよ、と紹介された少年少女たちは、俺の目の前でひそひそ話をしはじめた。

 

「見た感じあの子の保護者か。なら弓使い?」

「怪しすぎて最高の弓使いって感じじゃないんですけど?」

「いやでも弓装備してるぞ?」

 

ㅤあの、なあ。もう少し見えない場所でやるとかそういう努力を……まあいいか。

ㅤ怪しい男って印象は仕方ない。あっちは俺の素性を欠片も知らないわけだし。

 

ㅤおまけにこっちは革製のガントレットやブーツで徹底的に肌を隠し、首元には厚手のスカーフ。目元まで隠れるフード姿だ。

ㅤ見える部分も狼を模した立体的な仮面を着けて隠してる。それもこれも事情があるんだが、そんなのは子どもを怖がらせる言い訳にならないだろう。

 

ㅤ軽く咳払いをする。めぐみんのためにも、まず簡単な自己紹介をした方がよさそうだな。

 

「俺はバーゲスト。レンジャー、紹介の通りちょいとした器用さが売りの弓使いだ。今は両親に代わって、この子の面倒を見ている」

「え、あーっと。どうも」

「うちの子がすまないね。……ほら、昼飯だ」

「わ、わ!ㅤ待ってました、いただきます!」

 

ㅤ紙袋を小さな両手で受け取り、めぐみんは嬉嬉として中身を取り出しはじめた。ちょっと待たせすぎたか。

ㅤ俺の分も残しておいてくれればいいんだが。……この様子じゃ食われかねないな。

 

「ああ、上級職を応募してるって話らしいが、うちのめぐみんを試してみてはどうだろう?」

 

ㅤ少年に自分の冒険者カードを渡して、めぐみんの代わりに売り込みを続ける。

 

「む……バーゲストもですよ、お忘れなく!」

「俺はいいんだよ。お前がパーティーに入って、立派にやっていけると判断したら里に帰る」

 

ㅤつまりずっと一緒にいるわけじゃない。「そういう約束だ、お前の親父さんとの」と続けた俺に、めぐみんは不満そうに口を尖らせる。

 

「それ毎回言ってますけど、結局一緒にお試ししてくれますよね?」

「……心配なんだ。俺はお前がこんな時から見てるんだぞ?」

 

ㅤそれこそ赤ん坊の頃からだという気持ちを込めて、親指と人差し指で僅かな隙間を作ってみせると、めぐみんは鼻を鳴らした。

 

「どんだけ小さいんですか。言っておきますけど、まだ成長期ですから。せ、い、ちょ、う、き!」

「……この通り伸び代は十二分にある。どうだろうか?」

「ぅおい、なにか言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。め、目を逸らすなぁ!」

 

ㅤ俺の視線がどうにも彼女の癪に触ったのか、「うおおおおお!」と弱っちいハンマーパンチを胴に何発か食らわされるものの、文字通り痛くも痒くもない。

ㅤこれはそもそもめぐみんのパンチが弱々しいというのもあるし、俺がローブの下に革防具を着込んでいるからでもある。

 

「……その眼帯はどうしたんだ?ㅤ怪我でもしてるのなら、こいつに治してもらったらどうだ?」

「この、この、このっ──ハッ。……フフ。これは、我が強大なる魔力を抑えるマジックアイテムであり……。もし、これが外されることがあれば……。その時は。この世に大いなる厄災がもたらされるだろう……!」

 

ㅤ殴り掛かる体勢から取り繕うようにポーズをとり、なにやら壮大なホラを吹くめぐみんの頬を、顎の下から片手でぷにぷにと掴む。咄嗟に。

 

「お前はまたそうやって……。嘘を言うな嘘を」

「あうえええ……」

「こいつの眼帯は紅魔族特有の……まあなんだ、ラッキーアイテム的な?ㅤオシャレアイテム的なやつだ、気にするな」

 

ㅤほらさっさと食えとめぐみんに促し、自分もバゲットに手を伸ばす。

ㅤサクッと軽い塩気と素晴らしい香りが口の中に広がる。ああ、たしかにこいつはうまい。人気が出るわけだ。

 

「……ええと。カズマに説明すると、彼女たち紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ──」

「ああ……それなんだが──」

「ば、バーゲスト、バーゲスト!ㅤこれすっごく美味しいですよ、ひと口あげます!ㅤほら!」

「おいやめ──」

 

ㅤ無理やり魚とチーズのフライをねじ込まれ、口のまわりを油まみれにされる。

ㅤ今しがた、少女がめぐみんたち紅魔族の説明をしてたんで、とっても大事なことを補足しようとしたんだが。

「紅魔族は、名前の由来となっている特徴的な赤い瞳と……。そして、それぞれが変な名前をしてるの」

「ふぇ……んな名前とは失礼な。私から言わせれば、街の人たちの方が変な名前をしていると思うのです」

「……ちなみに、両親の名前を聞いてもいいか?」

 

ㅤ少年に訊ねられためぐみんが、マントをひるがえす。

 

「母はゆいゆい。父はひょいざぶろー!」

「「…………」」

 

ㅤまあ、そうなるとは思ったが。

ㅤ旧友の名前を聞かされた二人は、なんとも言えない表情で絶句する。

 

「……とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな?ㅤ仲間にしてもいいか?」

「んー?ㅤ私の両親の名前についてなにか言いたいことでも?ㅤんー?」

 

ㅤ少年と少女から俺たちの冒険者カードを返してもらい、憤慨しためぐみんをなだめる。

ㅤ相変わらず俺を見る目は訝しげだが、少女は「いいんじゃない?」と口を開いた。

 

「冒険者カードは偽造できないし、彼女は上級職の、強力な攻撃魔法を自在に使うアークウィザードで間違いないわ。カードにも、高い魔力値が記されてるし、これは期待できそう」

「おい」

「それにもし彼女の言う通り本当に爆裂魔法が使えるのなら、これは凄いことよ?ㅤ爆裂魔法は、習得が極めて難しいと言われる爆発系の、最上級クラスの魔法だもの」

「ちょっと、おい。彼女ではなく、私のことはちゃんと名前で呼んでほしい」

 

ㅤ抗議するめぐみんの口元を拭ってやりながら、自分のフライとバゲットを口の中に放り込み、咀嚼してスープと具を流し込む。

ㅤよくそんなので本当に食事を楽しめてるのかと訊かれるが、昔からゆっくり食べてる時間を確保できなかったもんで、これで慣れてしまった。もうすっかり。

 

「レンジャーは……正直よくわからないわね。それくらいレアな上級職なの。わかってるのはアーチャーと、あといくつかの職のごった煮ってことくらいよ」

「ははは、せめて器用貧乏と言ってくれないか。ごちそうさま、美味かった。これなら倍払ってもいいな」

 

ㅤ初歩的な着火魔法を使い、ゴミを片付ける。

 

「俺は付き添い程度に考えてくれ。メインはあくまでめぐみんだ」

「あー、わかった。俺はカズマ。で、こっちはアクアだ。よろしくアークウィザード……と、レンジャーのバーゲスト……さん?」

「バーゲストで構わない」

「じゃ、バーゲストだな。よろしく」

「ああ、よろしく」

 

ㅤめぐみんはスープの匙を咥えながら、カズマをじろっと見た。




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