ぱらルカさんのくえっぽい世界の冒険   作:両生金魚

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最近もんむす熱が溢れてむしゃくしゃしてやった
特に反省はしていない


空から落ちてきたのは女神様ではなく魔王様

この並行世界は――様々な因果が寄り集まっているようだ。父の記憶が流入した時に一緒に持ち込んでしまったか

この世界の父よ。貴方はこの世界ではどんな選択をするのだろうな――?

……腹違いの姉妹が大量に増える気がする。この世界の父よ、刺されたり監禁されたり調教されたり食われたり同化されたり異次元に連れ攫われたりしないようにな……

 

 ふと感じるのは柔らかな光と荘厳な雰囲気。ゆっくりと意識が覚醒していく中、この感覚には覚えが有るなとまだ霞がかった頭の中でぼんやりと思う。

 

「ルカ……勇者ルカ……」

 

 目覚めていく意識の中、聞き覚えのある声が聞こえた。目をはっきりと開くと、そこには身体の何処を見ても欠けるところの無い美しい女神の姿がそこに顕現していた。

 

「勇者ルカよ……私の声が聞こえますか?」

 

「は、はいっ! 聞こえています、イリアス様――!」

 

 かつて経験した感覚が、この体験が夢で無い事を確信させる。この響いてくる声に聖なる感覚は、間違いなく女神イリアスのものだ。だとしたら兎にも角にも、機嫌を絶対に損ねてはいけない。共に旅をして知った眼の前の女神様の本性は実はわがままで、沸点もとてつもなく低いのだから。混乱する思考を何とか落ち着けつつ御言葉に相槌を打っていく。今はとにかくこの状況を把握することが第一だ――「ときにルカ……あなたは、とうとう『旅立ちの年齢』となりますね」

 

「は、はいっ!」

 

「ふふっ、この女神を前にして緊張するのも分かりますが、そう固くならずともよいのですよ」

 

 旅立ちの年齢という単語で、今の時期は察せた。そして、【世界を救え】ではなく【魔王を討ち滅ぼせ】との御言葉。恐らくここは平行世界なのだろう。でなければ、女神の姿が健在で魔王を滅ぼすことを優先させる筈も無いからだ。ひょっとしたら、またラファエロという天使に異世界に飛ばされてしまったのだろうか……?などと様々なことを目まぐるしく考えながらイリアスに返事をしていると、もう話も終わりに差し掛かる。

 

「行きなさい、ルカ。私は、いつでもあなたのことを見守っています――」

 

「はいっ!」

 

 返事をすると、目の前の光景が消えていく。そして意識が唐突に覚醒すると、ポケット魔王城では無いベッドの上に横たわっていた。周りを見渡すと、懐かしい感覚はするのに覚えは無い部屋だ。部屋を出て下に降りると、自分の家より一回りは狭かった。宿としては営業していなかったのだろう。極々普通の民家であり、綺麗に整えられていた。今日が旅立ちの日ということは、しばらく戻るつもりもなかったのだろう。台所には芋一個にお茶っ葉すら無い。その代わり、壁際の背嚢には旅の荷物が一纏めにしてあった。

 

「洗礼の日で旅立ちの日かぁ……。朝ご飯はパンでも買うとして、とりあえず神殿に行こうかな」

 

 イリアス様が健在の世界、フリーダムに洗礼をブッチしてもいいことなんて何一つ無いだろうし、勇者としての特権も手に入る。そういえば、自分は二度も旅立ちを経験したことが有るような――頭にノイズが走る――

 

 ひとまず、イリアスの五戒の一つであるお祈りを捧げて、神殿へ行こうとした時、長閑な空気が唐突に破られた。

 

「た、た、大変だぁ!」

 

「っ!」

 

 静かな村に叫び声が上がると同時に反射的に身構え周囲の気配を探る。木こりのハンスさんの声だ。

 

「近くに魔物が出たぞぉ!」「みんな、家に隠れるんだ! 村に入ってくるかもしれないぞ!」「あ、あわわわわわ……!」「お、お母さーん!!」

 

 叫び声とともに、一気に村がパニックに陥ってしまった。そういえば、自分が洗礼を受ける日もこんな騒動が有ったっけと変な感慨に浸りつつ、剣を引っ掴んで飛び出す。まだ改造も何も施されていない鉄製のカスタムソードに、盾の一枚鎧一着すら無い有様だが、身体能力は全く落ちていない様だ。派手に音を立ててドアを開けると、村の中は大混乱だった。

 

「ひぃ、逃げろぉ……!」「ひぇぇ……! こ、こんなの初めてだぜ……!」

 

 村の人達は我先にと逃げ惑う中、周囲に目を凝らす。野菜売りのお婆さんの近くにいくら目を凝らしても、そこにスライム娘の姿も痕跡も無かった。

 

「(やっぱり、ここは魔物と共存が出来ていない世界!)」

 

 イリアス様が健在で在る以上、予想できたことだが悲しくもある。だが、ひとまずは村人が襲われないようにしなければ! 少し足を止めて村を観察して、いざ駆け出すとする時にその様子を見つけたベティおばさんが声を張り上げた。

 

「おやめよ、ルカ! ここは、イリアス神殿の兵隊さんたちに任せとくんだ!」

 

 ルカを心配する声。こっちの世界でも優しいんだなあと嬉しくなると同時に、心配させないようにしなければと使命感が湧き出てくる。

 

「大丈夫だよ、おばさん! 僕がどうにかしてくるよ!」

 

「ル、ルカ、あんた……。――任せたよ!」

 

 普段と全く違う雰囲気のルカを見て、何かを感じ取ったのか、しっかりと送り出すベティおばさん。そして、家に入る所を見届けると、ハンスの声のした方に駆け出す。森に通じる一本道を駆け抜けると、その魔物はすぐに見つかった。

 

スライム娘が現れた!

 

「あはは、美味しそうな男の子~♪」

 

 現れたのは、イリアスヴィルの近くにたくさん住んでいる魔物のスライム娘だった。力自体は弱いのだが――そういえば元の世界の兵士たちも大勢で囲んでいたりしたっけなと思い出す。兎も角、魔物としては弱くてもそれでも普通の人間には脅威なのだ。だが、あまり手荒なことはしたく無い。

 

「あの……ここは人間の村の近くなんだ。だから、大人しく引き返してくれないかな?」

 

 剣も鞘に収めて両手も下げて敵意がないことをアピールしつつも説得する。が、しかし

 

「あはは……キミ、平和主義者ってやつ? そんなお願い聞けないよ~。あたしだって、お腹ぺこぺこなんだから。それとも……キミが、あたしにセーエキごちそうしてくれるの?」

 

「そ、それは難しいかな……おさかなじゃ駄目?」

 

「やーだ♪ おさかなも好きだけど、セーエキ、あたし食べてみたいんだもん♪」

 

 元の世界では散々に魔物に絞られたものだが、この世界ではイリアス様が健在なのだ。友好的でも腹ペコの魔物に迂闊に与えたらそのままお持ち帰りコースが殆どであろう。

 

「仕方ないな……」

 

 手荒なことはしたくない。ため息一つこぼしつつテクテクと近くにあった木に歩み寄って、おもむろに殴る。瞬間、ドバゴンッ!と凄まじい音と共に木の幹が粉々に砕け散った。そして派手に倒れて土埃を上げる。

 

「どうしても戦うって言うなら、キミもこうなっちゃうよ?」

 

 と、母親譲りと最近一部で評判の笑顔を向ける。すると効果は覿面で

 

「ふ、ふぇえええええええええええんっ! こわいよぉおおおおっ!」と叫び声を上げて泣きながら逃げ出してしまった。

 

スライム娘を追い払った!

10ポイントの経験値を得た!

 

「やれやれ……」

 

 パンパンと手の木屑を払いつつスライム娘を見送る。魔物と共存していないこちらの世界では、尚の事戦う機会は増えるだろう。だが、今手にしているのは自分の体格に合わせてあるだけの鉄の剣に、布の服。この辺りは魔物が最も弱いイリアス大陸だからまだいいが、武具の新調は間違いなく早めにしておいたほうが良い。その為にも洗礼を受けなければと踵を返した時、またなんだか聞き覚えのある衝撃と轟音が森から響いた。

 

「ひょっとして……イリアス様っ!?」

 

 裏山ではなく森に落ちた事が疑問だが、疑問はひとまず置いておいて森の中を駆ける。森に住み慣れた魔物も驚くような速度で草木をかき分けて駆け抜けていくと、多数の折れた木々によって視界が開ける。そして、倒れ伏した木々の終着点。その地面にポッカリとあいた穴の中心に彼女は居た。

 

「――アリス」

 

 一度も見たことの無い――しかし、見間違えるはずもない仲間の姿。このイリアスヴィルからずっと、アリス(イリアス様)と――二つの、記憶……!?

 

 頭が混乱する。だが、とりあえず目の前のアリスをどうにかしなければ。目立った外傷は無いが、相当なダメージを受けている様だ。だが、薬草もアイテムも医術に使う医薬品の様な職技に使うアイテムも、何も持っていない。杖を使わない白魔法も威力不足だろう。なら……

 

「奇跡の剣よ、神聖なる加護を!」

 

 剣技の奥義、聖なる癒やしの力を使い癒やしの力を与える。剣から発せられた光はみるみる倒れた体に降り注ぎ、内部のダメージを修復していく。そして、大丈夫かなと覗き込むとぱちくりと目が開いた。

 

「大丈夫? アリス?」

 

 それに対し、つい仲間であった頃の感覚そのままに声をかけてしまう――片手に剣を持って。

 

「っ!」

 

 ジロジロとルカを見て、剣を目にすると途端に目を険しくし、瞬間尾で薙ぎ払ってきた。それに気がついて、慌てて飛び退くルカ。

 

「そこな人間よ……余の寝込みを襲うとは、覚悟は出来ているのだろうな!!?」

 

 目に怒りと憎悪を滾らせこちらを睨んでくるアリス。まずい、まず過ぎる……!

 

「ち、違うよ! 僕はキミを治してたんだよ!」

 

「治すときに剣を掲げる奴がこの世の何処に居る!」

 

「そういう剣技が有るんだって! ほ、ほら、体治ってるでしょ!?」

 

「巫山戯たことを抜かすな……って、何? ……治ってるだと!?」

 

 自分の体を確かめてみて、痛みが無い事に驚いている様子だ。こちらに向ける敵意が急速に困惑に変わっていく。

 

「……本当に治したのか? もう一度やってみろ。――もし変なことをすれば容赦はせぬぞ」

 

「う、うん、分かった……奇跡の剣よ、神聖なる加護を!」

 

 もう一度剣を高々と掲げると、再び癒やしの力がアリスに降り注ぎ、残っていたダメージも回復させる。

 

「うむ……嘘は言ってなかったようだな。だが……」

 

「だが?」

 

 何か不満だったのだろうか? 首をかしげるルカ。

 

「おもいっきり聖なる力ではないか! 余にこの様な不快な光を浴びせるとは貴様、舐めてるのか!?」

 

「なっ!?」

 

 折角助けてやったのに酷い言い草である。当然だがどうやらこちらの世界でもイリアス様との仲は最悪の様だ。だが分かっていても腹が立つ物は腹が立つ。

 

「今出来る中で一番効果の高い技を使ってやったんだよ! 助けてやったのに何様だ!?」

 

「何様だと!? 余こそは!……余、こそ……」

 

 段々と声が小さくなるアリス。どうやらいきなり魔王だと名乗るのは憚られたらしい。少し言い淀んだ後にそっぽを向いて「た、旅のグルメだ……」と名乗った。

 

「……」「ええいっ! そんな目で見るな!」

 

 生暖かい目で見たらまた怒られた。全くしょうがないなぁなんて思っていると、向こうも段々と冷静になったのか周囲を見渡して状況を把握しようとしている。

 

「まあいい。ところでここはどこだ?」

 

「イリアスヴィルの近くだよ」

 

「そんな所まで飛ばされたか。あの女、なんという馬鹿力だ……。それで、貴様は何者なのだ……?」

 

 強力な癒やしの力に、魔王の攻撃を避ける身体能力。これが一番疑問に思うところだろう。はたして、どんな奴なのか――

 

「勇者見習いのルカだけど……この近くの、イリアスヴィルの出身の」

 

「お前の様な見習いがいるか」

 

 ノータイムで真顔で突っ込まれた。いやまあ、確かに100%嘘だと思うのも仕方ないけど、恐らく入れ替わってしまった以上あくまでも立場はまだ勇者見習いなのだ。

 

「……だが、確かに貴様の匂いは今までで一番極上だな……本当に洗礼を受けていないのか」

 

 ひくひくと鼻を動かした後、じゅるりと舌なめずりをするアリス。どうやら腹ペコも変わっていないようだというか、体が大きい分余計に酷くなっているかもしれない。

 

「って、洗礼だよそうだ、早く受けに行かなきゃ!」

 

「待て」

 

 時間を思い出して慌てて踵を返すと、アリスの尻尾がしゅるりと巻き付こうとする。割と本気で。それに慌てて、ルカも避ける。

 

「は、話はまた後でするから今は待って! 僕は今日洗礼を受ける日なんだ!」

 

「イリアスの洗礼など受けるな、くだらん。それにお前の精が激マズになるなどあまりに勿体ない」

 

 獲物を見る目でじっとこちらを見てくるアリス。捕食者に狙われている様で……いや、文字通り狙われているのだが、力が全盛期な分小さい体の時より迫力が段違いで思わず冷や汗が出る。

 

「これから旅をしなきゃならないから、洗礼を受けて勇者になったほうが何かと都合が良いんだよ――っと、じゃあまた後で! 時の奔流、僕に従え!ワープ!」

 

「はぁ!? 人間が時魔法だと!? それに、そういえば余の名前も知っていたような…… まあ、残念ながらイリアスの洗礼を受けれるとは思えんが」

 

 様々な謎は有れど、これから起きるであろう事に愉快そうに笑うアリス。そして、来る時は徒歩で来たのだろう。忘れようのない芳醇な香りが残っている。それを辿り、腹が減ったなと消えていった極上の香りを追いかけ期待に腹を踊らせるのであった。

 

 

 

 




ルカさんはぱら世界を2周した記憶がありますが、まだあまりはっきりとはしていません。イメージで言うと三淫魔みたく1周目と2周目のルカさんの魂が合体したようなイメージでしょうか。
LVは60で、職業も種族も極めまくってる感じな激強ルカさんです。しかし、それでも最強でないのがこの世界の恐ろしい所……
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