もう思うがままに文章書き連ねたほうが結果的に早くなるかな?
とりあえず朝ごはんのサンドイッチとハーブティーで一息を付くと、早速これからの為の作戦会議である。
「さて、ルカ。まずは何を置いても私を高い山に連れて行くのです。そこで呼びかければ忠実なる我が下僕達がすぐに駆けつけましょう」
戻る気満々なイリアス様だが――ルカの表情は暗い。
「えーと……イリアス様、多分無理かと……」
「何故ですか? この姿でも天使であれば最低限念話は飛ばせるのですよ。最悪、あなたの力を借りればいいですし」
なおアリスはイリアスが苦境で足掻くのは面白いが、イリアスに六祖大縛呪をかける程の連中が野放しになっているのもそれはそれで大問題なのでひとまずは静観している様だ。
「その御姿だと、下っ端の天使はイリアス様だと分かって頂けないと言うか、向こうで初見で見抜いてきた天使はミカエラさんとエデンさんだけです。と言うより下っ端の天使はイリアス様だと偽ったと襲いかかってきましたし……」
「な、なんという事でしょう……!? 主の苦境を分からぬとは天使は無能揃いですか!?」
激高するイリアスだがどうしようもない。何せ姿が変わり力は弱くなりで自分の言動以外に証明するものは何もない。そしてそんな様子を本当に愉しそうに眺めるアリス。
「くくくくく……いや大した部下達だなイリアスよ……」
「お黙りなさい! この性悪魔王! あなただってどれだけの部下があなたを知っているのです!?」
「アリス、とりあえず話が進まないから挑発は止めてね……」
まあアリスとしても大事な話だとは分かっているのだがそれでも愉悦は止まらないのでついつい煽ってしまう。
「それで現実的な選択肢としては……僕たちと一緒に旅をするか、それとも何処かで隠れ住むかでしょうか?」
「あなた達に付いて行くならばともかく、私が隠れ住む当てなど……当てなど……」
無いと言おうとして、ふと気が付く。そして顔が青くなる。
「だ、だだだ駄目ですっ!? ミカエラの所は駄目ですっ!? この身体で天軍の剣など受けたらチリ一つ残りませんよ!?」
またもや青くなってブルブル震えるイリアス様。そういえば向こうの世界でもミカエラさんに怯えていたなあ……。アリスもそんな様子を呆れ半分で見ている。
「ええと、じゃあイリアスヴィルの僕の家で一人で暮らすというのは「そんな暮らしなど何時刺客が来るか分からないではないですか!?」…ですよね」
何せこの女神様、自業自得でひっじょ~~~に敵が多いのだ。無防備で居たら間違いなく襲われるだろう。となると残る現実的な手段はやはり……
「じゃあ、僕たちと一緒に旅をしますか? 少なくとも僕もアリスもそこらの魔物どころか聖魔大戦級の魔物でも無い限りどうにかなるかと思いますけど」
「おい、余はこんな奴を守るつもりはないぞ」
「そんな事言うなよアリス……そこを何とか一つ頼むよ」
「ふんっ」
やはり一緒に旅をする事か。何をするにしても情報収集も必要だし、前からルカからは誘われていたし。魔王まで一緒なのは気に食わないが、実力だけは確かなのだ。攻撃を受けそうになったらこれを囮にすればいいだろうと腹黒く計算をする。
「いいでしょう、ルカ。あなたにこの女神と共に旅をし尽くす栄誉を与えます。ちゃんと守るのですよ。そして私が元に戻った暁には天界で何一つ不自由しない暮らしを約束しましょう」
「守ってもらう立場の癖になんと偉そうにしているのだ……」
小さくなっても変わらない尊大な態度に呆れるアリス。そしてルカにとっては平行世界での旅路で慣れたもの。最初の方は旅の愚痴が凄かったっけと苦笑する。だが、人里に出る前にもう一つ大事なことが有ったと思いつく。
「そうだ、イリアス様の偽名を決めておきましょうか」
「何故私が偽りの名を名乗らないといけないのですっ!?」
「ちっちゃい天使の姿でイリアス様イリアス様って呼んでいたら、『その名をよくも偽ったな!?』とか言って地上を見張っている天使が襲撃に来たりしません?」
顔を真赤にして抗議するも、ルカの想像した光景が自分もありありと思い浮かんだのか、断腸の思いで偽名を考えるロリアス様。
「……しかたありません。この尊き名を偽る事は非常に不本意ですが……! この姿でいる内はアイリスと呼ぶのです」
「はぁい」「うむ、分かったぞ、小天使アイリスよ」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ……!」
これで大事な事は一通り決まったか。地上での常識は……色々と失敗しながら覚えていけばいいだろう。なんだかんだで向こうでも順応が早かったしと思いつつ、荷物を全てまとめ終える。
「それじゃあ方針が決まったし、早速出発しようか」
「うむ、早く次の大陸での名産品を味わいたいぞ」
「この私が土にまみれて歩くなどなんたる屈辱――覚えていなさい! 黒のアリス! プロメスティン!」
こうして、奇妙な三人の旅が始まったのだった――「ま、待ちなさいルカ、魔王! ……あ、歩くのが早すぎます!」――前途多難では有るのだが。
「私の名を冠した港町なのに、なんと寂れているのでしょう……」
女神イリアスが下界に堕ちて初めてやってきた街は、それはそれは寂れた港町であった。しかも自分の名が冠されている港町でこれなのだから、その怒りや悲しみもひとしおである。
「ああ口惜しい……この様な暴虐を誅す事も出来ないとは……」
かの邪神との密約により直接手出しが出来なかった事を歯噛みする。そして今はどうにかする力すら無いのだ。
「…………」
この事についてはアリスも分が悪いのか、またそこらの屋台で焼き魚やら焼貝やらスープやらを買い込んでいる。どうやらお宝が手に入った分更に自重が効かなくなった様だ。そんな様子を眺めると、同じ様にお腹が空いてきた女神様。くいくいとルカの袖を引く。
「ルカ――ルカ――聞こえますか? 私は今ひそひそ声で話をしています。この中で味の良い物を献上するのです……」
「はーい、分かりました」
まあこう言われるだろうなと思っていたので、焼き加減やら香りやら塩の振り方を見て良さそうなのを二串購入。そして片方のより美味しそうなのを渡すルカ。
「むぅ、魚の死骸を焼いて直接かぶり付くとはなんと野蛮な……あむあむ……あっ、美味しい……♪」
どうやら満足してくれたようで何よりだ。ほっと一安心して自分も一口。初めて地上に降りて見る街はまさしくまるで視点が違い、見えるものもまた違ってくる様だ。珍しそうにしきりにあちこちをキョロキョロと見ている。
そして武器屋を見つけると、龍鱗の弓を一つねだられた。この体格でしかも弱体化した状態で近接戦は無謀なので弓を選んだようだ。幸い、洞窟に有った宝で支払いが出来たのであるが、少なくない出費を強いられてしまった。
「今は力が弱っているので仕方有りませんが、魔物をこの手で誅せるというのは中々心が踊りますね。ルカ、セントラ大陸に渡ったら早速試し打ちをするので手伝うのですよ」
「無茶だけはしないでくださいね?」
苦笑しつつ、適当な船を探す。今にも出港ができそうな船を見付けたが、海神の鈴を持ってきたと言っても取り合ってくれなかった。向こうではこれを見せればすぐに船を出してくれたのだが――と困っていたらアリスの暗示により無事に出港する事が出来た。
セントラ大陸まで僅か1日の船旅である。この程度の長さなら、初めて船に乗るアリスもイリアスも特に文句は出ないのか、珍しそうに船を観察したり、海を眺めたりしている。特にイリアスはちっちゃくてかわいい少女の身体で有ることも相まって、船員達からビスケットや飴を貰って喜んでいた。
「ふふふ、やはりこの女神の溢れ出る神聖さは隠せないようですね。こんなに貢物が集まりました」
巾着袋一杯にお菓子を詰め込まれて上機嫌に食べている。それを嗅ぎつけたか、無遠慮に手を突っ込んでそれを横から奪うアリス。
「あっ!? 何をするのですかっ!?」
「くくくくく……中々美味いではないか……」
「返しなさい! 返すのです!」
手の届かない所に袋が行ってしまい、ぴょんぴょん飛び跳ねて取り返そうとするのだが届かない。それを見てドヤ顔でお菓子を頬張るアリス。なんて低レベルな争いなのだろうか……。
「う、うぅ……」
そして涙目になるイリアス様。そしてそれを見た周りの冷たい視線が魔王様に刺さる。
「うわ、ひでぇ……」「子供から奪うかよ普通……」「食い意地張ってんなぁ……」
「…………」
流石にあまりにも気まずかったのかスッと巾着を返したアリス。そのままふてくされて海を眺めに戻ってしまった。ちなみにルカは無理やり船員達を働かせるだけというのも気まずいので、料理やら船内の清掃やら整頓やら、味皇+パーフェクトメイドの特性を生かして働きまくっていた。どうかこのままずっと働いてくれと船長含めて船員一同から懇願されたのはご愛嬌である。
「魔力の働きによりこうやって相手の視力を多角的な意味で奪ってだな――魔力の変換の方法は――」
「こう、かな?」
ルカは暗闇の魔眼を覚えた!
日は水平線から沈み、すっかり夜になった船上で、ルカはまた新しい技を習っていた。
「うむ。相変わらず飲み込みが早いな。言うまでもないことだが眼のもたらす情報は非常に多い。それだけに多くの相手に有効に作用するだろう。――尤も、ポピュラーな妨害方法だけに上位の魔物はそれなりに対策を持っていると思ったほうがいいが」
「だね。向こうでもこういう異常状態は強い相手には中々効きにくかったよ」
「あああ…またしても魔の穢れた技を覚えてしまうとは……ですが仕方有りません。その力を用いて魔物を誅するのですよ」
魔物の技を覚えていくことにご立腹な様だが、その技が向けられるのは敵であるならばと一応は納得してくれたご様子。自分も何か技を教えたいがと思ったが、平行世界の自分により結構な数の天使技を覚えていると知ってしょぼくれてしまうイリアス様であった。
そんなのんびりした時間を過ごしていると、不意に海が荒れ狂い始めた。先程まで静かだったのが嘘の様に辺りに暴風が吹き荒れる。だが、海神の鈴のお陰で船には全く影響がない。自分は一度経験があるのだが、この加護を未体験な二人はしきりに感心している。
と、そんな時に吹いた一筋のつむじ風。その風が運んできた先に3人が目を向けると、舳先には一人の美しい妖魔が立っていた。
アルマエルマが現れた!
「お前は――」「あなたは、淫魔の女王――アルマエルマ!」
油断なくアルマエルマを見据えるルカに、怒りの表情で睨むイリアス様。そして、やや離れて腕を組んで成り行きを見守る魔王。
「なるほど……あなたが、例の人間ね。ふふっ……アリスフィーズ様が気に入られるだけあって……美味しそう……それに、そっちのちっちゃい子は天使かしら? 実は一度食べてみたかったのよね♪」
「このめg…もがっ!?」
「アイリス様っ!? しーっ!? しーっ!?」
女神と名乗ろうとしたので慌てて口を塞ぐルカ。淫魔は特に嫌いなようだが、小さくなった女神だと正体がバレたらこの場で本気で食い殺しに来かねない。
アルマエルマはそんな様子を面白そうに見つつ、舌なめずりしてからアリスの方に視線をやった。
「アリスフィーズ様。魔物を傷つける勇者は、退治してもいいという御命令でしたが――その御命令、確かに遂行してよろしいのでしょうか?」
「……例外は無い。余はあくまで、このてん……吸血……キメ……に、にん……げん……を観察しているだけだ」
人間と言うのに相当言い淀まれてしまった。
「クスッ……そうは思えませんが、分かりました。そういう事よ……ルカちゃん。この海域は通してあげないわ」
「……僕としては、船を妨害するのは止めて欲しいんだけど。――勇者以外の大勢の人に迷惑がかかって、暮らしていけない人も出てくる。このままじゃ魔物への憎悪が余計募っちゃうよ」
そう言うと、スッと目を細めてこちらを見てくる。
「そうは言ってもねえ。イリアス神殿で生み出された勇者があちこちで悪さをしているのよ。いくら退治しても退治しても湧き出てくるなら――元を止めないと駄目じゃない?」
「……これから暫くは洗礼の儀は起きないんだけど……ね。お互いに譲れないものが有るか。それじゃあ――」
「ええ。力づくで言うことをきかせてごらんなさい?」
クスクスと笑うアルマエルマ。その表情からは余裕が見て取れる。グランベリアから詳しい話を聞いていないのか、それなりに実力は有りそうだと見ては取っていても明らかな油断が見て取れる。コロシアムで戦った時程度には手を抜いているようだ。本気ならば今の装備では相当に分が悪い。なら、その本気を出される前に――叩く!
「其れは英雄の物語。世界を巡り、精霊と心を通わせ、終には魔を打ち破るに至った彼の名は――」
ルカは英雄譚を語った!仲間に勇気が漲ってくる!
「ほらほら、敵を目の前にのんびり詠唱しちゃっていいの?」
アルマエルマは魅了の魔眼を放った! ルカには効かなかった!
「あ、あら?」
詠唱しても何も効果が起きない事から、軽く魅了をかけてみようと思ったら、完全に無効化されて驚くアルマエルマ。それもその筈、一人で戦うしか無い今は動きを止めてくる異常状態はそれだけで致命傷になりうるので、片っ端から無効化のアビリティを付けていたのだ。魅了も誘惑も恍惚も麻痺も睡眠も今のルカには一切効かない。そして、その驚いた隙に、一瞬で懐に潜り込んだ。
「大地の轟、この拳に込めて――土刻金剛拳!」
「か、はっ!?」
アルマエルマに50851のダメージ!
淫魔の弱点である土属性を拳に込め、強烈な一撃を腹に叩き込むと衝撃が伝わり、くの字に折れ曲がり、吹き飛び……すぐにムクリと起き上がってきた。
「あはっ、あははははははははっ、なるほどね、グランベリアちゃんが話してくれなくて、たまもちゃんもはぐらかしてきたのはこういう訳なのね?」
「……ふん。それを鑑みても貴様は油断しすぎだ、ドアホめ」
「これはお見苦しい所を見せてしまいましたわアリスフィーズ様。ええ、ええ――次はちゃんと油断せずにかかります。ルカちゃんもごめんね? 燃焼不良にも程があるでしょう? 次はちゃんと楽しませてあげるから、今回はこれで許してね?」
とルカに一瞬で近付くと、チュッとキスをしてまたすぐに離れる。
「そ、それはいいんだけど……それで、嵐は止めてくれるのかな?」
顔を赤くするとくすくすと笑われたけど、ひとまず置いておく。
「そうねえ……本来なら止めたくは無いんだけど……しばらく洗礼の儀は起きないんだったかしら? ルカちゃんがつまらない嘘をつくとも思えないし……そっちの天使ちゃんが何か関係有るのかしらね?」
とイリアスの方を見れば、ビクッと震えてからルカの影に隠れる。何か言おうとしても迂闊に情報を与えればそれこそあの腹黒狐などが襲いかかってきかねないので、頑張って睨みつけるだけに押さえておくようだ。そんな様子を見てまたアルマエルマがくすくすと笑い、イリアス様の怒りが蓄積していく。
「まあ、負けちゃった私には拒否権は無いし、止めてあげるわ、ルカちゃん。――次は油断はしないから、頑張って装備を整えておいてね?」
と、最後に投げキッスをして最初に現れたときと同じ様に、風と共に唐突に消え去ってしまった。そして、嵐もまた唐突に止む。
「……はぁ、何とか引いてくれてよかった……」
正直この船の上で本気で戦っては大迷惑どころか沈みかねないし、また装備もまだまだ心もとないので引いてくれて助かったと安堵する。
「どうやらアルマエルマも貴様を気に入った様だな。良かったな、ルカ。モテモテだぞ」
「良かったですわね、ルカ」
「二人共そう言いつつ冷たい目線は止めてよ!?」
勇者と四天王の戦いとしては締まらないが……それでも船がまた往復できる様になったのなら万々歳だと、静かになった海を見て思うのだった。
同時刻、魔王城。
「ただいま~♪ ルカちゃんに、ボッコボコにやられて帰ってきちゃいました♪」
「……貴様もルカを見に行ったのか。軽い気持ちで手を出したら手痛い反撃でも食らったか?」
「にょほほほほ♪ 可愛い子じゃったろう? あれで強くて精も極上の味と、本気でうちの情夫にしたい位なのじゃ」
「ええっ!? たまもちゃんもう食べちゃったの!?」「…………」
驚いて割と本気で悔しがるアルマエルマに、凄い不機嫌な顔でたまもを睨みつけるグランベリア。だがこのきつね、分かっていて更に煽る。
「うむ! あぶらあげといなりずしのお礼に、うちのぷりちーできゅーとなもふもふの尻尾を堪能させてあげたのじゃが、ちょっと我慢ができなくなってのう……」
「……それで、ルカの装備はどうだった?」
「お主が最初に出会った頃の鉄の剣と布の服よりかは遥かにマシになっておったぞ。んむ、これからもまだまだ伸びるな」
「そうか」
それだけ聞くと、踵を返すグランベリア。
「あら? どこへ行くの?」
「……貴様らが随分と楽しそうにしているのでな。ルカの新調した装備がどの程度か試してくる」
そう言うと、転移魔法で何処かへと飛び立ってしまう。
「あらあら、グランベリアちゃんも私情で戦いに行っちゃって……みんな四天王の自覚にかけるんじゃないかしら?」
「それは、お主もじゃろう」
「あははっ♪ ……それはそうとね、たまもちゃん。アイリスって名前の天使を知ってるかしら……? 何かルカちゃんに随分と懐いていたみたいなんだけど」
「……アイリス、じゃと?」
自分の知らぬ名の天使。と言うか、使っている文字からして……。
「それは興味深いのう、少し聞かせてくれぬか?」
速攻でたまもにバレてしまったイリアス様の明日はどっちだ!?
フラグがドンドコ乱立するルカさんと死亡フラグがそこら中に乱立しているイリアス様でありました
と言うか大丈夫かな、こんなペースでフラグ立てていったら魔王軍で内乱起きたりしないかな……?
1話の文字数は
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3000-5000字でいいや
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長くても良いよ
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筆者が書きやすい可変式で