ぱらルカさんのくえっぽい世界の冒険   作:両生金魚

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ぱらルカさんだから貞操観念がかなり緩めです(小声)
そして字数が増える増える……どうしてもズルズル増やしてしまう……


サラ姫の奇妙な冒険

「ルカっ!? なにがあったのです!?」「一体どうしたのだ!?」

 

 ドタドタドタと慌てた様子で近付いてくる二人分の足音、そして勢いよく開かれる扉。幸い、泊まっていたのが村の空き家で良かった。もし宿だったら他のお客に迷惑がかかっていただろうと、こんな時に余計なことを考えてしまう。

 暗い中目を凝らして二人の表情を見ると、不安げな表情だ。

 

「あ、あはは……そ、そんなに大きい声を出しちゃってた?」

 

「大きい声どころではありませんよ。何ですかあの叫びは……」「聞いた瞬間、寒気が全身に走ったぞ……一体何があったのだ?」

 

「ええとね、また記憶を思い出しちゃって――」

 

 そして語るのは、他の7つの平行世界からやってきた勇者・そして同盟者たちとの戦いの記憶。特に、夢魔という剣や魔法だけではどうしようもない恐ろしい敵の存在を聞くと、流石の女神と魔王も寒気を覚えるが、とりあえず兎が出てこなければこちらの世界には来ない様だとの事でほっと一息つけたようだ。

 

「しかし、他の世界からこの世界を救う為に訪れた勇者たちですか。この私直々に褒美を渡せないのが残念ですね」

 

「魔王としても感謝しなくてならんな。それに、別の世界の魔王にも一度会ってみたいものよ」

 

 なにはともあれ、ルカもこの世界もこれ以上の危機が無いようで一安心、更にルカも強くなったとの事なので万々歳と言った所だろうか。そしてルカ本人にとって何より大きいのが――

 

「それに、いざ夢魔を相手にするって時を考えてバトルファッカーの技術も沢山習ったからね……!」

 

 向こうではコラボの証が有るのでそんな必要は無かったのだが、やはり相手を気持ちよくさせたいのは男の子の意地である。他の勇者3名と合わせて、無口勇者3名から何とかあの手この手で聞き出して頑張って学んだのだ。(なおカズヤも白念も実戦を試みるも撃沈し、レストは姫がいないので寂しい夜を過ごしていた)

 

「ほう……」「へえ……」

 

 そして、その言葉を聞いてギラリと光る二人の目。非情に興味を唆られたようだ。

 

「で、でも今日はまだ体に違和感が有るからまた今度ね……」

 

 ルカとしてもそろそろこの二人に反撃したい気持ちも有るのだが、身体能力の急激な変化が起きたので流石に少し慣らしたいようだ。

 

「まあそういう事なら……」「仕方ないですね……」

 

 二人としてもルカが嫌がってるわけではなく、純粋に体調が不安との事なので、渋々引き下がるのであった。

 

 

 サン・イリアを出てもう10日。西へ西へと進むにつれて段々と気候が暑くなってきており、森の植生も熱帯雨林の姿に変わってきており、暑さと湿気で不快感が凄まじい。旅慣れたルカや、魔王であるアリスはまだ何とかなっているが、ロリアス様にはかなり辛い様子。こまめに水分を摂ってもすぐに汗で流れ出てしまう有様なので、シルフの力を借りて周囲に常に涼風を流していた。弱く長く力を使い続けるのは中々無い経験なので、これはこれで訓練になるなと風の向きを変えたりしながら歩いていく。

 

 そして、風の力は思わぬ副産物も齎してくれた。鬱蒼と茂った密林に通った道は、視線を左右に向けても奥の様子は分からないが、風の力で果物や薬草やハーブも感知出来るようになったのだ。その為食べるに困る事は無く、アリスは常にもぐもぐと果物を食べれているのでこんな道中でもご機嫌の様子だ。ロリアス様もアリス程では無いにしろ、初めて食べる果物だらけで、一つ一つしげしげと眺めては楽しそうに食べていた。

 

 摘んだハーブは、お茶や食事の香辛料に。薬草は道中の村に寄ると大体は喜んで食料などと交換してくれる。向こうの世界のキャラバンの様な賑やかさは無いのだけれども、こちらののんびりとした旅路もルカは好きになっていた。

 

 ただまあ……

 

「ふふっ、美味しそうな人間ね。粘糸で動けなくして餌食にしてあげるわ」

 

 と旅人を見つけては人間を食い殺そうとするタランチュラ娘だの

 

「ふふっ、イキの良さそうなオスじゃないか。あたしが、たっぷり犯してやるよ」

 

 食い殺しはしないまでも野盗として狼藉を働くミノタウロス娘だのと、危険な魔物には事欠かない。基本的に魔物は過酷な環境程捕食性も高くなる傾向にあるからだ。ロリアス様もすっかり魔物狩りに慣れ、今では職業をボウマスターに、種族をキューピッドにと成長させて新しい技もどんどん覚えていって不満そうなアリスを尻目にそれはもう楽しそうに矢を射掛けている。

 

 そんなこんなで熱帯雨林を抜けると草原が見え、段々とサバンナのような気候になり、とうとう一面砂だらけの砂漠になってしまった。今までのようなむせ返るような暑さは無いものの、直射日光と砂の反射とでやはりとても暑い。そして一転して夜はとても寒い。そして、やはり一番辛そうなのはロリアス様である。直射日光の元両手をだらんと下げ、憂鬱そうに歩いている。ここまで暑いとそよ風を流しても温風になってしまうだろう。

 

「ルカ……日光を遮る呪文を覚えてはいませんか……?」

 

「闇の呪文なら防げそうだけど燃費が凄い悪いと思います……」

 

「勿論余はやってやらんぞ」

 

 しかし帰ってくるのは無情な返事。

 

「ルカ、後どれくらい歩けばいいのですか……?」

 

「あと2日位だったかな」

 

「そんなに……」

 

 そして帰ってくる無情な回答。

 

「ううう……天界に戻ったらこの辺りに大きな湖でも作りましょうか……」

 

「気候が物凄い変わっちゃいそうですね……」

 

 天から見たら地上は様々な気候が入り乱れていい感じだったのだが、地上の生き物からするとこんなに辛いとは。昔の創生を後悔しつつ歩いていると、ふと近づくひんやりとした空気。そちらを見てみると、何か入った革袋を差し出すルカの姿が。

 

「氷入れてみました。懐に入れたらちょっとは涼しくなると思います」

 

「ううっ」

 

 自分のしもべの優しさが目に染みる。ちょっと涙目になりつつ懐に入れるとひんやり冷たかった。

 

「余の分は……?」

 

「えっ、いるの?」

 

 そう聞くと、ムスッとした顔を更に険しくさせてルカを尻尾ではたく。ロリアス様にばかり優しくすると不満が募るし逆もまた然り。このあたりの魔物は簡単に切り捨てられるルカにとっては二人の間の舵取りは魔物狩りよりはるかに難しい難行であった。こうして板挟みになりつつ、魔物もしばきながら旅路を進む。他の地形なら何かしら食べ物を見つけられる事も有るが一面砂だらけでは虫か爬虫類程度しか見つけられず普段より遥かに単調な旅路になってしまった。

 

 

 2日後、ようやくサバサに到着すると一同がほっと一息をつく。砂漠のオアシスと、外海へ繋がる長い長い入り江の側に有るこのサバサの都は、この国の首都でありまた大陸有数の貿易都市でもある。街へ足を踏み入れた瞬間からいい香りが漂っていて、アリスとロリアス様が目を輝かせている。

 

「ぬぅ……? サバサフィッシュ料理だと?」「昔エデンに頼んだら、金魚に薬草を乗せたものが出てきましたね……」

 

 そして美味しそうな香りを漂わせる屋台の前に釘付けになる二人。お値段も中々だ。だがまあ、今のルカの財布なら造作もなく払える。

 

「じゃあおじさん、三人前下さい」

 

「あいよ、まいどあり!」

 

 注文した途端、パアっと顔を輝かせる二人。ルカ自身も屋台は大好きだったし久々に買い食いをしたかったのだ。

 

「美味しい……♪」「死んだ魚に草を詰めた料理なのになんと美味しい……♪」「なるほど、香草をこうやって使うんだ」

 

 早速名物料理に舌鼓を打つ三人。と、そこに一人の兵士が通り掛かる。すると、ジロジロと上から下までじっくりルカの事を観察し始める。

 

「……?」

 

 はて、特に悪い事もしてないし、この兵士もチンピラに見えないしどういう事だろうかと首をかしげるルカ。

 

「むぅ!? なんだ、その気味悪い剣は……!!」

 

 しまった、物凄い怪しいものを持ってた。荷物に突っ込んであるエンジェル・ハイロゥは言い訳のしようのないレベルで怪しい物である。

 

「うむ……少々若いが……」

 

 ただ、その兵士は驚いたものの拘束しようなどという気配は無い。

 

「すまないが君、サバサ城まで来てくれないかね?」

 

「えっと……何かありましたか?」

 

 向こうの世界では最初に訪れた時はサラがとんでもない事になっていたが……こちらではそんな噂は無いし街の雰囲気も悪くない。

 

「うむ……。あまり表では話せない事でな。是非来て欲しいのだが」

 

 門番や街を巡回している兵を見る限り、軍事大国サバサに相応しい雰囲気をしている。なら、偽物などでは無いだろうとの事で、承諾するルカ。そして――

 

「むぅ、まだ食い足りんのだが」「あっちの屋台なども見たいのですが……」

 

「ふ、二人共後でね」

 

 名残惜しそうに商店街を見る二人であった。

 

 

 精々がどこか適当な部屋に案内されるかと思ったが、あれよあれよという間になんと王の間まで導かれてしまった。サバサの王様は、腕の立ちそうな冒険者に頼みが有るのだという。別の世界で何度も踏み入れた王座の間に案内されると、部屋の奥、王座の前に戦士の姿があった。鍛え抜かれた体躯、並々ならぬ眼光に体に幾つも刻まれた傷跡――人間の中でも最上位の戦士だろう。どこかで見たことが有るなと思ったが、すぐに思い出す。サバサ城にあった肖像画に描かれていた姿、先王であるサバサ9世だ。尤も、こちらでは現役の王ではあるのだが。

 

 世界中の王様と知り合っている関係上、宮廷マナーもある程度は学ばざるを得なかったルカだ。相手の正体が分かったので、ひとまず前に出て片膝を突き跪く。

 

「お初にお目にかかります、サバサ王。僕は――」

 

「ああ、畏まる必要は無い。その心遣いは嬉しいが、私は王である前に、まず一人の戦士であるつもりだ」

 

 そう言うと、立たされ鋭い目で全身を観察される。威風で言えば、4王の中でも一番だろうなとルカは思った。

 

「……ふむ、良い目をしているな。少々若過ぎる事もないが、しかし凄まじい実力を秘めている――」

 

「恐縮です」

 

 そして一目で実力を見抜いたのか、早速本題を切り出した。

 

「……旅の方よ、くれぐれも内密に願いたい。事は重大であり、民に不必要な動揺をもたらす恐れがあるのだ」

 

「分かりました」

 

 迷わず頷く。この手の国家の厄介事には散々関わってきたのだ。対処法ももはやお手の物である。

 

「実は、我が娘――つまりはサバサ王女が、魔物に拐われてしまったのだ」

 

「はっ!?」

 

 予想外過ぎる話に、ものすっごく驚くルカ。目を白黒させつつも、ひとまずは話を聞かなければと続きを促す。

 

「あれは、三日前の深夜のことだった。突然に、娘の部屋から窓の割れる音が響いたのだ。慌てて衛兵とともに駆けつけると――部屋はもぬけの殻で、娘の姿はない。そして……一枚の手紙が、部屋に落ちていたのだ」

 

「手紙……?」

 

 王の一人娘、その対価に一体何を要求したのか……

 

「それは娘をさらった魔物の残したものだった。なんともおぞましい、血も凍るような筆跡で「ピラミッド」とのみ書かれていたのだ……」

 

「ピラミッドに……!?」

 

 あの、初代タバサ王と結婚したスフィンクスが居るダンジョンに連れ去った。何が目的かは分からないが、嫌な予感が止まらない。

 

「姫が誘拐されるなど、国の一大事。民の動揺を避けるためにも、今は事を公にできん。そういうわけで、姫を救い出せる強者を極秘裏に探し求めているのだ」

 

「なるほど……」

 

 頷くルカだが、既にその思考の殆どが誘拐相手に割かれている。

 

「これまで、冒険者を何人か面談したが……勇者を名乗る連中は、格好ばかりで全く腕が伴わん。だが、お主からは何か凄まじい凄みを感じるのだ。旅の少年よ、どうか王女を救い出してはくれんだろうか……?」

 

「勿論です、直ぐにでも出発します!」

 

 ルカの知る情報から推察できる幾つかの理由が、ルカを焦らせる。最悪の予想が当たっていた場合、一秒でも早くたどり着かなければ。

 

「すみませんが、騎兵隊の中でも特に足の早い駿馬を用意して下さい。直ぐにでも向かいます!」

 

「おお、そうか。すぐに用意させよう。そしてもし成功した暁にはウチの娘を嫁に「じゃあ、行くよ、アリス、アイリス様!」――むぅ、行ってしまったか」

 

 さり気に婿入りさせようとしてくるが、ルカにその声は届いていない。血相を変えた姿を見て、アリスもロリアス様も慌ててそれに付いていっていて、サバサ王と衛兵たちはその姿を見送るのだった。

 

 

「ルカ、貴様そんな慌ててどうしたのだ!?」

 

 馬を2頭用意して貰い、並走させながらアリスが叫ぶ。この慌てようは只事では無い。

 

「下手をすると、女王級を3体も相手にしないといけないかもしれない!」

 

「何だと、一体どういう事だ!?」

 

 そのルカの最悪の予想に、またアリスやロリアス様も顔色を変える。

 

「サラは、スフィンクスの血を引いているんだ! その力が覚醒した時、女王クラスに匹敵する力を持ってる! そしてスフィンクス自体も最上位の妖魔だ! でもサラのご先祖様だからサラを害そうとする企みに乗るわけがない! だから、ピラミッドを舞台にサラをどうにかしようと思ったらそれは女王級を洗脳か排除できる魔物の仕業だとしか思えない!」

 

「なるほど、確かにサバサ王家はあの下半身ライオンの血を引いてますね――しかし、アレをどうにかできる魔物となるとかなり限られますが」

 

 その推論をルカと一緒に乗りながら考えるロリアス様。自分の知る中での一番の容疑者はやはり、黒のアリスだろう。

 

「向こうの世界では、サラを洗脳し妖魔に覚醒させたのは伝説の三淫魔で、女王級を洗脳したのはアジ・ダハーカって太古の妖魔でした! その力でクイーンアルラウネが洗脳されて、クイーンエルフとクイーンフェアリーが憎悪を煽られてグランドノアまで攻め込んでしまいました!」

 

「三淫魔にアジ・ダハーカ!? あの昔に天誅を下した妖魔がっ!?」「なるほど、それは貴様が警戒するわけだな!」

 

「ああ! 流石にそんな大物を3体同時に戦いながらアイリス様守る自身がないから、その時はアリス、頼むよ!」

 

「ええい、何故余がこんな奴を――と、見えてきたぞ!」「私だって不本意ですよ!」

 

「うん、って、あ、あれ……?」

 

 段々とピラミッドが大きく見えてくるが、その近くに一人分の人影が。しかも、ものすっご~~~~~く見慣れた姿が。

 

「…………」

 

 馬の速度を段々と下げ、飛び降りるルカ。その顔はとっても脱力した様子である。

 

「……何だ、あの女か?」「ええ、あの姿は間違い有りませんね」「うん、ちょっと行ってくる……」

 

 とぼとぼと、一人ピラミッドへ向かうルカ。その背中はとても煤けていたのだった。

 

 

 

「ここがピラミッド……予想以上に大きいわね」

 

 下から、ピラミッドを見上げているのは誰であろう、拐われたと思われているサラ王女であった。そう言えばお城の人や法皇様の話だと父親からして外で旅したり暴れたりしたんだっけと思い出す。一応感知してみるが、妖魔として覚醒した気配も無い。

 

「(ここで無理やり連れ帰ってもまた脱走しちゃいそうだよなあ……)」

 

 更に観察を進めると、雰囲気からして女王ではなくただの少女の様だ。父親が王として健在だったので、気を張る必要がなかったのだろう。特に気配も消さずに近づくと、サラが振り向いた。

 

「あら? あんたもここに何か用?」

 

「うん……まあ、そんな感じ。そっちは何をしに? 観光とか?」

 

「違うわよ。このピラミッドで、竜印の試練を受けたいのよ。私の愛する、あの方のためにね」

 

 ああ、そういえばサラってどっちもいけるんだっけ――。遠い目をしつつサラを観察するが、どう贔屓目に見てもこのまま一人でピラミッドに入ったら無事で済みそうには無い。何気にサバサ王家の一粒種が消える寸前だった様だ。

 

「えーと、中は危険だと思うけど……」

 

「危険なのは分かってるわよ。でも……あの方に認められるため、私は行かなきゃいけないの!」

 

 こうなったサラは絶対に諦めないだろうなと何となく分かるし、一人で見送るのも論外。ならば選択肢は一つ。

 

「……分かった。僕もちょっと用事が有るから一緒に行こうか」

 

 オーブの一つはスフィンクスが持っているし、用があるのも本当だ。

 

「一緒にって、あんたが……? まあ、仲間はいたほうがいいけど……いや、結構強そう?」

 

「結構、じゃなくて物凄く強いよ」

 

 苦笑して、剣を肩に担ぐ。どうやら戦士としての技量もまだまだ発展途上の様だ。

 

「そんなに? まあ、先輩冒険者なら経験もそれなりにあるでしょ? 私はダンジョン探索は始めてだからサポートはよろしくね」

 

「はいはい」

 

「あ、そうだ、あんた名前は?」

 

「僕は勇者見習いのルカだよ。そっちは?」

 

「あたしはサラ。一流の剣士を目指して、修行中の身よ」

 

 その自己紹介に、こっちのサラはのびのびと出来ているんだろうなと思ったルカだった。

 

 

 

 ルカにとっては何度目かの、サラにとっては初めての通路を進む。サラの後ろに着いて、あれやこれやとアドバイスしながら進むのは先輩冒険者になったようで何だかちょっと楽しい。

 

「ところでサラは、誰のために試練を受けるの?」

 

 この辺りの竜族と言えばリザードマンだったか。うろこの盗賊団はこちらでも暴れているのだろうか。

 

「……恋人じゃないんだけどね、私の一方的な片思い。あの方は、剣一筋に生きる孤高の剣士。私の事なんて、覚えてもいないと思うわ」

 

「そっか。大変だね……」

 

 サラは王族だし、尚の事難しいだろう。だが、それでも努力して突っ走れるのがサラの強さだろうか。そんな事を考えながら進んでいると、前の方に魔物の気配。

 

ミイラ娘が現れた!

 

「試練を受ける人間よ……この先に進みたくば、我を倒していくがいい……」

 

「望むところよ、あんたを倒して先に行ってやるわ!」

 

 勇ましく対峙するサラだが、その姿はどうも今ひとつ頼りない。試練というだけあって、そこそこ程度の戦士では突破できないのだろう。だが、ルカが一方的に倒すというのも竜印の試練の趣旨に思いっきり反する気がする。なので直接的で無い方法を取ることにした。

 

「光よ、力を与えたまえ! アタック!」

 

ルカはアタックを唱えた! サラの攻撃力が上がった!

 

「えっ!? 何、あんた白魔法も使えるの!?」

 

「ほらっ! 余所見しないで集中する!」「わ、分かったわ!」

 

 サラを支援してあげる事にしたルカ。魔法に特技にと、支援も回復の手段も豊富だ。こちらへ飛んでくる包帯は一瞬で切り捨てつつ、サラの戦いを見守る。

 

「ヒール! ガード! テクニック! ほら、一つ防いでも油断しない!」

 

「いたっ!?あ、なおった……ってやっ! はっ! てやっ!」

 

 やはり姫だからか特に魔物相手の実戦経験が致命的に足りていない。相手は剣も槍も装備していない、人間からしたらあまりにも変則的過ぎる戦闘スタイルだ。しかしルカの手厚い支援のお陰で何とか戦えていて、動きも段々と慣れていった。

 

「これで、とどめっ!」

 

「見事、だ。先へ進むがいい……」

 

ミイラ娘をやっつけた!

 

「た、倒せちゃった……」

 

「お疲れ様」

 

 肩で息をしているサラに水筒を渡すと、そのままグイッと一気に飲み呼吸を整えていく。回復魔法を何度も受けて体力は回復していたが長い時間をかけた戦いは当然痛みも伴い精神に凄まじい負荷を与えたようだった。

 

「ありがと……あんた、凄いのね。あんなに沢山の魔法を使えて。でも、どうせなら攻撃もしてくれれば良かったのに」

 

「これはサラの試練だからね。あんまり僕が手を出すのもどうかなって」

 

「まあ……それはそうなんだけど……」

 

 援護が有るとはいえ、それでも魔物と正面から一人で対峙するのは中々辛いのだろう。だが弱音を吐かない辺り、本気なのが伺える。

 

「まあ、あんたも相当強いんだろうけど流石にあの方には劣ると思うわ」

 

「そんなに強いの?」

 

「そりゃもちろん、当然よ! いくらあんたが強くても、流石に勝てないと思うわ。今はどこで何をされているのかな……愛しのグランベリア様」

 

 その意外過ぎる名前を聞いて、吹き出すルカ。

 

「な、何よ!? 別に変な名前でも無いでしょ!」

 

「い、いや、ちょっと知ってる名前が出てきたからつい」

 

「知ってる名前って……同じ名前の別人じゃない? 私が愛する方は、魔王軍四天王で、巨大な剣を振りかざす龍人の方よ」

 

「ああうん、間違いなく僕が思い浮かべたグランベリアだね……」

 

「あんたも知ってたんだ……。まあ、有名なお方だから当然と言えば当然よね!」

 

 そしてお相手を聞いてルカも納得。まあそりゃこんな試練を受けにも来るよねと。だが、そんな雑談をすると次の魔物の気配がする。

 

「この風は……サラ、次の魔物だよ」

 

「風……? そんなの分かるの?」

 

「ああ。精霊の力を借りていてね」

 

 そう言いながら、剣を抜きつつ後ろに下がる。そしてサラが、その巨体と対峙する。

 

コブラ娘が現れた!

 

 そこからの流れは先程と同じ。ルカが支援して、サラに倒させる。だが、先程の魔物より一回り強いので、今度はサラへの支援だけでなく、相手へのデバフもかける。

 

「その力を砕く......はぁっ!」

 

ルカはウェポンブレイクを放った! コブラ娘の攻撃力が下がった!

 

 攻撃力を下げるために尾に放たれた一撃は、今までのサラのどの攻撃よりも鋭く、思わず動きが止まってしまうサラ。

 

「ほら、戦闘中はボーッとしない!」

 

「あっ、う、うん!」

 

 そしてまた幾度かの攻防の後、コブラ娘が倒れる。

 

「すごいのね、あんた。魔法も精霊の力も使えるし、剣の腕もあたしよりずっと上だし……」

 

「沢山修行して、実戦も経験してきたからね」

 

 これでも独学だが幼い頃から修業を重ねてきたのだ。……ソニアには一度も勝てなかったけれども。

 

「ところで、ひとつ聞いていいかな?グランベリアと、いったいどこで知り合ったんだ?」

 

「ああ、それはね――」

 

 気になったので聞いてみたグランベリアとの出会いの話。内容はベタなのだがその原因がお姫様が一人で出歩いていた事って……。想像以上のお転婆の様だ。いやまあ、向こうのサラも王をやめて国の政治体制を変えて一緒に冒険に旅立つようなアグレッシブさなのだけれども。

 

「それで竜印の試練を受けに来たってわけだね」

 

「ええ、初対面以来お会いしていないけれど、あの方に相応しい女になってから再開すると誓ったのよ」

 

 なるほどと頷きつつその時ふとよぎるのは、サバサの学者から聞いた話。ぶっちゃけストーカーみたいでキモいと龍人が話していたとか……ま、まあグランベリアならそんな事は言わないだろう。だがそれを差し引いても前途多難そうで、どうしたものかと悩むルカ。しかし、目下最大の敵はよりによってサラの目の前にいることにまだサラもルカ自身も気がついていないのだ。

 

 

 

「あっ、風の流れが……これは、複数かな」

 

「便利ね精霊の力って。それ、私も欲しいなぁ……」

 

「こっちはこっちで試練を乗り越えないと駄目だけどね! 来るぞ、油断するな!」

 

ネフェルラミアスが現れた!

 

「悪いけど、この先には進ませないわ」「強い人間しか通しちゃいけないって、スフィンクス様に言われてるのよ」「つまらない人間だったら、あたし達が餌食にしちゃうよー♪」

 

 今度はラミア種がいきなり四体同時と、難易度が急上昇だ。

 

「なによ、今度は大人数ね。でも、これくらいで「だから、油断しない!」きゃっ!?」

 

 油断していたサラへ、ラミアの一体が急襲する。だが、巻き付かれる寸前でルカが引っ張りこんで避けさせる。

 

「ひょっとして、凄くマズい……?」

 

「まあ、一人で来てたら最初で終わってたね」

 

 やれやれと体勢を整え相手を見据える。サラ一人ではどうやっても勝てそうにない。

 

「そっちのお嬢ちゃんは大したこと無いけど……あんたはすっごく美味しそうね♪」

 

「しかも洗礼を受けてないわね。そんなに食べられたいのかしら?」

 

 だが油断しているのは相手も同じ。舌なめずりしてジリジリとこちらに向かってくる。

 

「じゃあ、サラ。とっておきをかけてあげる。時の奔流、僕に従え! クイック!」

 

「えっ!? 時魔法!?」

 

「はあっ!?」「ええっ!?」「なんですって!?」「わわっ!?」

 

 そして、ルカ以外敵味方問わずみんな驚く。サラの時間を加速させ、更にバフを重ねがけする。

 

「其れは英雄の物語。世界を巡り、精霊と心を通わせ、終には魔の頂を打ち破るに至った彼の名は――」

 

ルカは英雄譚を語った!仲間に勇気が漲ってくる!

 

「わっ、嘘、身体が軽い――」

 

 時を加速させ、更には全ての能力を向上させられたサラは、ラミア達が捉えきれない速さで踏み込み、剣を振るい、四方から来る反撃を全て躱す。

 

「速っ――きゃぅっ!?」「わわわっ!?」「ひゃああああんっ!?」

 

 その様はまるで一流の戦士の様で、ネフェルラミアスは次々と倒されていったのだった。

 

ネフェルラミアスをやっつけた!

 

「嘘……倒せちゃった……」

 

 倒された相手より、自分の方がこの現実を信じられない様子なサラ。倒れ伏したラミア達を見下ろしてポカンとしている。

 

「時魔法まで使えるなんて、あんた何者なの……? さっきの不思議な魔法といい、見習いとか嘘でしょ……?」

 

「あ、あははははははは……」

 

 向こうの世界では、四大国全ての王が認める勇者だったので、サラの指摘は正鵠を射ていた。

 

「……これだけ強かったらお父様も欲しがりそうね……。他国へ行っちゃう前にどうにかしてウチに……」

 

「ほ、ほら、サラ、次に行こう、次!」

 

 何やら厄介事に巻き込まれそうなので、先へ促す。じ~とこちらを見てくるが、ぐいぐいと後ろから押して先へ進ませる。そして少し進むと開けた空間に出た。

 

「えっと、ここが一番奥……?」

 

 壁や柱の装飾などは豪華だが何も無い部屋をキョロキョロと見渡すサラ。だが、不意に重苦しい威圧感がまとわり付く。

 

「とうとうここまで来たか、か弱き人間よ……」

 

 言葉と共に唐突に姿を表したのは、このピラミッドの主のスフィンクスであった。

 

「あんたが、スフィンクス?」

 

「いかにも。妾がこのピラミッドの主スフィンクス。ヒトの死を見守る存在にして、竜印の試練の最終審判」

 

 予想通り最後の試練はスフィンクスが行うとの事。しかし、認めねば丸呑みとは魔物が人間に課す試練は一々難易度が高すぎるのではなかろうかと思うルカ。街の噂では誰一人帰ってこなかった様でもあるし。

 

「それで、最終試練とやらは何? あんたを倒せばいいの?」

 

「僕なら兎も角、サラじゃどう頑張っても無理かなあ」

 

「矮小な人間にしては随分な大言よ……と言いたいが、貴様のその実力を察するに無知でも慢心でも虚勢でも無さそうよの」

 

「まあね」

 

「えっ……じゃあ私、失格……?」

 

「違う。この試練は強さを問うものでは無い。妾からの謎掛けだ。これより、妾が投げかける問いに見事答えてみせよ」

 

 そして出されるのは、子供でも知っている謎掛け。朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の生き物。だが本当の問いは、何故その問いかけを投げかけて来たか。その理由は、人の儚さを悟らせるため。それは、スフィンクス自身が味わい、今も尚心を凍らせている生命の理そのものだ。

 

 この問いは、ルカにも多くのものを投げかけてくる。人と魔物との距離が縮まった世界での、沢山の恋物語。そして、それはこの世界だけではない。他の世界から来た勇者たちもまた、種族を超えた愛の物語を紡いでいた。目の前のスフィンクスは、それぞれの生を全うしたが故に孤独となった。一緒に生きるべきだったか、それとも死ぬべきだったか。別れを受け入れるべきか――その答えは、まだルカには出せそうもない。ひょっとしたら、ずっと出せないのかも知れない。

 

「……分かったわ。あんたの苦しみとか辛さとか、絶対に忘れない。グランベリア様と結ばれた時、私はどうするのか――どうするべきなのか――よく考えてみる」

 

「僕も……この話は忘れないよ」

 

 人と魔物の共存が出来つつある世界。人と魔物の共存が出来てない世界。どちらにとっても関係のない話ではありえない。ルカにとっても、きっと他人事では無いのだろうから。

 

 

「さて、最終試練は両名とも合格とする。それでは、竜印の試練をくぐり抜けた証を与えよう!」

 

「えっ!?」

 

 そして、ルカとサラの手の甲に竜の顔を象形化した様な紋章が浮かび、すぐに消える。

 

「いや、僕は付き添いだったんだけどっ!?」

 

「と言われてものう、強さも想いも資格は十分ではないか。まあ貰っておけ」

 

「そんなんでいいの!?」

 

 どっかの海の元締めを思い出す軽さだ……とツッコミを入れる横で、サラは素直に喜んでいた。

 

「では、ついでにこれも持っていくがいい」

 

 と、目の前に置かれたものは、見覚えのある宝玉、イエローオーブだった。

 

「そうそう、これこれ、これが欲しかったんだ!」

 

「ほう、お主はそれが何か知っておったか」

 

「うん、ありがとう!」

 

「何々? 宝玉? へー、凄い綺麗」

 

 どうやら王族のサラから見ても中々の一品らしい。貰ったオーブを大事にしまい込むと、礼をする。これでもう一つの目的も達成だ。

 

「それじゃあ、目的も果たせたみたいだし帰ろうか、お姫様?」

 

「へっ!? あ、あんた……最初から分かってたの!?」

 

「まあね。みんな心配してたよ。窓を破って血も凍るような悍ましい文字で「ピラミッド」って書いた手紙しか残してなかったから魔物に拐われたって大騒ぎだったよ……お陰で僕も早馬飛ばしてきたし」

 

「いちおう、行き場所だけは書き置きで残したんだけど……血も凍るようなおぞましい文字って何よ! そこまで言うことないんじゃない!?」

 

「文字の見た目だけじゃなくて内容も足りなすぎるよ……」

 

 こっちのサラはポンコツでもあるんだなあと苦笑する。

 

「ではさらばだ、人の子達よ。あの方のように、いついかなる時も気高くあれ」

 

 そんな二人を微笑ましげに見守り、現れた時と同じ様に唐突に消えていくスフィンクス。こうして、世にも奇妙な勇者のお姫様救出劇は終わりを告げたのだった。




何気にくえとぱらでめっちゃキャラが違うと思うサラでありました。
ぱらの方は若い頃から女王やっててしっかり王族としての責任感とかが有るけど、くえの方はお転婆姫って感じですよね。どっちも好きですが!

そしてサラに最大最強のライバルが出現してしまうの巻。まあ、くえのエンディングの一つだと普通に結婚するし好感度も有るんで、最悪3人一緒にとかってパターンもひょっとしたら(ry
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