3000字強あたりで区切ったほうがいっその事楽か……!
「さて、待たせてる人が二人ほどいるから、ちょっと急ごうか。テレポート!」
またあの長い道のりを戻るのも面倒だし、時魔法でさっさとピラミッドの外に出る。一瞬で景色が変わったことに、サラは目を白黒させて大いに驚く。
「うわっ!? 一瞬で外に!? あんたこんな事まで出来るの!?」
「そうだね。転移系の魔法は高位の魔物は覚えている相手ばっかりだし、こっちも使えとくと便利だから。――さて、二人は……あ、いた」
ピラミッドの中に入ってそれ程時間は経ってない筈だが、この炎天下の中外でただ待つのはひたすら不快で暇だったのだろう。借りた馬と一緒に日陰に入り、二人だけでトランプで遊んでいたようだ。
「む、やっと戻ったか」「遅いですよ、まったく。あなただけならもっと早く終わらせられたでしょうに」
「ははは……ごめんなさい」
ゴソゴソとカードやらコップやらを仕舞い、帰る支度をする二人。あまりの暑さに喧嘩をする気も起きなかったようだ。
「あんまり早く戻ると変に思われちゃうだろうし、帰りも馬で「巫山戯るな、まだロクにサバサ料理を食っとらんのだぞ」「砂漠に長居などしたくありません。とっとと城へ戻るのです」はい……」
だがそんな慎重論など提案し終わる前に却下された。不機嫌な二人に逆らえるはずもなく、全員一緒に移動させるために一箇所に集める。
「……ねえ、待たせてた二人ってルカの何? 恋人にも見えないし仲間って言うには偉そうだし……」
「え、えーっと、仲間なんだけど」
「そんなに強いのに苦労してるのね……」
おもいっきり同情されてしまった。そして否定の言葉を出そうとするも、旅の始まりからを回想して雑務は殆ど自分がやってるなと思わず遠い目をするルカ。そろそろ色々と仕事を覚えて貰おうか……。
「――まあいいや。時の奔流、僕に従え! ワープ!」
呪文を唱えると、今度はサバサのすぐ側にまで一気に跳躍する。この距離も一気に飛べると分かって、尚の事サラが驚く。とりあえずはフードを被ってもらって、城の中までこっそり帰る。さすがにいきなり外から姫が帰ってきたとなったら隠していた意味も無い。
城へサラと一緒に訪れると、大変な驚きと共に慌てて応接室へと通された。サラは先にお色直しの為に別室へ移され、しばし待たされる。また待つので二人の機嫌が悪くなるかなと心配だったが、最高級のお茶とお茶菓子が二人が食べ終わっても次々と運ばれてくるので非常にご満悦な様子だった。そして、三人で大皿を何枚か重ねた後、再び玉座の間に通された。
「勇者ルカどの、よくぞ姫を救ってくれた。この国の王として、礼を言おう。お主こそ、真の勇者よ!」
「は、はい」
そして、今度は玉座から降り言葉を紡ぐ。
「……そして、一人の親としても礼を言わせてもらおう。ルカ君、ありがとう……!君のお陰で、我が娘は救われたのだ」
「えっと……どういたしまして」
こちらの世界でも、またサバサの国から勇者と認められてそれは嬉しいが、狂言誘拐だっただけに複雑な気分である。そして誘拐されたと口裏は合わせたもののこの早さはどうやったって疑問に思われるだろうし、サラから直接聞き出して多分時魔法などはバレているだろう。なので――
「……ところでルカ君、古来より勇者とは姫を娶るもの……サラの婿になるつもりは無いかな?」
やはり、こういう誘いが来るのだ。向こうの世界でも女王に婿が居ない2国の家臣達から何かある度に婿入りを持ちかけられてきたが、こちらは父親である国王直々の誘いである。とても気に入られてしまったらしい。
「お気持ちは有り難いのですが、僕にはまだまだ成すべき使命が有りますし、サラ王女にも意中の方がいる様なので……」
「意中の方……? サ、サラ……それは……!?」
「その言葉、心より嬉しく思います。わたくしも愛するお方に恥じぬよう、励もうと思っております――」
相手が魔物だとか四天王だとか性別だとかは誤魔化し、サラと二人揃って何とか話を逸らす。
「ところで王よ、余は腹が減っておる」「私もです。街を巡る前にあちこち連れ回されましたからね」
更に空気を読まない二人の要求である。何もしていないが料理はしっかり頂く気の様だ。
「うむ、もてなしの準備を大急ぎでさせておる。どうか、好きなだけ召し上がられるが良い」
こうして、宴が始まったのだった。流石に四大国の面子が揃った向こうの世界での宴には劣るが、その分サバサの地方色が色濃く出た料理が次から次へと運ばれてくる。
「ふむ、これがサバサフィッシュのムニエルか。レモンソースが味を引き立て、たまらんな……」
「美味しい……♪ これは天界でも宴席料理を開発するべきですね……♪」
「流石宮廷料理、このレシピも覚えとかないと……あ、このバナナの使い方凄く良い。こっちの香辛料の配合は……」
腹ペコ二人は勿論、ルカとしても身体が資本な分一般人より遥かに大食らいではある。次から次へと平らげていく様に給仕の人は忙しそうだ。
「ところで、ルカ殿……実際のところ、我が娘との縁談はどう思っておるのだ……?」
サバサ王はまだまだ諦める様子は無さそうだ。宴が始まってからもこっそりと聞いてくる。
「凄い光栄な事ですけど、僕はまだまだ旅の途中で道も半ばですしやるべき使命もありますので……それにサラ王女にも、想い人がおられますし……」
「むぅ……確かに君程の戦士ならば成せる事も多いだろうが……」
言質を取られないよう、のらりくらりと躱しながら会話を進める。父親としては物凄い心配なのだろう。このままでは外堀を次々埋められかねないので、慌てて話題を変える。
「あれ、そう言えばサラ王女はどこに……?」
料理に夢中で気がついてなかったが、宴の主役の一人が居ないのはとてつもなく奇妙だ。ルカの横の席がずっとぽっかり空いている。
「サラなら、少し準備が手間取っておるようだ。ルカ殿、せっかくなので勇者の手でここにエスコートしてくれんだろうか」
「あっ、はい。分かりました」
政治にはあまり詳しくないけれど、こういう演出も大事なんだろうなと特に気にする事も無く、使用人に連れられるままに宴を抜け出す。だが、これはサバサ王の巧妙な罠だった!
「サラ、準備はまだかい? もう宴は始まってるんだけど……」
「はぁ? 準備なんてとっくに終わってるわよ。呼ばれるまで、この部屋にいろってお父様に言われたんだけど……?」
「えっ?」
一体何事だと思った時には、「ぬぅぅ……ふんっ!」というサバサ王の気合の声と、扉の向こうで何かがめきゃりと潰れた音。
「これは失敬……私としたことが、うっかりドアノブを握り潰してしまった。この壊れようでは、修理するまでドアは開くまい。すぐに職人を連れてくるから、一時間ほど中で待っていてくれ」
「う わ あ」
ハニートラップは色々と仕掛けられてきたものだが、まさか国王直々にここまであからさまな手に出られるとは流石にルカも予想外だった。一応中からドアノブを回してみるも、当然の如く開かない。しかも責任を取るなら手を出してもオールオッケーとの許しの言葉まで残していかれてしまった。大概この王様もフリーダムである。そして建前上はドアが壊れてしまっただけなので、窓やドアを壊すわけにもいかない。
「まあでも時魔法で出ればいいよね。じゃあサラ、こっちに――」
来て、と言おうとしたらがっしり腕を掴まれた。
「いや、ここで何もなかったらあんたが恥をかいちゃうし……それ以前に断られたら私が大恥なんだけど……」
「いやいやいや!? 何でそうなるの!? べ、別にお礼はエッチな事じゃなくても普通に旅費を貰えるだけでも大歓迎だし!? それにサラはグランベリアが好きなんだろ!?」
向こうでもサラにも絞られていたので今更だが、それにも増してこっちの誘惑はマズいというか人生の墓場に一直線になりそうで流石に尻込みしてしまうルカ。ジリジリと下がるも、どんどん壁際へと追い詰められていく。
「それとこれとは話が別よ。あんたには本当に世話になったし……まあ、お口やおっぱいで抜く程度ならやってあげてもいいくらいには恩を感じているから……」
と言いつつ、目に浮かぶのは淫靡な好気の色。あ、あれ?まだ淫魔には覚醒してないよね?と戸惑うも、「もう、じれったい!」とベッドに放り投げられてズボンを下ろされる。
「あはっ、口では色々と言いつつももう大きくなってるんじゃない……♪」「ううぅ……」
ルカだって男の子。お姫様にご奉仕させるという背徳的なシチュエーションに興奮しないはずもなく……
「あひぃいいいいいいいいいいいいっ!?」
耐久力の上がったルカさんは一時間経っても絞りきられず、手や胸や口や足でいじめられて、時間になってやってきたドアの外の父親がそっと人を散らす程度には弄ばれてしまったのだった。
「今回は、娘のわがままでずいぶんと迷惑を掛けてしまったな。つくづく、申し訳ない事をした」
「いえいえ、お気になさらず。丁度、ピラミッドにも用事が有りましたし」
なんのかんのと色々とあって翌日、王様や大臣などから名残惜しそうに見送られ、城を出ることになった。どうやらサラの誘拐が狂言だとの事もバレていたようだが、それでも勇者として遇してくれた事に、サバサ王の器の大きさを感じた一同だった。
サラの方もかなり思うところがあった様で、何時でも会いに来てねと言ってくれたのが印象的だった。向こうの世界では一緒に旅をしてきたが、こうしてドレス姿で見送られると本当にお姫様なのだな、感じる。勇者と姫の物語としてはかなり風変わりな一幕だけれども、これはこれで悪くないなと思うルカだった。だがそれはそれとして、気に食わないので横の二人から脛に蹴りを入れられたり脇腹を抓られたりしたのはご愛嬌である。
「それで、次はどこへ向かうのだ?」
城から出たら早速屋台で買い食いを始めた二人。昨日宴席料理を大量に食べたばかりだが、それはそれとしてこういう庶民の味も好きらしい。
「次はグランドールに行こうと思う。世界最大の歓楽街だね。鍛冶ギルドの本部が有るから、そこで装備を作って貰おうかなって。王様から紹介状も貰ったし」
「その服は布の範疇の装備としては最高級の性能ですがやはり金属製の鎧は必要でしょうね。特にあのトカゲと戦うならば」
「食えん物に興味は無いぞ」
理解を示してくれるロリアス様と、食い物にしか興味が無い魔王様。美味いものが無い土地には行ってくれるのだろうかと微妙に不安になる。ただ、次の行き先は問題無いだろう。
「そこは世界最大級の市場も有るから世界中から食材も集まってるよ」
「よしすぐに向かうぞルカ」「財貨はきちんと取ってありますね? いざとなったらそこの大食い魔王に亜空間収納させてでも食材を持たせるのです」
早速次の街へ行く元気が湧いてきた二人だ。現金だなあと苦笑しつつ呆れるルカであった。
道中は特に問題も無く、何時もの様に襲ってくる魔物を叩きのめしつつ旅路は進む。ただ、砂漠は景色の変化に乏しく何より道中に食えそうな物が全く見当たらないためアリスは殊更に退屈そうだ。だからといってサソリを集めてきてそれを料理しろとは流石に食い意地が張りすぎではなかろうか。しかし料理人の性、ゲテモノだろうと珍しい食材相手なのできちんと料理して美味く作れてしまうルカ。そして、好奇心に負けて食して美味しさに敗北感を感じるロリアス様、なんて一幕があれど無事に到達する。
「ここがグランドールか。確かに、食材の香りが乱れ飛んでいるな」
鼻をひくひくさせる魔王様は随分とワクワクしてる様だ。
「(犬っぽい……)」「(まるで犬ですね)」
と思ったら二人一緒にしばかれた。その後キシャー!とロリアス様が反撃するも軽くあしらわれるのもいつもの光景だ。
「じゃあ僕は鍛冶ギルドで採寸して貰ってくるから、その間二人は適当に街を回っていてね。あと、変な詐欺師とかナンパとかに引っかからないように」
それなりに時間がかかりそうなので、二人に結構な量のお小遣いを渡す。歓楽街だし珍しいアクセサリーだの香水だのも有るのだが、多分二人は全部食べ物に使うんだろうなと思う。
「うむ、まあ適当に終わらせてこい」「これでも女神なのですよ、心配いりません」
二人は自信満々だが、この様な大規模歓楽街は初めてなのでどうなる事やら。ちょっと不安になりつつも別行動を開始する。幸い、鍛冶ギルドでは国王直筆の紹介状を見せたらすぐに奥に案内され、ギルド長と対面する。
「国王から最優先で対応してくれと言われたからどんな奴が来るかと思ったら……こりゃとびきりだな」
「分かるんですか?」
「勿論だ。どれだけ戦士の身体を見てきたと思ってる。あの国王様の装備を作る時も手伝ったしな」
どうやらお眼鏡に適ったようだ。見た目で侮ってくる奴も多い中、流石は一ギルドの長である。
「それで、お前さんは何が欲しいんだ? まあ、大体想像は付くが」
今のルカの格好は軽戦士と言うにしてもあまりにも軽装である。自然と察しはつく。
「鎧兜一式と、盾を、最低龍鱗……できればオリハルコンで作って欲しいんです。お金に糸目は付けません」
作ってもらえるなら、財宝の残りとサバサ王の報奨金の殆どをつぎ込む覚悟である。
「オリハルコンか……そりゃまた豪勢だな。そんな物を装備できる奴は余程の金持ちか超一流の戦士かだが……あんたには相応しいだろうな。よし、良いだろう。国王様の頼みだ、幾らかはそっちにも請求しといてやるよ。あんたみたいな戦士に作ってやるのは職人冥利に尽きるしな」
「ありがとうございます!」
大いに喜ぶルカ。これで、グランベリアと戦う際にも格好は付くだろう。
「それと、そっちの剣も鍛え直してやるよ。何か変な力は感じるが……素材自体はそこまで大したもんでもないだろ?」
「あっ、そうですね……お願いします」
剣の方も、錬金術で魔物素材を合成していったので属性重視の武器になっていたのだ。
「んじゃあ、早速採寸と行くか。ただ、それなりに時間はかかるからちゃんと宿は見つけておけよ」
「そっちの方は大丈夫です」
何せ時魔法が有るので、その気になれば何時でも取りに来れる。
「そうか。準備のいいこった」
こうして、別室で服を脱いで全身採寸されるルカ。念入りにされた分、終わった頃にはもう太陽が真上に登っている時間帯だ。小腹も空いてきたし、珍しい料理を出してる屋台でも巡ろうかなんて考えて、歓楽街を歩く。劇場も大はセレブが集うカジノ兼大劇場から、場末のお立ち台まで多数の場が有り、また路上での大道芸や踊りや占いも盛んに行われて、怪しげな客引きや威勢のいい売り子、それに詐欺師やスリまでいる。
そして今、また一人見つけた。商店街の一角の小さなお立ち台、その上の踊り子を眺めているフードを被った一人の女性に伸びる手。
「そんな事は止めなよ」
財布を握りしめた手を掴んで捻り上げると「あだだだだだっ!?」との声がする。何事かと周囲の人が振り向くと、なんだスリかとすぐに興味が散る。手際の良いこのお立ち台の責任者は、すぐに衛兵を呼んでくるとそのままスリが連行されていった。
「あ、あの、ありがとうございます」
「どういたしまし――て――」
フードから見えたその顔は、向こうの世界での仲間。アイドルサキュバスのサキちゃんであった。思わず、言葉が途切れる。そしてその様子に、角でも隠しきれなかったかなと青い顔をするサキちゃん。そして――
「おや、サキ。どうかしました……か……」
更に見知った声の方に振り向くとなんと
「……いや、君こそどうしたのコーネリア」
なんと人間形態でバニースーツを着た65537ページの姿。
「…………ここ立ち話もなんですので、ちょっと家まで来て下さい」
「えっ、でも……」
「大丈夫ですよサキ、この人は勇者ですが人と魔物との共存を望んでいる方ですので」
それを聞くと、目をパチクリさせてルカの方を見るサキ。
「そうですか。悪い人でも無さそうですし……」
「まあ、うん。というかコーネリアがここに家を持ってるって事にも驚いたんだけど……」
と、案内されて歩いていくのはあまり裕福でない層が利用する区域の更に端。
「あ、いえ……」
目の前に張られてるのは大型のテント。部屋も借りれない踊り子などが住む様な場所である。そして、テントの入口をくぐると更に見知った顔と声。
「あっ、お帰り~。 お? 今日は男引っ掛けてきたの? やるじゃん♪」
「…………」
貧乏ニート淫魔のエヴァが、バニー服で料理をしながら待っていた。
「……一体、どういう事……?」
こっちに来てからでもとびっきりのややこしい事態に、ルカは頭を抱えるのだった。
サラ王女、気に入った&耐久力が高かった分たっぷり絞るの巻
グランドールはくえ本編では出てない街なので、調子に乗って色々と出してみました。
こっちのサキちゃんはまだまだ魔物蔑視も残ってる様な世界なのでまだデビューして無くてアイドルなキャラになって無い感じに!
カジノも次話に出る予定!