今日中に同じくらいの長さのもう一話程投稿できたらいいな……
「ルカ……ルカ……聞こえますか……?」
「あ、はい、聞こえますイリアス様」
何だかこの感覚も慣れてきたと声が聞こえたらすぐに覚醒する。いつもの様に神秘的な空間、そして目の前にはイリアス様。しかし何だか微妙にご機嫌斜めな様子である。
「……ルカ、貴方には失望しました」
微妙にではなくかなりご機嫌斜めであったようだ。一体何かしてしまっただろうか……いや、魔姦の禁はもう破ってしまったのだが。
「え、ええと、一体何がイリアス様のお怒りの原因に……」
「ルカ、あなたは私にこれからも捧げものをすると約束しましたね?」
「……これからもよく尽くすとは言いましけど「お黙りなさい」あっはい」
ダメだ、これは途中では口を挟んではいけない奴だ。
「それなのに、私にあまあまだんごとやらを献上しないとは一体何を考えているのですか?」
目線がとても怖い。返答を間違えるとこのまま雷でも落とされかねない……ここは慎重に答えねば……。
「実は、平行世界のイリアス様にも色々とねだられ……いやいや、献上しまして」
「それが何故私に献上しない理由になるのですか?」
「あまあまだんごを献上したら、『虫けらが集めた蜜を使うとは、なんとおぞましい……』とおっしゃっていたので初めは避けたほうがいいかなと……」
基本色々な物を美味しく食べていたが、食べる直前のセリフで天使の地上の食べ物に対する大体の考えを察せれてしまうのだ。
「……つまり、私に初めにアイスを献上したのも……」
「あっはい。イリアス様含め天使たちが好きな甘いものから初めにと。果物も、土に付く前の果物を使いました」
恐る恐る表情を伺うと、忘れたり無視したりしたのでは無いと分かったのかとりあえず怒りは収めてくれたようだ。
「なるほど、全ては私への配慮の為だったと。宜しい、貴方を赦しましょうルカ」
「あ、ありがとうございます」
ここは素直にありがたくと頭を下げておくのが得策である。
「……ところで、そのあまあまだんごとやらは美味しいのですか?」
「はい、とても。平行世界のイリアス様も美味しそうに食べていらっしゃいました」
それを聞くと悩む眼の前の大人バージョンイリアス様。初めにアイスを食べた事で色々と葛藤が渦巻いているのだろう。おぞましいが、とても美味しい。どうするか暫く考え込み……
「コホン、良いでしょう。人間の暮らしをよく知るのもこの女神の努め。特別に献上することを許可します。それと今日この時より、あなたの判断で献上する食物を選びなさい。見慣れぬ食物が贈られても、決して罰したりしない事を宣言しましょう」
「あっ、はい、分かりました」
「では、行きなさいルカ。起きたのならば早速あまあまだんごを献上するのですよ」
目が覚めると何時もより早起きな気がした。どうやらイリアス様は余程あまあまだんごが気になるようだ……。宴が終わった後はそのまま村の空き家の一つに泊めて貰ったので、丁度台所も備え付けてあった。
「さてと、朝食前に軽く作っちゃおうか」
幸い、ハピネス蜜は一壺分は確保してある。アリスが全部舐めようとしたが、「料理に使うから全部食べちゃダメ!」と言ったら断腸の思いでこちらに大人しく渡してくれたのだ。水を汲んできて鍋に火をかけて、だんご粉やら水やら塩やら、材料を混ぜ合わせてよくこねる。散々に仲間の為に様々な料理を作ってきたのでもう慣れたものだ。沸騰した水の上にザルを置いてしっかり蒸した後、串に挿して焼いて蜜を付けて……「ほう、あまあま焼団子か。楽しみだ」
じゅるり、と舌なめずりの音が後ろからした。
「ああおはようアリス、早いね」
「こんな美味そうな香りをさせていればな」
ぶんぶんと尻尾を振って朝から上機嫌の様だ。だが――
「もうちょっと待ってね、最初のはイリアス様に捧げるから」
尻尾の動きがガラガラヘビの様に激しく振るう威嚇の音に変わってしまった。いきなり機嫌が急降下である。
「貴様、この焼き立ての香ばしい団子を冷めてから食わせるつもりか……!?」
「すぐに済むから!?」
「ルカよ、貴様は料理人なら分からんのか…! その僅かな時間で味わいが変わると言うことを!」
「んぐぅっ!?」
幸い、今はまだ火で炙ってる最中なので奪い取りはしないが、こんがり焼けて蜜を塗った瞬間奪われかねない。
「で、でもイリアス様の機嫌を損ねたらそれこそ僕は雷を落とされちゃうよ、文字通りの意味で……だ、だからちょっと辛抱してくれよ」
ルカがそう言うと、アリスはぐっと怒りを堪え、目を瞑り、キッと天空を憎悪の表情で見つめた。
「おのれ、イリアス……おのれ……絶対に許さんぞ……!」
「そこまで憎いのか……」
なんか空から「オホホホホホ!」みたいな高笑いが聞こえた気がしたけど、言わないでおこう。言ったらこの辺が焦土になりかねない。二人の怒りを収めるためにもルカは可及的速やかに団子を皿に盛り付けると、急いでお祈りをして天界のイリアス様の元へと直送した。それから少しして、また天から聖なる波動が感じられたところを鑑みるに、どうやら満足して頂けたようだ。
「……おい、ルカ。早く次を焼け。さもなければ貴様の精が空っぽになるぞ」
「全速力で焼くから我慢してくれよ……」
次は魔王様が激おこである。急いで焼くと、焼いた片端から次々に口に放り込み、機嫌はどんどんと直っていった。
「うむ、美味い……♪ 焼くとまた香りが変わるな。この香ばしさが堪らん……♪」
「喜んでもらえたなら何よりだよ……って、アリス、僕の分は……?」
気がつくと材料が空っぽになっていた。皿の蜜も一滴残らず舐められ、欠片一つ付いてなくピカピカになった串しか乗っていない。
「……いやこれは違うのだ」
じーと睨みつけると、気まずさに耐えきれずに目をそらす魔王様。流石に2回連続でのやらかしは立つ瀬がないらしい。そしてルカの目も更に怖くなっているので尚の事目を合わせられないのであった。
「そんなに食べたのなら、朝ごはんはいらないね?」
「ごめんなさい許して下さいそれだけは」
ニッコリ笑うルカに、魔王の威厳も無くアリスは頭を下げて即許しを請うたのだった。
朝ごはんを食べ終わると、ハピネス村とハーピーの里の総出で見送られる。色々と悶着は有った様だが、それでも雰囲気は悪くない。そして、後は時間が解決してくれるだろう。
「あの……ひとつ、お尋ねしてよろしいでしょうか? もしかして、貴女様は――」
「余は、旅のグルメ。大した者ではない」
「そ、そうですか……余計な詮索は無用でしたね」
などとクイーンハーピーが正体を尋ねるが、アリスは他の魔物に対しては旅のグルメで通す様だ。
「(まあグルメと言うよりはただの食いしん坊だよな……)」
などと思ったら睨まれた。ソニアといい、女性の勘は怖い……と縮こまる。
そして別れの際、ふと思いつく。
「あの、クイーンハーピーさん、一つお願いがあるんですが……」
「はい、私にできることなら何なりと」
「羽を少し頂けませんか?」
魔物の体の一部は合成素材にもなる。ましてや、クイーンハーピー程の魔物の一部ならその効果は如何程か。
「あらあら、その程度で宜しければ」
と、クイーンハーピーの羽の中でも一際美しく、また魔力の籠もった羽を渡される。
「ありがとうございます。それじゃあ――」
腰のカスタムソードを取り出し、羽と近づける。
「万物の理はこの手に――姿を変えよ! 錬成!」
カスタムソードに風の強い力が宿った! カスタムソードはウィンドソードへと変化した!
向こうの世界では、鍛冶師に様々な素材を渡し鍛えてもらったが、錬金術を覚えた今は自分で出来る気がしたのだ。結果、見事カスタムソードは切れ味を増し、風の力が付与されている。
「クイーンハーピーの力を宿した剣か……これは魔物でも欲しがる剣士が幾らでもいる代物だな」
「ふふっ。私の力が少しでも役に立つのなら何よりです。どうか、あなたの旅路に邪神様の祝福があらんことを」
「あ……は、はい。それじゃあ、また!」
こうして、ルカとアリスはハーピーの里を後にしたのであった。
各地で色々な魔物の素材やら何やら使ってるし、錬金術使えばいけるんじゃね?ということでカスタムソードは自己強化していく事にしてみました
そしてアンケートでイリアス様が大きい姿と小さい姿が割と接戦だ……
イリアス様は……
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ずっと空の上でいいよ
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大人な分身で地上に来る
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ちっちゃくなって地上に来る