学校とは私にとってとても楽しい世界である。
何より、簡単なのだ。
連射したマシンガンの弾丸を全て跳弾で敵に当てる頭脳を持つ私には勉強など、同年代にマウント取る道具でしかない。
常に敵に脳天をぶち抜かんとする弾丸を警戒する必要は微塵も存在しない。
何より、周囲より大人びた私は同年代の少女によくかっこいいと褒められる。つまり彼女らは私へと寄ってくる。
つまり天国の幕開けである。
しかし、ロリコンとは言わせない。
だって、小学生が小学生を好きになっても別にロリコンとは呼ばれないだろう。そういうことだ。
そもそも、私が心から好くのは、あのサンラクという幼女アバターだけだ。
この
そう、地獄門の考える人も納得の非ロリコンの証明だろうと我ながら自負する。
あの子との闘争が今の最たる楽しみだ。それを邪魔する者へはまさに、「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」を体現してやろう。この私を邪魔するものは一切の希望を捨てさせるのだ。地獄篇も真っ青な鯖癌クオリティで震え上がらせやる。
だからこそ私は学校を終えると一番に帰宅する。
友人を侍らす……もとい、友人と共に帰宅する中でも、彼女らには私が微妙に早歩きになっているのを悟らせず、微妙にペースをあげていくことで無意識下で早歩きを強制する技能は習得済みなのだ。これくらい朝飯前という訳だ。
ねぇお嬢ちゃん達……と誘ってきた不審者は避けて、無理やり捕まえようとしてきた不審者は腕をひねって転がす。
警察に通報する暇すら存在しやしない。
友人らは驚愕を浮かべているが、すぐ沙綾ちゃんすごいと褒めてくれる。
にやけ顔を誤魔化すために満面のドヤ顔を浮かべた私は決して悪くないだろう。
何せ私を攫おうとしてきたそこに転がる不審者が悪いのだ。鯖癌経験者は恐らくそのほとんどが体の壊れやすい所、痛い所を熟知しているし、痛みを対象に齎す方法も知っている。さすがに筋力や速度はどうしようもないが、小手先の技術なら力をあまり必要としない我流護身術で十分である。
そういえば、あの子……サンラクちゃんの中身はどんな人間だろうか。恐らく若い男性だと言うのは理解しているが女装が似合う外見はしているのだろうか。
そんなことを考えながらも、話しかけてくる友人の声もきちんと理解して相槌を返す。
不審者以外はいつも通りの帰り道。
ただ、対面から歩いてきた男性がすれ違った瞬間、同族の香りがして思わず振り返る。
すると向こうも同じようで、驚愕を浮かべたあと、一瞬だけにっと獰猛な笑みを浮かべた。きっと私も同じ表情をしたのだろう。「今は見逃してやる。孤島であったら殺してやるよ」と視線で会話した私は、宣戦布告が思った以上に嬉しく、何をしているのかと問うてくる友人に笑みを浮かべて振り返り、なんでもないと返し、また道を進み始めたのだ。
自宅へと帰宅して、宿題は……問題集の分はほぼ最後までやっている。つまり、実質無いと同義だ。ノープロブレム。
さあログインをしよう。
水中を駆ける。
敵を目で追う。
殴り取っ組み合う。
蹴り殺し合う。
寄ってきた傷付いてなお巨大なピラニアを蹴って川の岸へ。
相手も追順して来る中、水中では向こうのが早いため陸上は同時。
「やぁ、相も変わらず人の獲物を横取りするのが上手だなぁ……! 鯖癌初心者の頃は純粋だったのに成長したね! 本当、惚れ惚れするくらいクソみてぇな手腕だおめぇ!」
「るっせぇよ、そもそも私のこれは漁夫の利というものであって立派な頭脳戦だぁ! 勝負にくそもへったくれも何もねぇ! てか私が君の散った血液経口摂取する度に毎度ライオットブラッドの香りがするんだけど飲みすぎて
ただ獲物を横取りしようとしただけだと言うのに、まったく小さい男である。ムカついたので煽り返しつつ、発砲。
両者、完全同時に撃鉄に弾かれた弾丸が空気を裂く。
私の右腕が散弾で吹き飛び相手の太腿の肉がマシンガンで弾け飛ぶ。
「っぁ! はぁー? 何言ってんのこのリアル幼女磯女サマは?? ライオットブラッドは、カフェインはVR技能を向上させるんだよっ!! つーかおめぇこそ現実で飲んだはずのライオットブラッドの味を仮想空間の血液から知覚するとか合法落ちしてるんじゃねーの!?」
「はぁい機動力失ったハッピースウィミング野郎なんて敵じゃないんだよ、もうその足じゃ動けないよねぇあはははははっざまぁみろ、小学生をカフェイン中毒かのように言いおった天罰だよ、つか、『シュンケル〜ライオットブラッドを添えて〜』の何が悪いんじゃあ!! ついでに幼女磯女って文字で起こすと女の字が多すぎんだよ!! …………あっちょっと負けを認めて介錯されろ! このふぁっきんくそエロガッパっ!!」
「シュークリーム×ライオットブラッドとかそれ相当ヘビ……あべしっ!!」
足が動かなくなっても執念で腕を使ってこちらに迫ってくる敵を、向こうの銃口の先に移動しないように口撃を加える。そしてのしかかってその首元を私の歯で掻っ切ってやった。胴の捻りと、腕の動きで迫ってくる中々にホラーな肉塊だった。
ちなみにシュンケル〜ライオットブラッドを添えて〜とはシュンケルのユ〇ケルをライオットブラッドに置き換える秘儀のことである。
ふぅ……と争いの余韻に浸って、懐から取り出した
仕事を終えたあとの一服は最高である。なお私は小学生。
すると、継続ダメージで力尽きた巨大ピラニアが川に浮き上がってくる。
おお、今回はあのプレイヤー……プレイヤーネームはビックリマークと言ったか、彼が意外と手強かった為に重症のまま逃げられたかと思っていたのだ。無事討伐できていたようで満足である。
「漁夫の利成功っ!」
そう言って、今度は視線を感じていた森の方へ単発発射、こちらが気付いていないと思っている大型生物の眼球を貫通させて脳へ届かせ即死させる。
久々の大量だ。本日は大収穫である。
生憎私には水中戦で巨大ピラニアにも、巨大ピラニアに勝つようなやつに勝てる水泳能力持っちゃいない。
κ鯖で水中では勝てない私、そこで思いついたのは地上戦と水中戦の両立である。
元々私は、よくいえば水陸両用、悪くいえば器用貧乏の水陸対応方。
どちらかの戦場で戦えば、どちらかに特化したプレイヤーには負けてしまう私である。
しかし、いや、だからこそ、地と水の境界線において私のこれは真価を発揮する。
水の抵抗に慣れない地上戦特化共に対して浅い河原は敵方の移動速度低下を強制し。
逆に手の隙に水掻きの膜を張りそうなほど泳ぎ続けるクレイジーでマッドなスイマー共は泳ぎ過ぎて地上戦の立ち回りを私以上に理解していない。
故にこそ、地と水の境界線、岩石はびこる土地の地に足つけた水上が私の狩場なのだ。
「だから、私の餌場となり得る、付近にバランスの取りにくい陸地がある川の中でふやけてたのが悪いのだ!」
自己正当化完了である。
早速と、川に流されないうちに巨大ピラニアの回収に行こうとして……。
「あぐっ!?」
頭に走る激痛と共に視界がフェードアウトした。つまり、何者かに気付かぬうちにキルされたのだ。
やはりこの世界は難しい。
これだからこそ、この孤島は愉快なのだ。
簡単で楽しい現実も、複雑で難しい仮想現実も、現と夢の境界を取り払って私は二つの世界が大好きなのだ。
鯖癌に頭を侵された小学生なのか、鯖癌のギリシャ文字サーバーに入れられるほど元から異質だった小学生なのか。