元々お話を考えていたのは次の話かその次くらいまでなので、そこら辺をきちっとかけたらお話を締めて完結にして、その後たまに番外編を出すような形になると思います。
「あーあ……気配すら気付けなかった」
完璧に勝利後の油断である。
恐らく私の頭をぶち抜いた弾丸の持ち主は隙を狙ってきていた。
何はともあれコロコロされちゃった訳である。
これは勿論向こうもコロコロされてもいい覚悟ができているということであり、久しぶりの大漁で気分有頂天から地球投げさせられた私の恨みは深い。
ふぁっきんアホカッパ、生かしてはおけぬ。
ならばやつが逃げたとてどうせ追いついて見せようぞ、どうせ追いつくのだから準備は素早くなくてもいいが、気分が早く殺しに行こうぜと喚いているので素早く準備をこなさなければならないのだ。本能に躊躇いなく身を任せることが出来るのがこのギリシャ文字サーバーで生き残る最低条件である。
ちなみに、いつか追いつくというのは、正確に言えば、手当り次第殺したらいつか殺せるよねということだ、あったりめえだ、暗殺者の顔なんざ見てはいないから元々探しようがない。
無実のκ島の皆には申し訳ないが、これはヤツが私の前に現れず、顔を出さなかったが故の結果なので銃口を私に向けるのはよして欲しい。
「マシンガンよーし……拳銃よーし……残弾よーし……銃身よーし……酒and煙草よーし……」
持ち物の指差し確認は何よりも重要なことである。
ハジキに回復アイテム、おっと、ナイフを忘れるところだった。危ない危ない。
それにしてもこのナイフもだいぶ古くなってきた、いっちょ今度
まあ、今はいい。
「役者は私と河童共、舞台は孤島κ鯖、さてこれより作戦名『恨みはらさでおくべきか』を開始する!!」
景気づけに大声で叫びながら川沿いにプレイヤーを探し始めた。
待ってろ直ぐに心臓ぶち抜いてやる。
おかしい……さっきから陸地からの奇襲が多発している。
水泳ガチ勢のマッドスイマー共は水中をこよなく愛するはずだと言うのに、である。
巧妙に隠れた暗殺者が迫ってくるのに気付いた私は、そのタイミングでナイフを振り抜き、激突。ナイフの小競り合いが起こる。
即座に左で持った銃の照準を構えて相手の胴体に風穴を空ける。
苦し紛れに敵が発砲した弾が私の胸部を掠めていく。
このような瞬間ほど、キャラクタクリエイト時に見栄を張って胸を盛らなくて良かったと安堵することは無い。
まぁ、そもそも脂肪ぶら下げてたら、接近戦、遠距離戦どちらで考えても邪魔でしたかないのだ。後悔は微塵も……微塵も……。
「シィッ」
「だーっくっそ人が邪念振り払おうとしてるってのに!!」
胴の傷など知ったことではないと地を蹴って拳をあてに来る敵に、腕をクロスして防ぐ。
そこから即座に銃を手放しながら半歩下がって相手に構えた拳を……。
「っ!? ……くぁっ!!」
川に向けて跳躍、拳をフェイクに銃を放とうとしたその姿が見えたからこそのギリギリで間に合った緊急回避。
銃弾が体を掠めて一部抉っていくが、そんなことは大した問題にはならない。
潜る、潜る。
こちとら底辺であろうとκ鯖の住民である。水中にさえ逃げ込めば、水中では敵わないことを理解している他鯖の連中は追って来れないのだ。
そう、他鯖の連中。
拳を叩き込もうとして見えた顔、おかしいと思ったんだ。見覚えが無さすぎる。
あれは他鯖の奴だ。……いつの間にサーバー侵攻を受けていたのか、推測であのプレイヤーの所属であろうサーバー候補をあげていく。
もう予定通りこの島にいる奴ら皆殺しで万事解決だ。
そう水から出ようとして……金の髪を揺らす幼女を、見た。
……。
………………。
………………………………。
「……? …………!!」
脳が理解するのに三十秒もかかってしまうほど、私の頭に驚愕と歓喜の二単語が叩き付けられたのだ。
おーけーおーけーおーけー……うん、対象推測、過去に出会ったプレイヤーサンラクの後ろ姿と極めて類似……あの生粋の暗殺者は姿を消したが確定だーね。つまり我が敵は
歓喜に染った私の頭にあるのは、好機に対する喜びである。
復讐対象の特定が終わった? そんなこったどうでもいい。
祭りだ。リベンジマッチである。
μの襲撃が意味することとはサンラクとの再戦であり我が望む、最高の楽しみの到来だ。
ああ、待ちに待った私の季節。祭囃子に誘われるままに、
なあに、
さてさて初めは何をしようか、そうだ、そうである。
初めはたくさんの
コルク銃が当たったごときで泣き顔晒すんじゃない、射的のおっちゃん。
「あはははははっ!! サンラクちゃんどこだい出ておいで、でないと目玉をほじくるぞ! 出てきたら腕を噛みちぎってあげるよ、さあおいで!
鯖癌に住まう奴らはだいたいが戦闘狂……戦闘民族である。
なので大声をあげて自分の位置を知らしめることで他を呼び、さらに名指しすることで挑発された人間を呼ぶ。
そしてここはκ鯖、サーバー間の戦争において一時的に共同戦線を組んだ彼らは水中の民、そろそろカッパじゃなくて深き者共にでもなれそうなほど水に生きている。あいつら、水出たら乾燥して死ぬんじゃないかなと心配してしまう程にヘビーなスイマーな奴らだ。
そのため、それと争うμ鯖の暗殺者共は自然と水辺付近を探索する。
だからこそ水辺を爆走して大声を出せば自然と集まってくるという訳だ。
迫ってきた気配に急停止すると鼻先を弾が掠めて飛んでいく。
どうやら右に誰かいるらしいと判断した私は、敵の位置に当たりを付けて木々を盾に迫っていく。
暗殺者の顔が覗ける。
黒髪の男、ちっハズレである。
「はっはーっ! なんの罪もねぇが死んでくれぇ!」
「そっちこそっ!」
お互い爽やかな挨拶を交わして即戦闘、危うく咥えた煙草を落としそうになるが、対処している隙は作れない。
左足を下げて当たり判定を細くして弾を避けつつ、癖のある拳銃を発砲、そして先を見越して後退、回避。
どうやら私は強いのと当たってしまったようだ。
しゃがんで踏み込み一直線に男へ迫る。
勿論格好の餌食なので左へ僅かにズレる。すると予想通り放たれた弾丸が右頬を掠めて背後へ消える。
「しゃぁらぁっ!!」
顔面へ向けたナイフの投擲、本能的に目を瞑った奴の隙を縫うように拳銃を撃つ、撃つ。
一瞬の隙の影響で左腕を完全に破壊された男は、さすが鯖癌と言うべきか、痛みなど楽しみの一つとして直ぐに私の対処をしようと腕を動かす。が、私のが上手であった。
「じゃぁねぇー」
一足早く喉元にナイフを突き付けた私はそれを裂いて勝利をもぎ取る。
そう、何も所持したナイフは投げたものだけでは無いのだ。予備に二、三個持っている。不意打ちにも対応してくるデタラメな強さを持った上位陣なら余裕で対応してくるけどこの程度ならまだ有効な手段だ。
要約すると私の作戦勝ちだ。伊達に実年齢以上の頭脳を持っちゃいない。
私の十二歳ブレインはすごいのだ。
兎にも角にも、こんなところで止まっている暇はない、落とした物を拾って即、捜索再開だ。
「かはっ……ぁ……サンラクさん、この弾丸でぶち抜かれてくれないかなぁ……!」
暗殺者共殺し殺され時間を数えるのすらやめた。
だが、だが、そんなことはどうでもいい。
「やっとの思いでサンラクに会えた」という一文のやっとの思いで……などどうだっていいのだ。
ただ、目の前に、彼女が、サンラクが立っている。この事実さえあれば過程など、なんだっていい、どうでもいい。
私とサンラクがこの場にいる、それ以外に何が必要というのだ。
「そんなことより、マグロの解体ショー開催されんだけど……今から付き合ってくんね? 会場はこの場所、解体人は俺、マグロはお前だ……っ!」
「解体ショーより踊りが好みかな、楽しまさせてね……!」
にっと獣のような相手を見定める笑みを浮かべる私達。
きっとサンラクちゃんも、楽しみで楽しくて、これからの殺し合いが一秒一瞬待ち遠しいのだろう。
そして、互いに歓喜に包まれて、戦いの火蓋が切って落とされた。
何だこの十二歳口悪すぎやしないか。