妖艶な銀髪と死の向こう   作:よしりゅー

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溶けてゆく意思

歩き始めて、どれくらい経っただろうか。

霧…いや、正確には雲を抜けても、歩き続けた。何故だか、疲れは歩く度に消えていった。

 

 

山頂で見たのは、辺り一面の雲海。とうとう辿り着いてしまった。

あるのは恐怖だけ。そして、誰も助けに来ないかもしれないという絶望感。

 

(俺に優しくしてくれた村…村人達…)

 

「ごめんなさい…」

口から溢れるのは、不甲斐ない自分であることの謝罪。そして、号泣する。

 

「ナラ、イッ、ショ堕、チ、マショ、ウ。」

 

 

ガァァァァァ!!!

 

ばっと振り返ると、さっきの歪なオドガロンが居た。

それは、飛びかかってくる。このまま食べられてしまおうか。

 

仁王立ちで、全てを受け入れようとする。

 

 

一筋の凶爪が胸に刻まれる。

そして、俺は山頂から転げ落ちていった。

 

 

目覚めたのは、深く暗い、谷だった。陽の光は辛うじて差してくるが、辺りに立ち篭める黄土色の煙のせいで、視界がぼやける。

あんなに高いところから転げ落ちても助かったのは、地面が柔らかったかららしい。

 

…地面?

 

痛みで起き上がれないので、手触りで確認する。

それから、手を空にかざして、手についたものを見る。

 

 

腐った肉。

 

見てはいけないものを見てしまったような気がして、吐き気を催す。

 

 

ヒタッ…ヒタッ…

 

足音がする。またモンスターか。今度こそ一思いに殺してくれよと思いながら、目を閉じる。

 

 

ペチッ!

 

頬を叩かれた。目を開くと、そこには裸の女性がいた。

 

「アナタ、ワタ、シ、イッ、ショ」

 

片言で上手く聞き取れず、怪訝な顔をする。すると、その女性は困った顔をした後、何かを閃く。

女性が馬乗りになると同時に、胸の痛みが引き、脳が覚醒してゆく。

 

…裸の女性?

 

「うわああああああああああ」

もう何もかも見えている。胸は結構出てるし、細いし、髪の毛長いし、って観察している場合じゃない!!

 

 

「ウフ、フフフフ、オイ、デ」

 

…おいで?

こっちに来いということなのだろうか?でも馬乗りされてるしどういうことだ?

 

思考を巡らしていると、いきなりハグをされた。頭が混乱する。

 

「アナタ、ワタ、シ、イッ、ショ」

あなた、わたし、一緒。そう言ったのか?

 

女性の言わんとすることを解釈しようと思考を再び巡らす。

 

突然キスをされ、舌を絡められる。ふと、意識がプツリと絶たれた。

 

「ウフフフ、フフフ、ワタ、シノモ、ノ」

 

 

再び目覚め、体が動かないことを確認した。今度は壁に腐肉で縛られているらしい。異臭は感じなかった。

 

 

山を歩く度に疲れが取れる。あの時から、彼は既に体が壊れつつあったのだ。

 

 

腐肉の山の向こうから、意識が絶たれる前に出会った銀髪の女性が歩いてくるのが見えた。

「ここはどこだ。」

問いかけるも、返事はなし。

 

どんどん向かってくる。

 

目の前まで来る。思わず顔を逸らすと、突然胸に触られた。

 

そういえば、胸に凶爪の傷跡があったはずだが…

 

胸を見る。…傷跡は見るも惨たらしい、腐った肉のようになっていた。

再び吐き気を催す。すると、銀髪の女性は、私の胸に置いた手で傷跡をなぞり始めた。

「ぐっ、うがあ、ああああ」

痛みは何故かなかったものの、体の内部を弄り回されるという耐え難い気持ち悪さに身を捩り、呻く。

「ウフ、フフフフフフ」

狂気を孕んだ笑い声に、恐れ戦く。

 

 

そうしてしばらく経ち、彼女の手が止まる。そして、またも舌を絡めた熱いキスをされる。

 

状況が状況だけに、俺の気持ちは全く盛り上がらない。

 

 

…と思っていた。

身体がじんわり熱くなり、俺は朦朧とするのだった。

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