聖杯戦争始めました~Fate/end war~   作:げげるげ

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一騎でさえ強いサーヴァントが、徒党を組んで三騎で同盟するなんて!
この戦い、我々の勝利だ!


第3話 三騎同盟

 神秘は隠匿しなければならない。

 それは、魔術協会が掲げる基本の規則である。

 神秘とは、魔術を使用する際に必要不可欠な井戸の底水のような物。それぞれ、一人一人が持つリソースではなく、全体で共有せざるを得ないリソースなのだ。例え、底が知れなくとも、大衆の目に神秘に携わる物を晒せば、情報化社会の現代、瞬く間にそれが広がり、万が一にでも神秘が枯渇するような事態は避けなければならない。

 故に、神秘の隠匿は魔術師であれば、共通の大原則。

 逆に言えば、それさえ守っていれば『外道? 外法? 根源に辿り着くためだったら、それもいいんじゃない?』と放置するのが魔術協会である。

 まぁ、基本的に魔術師など、人格ゴミ屑、道徳赤点以下ばかりなので、それも致し方ない。何せ、古代から脈々と受け継がれてきた『選ばれし者』の血脈なのだ。そりゃあ、自分以外の有象無象の命など、資源程度にしか思っていないだろう。

 ただ、中には魔術師としては『贅肉』としか思えない倫理観を身に着けた魔術師も存在するので、そんな魔術師を見かけた際は、SSRだぁ! と感動して欲しい。

 

 さて、脱線したが、話を戻そう。

 神秘は隠匿しなければならない。

 魔術協会としての意見は、これは絶対だ。これさえ守れば、大抵のことは黙認するが、これを守らなければ、抹殺も厭わないという絶対のルール。

 一方、宗次の所属する聖堂教会という派閥としては、神秘や魔術の類は、神の御業だから、むやみやたらに大衆に触れさせた駄目だよ! え? なんか聖遺物っぽいのが出てきた? よし、確保。え? 聖遺物が汚されて、邪悪な何かが出てきた? よぉし、もうその街ごと消毒しちゃおうよ! という感じの異端は死ね! 邪悪死すべし! なリアクションをする可能性がある。

 要するに、二つの組織としては、過去の怪物であるランサーが、現代の殺人鬼と組んで、神秘の隠匿なんて知るか、ばぁーか!! と暴れまわっている現状は看過しがたい物があるのだ。

 

「加えて、この聖杯戦争のシステムは特殊でね? 怪物の属性を有するサーヴァントは、『人を食らえば食らうほど、ステータスに補正を受ける』らしい。現に、初遭遇の時は、あと一歩で討伐可能だったぐらいの強さだったランサーが、今ではセイバーと互角に戦うまでになってしまっている。さらに言うならば、人を食らい続ければ最悪、あのサーヴァントは己の身に宿す怪物に因子を暴走させて、こう………………街中に大怪獣が、ね? 出てくるかも?」

 

 そして、聖杯戦争の監督役も兼任している宗次としては、そんな事態は絶対に避けたい。街中で大怪獣が出現するなんて、もはや、笑いごとにもならないパターンである。そこからさらに、大怪獣を討伐するための時間を考えると、手間暇も費用も洒落にならない。

 なので、宗次としては、殺人鬼を野放しにできないという個人的な感情を持ちつつも、公私混同せずに、聖堂教会として、聖杯戦争の参加者たちに協力を要請。

 結果、なんとか『ライダー』のマスターであり、この街の土地管理者である魔術師と同盟を組むことに成功した、というわけである。

 

「現在、僕たちセイバー陣営が同盟を組んでいるのは、ライダー陣営だ。そこに、君たち、ええと? クラスは? あ、はい…………うん、バーサーカー陣営とも手を組めれば、三騎同盟が成立する。ランサーを討伐するまでの協力体制だったとしても、他の参加者からの横やりに対処しやすくなるし、何より、元一般人である君に対して、聖杯戦争用に、最低限の設備や物資を用意することも出来るのさ」

 

 だからこそ、宗次としてはここで駄目押しとばかりに、三騎同盟を成立させたかった。

 許すことの出来ない邪悪、ランサー陣営を早々に討つために。

 もう、これ以上、無用な犠牲を出さないために。

 

「改めて、お願いするよ、健吾君。もう既に、確認されているだけでランサー陣営は十六人の人を食らっている。これ以上、奴らの暴虐を許すわけにはいかないんだ」

 

 宗次としては、意図していないことだったが、これは完璧なる説得だった。

 何せ、健吾に対してほとんどデメリットが存在しない。

 殺人鬼と怪物をどうにかしなければならない、と言うのは健吾も感じていた部分だ。さらに、既に参加者として存在している他の陣営と組めるということは、その間、完全に素人の健吾としては準備期間が出来るということになる。

 流石の健吾としても、このような尋常ならざる戦いへと参加するのに、なんの準備も無しで生き残れるとは思ってなかったが故に。

 

「…………わかりました。これから、よろしくお願いします、宗次さん」

 

 健吾もまた、頭を下げて宗次の提案に乗った。

 それにより、聖杯戦争序盤にして、セイバー、ライダー、バーサーカーによる三騎同盟が成立することになった。

 最優のセイバー。

 機動力及び、宝具に優れるライダー。

 強力なステータスとスキルを有するバーサーカー。

 これら三騎が組んだ同盟は、今後の展開に於いて非常に有利となるファクターとなるだろう。

 ――――――例外が、存在しなければ。

 

 

●●●

 

 

「まず、自己紹介から始めよう。俺の名前は、坂田健吾。高校生……と言っても、分からないと思うが、つい最近まで、一般人だったからな。これから足手纏いにならないように頑張らせて貰うぜ。よろしく頼む、バーサーカー」

「ええ、よろしくお願いしますね、健吾」

「おっといきなりの名前呼び。いいね、いいね、親交が深まって来た」

「私のことはどうか、母とお呼びください」

「おおっと、いきなりの母呼びの要求。これには、流石の俺もちょっと引いている。何なら、出会った時から、引いてる」

「…………わかりました、健吾。では、妥協して――ママ、と」

「デデン! 健吾の好感度が下がった!!」

「あらまぁ」

 

 三騎同盟を締結させた後、健吾は宗次によって割り当てられた和室で作戦会議を行っていた。

 どうやら、この建物は宗次が管理する物件の一つらしく、健吾のように、『巻き込まれ』で聖杯戦争に参加してしまった者を保護するために、用意していた物なのだとか。宗次からは『呉越同舟で悪いけど、ランサーを倒すまでこの部屋で我慢してくれないかな?』と申し訳なさそうに告げられたわけだが、むしろ、健吾としては自宅のアパートよりも数段生活環境が向上しているので、文句なしである。

 正直、聖杯戦争に参加すると言っておいて、宗次の恩恵を受けまくりな健吾であるが、そこはいずれ借りを返すとして、今は甘んじることにしている模様。

 そんな健吾たち、バーサーカー陣営であるが、彼らが真っ先に行ったことは、自己紹介だ。

 

「ずっと聞こうと思っていたけれど、なんで母?」

「母は、母だからですよ?」

「…………俺の母さん、多分、ずっと前に亡くなっていると思うし、そもそも顔すら見たことも無いんですが?」

「そうですか…………寂しかったですね? 私の胸でたんと泣きなさい」

「いや、そういうことじゃ……胸……いや、そういうことじゃなくて! ああもう! わかった、呼べばいいんだろう!? 多分、呼ばないと話が進まない奴だ! これから、真面目に作戦会議を始めようぜ、母さん! これでいいか!?」

「うふふふ、健吾ったら元気ですね?」

「本当にこの人が、あの怪物を一刀で斬り払った女武者なのだろうか?」

 

 自己紹介と言ってしまえば、陳腐に聞こえてしまうかもしれないが、要するに、自陣営の戦力把握と方針のすり合わせだ。

 何せ、サーヴァントは種別としては使い魔に分類されるが、その中でも最高ランク。己の意志を持ち、マスターの力すら圧倒的に凌駕する英霊である。令呪が無ければ、まともに従うことは無いだろうし、令呪があったところで、その意志力は時に、令呪による命令すら跳ね除けて、マスターに反旗を翻すだろう。

 聖杯戦争に勝ち抜きたいのならば、己とサーヴァントの相性確認が必須だ。

 真名。

 聖杯にかける願い。

 タブーとなる行動。

 ステータス。

 宝具。

 それらを把握することこそ、聖杯戦争に於けるマスターの基本であり、定石であるとも言えるだろう。まぁ、過去の英雄の影を召喚しているので、ここまでとんとん拍子に説明してくれるサーヴァントは結構貴重だったりするのだが。

 だが、健吾のサーヴァントであるバーサーカーは違った。すんなりと健吾の質問に答え、大体の情報を把握することが出来たのである。そう、奇しくも健吾は、サーヴァントとの交流の基礎を初心者ながら完璧にこなしていた。

 その結果が、以下の通りです。

 

 真名。

 

「源頼光と申します。大将として未だ至らぬ身でありますが、よろしくお願いしますね?」

 

 聖杯にかける願い。

 

「貴方と、共に健やかな生活を過ごせることを、幸いとしたいと願っております」

 

 ステータス…………把握完了。

 宝具…………理解はしたものの、実感は薄い。

 

 タブーとなる行動。

 

「――――――我が子である貴方に、危害を加える者があれば、私は許さないでしょう。どうか、その時はやり過ぎてしまうかもしれません。もしも、殺さずに済ませたい場合は、時に、令呪の使用をおすすめします」

 

 バーサーカーである源頼光の言葉を聞いて、健吾は頭の中に疑問符が浮かんでいた。

 え? 源頼光って確か、歴史上では男性だったよね? 違うの? 実際の歴史では違うの? そもそも、なんで源頼光が母? 母というポジションに固執しているの?

 

「…………あー、とりあえず、まず、いいか?」

「はい、なんなりと」

「俺が習った歴史の内容だと、源頼光――平安時代中期の武将で、大江山の鬼を討伐した英雄の一人って認識なんだが、ここまでは合っているか?」

「ええ、頼りになる仲間たちと、あの虫…………鬼どもを駆逐しました」

「なるほど、偉業は本物である、と。なら、その、デリケートな部分を訊くかもしれないが、ええと、なんで女性? 歴史上は男の人ってなっていたけど?」

 

 健吾の質問に対して、頼光は影のある笑みを浮かべて、答える。

 

「父上に、そう命じられましたので、私はそう生きてきて、そう死んだのです」

「…………なるほど」

 

 想定以上のシリアスな答えに、健吾はそっと胸の中に浮かんだ疑問を、そのまま秘めることにした。

 本当であれば、もう『その胸で!? そのおっぱいで!? いやいや、いやいやいやいや! それで男は無理があるぜ!!』と叫びたい衝動に駆られていたのだが、ぐっと我慢である。どんな意図があったとしても、このおっぱい魔人を男扱いしていた当時の人たちは絶対、『はいはい、男、男…………絶対無理あるのに、ごり押しするよなぁ』と呆れていたんじゃね!? とどんどん追及したいのだが、必死に自重していた。

 恐らくは、この『母』やら『女性なのに男扱い』は、頼光というサーヴァントにとってのデリケートな部分だ。無造作に触れていいところではない、と健吾は持ち前の観察眼とコミュ力で察していたのだ。

 そして、それは正解である。

 この母なるサーヴァントであるが、浅い部分だけ見ると全自動バブみ製造機のように感じられるかもしれないが、そうなった経緯を考えれば、闇は深い。

 そもそも、規格外の狂化スキルが付与されているというのに、高い知性が付与され、会話と多少なりとも意思疎通が出来ている時点で異常なのだ。

 藪を突かず、様子を見るという健吾の選択肢は紛れもなく正解だった。

 

「わかった。よくわからないが、とりあえずそういうことだって認識にしておこう。うん、そういえば、そうだな。俺は元々、アンタに一度命を救われている。なら、アンタがどんなことを抱えていようとも、俺はそれを信じてみるとするよ」

「…………いえ、ですが、母は子供を守るのが当たり前で――」

「そうだったとしても、だ。ありがとう、頼光」

 

 健吾が真面目な顔つきで礼を言うと、頼光はしばし戸惑った後、やがて、綻ぶような微笑みを見せた。

 

「さて。俺だけ色々と訊くんじゃ、不公平だよな。頼光…………あー、母さん?」

「ふふふっ、呼びやすい方で構いませんよ。シャイな息子の我が侭を聞き届けるのが、母としての義務ですので」

「そりゃどうも。んでさ、頼光は俺に何か聞きたいこととかない?」

「…………んんんー、では、一つだけ」

 

 頼光は口元を抑えて思案した後、問いかける。

 

「健吾は神仏の加護を受けているようですが、どのような加護を受けているのですか? その内容を知っておくことは、今後の戦いを有利に進めることに通じると思います」

「…………えっ?」

「えっ?」

 

 だが、その問いは健吾本人ですら、自覚していなかったらしく。

 

「「えっ?」」

 

 しばらくの間、二人は小首を傾げながら、互いの認識のすり合わせを行うのだった。




●簡単用語解説(間違ってたらごめんね)

・魔術師:根源に向かってレディ、ゴー!! スタイリッシュ自殺を目指す人種。
・魔術使い:根源に到達とか、ただの自殺やんけ!! 魔術で生活を豊かに!!
・魔術協会:ロードエルメロイⅡ世の事件簿を見ようぜ!! 教会はクソだと思っているが、冷戦中。
・聖堂教会:神秘は大体神様の者! 勝手に使う異端はぶっころ!! 協会はクソだと思っているが、冷戦中。
・代行者:麻婆豆腐食っている奴。
・神秘の隠匿:まぁ、隠匿したところで、鋼の大地へレディゴーなんですがね!!
・例外:聖杯戦争でチートしない奴は馬鹿と言われるぐらいに、やらかす。
・聖杯戦争:そもそも、サーヴァント同士を戦わせる必要はあんまりないっぽいというか。
        魔術師って専門じゃなければ、研究職みたいなのに、戦争とか付けちゃうから。
・サーヴァントとのコミュ:絆レベル0で最終勝利者になって、聖杯を叩き割る人も居る。
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