Q.こんな俺でも世界は救えますか?   作:山田ヘイタロウ

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第6話

 三日ぶりにシェルターの外に出る。

 世界が変わった訳ではない。それでも戦う力を手に入れた。無力に奪われるなどという事はないはずだ。

 相変わらずの小鳥遊のレベルエラーは続いていたが。

「響、一番最初はゴブリンかコボルトがいいらしいよ」

 それはきっと本の情報からだろう。小鳥遊もこの二日の間に、本を何冊か購入し、情報を集めた。

 それは様々な異種族の倒し方についてであったり、初心者が気をつけるべき事であったりとためになることも少なく無かった。

「ゴブリンはそこら辺に居るらしいから」

 槍を持ちながら光樹が言う。

「ああ、そうだな。ゴブリンはそこら辺に居るな」

 シェルターに向かう道中で加藤が車でゴブリンを轢き飛ばしたのを思い出した。

 確かにその通りだ。ゴブリンはそこら辺に居る。車で轢き、弾くことの出来るその程度の異種族だ。

 基本、異種族はそこらに生息しており、どのような区域で生活をしているかなどは特にないようであった。

「ゴブリン見つけるまで頑張るか」

 小鳥遊も気合を入れ直す。

 何も失わないために。

 

 ーーザッ。

 

 その瞬間、背後から音がして、斧を構えて振り返る。

 それは光樹も同じであった。二人はすぐにでも攻撃できるように構える。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 少し慌てたような声を上げた。

 そこに立っていたのは緑がかった金髪、見目麗しい碧眼の少女。尖った耳。明らかに人間ではない雰囲気。

 小鳥遊の中でのエルフの容貌のイメージに一致する。

 ファンタジー小説で見る共通認識を抱くような見た目である。

「だ、大丈夫です!貴方達を襲うつもりはありません」

 そう言って彼女は必死に説得をする。見た目はほぼ人間に近く、殺すのも躊躇われてしまう。

 本に記されていたのはあくまでも異種族の殺し方であって、異種族との関わり方ではなかった。意思のある異種族、人間と何ら変わらない見た目。

 どうするか迷ったが、自分一人では手に余ると思い、光樹の判断を待つ。

 その光樹は槍を下ろして、エルフの少女の言葉を信じることにしたようだ。

「ほっ、実はゴブリンにはエルフも迷惑しておりまして、ゴブリンを探しているんですよね?」

 安心したのか少し息を吐いてから、彼女は事情を話し始める。

「ああ、まあ」

 小鳥遊がそう答えると、エルフの少女は少しばかりの笑みを浮かべる。

「私も手伝います。一緒にゴブリンを倒しましょう」

 敵意を特に感じない。信じてもいいものか。しかし、即断するには恐ろしい。

「私はミラ、宜しくお願いします」

 悩む時間は十分とは言えなかった。

 流されるように二人はミラの協力を手に入れることになった。

 手当たり次第、町を調べること三十分程。ゴブリンの声が聞こえた。

「見つけました」

「よし」

 場所は住宅などから離れた木々の生茂る場所。緑も多い場所である。

 目の前にはゴブリンが三匹。

 小鳥遊と光樹はそれぞれ、斧と槍を構えて、ジリジリと距離を詰める。

 そして、勢いよく駆け出して小鳥遊は斧を大きく横に振るう。光樹は槍でゴブリンの頭を一突き。頭蓋をも貫いて、槍は貫通、一方小鳥遊が振るった斧はゴブリンの頭をぐちゃぐちゃに破裂させ、折れて壊れてしまった。

 何があったのか一瞬理解ができなかった。呆気にとられているうちに一匹のゴブリンが逃げ出そうとするが、光樹は見逃す事なくそのゴブリンに槍を投擲して、貫く。

「ありがとうございます!」

 そう言ってミラが走り寄ってくる。

「初めてにしては上手くいったんじゃないか?」

 光樹はそう言いながら、槍を肩にあてる。

 彼の視線は壊れてしまった小鳥遊の斧に向けられているが。

「響の武器は壊れたけど」

「今度から値引きないんだったか……」

 持ち手しか残っていないそれはヒノキの棒よりも頼りない。

「ミラ、これでいいの?」

 光樹がそう尋ねれば、ミラもニッコリと笑顔を浮かべて、

「はい!」

 と、答えた。

「んじゃ、俺たちも帰ろう」

 そう言って、二人は背中を向けてそこから離れようとする。

 

 ーーピシュッ。

 

 そんな矢を発射するような音が聞こえた気がして、小鳥遊は光樹を突き飛ばす。

 

 ーー始めから完全には信じていなかった!

 

 疑っていたからこそできた判断と行動。

「いった!な、何だよ?」

 突然のことでよくわからないと言った様子であったが、すぐに理解した。

「矢?」

 先ほどまで立っていた位置に確かに矢が突き立っている。

「ミラ……。あんた、どう言うつもりだ」

 その弓矢を放ったミラを小鳥遊は睨みつける。

「あれ、外れちゃいましたか。残念です。一撃であの世に送るつもりだったんですが」

「何のつもりで……」

「だって、おかしくありませんか?人間は私たちによって支配されているべき存在ですよ?それなのに力を持って……。全く、その途端に異種族を殺せだのと我がまま過ぎますよ……」

 その口から漏れるのは文句。憤りを孕んでいるその声に、殺気が混じり込んで緊張感を生む。

「とは言っても、流石に一人でやるのは面倒ですからね」

 その瞬間に、何者かが切りかかってきた。口元を隠しているが、尖った耳から同じくエルフだと推測できる。

「では、死んでください」

 エルフは人間と同じほどに、狡猾な異種族であった。

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