それでは!どうぞ!
〜葵side〜
先月の最後の一週間に、博麗神社の大木に雷が落ちてしまい、その大木が割れてしまっていた。
私はその時に、その場に居たわけではないので、後日その事を聞きました。
そして、文月の今日。私は博麗神社の境内を掃除しています。
「そう言えば、霊夢」
「ん?何よ」
「雷が落ちたという大木をこの前祀ったって言ってたけど、アレからどうしたの?ちゃんと信仰してる?」
私は縁側に座っている霊夢にそう聞くと、霊夢は……
「してないわよ」
と、真顔で言ってきました。
「……ぇ」
「……」
霊夢の隣で寝ている鬼灯も、その言葉を聞くと、目を開けて霊夢を睨みつけています。
「ん?どうしたんだぜ?葵」
「どうした?葵」
「葵?何かあったの?」
そんな時に、洗濯を任していたルカと、神社内の廊下の掃除を任していた想起さん。それから、何時もの様に遊びに来た魔理沙が来ました。
ですが、今の私は、全員が聞いてきた質問に答える程に、心の余裕がありません。
「えっと、どういうこと?霊夢。どうして、信仰するのを辞めたの?」
私は、真面に霊夢を見れない状態のまま霊夢に聞くと、霊夢はそんな私に気付いていないのか話し始めました。
「だって、参拝客が来ないんだもの。それに、私が飽きたし……」
最後の一文字は、私が霊夢に平手打ちした音で掻き消されました。
「……」
「……何すんのよ‼︎あお……!」
霊夢が私がした事を怒ろうとしていましたが、私の顔を見て、怒るのを辞めました。
「……葵」
「……なんて……」
私の目から流れる涙を止めず、私は言いました。
「なんて事をしたのですか‼︎霊夢‼︎なんでそんな自分勝手な都合で信仰するのを辞めたのですか‼︎」
私が何故怒っているのか。それはとても簡単な事です。
『神』という存在は、信仰されれば生まれる存在です。
とても簡単に生まれる存在です。
……ですが、それと同時に消えてしまうのも簡単です。
『神』が信仰されて生まれるならば、その逆に、信仰されなければ消えてしまいます。
霊夢は、その雷が落ちた大木を祀り、信仰しました。
だから、あの大木には神が生まれました。
ですが、途中から霊夢が飽きてしまい、信仰しなくなってしまった所為でその神は消えてしまったのです。
本当にその大木に神が生まれていたのかどうかは流石に定かではありませんが、高確率で生まれていたでしょう。
それを、霊夢は……。
「貴女は『神』を殺したも同然の事をしたのですよ‼︎霊夢の性格の事を考えなかった私も悪いですが、大元の原因は貴女です‼︎信仰出来ないなら最初からしないで下さい‼︎」
私の涙は、結局、最後の言葉を言っても止まらず、私はその場を急いで離れて、霊夢の過去を頼りに、その大木の元へと移動しました。
〜想起side〜
「あ、葵が怒ったところを、私は初めて見たぜ」
「だろうな。葵は滅多なことが無い限り怒らない奴だから。ま、もっとも。その『滅多に怒らない奴』を怒らせた本人は此処に居るがな」
ルカさんはそう言いながら、冷たい目で霊夢さんを見ていた。
僕はというと、若干、放心状態になっている。
だって、僕だって、葵が怒ったところを見たことが無いんだから、仕方ないよね?
「……」
「霊夢。葵が何に対して怒ったのか、分かってるのか?」
霊夢さんもまた放心状態にあるけど、それを無視して、鬼灯さんが話し掛けた。
だけど、その声には何処か怒りもある様に感じられる。
「……」
「彼奴は誰よりも優しい奴だ。だから、滅多なことがない限り怒ることもない。なら、何で今回は怒ったのか。それは彼奴も言っていたが、お前は『神』を殺したも同然の事をした。『神』にだって命はあるんだ。『神』という存在は強い。だが、死ぬ時は……消えてしまう時は直ぐに消える。誰にも気付かれずに消えてしまうことだってあるんだ。今回の件の様にな」
「……」
「彼奴は『神』を殺しておいて、消しておいて、何とも思っていない様子のお前に怒ったんだ。私も『神』だから、この件に関係ないとは言えない。だから私からも言おう」
そこで鬼灯さんが息を吸うと、霊夢さんに向かって言いました。
「そもそもから信仰する気がなく、自分の利益の為だけに信仰することを辞めろ。お前が自分の利益の為だけに信仰したから、今回の様な事態になったんだ」
「!……」
「今後は自分の利益の為だけに『神』を祀るな。信仰するのを途中でやめるなら信仰するな。神からすれば傍迷惑だ」
「……ごめんなさい」
霊夢さんが謝ったけれど、鬼灯さんは首を横に振っている。
「今回は私に謝るべきことじゃないだろ?葵に謝ってこい。大木のところにいるだろう」
「‼︎分かったわ‼︎」
鬼灯さんがそう言うと、霊夢さんは急いで大木の方へと移動して行った。
「……さて、居るんだろ?紫」
鬼灯さんがそう呼びかけると、その後ろから紫さんが出て来た。
「あら?何時から気付いていたの?」
「最初からだ。葵が霊夢を怒り始めた頃から居ただろ。紫」
「あら、本当に暴露てたわね。それにしても、あの子が彼処まで怒るなんて、本当に珍しいわね」
「だろうな。まあ、今回は仕方ないだろ。彼奴が怒る原因を作った霊夢が悪い」
「それもそうね。さて、あの子にはお仕置きと勉強が必要ね」
紫さんは最後の最後に僕達に挨拶をすると、帰ってしまった。
「……さて、私達はあの二人が帰ってくるまで待つぞ」
「あ、はい」
〜葵side〜
大木の元に着いてから、私はずっとその大木を見続けている。
その大木が、雷に打たれても死ななくとも葉っぱは全て散っていたであろう大木は、今はとても大きく成長し、葉っぱも沢山付けていました。
「……やっぱり、『神』は死んでいますね」
大木に手を当てて調べて見ると、やっぱり『神』は居なくなっていました。
「……ごめんなさい。もっと早く気付いていれば……」
私が罪悪感からそんな言葉を呟くと、何処からか『ガサッ』という音が聞こえてきました。
「?」
その音の正体が何なのか知る為に、その音がした方を向くと、少しだけしか見えませんでしたが、赤いスカートと透明な羽です。
「もしかして、アレは……」
私がその存在を何と無く理解したところで……
「葵!」
霊夢のそんな声と、息切れしたであろう吐息が聞こえてきました。
「……」
私はそんな霊夢を見て、心配で駆け寄りそうになりましたが、今さっきの出来事もあって、行動することが出来ませんでした。
「葵……」
「……」
霊夢は私の視線から逃れようとしませんでした。なので、私はその瞳を見続けると、霊夢が頭を下げました。
「ごめん!葵!私が悪かったわ‼︎」
「……霊夢、分かってくれただけでいいんです。ただ、謝るなら私ではなく、この大木です。『神』を失ったこの大木にするべきです」
私がそう言うと、霊夢は大木に近付いて、手を当てました。
「ごめんなさい」
小さな声ではありましたが、なんとかその声を拾うことが出来ました。
「さて、それではこの件はこれで終わりです。帰りましょうか」
「ええ、帰りましょう」
霊夢はそう言うと、そのまま歩いて行ってしまいました。
私は最後に妖精がいるであろう場所を見てから、その場を後にしました。
……あの大木が、妖精の住みやすい場所になれば良いのですがね……。