東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百八話

葵達が雛と戦い終わった後の紅魔館。

 

そこには、正気に戻った紫が、笑顔を浮かべているレティシアとまだチェスをやっていた。

 

「クスクス、はい♪チェックメイト♪」

 

「はぁ〜……何で貴方に勝てないのかしら?」

 

「クスクス、さあね♪」

 

「……貴方、隠れて能力使ってるわけじゃないわよね?」

 

紫はレティシアに疑いの眼差しを向ける。

 

……紫がこう聞くのも無理はない。

 

何故なら、さっきから一度も紫は勝てていないからだ。

 

それこそ、まるで自分の思考を『見透かされている』様に……。

 

「クスクスクスクス、紫。私がこういうゲームの時に、そんな卑怯な真似をすると思ってるのかしら?」

 

レティシアは疑問系で聞き返したが、その顔には黒い笑みが浮かんでいる。

 

「まま、まさか。一応の確認よ‼︎確認‼︎」

 

紫は慌ててそう言うが、レティシアは益々笑みを深くした。

 

「クスクスクスクス、そう言えば、紫。貴方、最近ちゃんと特訓してるのかしら?」

 

「⁉︎」

 

またまた黒い笑みを浮かべながらレティシアは紫に問いた。

 

逆に紫は冷や汗をかいているが。

 

「れ、レティシア?何でそんな怖い笑みを浮かべているのかしら?綺麗な顔がもったいないわよ?」

 

紫が引きつった笑顔を向けるが、レティシアの顔は変わらなかった。

 

「クスクスクスクス、良いのよ♪そのことを言われて気にするとしたら、好きな相手から言われた時だけよ♪……それで、紫」

 

一度、顔を俯かせ、声のトーンも落としたレティシア。そして、次に顔を上げた時に浮かべていた表情は、満面の笑みだった。

 

「クスクスクスクス、紫。久し振りに『特訓』、しましょうか♪」

 

「い、いやぁぁぁぁあ!」

 

そんな叫び声が、その日の紅魔館では何回か響いていたとかいなかったとか。

 

〜少女特訓中〜

 

数分後。

 

レティシアが紅魔館内に被害が及ばない様張った結界の中には、とても楽しそうな笑みを浮かべているレティシアと、床に倒れている紫の姿があった。

 

その姿はボロボロだったが、不思議なことに、部屋の中(レティシアの自室)は全く汚れていない。

 

「クスクス、早く立ちなさい、紫。これぐらいじゃ死んでないでしょ♪」

 

「……し、死にはしなくても……死にかけたわよ……」

 

紫はゆっくりとだが立ち上がった。しかし、フラフラしている。

 

「クスクス、大丈夫かしら?」

 

「こ、これが大丈夫な様に見えるのかしら?弾幕の嵐で私が避ける隙を塞いでおいて……スキマに隠れたらスキマから引き摺り出して、また浴びせて……」

 

紫は口元をひくつかせている。

 

「クスクス、前もやったでしょ?これぐらいじゃ死なないのだから良いじゃない♪まあ、死んだところで生き返らせることは可能だけれど♪」

 

レティシアはまた笑ってそう返した。

 

「クスクス、それにしても、紫も弱くなったわね」

 

「?」

 

「クスクス、こんな『偽物』の私にチェスで負けるは、コレでもボロボロにされるわ……散々ね♪」

 

「……え?」

 

紫は驚いた。

 

「え?ちょっと待って?貴方、まさか、レティシアが作った『分身』?」

 

「クスクス、それ意外に何があるのよ♪」

 

「……『本物』のレティシアは?」

 

「クスクス♪」

 

レティシアはずっと笑みを讃えたまま、答えた。

 

「もうすぐ『異変』を起こそうとしてる奴の元♪」

 

***

 

ー神無月神社ー

 

「……貴方ね。ルカに『狂気』と『厄』を持たせたのは」

 

レティシアは一人、誰も居ないはずの神無月神社に来ていた。

 

勿論、日傘を差してである。

 

そして、誰も居ない筈なのに、レティシアは『誰か』に話し掛けた。

 

『……ヘェ、オマエが『レティシア』か』

 

そして、誰も居ない筈なのにも関わらず、『誰か』は答えた。

 

「ええ、私がレティシアよ。貴方が最初、『操ろう』としてきたね。先を『見透かし』てなかったら、対処も出来ずに貴方にまんまと操られてたかもしれないわね」

 

『ケケケ‼︎よく言うぜ‼︎そんなもん、オマエなら簡単に拒絶出来てたんだろ‼︎オマエ、面白い冗談を付くな‼︎』

 

「それにしても、また何でそんな姿なのかしら?」

 

『そんなもん、分かってんだろ?『最強』サン?』

 

相手はレティシアを挑発するかの様な言葉を浴びせた。

 

しかし、レティシアはその挑発に乗りはしない。決して、戦ったりはしない。

 

「そうね、とても簡単ね。だって、『不幸』の象徴だもの。『黒猫』は」

 

今、レティシアの目の前にいる、先程から話しているのは『黒猫』。

 

ルカが何時も世話をしているからなのか、毛並みは綺麗だ。

 

『正解だ。クククッ、『悪魔』である俺にはお似合いだろ?』

 

「……私の近くに『悪魔』はいるけれど、貴方の様に下品じゃないわ。『黒猫』が似合うのは否定しないけれどね」

 

『ケケケッ!違いねぇ‼︎……ンで?オマエは何の様で来たんだ?まさか、この『サタン』様に挑むつもりか?』

 

「そんな事しないわよ。したら、被害が尋常じゃなくなるわ」

 

『クククッ!オレとしては『悲鳴』が聞けるからむしろ殺りたいがな‼︎』

 

「……」

 

サタンはレティシアに向かって弾幕を放つが、レティシアはそれを無言で消し飛ばした。

 

『チッ。余裕淡々と消し飛ばしやがって……気に入らねえな』

 

「……要件だけ言うわ。さっさと『魔界』に帰ってくれないかしら?」

 

レティシアはサタンに笑みを向ける。……しかし、その笑みからは冷気が漂っていたが。

 

『あゝ、そらなら飲んでやるよ。オレは飽きたからな』

 

「飽きた?」

 

『だってよ〜。彼奴、中々に渋といんだぜ?オレは実は短気な方で、早く彼奴の絶望した姿を見たかったんだがナ。自分の親友を殺した時の絶望した姿を……ケケケッ、想像しただけで笑えてくるぜ』

 

『黒猫』の姿をしたサタンは下品に笑う。猫の前足を口元に当てて。

 

「……下品な笑い方ね。しかも、悪趣味だわ」

 

『クククッ、それはオレにとっては褒め言葉だ。なにせ、オレは『悪魔・サタン』様だからナ〜‼︎』

 

「……」

 

レティシアは無言で睨み付ける。しかし、

 

『おおー、怖い怖い。怖いから睨みつけるんじゃね〜よ』

 

サタンは笑顔でそんな事を言った。全く、怖がってる様に見えない。

 

『ンじゃ、オレは帰るわ。あ、オレの正体を看破したプレゼントとして、この猫の命ぐらいは助けてやる』

 

「……貴方が『力』を得る為に食べた人里の者達の『魂』を返すつもりはないということね」

 

『ケケケッ‼︎オレは誰かさんと違って、人を生き返らせること何て出来ないんでネ‼︎ま、やっぱり絶望した時の『魂』は美味だが、それ意外は不味いったらありゃしねえ。吐き気がするほど不味かったぜ?『幸せ』感じてた奴らの『魂』はヨ』

 

「……貴方、最低ね」

 

『ケケケッ‼︎オレにとっては褒め言葉だ‼︎んじゃな』

 

サタンはそれを最後に猫の体から出て行った。

 

サタンが出て行った後のノアは横になっていたが、寝ているだけの様だ。

 

「……いつまた来るか、分からないわね。用心しておかないと」

 

レティシアはそれを言うと、紅魔館の方へと飛んで行った。

 

***

 

「……そう、そんな奴がいたのね」

 

「クスクス、気付かなかったのかしら?紫」

 

場所は変わって、紅魔館のレティシアの部屋。

 

そこで、紫とレティシアはまたチェスで遊びながら話していた。

 

「ええ。力すら感じ取れませんでしたわ」

 

紫は白の駒を置きながら答えた。

 

「クスクス、貴方もまだまだね♪……まあ、私も先を見なかったら気付かなかったから、人の事を言えないけれど」

 

レティシアは黒の駒を置きながらそう言葉にした。

 

「そう言えば、珍しいわね。貴方が動くなんて。言っては悪いけど、幻想郷の事は二の次な貴方が」

 

「……」

 

レティシアはその言葉を聞くと、動きを止めた。

 

「?レティシ……ッ⁉︎」

 

紫はどうしたのかと問おうとしたが、レティシアから漏れる殺気に気付き、喋るのを辞めた。

 

「……紫、本当に分かってないわね」

 

「な、何がかしら?」

 

「私が見た未来の幻想郷……絶望したルカの手によって、氷河期の様な状態になっていたわよ?」

 

「なッ⁉︎で、でも、あの子の妖力では……」

 

「そうね。『今』のあの子じゃね」

 

レティシアはそんな含みがある様な言い方をした。

 

「……」

 

「あの子、半分吸血鬼なだけあって、本来の妖力は結構あるのよ。まあ、それは本人の体を壊すほどの量だから、自分でも知らぬ間に封印してるみたいだけど」

 

「……」

 

「で、サタンはその妖力を使って、この幻想郷を氷河期にした。……勿論、そんな事したルカは死んでいたけれどね」

 

「……」

 

「私が気付かず、そんな事を放っておけば……被害はどれぐらい出たのかしらね?」

 

レティシアはそこでようやく黒の駒をチェス盤に置いた。しかも、白のキングの目の前に。

 

「チェックメイト。この先に待っているのは戦えない王の『死』のみ。王は臣下ばかりに戦わせて、自分は高みの見物。……まるで、今回のサタンのようね」

 

「……」

 

「……紫、私は前にも言ったわよね?『私にとって、幻想郷よりも家族の方が大切』だと。だから、敵にならないと言った貴方からの誘いに乗った訳だけれど、もし、貴方達がレミィ達を裏切る様な真似をしたら……」

 

そこで、紫は自分に向けられていた殺気がまた大きくなったのを感じた。……それこそ、呼吸が難しくなるほどの『殺気』。

 

そして、それを浴びせているレティシアは、底冷えする様な声で、

 

「殺すわよ」

 

たった一言。それだけを言った。

 

「ぁ……ぁ……」

 

紫が中々、声を出せずにいると、その殺気はなりを潜めた。

 

「クスクス、まあ、貴女がそんな事をするとは思えないけれど、一応、釘さしね♪」

 

「……」

 

紫はそんな楽しそうな声でようやく、冷静になることが出来た。……冷や汗は止まっていないが。

 

「……敵になるわけないでしょ?」

 

「クスクス、未来は分からないわよ♪一人の行動だけでも変わる不安定なものだもの」

 

「……そうね」

 

「クスクス、今日はもう辞めるかしら?」

 

「いえ、チェスではなく、オセロをしましょう」

 

「クスクス、分かったわ♪」

 

レティシアと紫は、先ほどの事など忘れたかの様にオセロを楽しんだ。




ふぅ、フラグを折ったぜ

「クスクス、主?私はそこまで怖くないわよ?」

「十分怖いがな。というか、コレ、当初はちゃんとしたオリジナル異変として出そうとしたものじゃないか。良いのか?」

だって、結構、難しかったんだよ⁉︎しかも、頭の中の構成で考えてると、なんかレティシアさん達がサタンに勝てないし……

「……それ、大丈夫か?」

「クスクス、サタンは悪魔の中でも最高位の悪魔だからね。仕方ないことよ」

「それにしても、その異変の時の私は……」

勿論、ルカさんに『一度』殺されます。あ、出して欲しいなら番外編の方にでもifの話として投稿しますね

「なあ?一度って……」

話して欲しいの?

「……大体、想像つくから辞めておく」

それでは!さようなら〜!
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