東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百十一話

葵は神社内から出てきた祟り神、諏訪子を見つめていた。

 

この状況を見た諏訪子が何か言うかもしれないと思い、話さないようにしているのだ。

 

「えっと、何で早苗はやられてるわけ?」

 

諏訪子はそんな疑問を目の前にいた葵に投げ掛けた。

 

「それは、霊夢と如月さんが早苗さんと弾幕ごっこをした結果と言う他ありません」

 

「ふーん、となると、早苗は負けたんだね?」

 

諏訪子はそう言うと、早苗が少し起き上がった。

 

「すみません、諏訪子様。負けてしまいました」

 

「ん?何で謝るの?早苗。私は怒ってないよ?」

 

諏訪子は首を傾げながらそう言うも、早苗からは謝罪の言葉がまた漏れた。

 

そこから少しの間、沈黙が訪れた。

 

「……さて」

 

それを払拭するかのように鬼灯が口を開けると、神社の屋根の方を向いた。

 

「そこにいる奴……神奈子だろ?出てこい」

 

すると、本当に屋根にいた者が、飛び降りて、姿を表した。

 

その姿は、諏訪子とは対照的に身長は高く、背中には大きな注連縄があり、髪の色が青色の女性である。

 

「神奈子さん、ですか。となると……『軍神』でしょうか」

 

「ああ、それは少し違うよ」

 

葵が呟くように言った言葉は、近くにいた神奈子には丸聞こえだったようだ。

 

「確かに私は『軍神』だけど、どちらかと言うと『神霊』だね」

 

「『神霊』?」

 

神奈子の口からでた単語に魔理沙は首を傾げた。

 

そんな魔理沙を見た霊夢は少し溜息を吐くと、簡単に説明した。

 

「『神霊』って言うのはね、元となった霊がいる神の事よ。まあ、一体、何が元になってるかは知らないけど」

 

霊夢はそう言うと、神奈子を見た。

 

「で?あんたは何しに来たわけ?また戦いに?」

 

霊夢がそう聞くと、神奈子は少し笑った。

 

「ハハッ‼︎それは確かに面白そうだが、今回はしないさ。で?あんたは何か、私達に説明することがあるみたいだね?」

 

神奈子が霊夢を見てそう言うと、霊夢は心底面倒臭そうにしながらも説明し始めた。

 

葵はそれを見ると、一度その場を離れ、ルカ達の近くに移動した。

 

「ふぅ、これで終わりだね」

 

「だな」

 

「……?あれ?凛華さんは?」

 

葵はその場に凛華が居ないことに気付き、如月にそう質問した。

 

「ああ、凛華なら一度戻ってるんだ。最初は『まだ戻らん‼︎』とか駄々こねてたが、想起が宴会の時には呼ぶって言うと素直に戻ってくれたんだ」

 

「そうだったんだ。ありがとうございます、想起さん」

 

葵はそう想起にお礼を言って、顔を見ると、何故か驚いていた。

 

「?」

 

葵は周りを見て見ると、歩と夢幸以外のその場にいる全員が驚いている顔をしていた。

 

「え?」

 

葵はその様子を見ても全くピンとこず、何事かと思っていると、

 

「今……葵、タメ口で話したか?」

 

ルカからのその言葉にハッと思い出し、慌てて訂正し始めた。

 

「ち、ちちち、違います‼︎これは間違いで……いや、間違ってないけど……って、またタメ口で話してしまった‼︎ごご、ごめんなさい‼︎」

 

もう慌てすぎて頭がパニックになったのだろう。謝らなくても良いのに謝った葵を見て、少し笑った如月。

 

「いや、別に謝らなくても良い。そのままタメ口で頼むな。葵」

 

如月からそう言われると、少し躊躇いがちではあったが頷いた葵であった。

 

「……一歩前進、か。なんだか、離れていく子供を見ている親の様な気持ちだな」

 

「年寄り臭いぞ。鬼灯」

 

「少し、黙れ。折角の感動が台無しだ」

 

鬼灯とルカがちょっとした争いを側で起こしそうになっていたが、それは近くにいた想起によって諌められた。

 

***

 

そして、神社抗争から次の日。

 

葵達はまた『守矢神社』に来ていた。

 

理由は、此処で宴会が開かれるからである。

 

ちなみに、宴会の日にちは何処から聞いていたのか分からないが、文々。新聞に記載されていた。

 

「それにしても、あの鴉。本当に何処から聞いていたんだ……」

 

「さあな?まあ気にしない方が良いんだろう」

 

ルカと鬼灯がそう話していると、想起と如月が近付いてきた。

 

その側には凛華もいる。

 

「?どうした?如月。想起」

 

ルカが首を傾げて聞いて見ると、周りを見てから如月が聞いてきた。

 

「なあ?葵を知らないか?さっきから見渡して見ても居ないんだが……」

 

その質問には鬼灯が答えた。

 

「ああ……葵なら、この前会った夢幸とか言う奴が居ただろ?彼奴に連れられて行ったよ。神社からあまり離れるなと釘を指して置いたから大丈夫だろう」

 

鬼灯はそう言うと、近くに置いていた日本酒を盃に入れ、飲んだのだった。

 

***

 

場面は変わって葵と夢幸。

 

葵は夢幸の後を追う様にして歩いていると、夢幸が止まったのを見て、歩くのを辞めた。

 

「あの……何の話でしょうか?」

 

葵は首を傾げながら聞くと、夢幸は葵の目を見ながら質問した。

 

「お前、自分に自信が無い人間だろう?」

 

「……」

 

夢幸からの問いに、葵は戸惑わなかった。

 

何故なら、気付いていたからだ。

 

夢幸が自分に自信を持っていないと見抜いていたことを。

 

「沈黙は肯定と取る。だから、俺からの意見を言おう」

 

夢幸はそう言うと、葵の顔を、目を見ながら言葉に出した。

 

「自分を卑下するにもほどがある。貴様は自分の力に悪感を感じているようだが、本当にそうなら貴様が人を気遣えるわけがない。貴様はただマイナスに自分を貶めているだけだ。そんなことでは自分も誰も救えないだろう?人を思いやれる貴様の様な優しい者が閉じ籠っている。それが今回の異変の中で一番くだらなかった」

 

夢幸は自分が思ったことをそのまま葵に言った。それも、ドストレートに、である。

 

普通はそんな物言いに対して怒りを覚えるか、または泣き出すかの何方かかもしれない。または、他の選択肢があるかもしれない。

 

ただ、『微笑む』という行為はしないだろう。

 

しかし、夢幸の目の前にいる葵は夢幸に対して微笑んでいた。

 

「……なんだ?」

 

夢幸はそんな葵に対して怪訝な表情で見ていた。

 

それに対しての葵の解答は、

 

「いえ、夢幸さんは本当に『優しい方』だと思いまして」

 

「は?」

 

流石にそんな解答が来るとは思っていなかった。

 

一度、魔理沙に言われたことがあるとはいえ、今此処で、この状況で言われるとは思っていなかったのだろう。少し驚いたような顔をしている。

 

「俺が……優しい?何を馬鹿なことを、「優しくない方は普通、こんな風に人に対して言ったりしませんよ」……」

 

夢幸は反論しようとしたが、葵からそんな指摘を受け、黙ってしまった。

 

「他人に対して、人に対して優しくない人は、他人の事には無関心です。他人の駄目な所を指摘しません。でも、夢幸さんは指摘してくれました。もしまだ優しくないと言うなら言い方を変えて言わせていただきます。夢幸さんはお人好しの方と」

 

「……」

 

「でも、私はそうは思えません。私は貴方が認めずとも、私の認識は『優しい方』です。これを変えることはありません。……指摘してくださり、ありがとうございます。また何かありましたら頼らせていただきます。何かアドバイスを頂きたい時もです。ですが、夢幸さんも何かあった時は頼ってくださいね。……何でもかんでも、一人で解決しないでくださいね。一人では解決出来ないこともありますから」

 

葵は最後に一言、「夢幸さんは分かってる様ですので、あまりその辺の心配はしていませんが……」と言うと、最後に頭を下げて宴会会場に戻って行った。

 

「……」

 

「クスクス、どうだった?葵は」

 

「⁉︎」

 

夢幸が葵が移動した方を見ていると、急に後ろからそんな声が聞こえてきた。

 

それに驚いた夢幸は直ぐに後ろを振り向くと、そこには金髪ロリがいた。

 

しかし、その雰囲気からはカリスマが感じられるが。

 

「クスクス、初めまして。私はレティシア・スカーレット。妖怪の賢者をやっているわ。よろしくね♪天才さん」

 

レティシアはいつもと変わらない笑みを夢幸に向けた。

 

「……俺が天才なのは認めるが、俺にはちゃんとした名前がある」

 

「クスクス、そうね。『時雨 夢幸』っていう名前がね♪」

 

「⁉︎」

 

夢幸はまた驚いた顔をした。

 

「クスクス、でも、私は貴方の事を『天才さん』って呼ぶことにするわ」

 

「……何故だ?」

 

「クスクス、別に意味はないわよ。ただ、何と無くね。それから、どうしてそんなに驚いたのかしら?天才さん。もしかして……『気配を感じられなかった』のかしら?」

 

レティシアは何時もの笑みを向けながら夢幸に質問した。

 

対して夢幸は、何も答えなかった。

 

何故なら、

 

(どういうことだ?何故、俺はこいつの気配を感じられなかった?後ろにいたのから確実に感じられた筈。なのに何故……)

 

「クスクス、その質問に答えてあげましょう」

 

レティシアがまるで自分の考えていることなどお見通しと言う様な発言をしたことにたいして、少なからず驚いた夢幸。しかし、それに関しては表に表すことはなかった。

 

「クスクス、私は吸血鬼なの。吸血鬼は夜を統べる王。気配を完全に消すことなんて容易いわ」

 

「……お前、本当に唯の吸血鬼か?」

 

夢幸がそう質問をすると、レティシアは、

 

「クスクス、さあ?私が唯の吸血鬼かどうかは貴方が考えている通りで良いわ」

 

と、笑いながら言った。

 

だからなのだろう。その顔からは何を考えているのか分からない。読み取れないのだ。

 

「クスクス、それじゃあ、行きましょうか、天才さん♪あ、そうそう。私は殆ど、紅魔館にいるのだけど、用があったら訪ねてね♪」

 

レティシアは最後にそう言うと、今度は葵が移動して行った方向へと移動して行った。

 

結局、最後の最後まで笑みしか見せなかったレティシアであった。

 

「……」

 

夢幸はそんなレティシアを少し睨みながらも、宴会会場へと移動して行った。

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