東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

149 / 245
第百三十五話

フランが暴走したその翌日。レティシアはというと……、

 

「……何故、地上の妖怪である貴女が来てるのですか?昔の約束は?」

 

「クスクス、紫だって時々来てるのだから別に私が来ても構わないでしょ?さとり」

 

地霊殿へ訪れていた。

 

「確かに別に構いませんが……はぁ、また何をやるつもりですか?」

 

「クスクス、酷いわね。何時も何かを企んでるみたいな言い方。まあ、今回は確かに企んでるけど」

 

「やはり企んでるのですね」

 

さとりはそれを聞いてまた溜息を吐いた。

 

妖怪覚であるさとりは相手の心を読む妖怪だが、今目の前にいるのは何でも出来てしまう吸血鬼。心の中を覗かせない様にと能力でさとりに心の内を読まれない様にしている。

 

だから、さとりも口で会話をしているのだ。

 

「……それで、何をするつもりで?」

 

「クスクス、それはね。『持久走』って言えば良いのかしらね?」

 

「……持久走?」

 

「クスクス、ええ。それに貴女達地底の妖怪にも手伝って欲しいのよ」

 

「……すみません、理解が追いつきません」

 

さとりはレティシアの言葉から何を言いたいのかがよく分かっていなかった。

 

ただ、さとりも『持久走』という競技は知っているので、走る事は分かった。

 

「……それを幻想郷住民全員でやるのですか?」

 

さとりはそう聞いてみると、レティシアは表情を変えず、笑みを讃えて言った。

 

「クスクス、いえ、たった一人よ」

 

「貴女は鬼ですか」

 

「クスクス、吸血鬼だからあながち間違ってはないわね」

 

レティシアからのそんな言葉にまたさとりは溜息を吐いた。

 

「大体貴女の考えが読めました。そのたった一人に幻想郷中を回ってもらう。そして、私達はその相手をする。貴女はそう言いたいのですね?」

 

「クスクス、ええ、それで合ってるわ。因みに、貴女達には弾幕ごっこか何かのお題を出してもらうわ」

 

「……それで、私達を相手する人は誰でしょうか?」

 

「クスクス、それはね♪」

 

レティシアから聞いた相手の名前を知ると、また溜息を吐くのだった。

 

***

 

レティシアが帰ってからすぐ後、さとりは如月の心の声を頼りに探し出した。

 

「あ、さとり」

 

「あ!お姉ちゃんだ‼︎」

 

如月の元へと来てみれば、丁度如月はこいしと遊ぼうとしていた。

 

「……」

 

「あ、いや、これはだな……」

 

さとりから感情の無い目で見つめられ、若干たじろぐ如月。

 

しかし、それに助け舟が入った。

 

「お姉ちゃん‼︎このお兄ちゃんは私が遊びたいって言ったから遊んでくれてるんだ‼︎ねえねえ!お姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ‼︎」

 

「こいし……」

 

妹のこいしからそんな事を言われれば、納得せざるおえないさとりは、仕方ないとばかりに嘆息した。

 

「こいし、遊ぶのは良いけど、先に如月さんと話があるから、後で良い?」

 

「うん‼︎後で遊ぼうよ‼︎」

 

こいしから許可を得ると、如月を連れて場所を移動するさとり。

 

「な、なあ?さとり。怒ってるのか?」

 

「怒っていません。貴方も嘘を付いていないのですから怒る理由はありませんよ」

 

「そうか……なら、何かあるのか?」

 

「ええ」

 

そこでさとりは如月の目を見ていった。

 

「貴方との約束を今日限りで破棄します」

 

「……え?」

 

「ただし、明日には帰って良いと言うわけではありません」

 

「?何かするのか?」

 

「それは直ぐに分かりますが、私から一言だけ」

 

「?」

 

如月は頭に疑問符を浮かべるが、さとりは少し沈黙してから言った。

 

「頑張ってください」

 

「……え?」

 

***

 

そしてその二日後。

 

如月はパルスィがいる橋の所に立っていた。

 

その目の前には笑みを浮かべているレティシア。

 

「……なあ」

 

「クスクス、何かしら?」

 

「帰って良い「駄目♪」ダヨナー」

 

レティシアからの良い笑顔から、嫌な予感しかしない如月。

 

「クスクス、大丈夫よ。今からやる事は貴方にとっても損はないわ。私にとっては遊び。貴方にとっては修行。ね?お互い損はないでしょ?」

 

しかし、そのレティシアはやはり笑顔でそう言うのだった。

 

「……で?今から何をするんだ?」

 

もう諦めた如月は頭を掻きながら言うと、レティシアは説明し始めた。

 

「クスクス、今から貴方には幻想郷式持久走をしてもらうわ」

 

「持久走?」

 

「クスクス、ええ。貴方には幻想郷中を走り回ってもらうわ。あ、天羽々斬で時空を斬っての移動は禁止。元の幻想郷へ帰ろうとするのも禁止。移動中に空を飛ぶのも駄目。もしそんな事をしたら……」

 

「……したら?」

 

如月がレティシアにそう聞くと、レティシアは楽しそうに言った。

 

「クスクス、今後の凛華との修行の時に私も追加で修行してあげる。貴方が死にかけるまで、みっちり、しっかり、キッチリとね♪」

 

(絶対に破らないでおこう。主に俺の命の為に)

 

レティシアからの言葉に如月はそう思いながら絶対に破らないと誓った。

 

「クスクス、話を続けるわね♪さっきも言った様に貴方には幻想郷中を走って移動してもらうわ。あ、別に歩きでも良いわよ♪で、貴方が出会った人達からきっと弾幕ごっこやお題を出されるから、それを請け負って、勝ちなさい。勝ったら先へ進んで良いわ」

 

「質問良いか?」

 

「クスクス、何かしら?」

 

「まあ、お題は兎も角、弾幕ごっこのルールはそのまま適応か?それからその時は飛んでも良いか?時空を斬って避けたりは?」

 

「クスクス、弾幕ごっこのルールは少し変えるわ。貴方は何枚でも使って良いけど、相手はスペル二枚まで使うわ。最後二つは構わないわ。ただ、その時に帰るなんて選択は駄目よ」

 

「そうか。俺の負けは何と無くわかるが、俺の勝ちは?」

 

「クスクス、相手をダウンさせること。それだけ。相手がスペルを使えなくなったとしても弾幕を撃ってはいけないわけじゃないからね」

 

それを聞くと、如月はそれ以上の質問は無い様で、黙った。

 

「クスクス、じゃあ、説明の続きね。貴方が相手をする中には、きっと貴方じゃ勝てない相手も存在する。その時には……凛華、出て来てくれないかしら?」

 

レティシアのその声と共に、如月の中から凛華が出てきた。

 

その表情は何かを期待している表情をしている。

 

そして、レティシアは凛華の期待に応える答えをした。

 

「クスクス、その時は凛華が戦ってくれて構わないわ」

 

「やったのじゃぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

「凛華‼︎地底が壊れる‼︎旧地獄が崩壊する‼︎」

 

凛華の喜びの叫びは、地底を震わせ、崩れそうだった。

 

現に、地面に転がっていた石はその声だけで粉砕された。

 

そして、凛華が落ち着くのを待ち、それから如月が質問した。

 

「なあ?さっきのルールは凛華にも適応されるのか?」

 

「クスクス、いえ。アレは如月にだけ適応されるルールよ。凛華には適応されないわ。だから、凛華が戦う時は普通の弾幕ごっこでしょうね」

 

「む〜、弾幕ごっこは不満じゃ」

 

「クスクス、諦めなさい。とりあえず、凛華に手伝ってもらうのは貴方が自分じゃ負けると思った相手にだけ。凛華が戦わせて欲しいと言った際には貴方が決めて良いわ」

 

「そうか」

 

「クスクス、それから、これ」

 

レティシアがそう言って如月に渡したのは、この前の異変の時に使っていたコンパクトサイズの陰陽玉。

 

「これ、何に使うんだ?」

 

「クスクス、貴方はスペルを無制限に使うことが出来る。つまりは自分の力を使い続ける事になる。それじゃあいつかは力が尽きるわ」

 

「そうだな」

 

「クスクス、だからね、私がそれを通して貴方に力を送り続けてあげる」

 

「……‼︎」

 

「クスクス、それなら、ずっとスペルを使うことが出来るでしょ」

 

「ああ、そうだな……あ、同じスペルは使ったら駄目か?」

 

「クスクス、弾幕ごっこの相手が変わる旅にリセットよ」

 

「それはスペルカードルールと同じか」

 

「クスクス、他に質問があったらその度にその陰陽玉で連絡してきてね♪それじゃあ、合図はそこの橋姫さんがやってくれることになってるから、私は別の所で見学させてもらうわね♪」

 

「ああ、分かった」

 

如月がそう返事をすると、レティシアは闇へ溶け込む様に消えてしまった。

 

「……それじゃあ、頼む、パルスィ」

 

「分かってるわよ。それじゃあ、位置に着いて」

 

それと共に、如月は走る用意をした。

 

「よーい……ドン‼︎」

 

その合図と共に如月は走り始めた。

 

今此処で、レティシア考案の幻想郷式持久走が始まった。

 

***

 

如月が走り出して直ぐに相手が現れた。

 

「あんたの最初の相手は……」

 

「私達よ‼︎」

 

そう言って姿を現したのはキスメとヤマメだった。

 

「そうか。で?何をするんだ?」

 

「決まってるでしょ?」

 

「楽しい楽しい、弾幕ごっこよ‼︎」

 

最初の弾幕ごっこが始まった。

 

***

 

「一枚目‼︎怪奇『釣瓶落としの怪』‼︎」

 

そのスペルは前にルカに使っていたスペルと同じである。

 

如月もそれは見ていた為に、簡単に避けてしまった。

 

「あ〜あ、避けられちゃった」

 

「一度見たからな。もうそう簡単には当たらないぞ」

 

「じゃあ、私だよ‼︎蜘蛛『石窟の蜘蛛の巣』‼︎」

 

そう宣言したのちに出してきたのは、以前、歩に対して出した『キャプチャーウェブ』と似た様なスペルだった。

 

しかし違いはある。その違いはと言うと……、

 

「蜘蛛の巣の本数が増えた⁉︎」

 

そう、その本数である。

 

その本数は16本。その本数が増えた分、勿論弾幕も増えている。

 

だからこそ、如月は天羽々斬を使って弾幕を斬り裂き、スキマを作ってそこへ逃げ込む。それを繰り返していた。

 

それからそのスペルを凌ぐと、ヤマメは次のスペルを出してきた。

 

「細綱『カンダタロープ』‼︎」

 

すると、ヤマメから輝いく糸が出てきた。

 

如月は何をするのかと構えていると、その糸は如月へと向かってきたのだった。

 

勿論、それは蜘蛛の糸。当たれば取ることは容易ではない。斬れば問題はないが。

 

如月は右へと避けたが、その糸は如月が避けた方へと方向転換してきた。

 

「追尾か‼︎」

 

如月はそれから逃れようとするが、その糸は幾らでも追いかけてくる。

 

と、そんな時に、キスメから二枚目のスペルが宣言された。

 

「釣瓶『飛んで井の中』‼︎」

 

すると、キスメが落下したその瞬間に、赤いクナイ型弾幕が如月に向かって行った。

 

「うわ〜、俺狙いのが増えたよ」

 

少しげっそりした雰囲気を醸し出した如月に向けて、今度は低速ではあるが青い丸弾がばら撒かれた。

 

赤いクナイ弾幕は如月が少し避けるとそのまま真っ直ぐに飛んで、消えていった。

 

「……あんまり時間もかけてられないからな。もう決めさせてもらう‼︎」

 

如月はそう言うと、自分の目の前を剣で斬り、時空へと入っていった。

 

「一体何処に……うわっ‼︎」

 

「ヤマメ‼︎きゃあ‼︎」

 

ヤマメとキスメが如月を探そうとしたその時、二人の後ろから弾幕が当てられ、二人はダウンしてしまった。

 

「これで俺の勝ちか。……先へ進むか」

 

そして、如月はまた走り出し、次へと進んだ。

 

***

 

走り出して約五分後。如月は口元を引くつかせた。

 

今彼の前に居るのは二人の鬼。

 

勇儀と陽炎である。

 

もう正直、これで肉弾戦を持ち込まれたら直ぐに凛華に頼もうと考えている如月である。

 

しかし、それは杞憂に終わる。

 

「私達からお前にお題を出そう」

 

「……お題で良いのか?」

 

如月はそう聞くのも仕方が無い。

 

鬼というのは他の種族と比べて戦闘狂が多いのだ。

 

勿論、この二人も戦闘狂なのだが、そんな二人が『戦闘』ではなく『お題』と言ったのだから驚くのも無理はないだろう。

 

そんな二人の顔は少し不満そうだが。

 

「良くはないけど、これを決めたのは陽炎さ」

 

「私はレティシアから頼まれたから仕方なく。……べ、別に抹茶を貰えるからと言われて、それに釣られたわけじゃないからな⁉︎///」

 

どうやら抹茶に釣られた様である。

 

これには如月も苦笑していた。

 

「で、陽炎達からのお題はなんだ?」

 

「お前の力の一端を見せて欲しい。それだけだ」

 

陽炎からのお題を聞いた如月は少し考える素振りをすると、地面の方に手を向けた。

 

すると、その地面から土の剣を作り出した。

 

陽炎達が見たと分かると、その剣を直ぐに崩したが。

 

「これが俺の能力『全ての力の原初を司る程度の能力』の一端だ。これでお題はクリアか?」

 

如月がそう聞くと、陽炎も勇儀も肯定した。

 

如月はそれを見ると、直ぐにその場を立ち去った。

 

……立ち去らなければ、陽炎は兎も角、勇儀が挑みかかってかるのを雰囲気から察した如月であった。

 

その場を後にして地霊殿の前まで来てみると、角とお燐に出会った。

 

「お?来たね、お兄さん。私達からはお題を出させてもらうよ」

 

「そうか。で?何をすれば良いんだ?」

 

「お燐が持ってるこの猫車を運んで欲しいっす‼︎」

 

角が出してきたそのお題。

 

お燐が持っている猫車。

 

つまり、角達が言うのは……、

 

「……俺にその死体を運べってか」

 

如月はその猫車の中に入っている死体を見た時から嫌な予感はしていたのだ。

 

そして、その予感は見事的中。如月の気は重くなってしまった。

 

「まあまあ、で、お兄さん、どうする?私達はお題を変えるつもりはないよ?」

 

お燐は良い笑顔でそう言うと、如月は猫車をお燐から貰った。

 

「あぁ、もうヤケだ‼︎」

 

「頑張れっす‼︎俺達も着いて行くっすから‼︎」

 

そして、お燐達の案内で連れて来られたのは灼熱地獄跡。

 

お燐は如月から猫車を返してもらうと、その死体をそのまま灼熱地獄の中へと落とした。

 

「……良い気分はしないな」

 

「ごめんね、お兄さん。でも、考えてもこれしか思い浮かばなくて」

 

お燐は本当に悪い事をしたと思っている様で、如月に謝罪をした。

 

それに対して、如月は怒らず、そのまま許した。

 

「さて、じゃあ移動を「あ、お兄さんは此処に居てよ」……何でだ?」

 

如月はお燐からのその言葉に質問すると、お燐は答えた。

 

「だって、此処でお兄さんはお空とまた弾幕ごっこをしてもらうからだよ」

 

「……マジか」

 

如月はそれに対して溜息を吐いた。

 

お燐と角はその様子を見てから灼熱地獄から出て行った。

 

その後、空中からは羽ばたく音が聞こえ、見てみると、お燐が言った通り、お空が居た。

 

「お兄さん‼︎この前のリベンジマッチ、受けてよ‼︎」

 

「ああ、分かった。やってやるよ‼︎」

 

***

 

「それじゃあ一枚目‼︎爆符『ペタフレア』‼︎」

 

お空がそう宣言すると、赤みを帯びた白い超特大弾幕を撃ってきた。

 

如月はそれを後ろへと退いて回避したが、勿論、後ろに退いた所で弾幕は迫ってくる。

 

……しかし、その弾幕は如月の方へと行くたびに徐々に小さくなっていく。

 

そのお陰で気付いたが、その弾幕の後ろからは小さな弾幕が撃たれていた。

 

「だったら……」

 

既に空を飛んでいた如月はその大きかった弾幕と弾幕の間に移動し、その弾幕に当たらない様にしながらも小型弾幕を回避していた。

 

そして、それも時間がきたのか、もう弾幕が撃たれることはなかった。

 

「はい!じゃあ次ね‼︎焔星『十凶星』‼︎」

 

そのスペルはこの前、自分に使われた為に、この前と同じ様な避け方をした。

 

「はい、じゃあスペルブレイクな」

 

「残念、今回は勝てると思ったのにな〜」

 

お空はそう言って残念がる様子を見せるが、顔を上げると、弾幕を撃ってきた。

 

「けど、スペルが使えなくなっても、私は弾幕を撃てるからね‼︎」

 

「それは俺も聞いてたからな。分かってたさ‼︎」

 

そう言うと、如月は天羽々斬を手に持ち、構えた。

 

「『桜舞連斬』‼︎」

 

如月がそう宣言すると、素早くお空の周りを舞う様に飛んだ。

 

そして、神力を利用し、桜の花弁がヒラヒラと舞う幻影をお空に見せた。

 

「これ……桜の花弁?いや、これは幻影……きゃあ‼︎」

 

お空がそんな風に考えていると、如月からの16連撃を受けた。

 

お空はそれに耐えることは叶わなかった様で、ダウンした。

 

と言っても、意識はあるので灼熱地獄には落ちる事はなく、ちゃんと地面がある所まで飛び、そこでダウンした。

 

「ふぅ、お空の奴、大丈夫か?心配だし、見てみるか」

 

そう言う如月の背後には桜が見えた気がした。

 

***

 

お空の状態を見て、地霊殿へと連れて来た如月は、さとりと運良く出会うことが出来た。

 

「さとり、お空を休ませたいんだが……」

 

「それでしたら此方に。着いて来て下さい」

 

如月はさとりの後を追い、ある部屋の一室まで案内されると、ベットに横たえた。

 

「ごめんな、さとり。案内して貰って」

 

「いえ、構いませんよ。こうなる事は予想済みですから」

 

「本当はキスメとヤマメも連れて来たかったんだが……」

 

「……成る程、パルスィさんが」

 

「ああ、あの二人を引っ張っていった」

 

地霊殿方面へと走って居る最中に、キスメ達の様子が気になり、後ろを向いてみると、丁度パルスィが二人を引き摺って行くのが見えたのだ。

 

「まあ、彼女はアレで優しい性格ですから問題はないですね」

 

「ああ、分かってる。……あ、さとりからは何か出すのか?」

 

如月がそう聞くと、さとりは首を縦に振った。

 

「私からはお題です。蜷局とこいしとの弾幕ごっこに勝って下さい。それだけです」

 

「……分かった」

 

如月はそれを聞くと、お空の状態を少し見て、さとりに任せた後、蜷局が居る場所へと向かった。

 

***

 

異変の際、さとりが蜷局の場所を言っていたのを如月は覚えていた。

 

地霊殿の裏に湧き出る地底湖『龍眠泉』

 

如月は今、さとりから出たお題の為に、此処に来た。

 

「蜷局、出て来てくれないか?」

 

如月のその言葉が聞こえた様で、蜷局は湖から姿を表した。

 

「……此処まで来たか。しかし、お前が私に勝てるのか?」

 

蜷局のそんな言葉に、如月は首を横に振った。

 

「いや、俺はまだまだ弱い。だから、俺じゃお前に勝てないよ」

 

「……」

 

「だから、凛華に頼む」

 

そんな如月の言葉と共に、如月の背後から凛華が現れた。

 

「……そうか。なら、私も本気で相手をしよう」

 

「本気と言っても弾幕ごっこでの本気じゃろ?妾は死合いをしたいが、まあ仕方が無い。良いじゃろう。但し、妾は肉弾戦じゃ。良いな?」

 

「良いだろう。ならば、来い」

 

***

 

龍眠湖から離れた場所で、二人は戦うこととなった。

 

蜷局は最初、相手の力を見る為に弾幕を数個、凛華に向けて撃ったが、それは凛華が殴っただけで消された。

 

「ふむ、簡単に消えたな」

 

「……なら、これならどうだ?スペル」

 

そして、一枚目のスペルを宣言する蜷局。

 

「暴風『バーサークストリーム』」

 

すると、竜巻を十個生み出し、凛華はその竜巻に飲み込まれた。

 

「凛華‼︎」

 

如月がそう声を上げる。

 

ある意味、心配からの声だったが、杞憂に終わる。

 

「洒落歳のじゃ‼︎」

 

そんな声が聞こえたかと思えば、竜巻が消された。

 

「……出鱈目か」

 

「妾は喰龍、龍神の中でも異質の存在じゃ。そう簡単には負けんぞ。さあ、もっと妾を楽しませるのじゃ‼︎」

 

そんな凛華の期待に答えるかの様に、次のスペルを宣言した蜷局。

 

「噴火『ボルケーノドラグーン』」

 

すると、地面がイキナリ噴火した。

 

凛華と如月はそれに伴い飛ぶが、凛華にだけは溶岩の弾幕が降り注ぐ。

 

「……なんじゃ、これぐらいしか出来ぬのか」

 

凛華が若干、不満気な声を上げると、その弾幕が凛華に触れたかと思った瞬間に無くなった。

 

「……出鱈目過ぎる」

 

「さあ、これで終わりじゃ‼︎」

 

凛華はそう言うと、一瞬で距離を詰め、蜷局を殴ったのだった。

 

***

 

蜷局と凛華の弾幕ごっこと肉弾戦が交わった戦いは、凛華が勝利を収めた。

 

そもそも、弾幕を喰べるという時点で勝敗は決まっていたのかもしれないが。

 

そして、凛華が如月の中に戻り、蜷局も龍眠湖へと戻るのを確認した如月。

 

「……で、こいしちゃんを探さないといけないが」

 

「お兄ちゃん!遊ぼうよ‼︎」

 

「イキナリ目の前に現れたら驚くな……」

 

地霊殿の中を探し回り、本当に何処にいるのかと思っていた所でのこいしの登場である。

 

狙って登場したのではないかと少し疑う如月だが、それはないとそんな考えを消した。

 

「そうだな。で、やるとしたら弾幕ごっこか?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「それじゃあ、楽しもうか、こいしちゃん」

 

そして、また弾幕ごっこが地霊殿の玄関ホールで始まった。

 

***

 

弾幕ごっこの最初はお互い弾幕の撃ち合いだったのだが、それはこいしがスペルを使うことによって変わった。

 

「表象『弾幕パラノイア』‼︎」

 

こいしは楽しそうな笑顔で宣言すると、如月を取り囲む様にしてクナイ型弾幕が設置された。

 

「行動が制限されたな」

 

そう呟く様にしていった如月は直ぐに目の前を見た。

 

その目の前の光景は、放射線状にではあるが、遅いスピードで数多くの丸弾は撃たれた。

 

その数は本当に多く、数えることは困難なほどだ。

 

そして、避けれるスキマも狭い。まあ、スキマがある時点でルール違反にはなっていないのでこれ以上の追求はしないが、避けるのがそれなりに難しい。

 

しかし、それも大きく避けたらの話。

 

如月はその弾幕を少し体を避けるだけで回避した。

 

「やっぱり。大きく避けなきゃ当たらない」

 

それが分かると、少しだけ体を動かしては避けを繰り返し、こいしのスペルはブレイクされた。

 

「お兄ちゃん、凄いね‼︎じゃあ次ね‼︎」

 

「なあ、休ませ「復燃『恋の埋火』‼︎」話を聞いてくれないか⁉︎」

 

そんな如月の嘆きなどこいしには届かない。

 

そのままスペルは発動し、こいしからハート型の弾幕が撃たれた。

 

その弾幕はその場に残像を残しつつも、ゆっくりと壁や床に当たり、跳ね返っていた。

 

すると、いつの間にやら辺り一面ハート型弾幕で埋め尽くされていた。

 

「……わぁ、これマジでどうするか」

 

如月はそう嘆きながらもどうするべきかと悩む。

 

そして、如月は一つの賭けに出た。

 

「?お兄ちゃん、何してるの?」

 

「う〜ん、教えられないな」

 

そう言いながら、如月は天羽々斬でまた時空を斬った。そして、

 

「偽装『グングニル』」

 

そう宣言してから、本物とは及ばないグングニルを時空の中へと勢いをつけて投げた。

 

「?……きゃあ‼︎」

 

こいしは最初、首を傾げたが、その投げたグングニルが自分の後ろから現れ、自分に当たったのを見て、驚いた。

 

こいしはどういうことかと考えようとするが、無意識そのものであるこいしでは考える事は出来ない。

 

そして、流石に後ろからの強襲で、全く予期も出来ていない状態なので、そのまま地面へと倒れた。

 

勿論、ダウンである。

 

それと同時に弾幕も消え、弾幕ごっこは終了となった。

 

***

 

「お兄ちゃん、強いね‼︎」

 

「いや、俺は強くはないよ。俺はまだまだ未熟さ」

 

如月はこいしと話しながら、さとりを探していた。

 

さとりにお題をクリアしたことを報告する為である。

 

そして、如月はさとりの部屋へと着くと、さとりは紅茶を飲みながら待っていた。

 

「お待ちしていました。如月さん、お題クリアです。……ということで、コレを」

 

「?なんだ、コレ。鈴?」

 

如月がさとりから手渡されたのは、鈴。

 

それも、普通の鈴よりも音が綺麗なものである。

 

「レティシアさんから、貴方がその場所のお題をクリアした時に渡す様にと言われていましたので」

 

「そうか、さて、それじゃあ次の場所へ……」

 

「?どうしました?」

 

此処で如月は重大な事を思い出した。

 

「……なあ?俺、今飛ぶ事を制限されてるんだが……どうやって地上に行けば良いんだ?」

 

今は弾幕ごっこ中でもない為、空を飛ぶ事は不可能である。

 

故に、地上に出ようとするのはとても困難である。

 

しかし、それをさとりは少し笑みを浮かべながら答えた。

 

「大丈夫ですよ。レティシアさんがこの屋敷の何処かに幾つかスキマを用意しています。貴方はそれを潜って次の場所へと移動して下さい」

 

「よ、良かった。なら、ちょっと探してくる‼︎あ、またな!さとり」

 

如月はそう言ってさとりの部屋から出た。

 

「……さて、彼の次の行き先は何処でしょうね?」

 

***

 

八雲邸の一室。

 

そこではレティシアが如月の様子を見ていた。

 

「クスクス、地霊殿はクリアね。さて、彼が次行く場所は何処かしら?」

 

レティシアは楽しそうな様子で如月の様子を見ていた。

 

そして、地霊殿の玄関ホールの隅にあるスキマを発見した如月はそこを潜って行った。

 

「クスクス、あらあら♪これはまた引きが良いわね。如月」

 

そして、如月が出た場所は……、

 

「まさか紫達がいるマヨヒガへと続くスキマを潜るなんて」

 

そう言いながら、先程如月が潜ったスキマを閉じるレティシア。

 

その顔には、やはり楽しそうな笑顔が浮かんでいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。