東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百三十六話

スキマを潜り抜けた先に着いた如月は、直ぐに何処なのか分かった。

 

「……マヨヒガか」

 

そう言って、先程通ったスキマを見てみると、もうその場にスキマは無かった。

 

「……先へ進めってことだよな。確実に」

 

如月は嘆息すると、また走り出した。

 

***

 

走り出して数分。太陽は如月の真上に登っている。

 

この持久走が始まってそれなりに経っている様だ。

 

如月は始まってから移動する際、こいしとの時を除けばずっと走り続けている。

 

勿論、そんな事をすれば息は切れ始める。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

レティシアは如月に霊力及び神力は送り続けているが、如月の体力は回復させていない。

 

しかも、此処の幻想郷の季節は未だ冬。寒い中である。

 

それでも走るのを辞めずに進んでみると、一人の妖狼を見つけた。

 

「ぜぇ…ぜぇ……お前、誰だ……?」

 

息を切らしながらも相手に尋ねる如月。

 

それに対して、相手も素性を明かした。

 

「我は八雲茜と言うものだ。紫様の式の一人だ」

 

「ゆ、紫の式は、藍じゃないのか……?」

 

「藍姉と共に紫様の式をしているのだ」

 

「そ、そうか……」

 

この会話のお陰で多少の休憩を取れた如月。

 

「それで、何をすれば良いんだ?」

 

「我と弾幕ごっこをしてもらう」

 

「分かった」

 

マヨヒガでの最初の弾幕ごっこが始まった。

 

***

 

弾幕ごっこは始まったが、互いにずっと弾幕を撃ち続けている。

 

これでは切りが無いと考え、如月はスペルを宣言した。

 

「偽装『グングニル』‼︎」

 

すると、如月の手に、こいしの時にも使ったグングニルが創造された。

 

如月はそのグングニルを、そのまま茜へと投げた。

 

勿論、それは一直線へと進んだだけなので、茜は簡単に避けてしまった。

 

「それでは、次は我の番だ。スペル‼︎」

 

すると、茜はそれに触発されたのか、スペル宣言をした。

 

「存在『絶滅狼空虚な狩り』‼︎」

 

すると、茜の存在感がイキナリ無くなった。

 

今は如月の目の前でスペルを宣言した為に、如月にも見えているし、一応は認識出来ている状態だが、一度でも目を逸らしたりしたら、もう認識出来なくなるだろう。

 

「『軍狼今宵の遠吠え』‼︎」

 

そして、また茜がそう宣言すると、上空へと跳躍し、狼の形をした弾幕が十個放った。

 

「っ⁉︎」

 

如月はその狼型弾幕を天羽々斬で斬り、弾幕を消したり、自分の弾幕で撃ち落としたりと行動した。

 

しかし、全て無くなったかと思えば、また同じ狼型の弾幕が、同じ数で撃たれたのだった。

 

「またか‼︎」

 

如月はそう言ってまた撃ち落そうとしたが、目を離した所為で何処にいるのか分からなくなっていた茜に後ろから攻撃され、飛ばされた。

 

「〜っ‼︎」

 

如月は地面に着く直前に何とか受け身を取ったが、それでも痛みはある。

 

それでも直ぐに立った如月は、また茜の居場所が分からなくなった。

 

それでも、狼型の弾幕が無くなっているわけでも無い為、まずはそれを消そうとした。

 

が、今度は真っ正面から攻撃され、またもや吹っ飛ばされた。

 

そんな状態の如月に意思を持っている狼達は、そのまま如月を襲った。

 

が、それは如月が弾幕で対処し、その時に時間がきた様で、弾幕は消えてしまった。

 

「……危なかった」

 

如月がそう言葉にした所で茜は存在感を戻し、如月の前に現れた。

 

「さて、我はもう二枚使ってしまったからな。此処からは弾幕と能力で何とかせねばならなくなったな」

 

「お前の能力って何だよ」

 

「我の能力は『存在を掌握する程度の能力』。存在している限り、この能力からは逃れられない能力だ‼︎」

 

茜はそう言うと、脚に力をいれ、如月との距離を詰めた。

 

「くっ‼︎」

 

痺れが多少取れた如月は、茜が振るう斧の威力はマズイと判断し、右へと避けた。

 

「スペル‼︎」

 

そして、その時にスペルを宣言した。

 

「肉体強化『神雷』‼︎『桜舞連斬』‼︎」

 

すると、如月の身体は雷を纏い、天羽々斬には神力を纏わせた。

 

如月はその状態で、茜へと攻撃したのだった。

 

***

 

結果を言えば、如月の勝ちである。

 

茜はダウンしたのだから仕方が無い。が、気絶はしていない為、今は紫達が居る所まで案内してもらっている。

 

「……此処だ」

 

「そうか、ありがとうな、茜」

 

「礼はいらん。さて、呼ぶぞ……紫様、如月が参りました」

 

茜のその言葉が響くと、すぐ目の前からスキマが開き、中から紫と藍、それから橙が現れた。

 

これに対して、如月は驚かなかった。

 

そもそも、スキマが開く気配を察知していたのだから驚く事は出来ないのだ。

 

「ありがとう、茜。で、どうだった?彼の実力は」

 

「はい。レティシア様の言う通り、まだ伸び代が御座います」

 

「そう、分かったわ。茜、貴方は下がりなさい」

 

「御意」

 

紫からそう言われた茜は、言われた通りに下がって行った。

 

「……さてっと、それでは始めましょうか?」

 

「なあ?紫は冬には冬眠してるんだろ?なのに、何で今は起きてるんだ?」

 

如月からのそんな質問に、紫は遠い目をしながら答えた。

 

「……レティシアに、無理矢理起こされたのよ……」

 

「……何をされたかは聞かないでおく」

 

「そうして頂戴」

 

そんな会話を終えると、藍と橙が紫の前に出てきた。

 

「それでは、紫様の前に……」

 

「私達からのお題だよ‼︎」

 

「お題……なんだ?」

 

如月は二人にそう聞くと、藍はニヤリと笑った。

 

「如月、お前は此処、マヨヒガに猫が沢山居るのは知っているか?」

 

「ん?勿論知ってるが、それがどうした?」

 

「私はその猫の数を知っている。故に、何匹居るか数えて来い」

 

「……え?」

 

「数えて来い。これが私達からのお題だ」

 

二度聞くと、もう何処にも間違え様はない。

 

故に、如月はマヨヒガに居る猫の数を数え始めた。

 

しかし、似た様な猫も居る為に、どうしても正確な数が分からない。

 

「……どうするべきか……‼︎よし、試してみる価値はあるな」

 

如月は何かを思い付くと、早速、準備を始めた。

 

***

 

それから数分後、如月は藍の元へと戻って来た。

 

だが、その場には橙が居ない。

 

「あ、如月。橙を知らないか?イキナリ何処かへと走って行ったんだが……」

 

「その前にお題の答えを言っていいか?」

 

「む?数えれたのか?」

 

「ああ。答えは『30匹』だ」

 

「……正解だ。しかし、どうやって数えた?此処には似た様な猫が沢山いた筈だが……」

 

そんな藍からの疑問に、如月は答えた。

 

「ちょっと難しかったんだが、まずは猫用の檻を能力で造ったんだ。いや〜、本当に苦労した。まだ慣れてないからな……おっと、話が逸れたな。で、その中に猫が大好きなマタタビを入れたんだ」

 

「……成る程、その匂いに釣られて猫が集まって来たと。しかし、それだと全部が来ることはない」

 

「ああ、そうだな。だから、風を使って匂いを蔓延させたのさ」

 

「だから途中で風が吹いたのか。しかし、それだと今度はマヨヒガ以外の所からも猫が集まるが?」

 

「それも俺の頑張りからだな。このマヨヒガにだけ結界を張った。これで、マヨヒガの中にいる猫にしかマタタビの匂いは気付けない」

 

「……ふっ、そうか。成る程。だから、先程から頭上に結界があったわけか。納得した」

 

「いや、藍なら聞かなくても分かってただろ?」

 

如月は藍にそう言った。

 

それに対して、藍は頷いて肯定した。

 

「……ん?と言うことは……橙は……」

 

「ああ、マタタビが有る所に居るぞ。橙の妖怪とはいえ猫だからな。やっぱりマタタビは好きな様だな」

 

藍はそれを聞くと、直ぐに橙の元へと駆け出して行った。

 

「……で?紫。どうするんだ?」

 

「ふふ、弾幕ごっこをするわよ♪」

 

「はぁ〜、分かった」

 

そうして、紫との弾幕ごっこが始まった。

 

***

 

「初手は貰いますわ。スペル‼︎」

 

弾幕ごっこが始まって早々に、紫はスキマに腰掛け、足を組んだ状態でスペルを宣言した。

 

「幻巣『飛光虫ネスト』‼︎」

 

すると、幾つものスキマが開き、其処から大量の高速弾幕が撃たれる。

 

それらは如月を狙っているわけでは無い様だが、それでも、避ける事は難しい様に感じている如月。

 

何故なら……、

 

「何で……俺の世界の紫のスペルよりも弾幕の数が多くて速いんだ⁉︎」

 

その弾幕の数と、迫ってくるスピードの所為である。

 

如月が知ってる紫のこのスペルと、今目の前にいる紫のスペルの弾幕の数と速さは、約三倍だろう。

 

「っ⁉︎」

 

「それはそうですわ。私は修行をレティシアに付けてもらった身です。そちらの私と一緒にしてもらっては困りますわ」

 

紫は手に持っていた扇子で口元を隠す様な仕草をしている。

 

そんな話をしながらも時間は経過し、スペルは終わってしまった。

 

「あら?当たりませんでしたわね」

 

「はぁ……はぁ……」

 

紫に疲れた様子は全くない。

 

結構な数の弾幕を撃っていた筈なのに、それで疲弊しきった様子はない。

 

逆に如月は弾幕で幾つか撃ち落そうとしたものの、撃ち落とす事が出来ず、それ故に避け続ける事となってしまっていた。

 

「……これで最後ですわ」

 

紫はそう言うと、またスペルを宣言した。

 

「魍魎『二重黒死蝶』‼︎」

 

すると、青と赤の蝶々弾幕が、お互い交差する様にして回転している。

 

如月はその弾幕を撃ち落そうとしなかった。

 

もう、見ただけで分かるのだ。その弾幕に込められた妖力の量。そして、精密さを。

 

その弾幕の何処にも粗はなく、繊細で精密で。

 

やはり、蝶々弾幕の数も多く、速さもある。

 

(時間を掛け過ぎると俺が不利になる‼︎……なら‼︎)

 

そして、如月は紫のスペルが終わったと同時に、肉体強化し、紫に攻撃しようとした。

 

「甘い‼︎」

 

が、紫がそう言うと、紫はスキマへと入り、如月の後ろからスキマが開く気配がした。

 

「くっ‼︎」

 

如月は咄嗟に後ろの方に剣を振ると、数多くの弾幕が如月に襲いかかろうとしていた。

 

「……なんてな」

 

そう言いながら、振った勢いを殺さず、そのまま、先程まで紫がいた場所へと剣を振るった。

 

すると、丁度其処にスキマが開き、中から紫が弾幕を飛ばそうとしていた。

 

しかし、紫は如月のそんな状態を見て、弾幕を消した。

 

「……私の、負けね」

 

そうして、マヨヒガでの弾幕ごっこは終わった。

 

***

 

その後、紫はダウンしたが、直ぐに立ち上がり、フラフラとしてはいるが、縁側に座った状態で如月を見た。

 

「……なあ?もう終わりだろう?鈴は渡してくれないのか?」

 

如月は当然の質問をすると、紫は胡散臭い笑みを浮かべた。

 

「あら?誰が弾幕ごっこ『だけ』と言いました?」

 

「……え?」

 

「まだ終わっておりませんよ」

 

「……嘘だろ?一つだけじゃないのか?」

 

「あら?レティシアはそんな説明をしたの?」

 

紫はキョトンとした顔で如月を見ている。

 

如月は如月で、ポケットから陰陽玉を取り出し、レティシアに質問した。

 

「なあ?レティシア。出されるのはお題か弾幕ごっこのどちらかだよな?何方か一つだよな?」

 

如月は少しの希望を持ってそう質問をした。

 

しかし、その希望は見事に打ち砕かれる。

 

『クスクス、誰も「何方か一つ」とは言ってないわよ♪私はただ「弾幕ごっこやお題を出されるからそれを請け負いなさい」と言ったのであって、「弾幕ごっこかお題を請け負いなさい」とは一言も言ってないわよ♪』

 

「……」

 

『クスクス、そう言うことだから、紫からのお題、頑張りなさい♪』

 

レティシアはそう言うと、連絡を切った。

 

「さて、レティシアにも確認は取れたでしょ?と言うことだから……」

 

そこで一度言葉を区切り、紫は笑顔で言った。

 

「私からのお題よ♪」

 

***

 

「クスクス、貴女も鬼ね♪まさかコレをやらすなんて」

 

「私も貴女からやらされたからね。一度、やってみるべきなのよ」

 

レティシアと紫は八雲邸でお茶を飲みながら会話をしていた。

 

その両者の近くには、如月を映したスキマがあった。

 

如月はどうやらまだマヨヒガを走っている様だ。

 

「クスクス、そうね。でも、これは結構、キツイわよ。何せ、『走ったままの状態で力を出したままマヨヒガを出ること』だものね。それも、私からの供給は無しで」

 

「走る事だけに集中したら、霊力が途絶え、霊力を出す事だけに集中すれば、足が止まる。さて、如月。貴女はこの『答え』を出す事は出来るかしら?」

 

紫は胡散臭い笑顔でそう言うと、お茶を一口口に含んだのだった。

 

***

 

一方の如月は走り続けたことによる疲労と、霊力を多大に失っていることによる怠さが一身にきたために、一旦、立ち止まって休んでいる。

 

「はぁ……はぁ……キッツ……はぁ……」

 

如月はそう言いながら、どうするべきかと考えていた。

 

マヨヒガはそもそも、迷った者が辿り着く場所である。

 

しかし、如月は迷った覚えもなく、迷っている事も無い。

 

しかし、マヨヒガから抜け出す事が出来ないでいるのだ。

 

こうなると、紫かレティシアが何かをしたと考えるのが妥当である。

 

実際はレティシアが紫が出した『お題』の『答え』に辿り着いていないという理由から、マヨヒガから出さない様にしているのだ。

 

如月はこのままでは一生出る事は出来ないと思い、この『お題』の『答え』を考え始めた。

 

……が、その答えは案外あっさりと分かった。

 

如月は先程まで出していた霊力をコントロールし、ほんの少しの霊力を外へと放出した。

 

その状態で如月はまた走り始めた。

 

足にも意識を配り、霊力の方のコントロールにも意識を傾ける。

 

それを二分間、伽らせることなくなり続けると、漸く、マヨヒガから出る事に成功した。

 

「ふぅ……なんとか、出れた」

 

そこで霊力の放出をやめると、頭上にスキマが開く気配を察し、その直ぐ後、鈴が掌に落ち、レティシアから消費された霊力を供給された。

 

現に、大幅に霊力を失った事による怠さはもう何処にもなくなっていた。

 

今ある怠さは、疲れからの怠さだけである。

 

如月は次の場所を何処にするかと悩んだ。

 

そして、決めた。

 

その際、レティシアに確認を取ることにした。

 

『クスクス、何かしら?如月』

 

「なあ?今回って小町も参加してるのか?」

 

『クスクス、ええ、小町も参加してるわよ』

 

「そうか、有難うな、教えてくれて」

 

『クスクス、お礼を言われる事はしてないわよ。頑張りなさいね♪』

 

レティシアはそれだけを言うと、また連絡を切った。

 

如月は陰陽玉をまたポケットへと入れると、三途の川方面へと向かって行ったのだった。

 

***

 

「……レティシア、貴女、本当に意地が悪いわね」

 

「クスクス、だって、『答え』を言ったら意味がないでしょ?」

 

紫はレティシアが如月からの質問の際、『ある事』を隠していたのを知っている。

 

それは……、

 

「あの死神達が待機しているのが三途の川じゃなくて無縁塚で、しかも其処には四季映姫も居ることを隠すなんて……如月に少し同情し始めたわよ」

 

そう、『場所』と『いる人物』である。

 

「クスクス、だからちゃんと言ったじゃない。『お礼を言われる事はしてないわよ』ってね♪」

 

「はぁ……」

 

レティシアのそんな楽しそうな顔に、紫は溜息を吐いたのだった。

 

***

 

三途の川に向かっている途中、如月は三つ分の影を見つけた為、空中を見てみると、レティとチルノと大妖精が居た。

 

「……お前達もコレに参加してるのか?」

 

「ええ、あの吸血鬼から脅s……コホンッ、頼まれたからね」

 

「やいお前‼︎最強のアタイと勝負よ‼︎」

 

「チルノちゃん、危ないよ〜」

 

チルノの言葉を軽くスルーし、レティの言葉に対しては苦笑した如月であった。

 

「それじゃあ、何をするんだ?」

 

「それは、やっぱり……」

 

「弾幕ごっこ‼︎」

 

***

 

最初に仕掛けたのは、やはりと言うべきか氷妖精のチルノである。

 

「霜符『フロストコラムス』‼︎」

 

すると、青と白の棘型弾幕が如月を襲った。

 

しかし、如月は慌てない。

 

そもそも、スペルの内容を知っているのだから慌てる必要性は無いのだ。

 

如月は狭いスキマに入らない様に気を付けながら、弾幕を避け、そのままスペルブレイクとなった。

 

「当たりなさいよ‼︎」

 

「理不尽な」

 

如月はそう言うと、チルノに向けて弾幕を撃った。

 

霊夢や魔理沙と言った、普通の人間とも言いにくい人間とかなら簡単に避けれるが、相手は妖精。避けれずにそのまま終わってしまった。

 

「チルノ‼︎……チルノの仇を撃たせてもらうわよ‼︎」

 

「いや、仇って……死んでないだろ」

 

そんな如月の言葉は届かない。レティはそのままスペルを宣言した。

 

「寒符『リンガリングコールド』‼︎」

 

すると、鳥の形をした大量の弾幕が如月を襲おうとするが、ひらりと避けてしまった。

 

「なら!怪符『テーブルターニング』‼︎」

 

すると、大量の鱗型弾幕が飛ばされ、レティの周りにはレーザーが回っていた。

 

如月は広いスキマを見付けてはそこへと避難する事を繰り返し、レーザーも避け、スペルをブレイクした。

 

「……これで私は弾幕だけでの攻撃しか出来ないわね」

 

「そう言うことだ。通してくれないか?」

 

如月がそう言うが、レティは首を縦に振らず、返事の代わりに弾幕を撃った。

 

「私はダウンしてないわ。だから、弾幕ごっこは終わってない」

 

レティのその言葉に嘆息すると、足に力を入れ、跳躍し、レティへと攻撃した。

 

その攻撃は見事に当たり、レティはそのまま気絶した。

 

***

 

その後、レティを別の場所で休ませ、三途の川付近まで走ってきた如月は、直ぐに周りを見渡してみた。

 

「……ん?小町の奴、いないな」

 

小町も参加すると分かった今、此処に居ると思っていた如月は何処にいるのか可能性が高いかを考え始めた。

 

「人里の団子屋か?いや、でも、彼奴からしたらコレは面白い事に入るだろうからそれは無い筈……となると……まあ、適当に行ってみるか」

 

如月はそう決めると、また走り出した。

 

それも、運良く、無縁塚方面へ。

 

〜少年移動中〜

 

「……で、適当に走って、無縁塚まで来てみたら……」

 

「お?遅かったね。あんたがこの持久走の挑戦者だろ?あの吸血鬼から顔を見せてもらったから覚えてるよ!」

 

「此処に居るのかよ。しかも、映姫まで……」

 

「全く。私は忙しい身ですから早々に終わらせる事にしましょう」

 

如月はそれを聞いて溜息を吐き、全く見慣れない人物の方に視線を向けた。

 

「で?お前は誰なんだ?」

 

如月が見ている人物は、フーセンガムを噛んでる男性を見た。

 

「ん?俺は『滋賀井 奈落』。小町と同じ死神さ。担当は違うがな」

 

「そうか。で、何をすれば良いんだ?」

 

如月がそう問うと、奈落が口を開いた。

 

「なら、まず初めに俺からのお題だ。俺は『寿命がきた者の命を狩る』死神なんだが、その俺が狩った為に死んだ霊からたった一つで良い。話を聞いてこい」

 

「……重そうなお題だが、分かった」

 

如月はそれを承諾すると、周りを見渡し始めた。

 

そして、その場に漂っていた霊を見付け、奈落を指差しながら聞いてみると、どうやら奈落によって狩られた霊だったようだ。

 

「なあ?何でも良いんだ。話をしてくれないか?」

 

『そうじゃな〜、儂は死ぬ前な、病院でただただ死を待つだけの存在じゃったんじゃ。そんな儂にも勿論、家族はおったんじゃ。その家族を残して逝った事が、儂の心残りなんじゃ。じゃが、あの死神さんはの〜、死神さんらしくないんじゃ』

 

「……え?」

 

『人を殺す事に対して嫌な気分を持っとるんじゃ。そんな死神さんがおると知った時は、いや〜、たまげたの〜』

 

「……そうか、ありがとう」

 

如月はそれを聞くと、そのお爺ちゃんの霊に挨拶をしてから奈落の元へと戻り、聞いた話を話した。

 

「……そうか。あの爺さん、聡いな」

 

「……それで?小町からは何かあるのか?」

 

如月は今の空気を払拭する為に小町にそう聞くと、小町は笑みを浮かべて答えた。

 

「弾幕ごっこさ」

 

「……今日何回目の弾幕ごっこなんだろうな?」

 

***

 

「古雨『黄泉中有の旅の雨』‼︎」

 

小町がスペルを宣言すると、青の粒弾と緑の粒弾が撃たれた。

 

青の粒弾は普通に撃たれただけだが、緑の粒弾は如月を狙って撃たれた。

 

これに対して如月は緑の粒弾を少し意識しながらも、青の粒弾の動きも見て、避けていた。

 

それから少しすると、銭弾幕を如月に向かって撃った。

 

が、それを避けた如月。しかし、少し辛そうである。

 

それからまた少し経つと、今度は銭弾幕が三つとなり、如月だけでなく、その進行方向にも撃った。

 

「ッ⁉︎」

 

如月はそれに当たらない様に飛び、上へ避けたり、下へ避けたり、その銭型弾幕に当たらない様に避けた。

 

それからまた少しすると、今度は紫の粒弾まで増えて、如月を襲った。

 

「弾幕が多過ぎる‼︎」

 

「ルールに抵触はしてないよ‼︎」

 

小町のその言葉は実際本当だ。

 

この弾幕にもちゃんとスキマがある為、ルール違反にはなっていないのだ。

 

その後、そのスペルは時間がきたのか消滅した。

 

「一枚目はスペルブレイクされちゃったか」

 

「はぁ…はぁ…はぁ……」

 

此処まで走って来た疲れもあり、息切れしている如月を労わる様子もなく、小町は次のスペルを宣言しようとした。

 

「小町……ちょっと……休ませてくれ……」

 

「いや〜、私も休ませてあげたいけど、これは弾幕ごっこだからね〜。諦めな」

 

小町からは無慈悲な言葉を言われ肩を落とした如月は、直ぐに小町を見据え、何が来ても良い様に集中した。

 

「これが最後だよ‼︎死歌『八重霧の渡し』‼︎」

 

すると、小町を中心として銭型の弾幕が配置され、周り始めた。

 

如月はそれを疲れた状態ながらも避け、スペルブレイクした。

 

「あちゃ〜」

 

「はぁ、はぁ……悪いが……さっさと終わらせる‼︎」

 

如月はそう言うと、『神雷』と『紫電』のコンボを使い、小町を倒した。

 

***

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「小町、大丈夫か?」

 

「私は大丈夫さ……あ〜、疲れた」

 

「はぁ、全く貴女は……」

 

如月はやはり息切れを起こしており、あまり話せる状態ではなく、奈落は小町の状態を気にしていた。

 

「さて、次は私と行きたいですが……もう暫く休ませましょう」

 

「す、すまない……」

 

映姫からの慈悲により、如月は少し休む事が出来た。

 

***

 

如月が休んだ事により、少し楽になった。

 

それを見てとった映姫は、弾幕ごっこを所望した。

 

「だから、もうこれ何回目の弾幕ごっこだよ」

 

「さあ?何回目でしょうね?ですが、貴方が勝っても負けても、説教はありますからね」

 

「……嘘だろ」

 

映姫からのその言葉に気を重くしながらも弾幕ごっこが始まった。

 

***

 

如月は映姫と弾幕を撃ちあっていたが、映姫の弾幕に込められた力が如月が込めた力よりも多く、厚い為に撃ち落とせず、映姫からの弾幕を避ける事に切り替えた。

 

「避けてばかりでは私に勝てませんよ?」

 

「分かってるさ‼︎偽装『グングニル』‼︎」

 

如月はグングニルを持ち、それを映姫へと投げた。

 

映姫はそれを少し身体を傾けるだけで避け、如月の方に視線を戻すが、もうその場に如月はいなかった。

 

「龍け「甘い‼︎」ッ‼︎」

 

如月は映姫の後ろから現れたが、それを映姫は先読みしていた様で、如月に向けて大量の弾幕を放った。

 

「うっ」

 

それを直ぐには避けきれず、如月は一度倒れ伏したが、直ぐに立ち上がった。

 

「攻撃が甘過ぎます。私が貴方のその行動を予測していなかったと思っていたのですか?……舐められたものですね」

 

映姫はそう言うと、スペルを宣言した。

 

「審判『十王裁判』」

 

すると、映姫を中心として緑の粒弾が放たれた。

 

ただ、三つだけ如月に向けて撃たれた楕円形の弾幕があり、如月はそれを転がる様にして避けた。

 

その次に、弾幕の色が緑から紫に変わり、如月に向かっていた楕円形の弾幕の性質に、少しランダムな性質が加わった。

 

如月はその頃には立ち上がっており、その弾幕に当たらない様に弾幕を見ながら避けると、今度は如月を追う様にして赤色のレーザーや少しの粒弾が撃たれた。

 

如月はレーザーとレーザーの間に逃げ込もうとしたが、弾幕がやはり狙って来た為に、天羽々斬を使って避ける事にした。

 

その後、今度は赤から黄色に変わり、一つ前の様な弾幕が撃たれた。

 

しかし、粒弾と楕円の弾幕に避ける場所はない。

 

が、その楕円の弾幕の一列目と二列目の間に逃げ込み、避けた。

 

そして最後に、赤色の丸弾と粒弾が撃たれた。

 

しかし、如月はコレを見て思う。

 

(この最後のが一番簡単に避けれそうだな)

 

如月はゆっくりと移動し、弾幕を避けた。

 

「おや、疲れているのに全てを避けきりましたか」

 

「思いっきり疲れた。疲労感が半端ない」

 

「頑張ってください。あと一枚です」

 

「もうそれで終わりにしようぜ」

 

「私がダウンしてないのですから無理でしょう」

 

映姫がそう言うと、また宣言した。

 

「審判『ギルティ・オワ・ノットギルティ』」

 

すると、赤と青の大弾幕が映姫から撃たれ、それとほぼ同時にレーザーも撃たれた。

 

如月がその場から動くと、如月がいた場所に向けて撃たれたレーザーのみが極太レーザーに変わった。

 

「……鬼か」

 

「『鬼』と言う言葉が似合うのは吸血鬼の賢者だけですよ」

 

その言葉の後に撃たれた大弾幕は先程の量よりも増えていた。

 

如月が避ければ、また弾幕の数が増え、避ければ増え……何時の間にやら避ける場所が少なくなっていた。

 

しかし、そこでスペルが終わってしまった。

 

「……さて、此処から私は弾幕だけですか」

 

「俺は疲れたからさっさと終わらせる‼︎」

 

そして、如月は『神雷』と『桜舞連斬』のコンボを使った。

 

それに対して、映姫は避けることなく、受けたのだった。

 

***

 

レティシアは一人で如月の様子を見ていた。

 

紫は少し経ってから、冬眠してしまった。

 

そして現在、見ている如月の様子は……、

 

「クスクス、あらあら、可哀想に♪」

 

映姫に正座をさせられ、説教をされている如月であった。

 

レティシアはその様子を面白がって見ている。

 

それから如月が解放され、鈴を貰い、また移動し始めたのを見て、レティシアは外の様子に目を向けた。

 

「……もう日が暮れ始めたわね。これは次の場所で今日は終わりにさせましょう。さて、次の場所は……あら、丁度良いわね♪」

 

レティシアはそう言うと、その場を立ち上がって、何処かへと移動した。

 

如月が向かっている方向には……紅魔館があった。

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