東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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*先の話の都合上、少し付け加えました

それでは!どうぞ!


第百三十八話

レティシアが開いたスキマを潜り抜け、神無月神社の境内に着いた如月、ミコト、竜希の三人。

 

「……此処は本当に綺麗だな」

 

「そうだね〜、綺麗に掃除されてる。掃除してる人の性格がよく分かるね」

 

「葵は真面目で、優しいからな」

 

「そうだな」

 

「アレ?二人はその人に会って、俺だけ会った事無いって事⁉︎俺省かれてる⁉︎」

 

「如月、此奴は放っといてさっさと行くぞ」

 

「分かった」

 

「二人して俺をスルーしないでよ〜!」

 

この短時間で竜希の扱いを何と無く察した如月だった。

 

と、先に行こうとした時、ミコトが足を止めた。

 

「?どうした?ミコト」

 

「いや、葵が来てくれている様だ。すれ違いになるのも嫌だしな」

 

「お?そうなの?」

 

竜希がそう言ってから少しして、黄色のマフラーをした葵がやって来た。

 

「如月さん、ミコトさん、竜希さんお待ちしておりました」

 

葵は笑顔を浮かべて挨拶をした。

 

「あれ?俺は君とは初対面だよ?」

 

竜希がそう言うと、葵は苦笑しながら答えた。

 

「以前、ミコトさんの『過去』を見てしまった時に、竜希さんの姿と名前も知りましたから」

 

この時、既に竜希の『過去』も見ている為、それも関係しているのだが、今は関係ない。

 

「へ〜、それが葵ちゃんの能力なのね」

 

「ち、ちゃん……?」

 

今まで『ちゃん』付けで呼ばれたことが無い為、少し反応に困る葵。

 

「おい竜希、葵を困らせるな」

 

「大丈夫ですよミコトさん。心配してくださり、有難う御座います。さ、今の季節は冬ですから外は寒いですので上がって下さい」

 

葵がそう言うと、全員中に入って行った。

 

***

 

中に入ってみると、如月が驚いた顔をした。

 

「龍⁉︎何で此処に……てか、其処にいる人は誰なんだ⁉︎」

 

「如月君、俺も参加してるんだ。お題を出す側としてね」

 

「それで、此方の方が……」

 

「よっ‼︎俺は『木更津 帝』だ!お前やミコト達と同じ様に、別の幻想郷から此処に遊びに来たんだ‼︎よろしくな‼︎」

 

「あ、ああ、よろしくな」

 

「よろしくな、帝」

 

「よろしくね〜!帝くん‼︎」

 

如月達が挨拶をすると、家の中へと入れられた。

 

「もう食事の準備は出来ていますので、沢山食べて下さいね!」

 

葵は茶の間へと案内し、そこの襖を開くと、卓の上にはお鍋が置かれていた。

 

「お〜!お鍋だ‼︎」

 

「あれ?外の物は無かったんじゃ……」

 

如月がそう聞くのも仕方ない。

 

鍋が置かれているのには、良く外で使われている卓上コンロがあったのだから。

 

「レティシアさんから貸して頂いた物です。大人数で食べるならお鍋の方が良いですし、これなら温かいままで食べれますからね」

 

葵がそう説明すると、如月達に座る様に促した。

 

「それでは、頂きます」

 

その挨拶と共に始まった争奪戦。

 

「肉は貰ったーーー‼︎」

 

「あーーー!やばい‼︎肉が帝に取られた‼︎」

 

「モグモグ」

 

「お前は何時その肉を取ったんだ」

 

「帝に隠れてだ」

 

「俺も鶏肉も〜らい‼︎」

 

「僕も……あ!龍さん‼︎それは僕の‼︎」

 

「早い者勝ちだから諦めて」

 

「騒がしいな」

 

「ふふ、でも暖かいですよ、ミコトさん」

 

「……そうだな。ん?葵は鶏肉食べないのか?」

 

「……お肉類は少し苦手で」

 

「そうか」

 

そんな騒がしさも有りながら食事は進んでいく。

 

……途中で凛華も出て来て、お鍋を全て取られそうになるという事態も発生しそうになったが、如月が若干脅したことにより普通の量しか食べなかった。

 

***

 

如月がお風呂から上がると、桜がある方の縁側に葵が座っていた。

 

「葵、次入れるぞ」

 

「あ、如月さん。いえ、ミコトさん達を優先的に入れてあげて下さい。私は最後で構いませんので」

 

「分かった。……そういえば、前から気になってたんだが、その淡いピンクのリボン……霖之助からのか?」

 

「え?あ、はい、そうです。……異変の時にもこのリボンを付けていましたから汚してしまいましたが、捨てるというのも……嫌ですから」

 

葵はそう言うと、苦笑した。

 

「……霖之助からは何て?」

 

「……何も言われてはいませんが、嬉しそうに笑ってくれていました」

 

「……そうか」

 

如月はそう言うと、少し黙ってしまった。

 

「そういえば如月さん、何か私に用があったのですか?」

 

葵はそう言うと、如月は思い出したかの様にポケットから何かの箱を取り出した。

 

「?それは?」

 

「俺からの贈り物だ。きっと、葵の力になってくれる」

 

葵は如月からその箱を受け取った。

 

その中身は、銀色のブレスレットだった。

 

「……えっと、失礼と知っていながら聞きますが、何でしょう?これ」

 

しかし、葵は『ブレスレット』という物を知らなかった。

 

「それは腕に付ける飾りだな」

 

如月は簡単にそう説明した。

 

それを聞くと葵はお礼を言い、腕に付けてみた。

 

「……こうですか?」

 

「そうそう。似合ってるぞ」

 

「有難う御座います!」

 

葵がそう言うのを聞くと、如月はミコトを呼びに行った。

 

***

 

その次の日の朝。

 

「……まさかの葵達からもお題があるとは」

 

「すみません、でも、レティシアさんから頼まれましたから……」

 

葵は本当にすまなそうに謝った。

 

「いや、葵が謝ることじゃないさ。……それで、先ずは誰からのをやれば良いんだ?」

 

如月がそう言葉にすると、

 

「「俺から……」」

 

龍と帝が同時に言葉にした。

 

「二人のお題は何なんだ?」

 

ミコトがそう聞くと、龍が先に答えた。

 

「俺のお題は簡単だよ。『俺との勝負』。それだけ」

 

「俺のお題は『俺の一撃を受け切れ』ってお題だ」

 

「……なら、凛華と分かれてやるか」

 

如月のその言葉の後、凛華が外に出て来た。その顔は多少、不満そうだったが。

 

「……妾が龍の相手をするのか?」

 

「ああ。俺が帝の相手をする」

 

「……仕方ないの〜」

 

凛華はそう言うと、龍と対峙した。

 

「……凛華さん、この前は手を抜かれての勝負だったけど、今度は本気で来て下さい」

 

「それを決めるのは妾じゃ。お主ではない」

 

「……そうですね」

 

龍は残念そうにそう言うと、剣を構えた。

 

「それじゃあ、向こうも始める様だし、俺達も始めるぞ」

 

「ああ、頼む」

 

「あ、良いか?避けるなよ」

 

「お題の内容に『受け切れ』って入ってる時点で避けるって選択は無くなってるさ」

 

「それもそうだな!」

 

帝はそう言うと、手を上に上げると、超巨大な弾幕を作った。

 

それをそのまま如月に向かって投げると、如月は喰龍の力を使って、弾幕の力を喰い始めた。

 

「……葵から聞いてたが……マジかよ」

 

帝は最初、自分と似た能力かと思ったが、それは違った。

 

蓄積しているわけではない。かと言って収集している訳でもない。

 

本当の意味で『喰べている』と分かった。

 

そして、その弾幕は食べられてしまった。

 

「……うっ」

 

「如月さん⁉︎」

 

葵は如月の様子を見て直ぐに近付いた。

 

ミコトも如月の『命』からその能力を大体だが理解していた為、直ぐに近寄った。

 

「大丈夫ですか?如月さん」

 

「あ、ああ……この能力使うと本当に疲れる」

 

「その様だな」

 

葵は直ぐに如月に能力を使った。

 

そのお陰で、怠さが少しずつ無くなっていった。

 

「……そういえば、凛華は」

 

如月はそう言って、凛華の方を見ると、

 

「……」

 

「……」

 

まだ決着が着いていなかった。

 

「……凛華さん、そろそろ本気を出して下さい」

 

龍はまたそう言うが、凛華は頷かない。

 

「嫌じゃ。出すわけがなかろう」

 

龍がそれに対して嘆息すると、凛華に近付き、剣を奮った。

 

すると凛華はそれを避け、龍の胸倉を掴み、投げ飛ばした。

 

普通なら凛華と長時間戦えば力を喰われ、今まで通り足に力を入れる事が出来なくなり、それで終わってしまう。

 

しかし、龍は何故か凛華から力を食われない。凛華も何故か喰えない。だから、そう簡単には倒れないのだ。

 

「……」

 

「ん?何かな?鬼灯ちゃん」

 

「『ちゃん』を付けるな。私はそんな歳じゃない」

 

「え〜?それで、本当になんで見てたの?」

 

「お前はこの勝負を見てどう思う?」

 

「そもそも凛華ちゃんが本気を出してないんだから何とも言えないよ?」

 

「……それもそうだな。凛華が本気を出しかけたのはレティシアと戦った時だったかな?」

 

鬼灯がそんな風に考えながらも凛華と龍の様子を見た。

 

龍は凛華に対して攻撃を仕掛け続けているが、凛華はそれを避け続ける。他から見ても分かるがまるで相手にしていない。

 

「……お前だったら勝てるか?凛華に」

 

「どうかな〜?」

 

「……まあ、『最強』のお前なら勝てるか」

 

「あれ?それ誰から聞いたの?」

 

「この場に一人しかいないだろ」

 

「ミコちゃんか〜」

 

竜希はそう言うと、溜息を吐いた。

 

「そもそも、俺は戦いが嫌いだからその話は間違ってるよ」

 

「それもそうだな。まあ、聞いてみただけだ」

 

鬼灯はまたそう言うと、すぐ近くの木に背を預けた。

 

「凛華さん、何で反撃もしてこないの?」

 

龍がそう言うと、凛華は答えた。

 

「この勝負に乗り気じゃないからじゃ」

 

龍はそれを聞くと、剣を強く握った。

 

「……なら」

 

と、その時。

 

「クスクス、二人とも、其処でストップよ」

 

レティシアが二人の間に入ってきた。

 

ミコトと竜希、それからこの登場の仕方に慣れている人達以外は全員驚いた。

 

因みに、慣れていないのは帝、如月である。

 

「む?レティシア」

 

「レティシアさん‼︎」

 

二人は其処で構えを解いた。

 

「クスクス、二人とも、これ以上続けてもある意味不毛よ?如月を拘束し続けても良いなら続けても良いけどね」

 

レティシアのその言葉に、龍は溜息を吐いた。

 

「……それは流石に」

 

「クスクス、ということで、悪いけどこの勝負は引き分け。凛華も全然相手をしてなかったし、それで良いでしょ?」

 

「別に良い。ただし、レティシア。いつかはお主とまた闘いたいの〜。それから、其処におる剣士とも」

 

凛華が好戦的な笑みを浮かべると、

 

「そんな事したらもう団子屋の団子を買わないぞ」

 

如月が脅した。

 

「む、それは困るの。分かったのじゃ」

 

凛華は残念そうな顔をしながらもそう言った。

 

「だから〜、俺は戦うのが嫌いなの〜」

 

「『最強』なのにな」

 

「強くても戦いが好きだとは限らないさ」

 

鬼灯の言葉にミコトがそう言った。

 

レティシアは二人が勝負をしないと分かると、口を開いた。

 

「クスクス、それから龍のお題もクリアよ」

 

「……え?マジで?」

 

「レティシアさん……」

 

龍は不満そうな顔をするが、レティシアは言った。

 

「クスクス、龍のお題は『勝負をすること』でしょ?『勝負をして自分に勝つこと』とは言ってないわ」

 

「『勝負』という漢字には『勝ち』と『負け』がある」

 

「クスクス、勝負の中には引き分けもある。そうでしょ?龍」

 

「……そう、ですね」

 

龍はやはり納得していない顔をするが、頷いた。

 

レティシアはそれを見て、気持ち的な問題なのだろうと考えた。

 

「クスクス、なら龍。凛華に相手をしてもらえる様に強くなるしかないわよ」

 

「……そうですね」

 

龍のその言葉を聞くと、レティシアは戻っていった。

 

「……さて、それじゃあ私からのお題だが」

 

「この空気でやるのか⁉︎」

 

鬼灯に対してツッコむ如月だった。

 

***

 

鬼灯のお題は『化け狐探し』。

 

この前の決着を付けたかった如月からすれば、コレは凄く納得がいかない。

 

しかし、鬼灯が、

 

「如月……お前、この持久走で一度でも負けたら罰ゲームが有ることを知ってるか?」

 

「……え?何だそれ?知らないぞ」

 

「……彼奴、ワザと黙ってたな」

 

鬼灯はその罰ゲームの内容をレティシアから聞いている。

 

そして、大体だが如月の実力も想像がついている。

 

如月が負ける要因を作りたく無いための処置なのだ。

 

因みに言っておくと、別に危ない罰ゲームではない。……精神的にはキツイが。

 

「……それで、妖怪の狐を探せば良いのか?」

 

「ああ。と言っても、この神社内にいる。それを見つけてこい」

 

「……分かった」

 

「あ、ヒントを与えておくか」

 

鬼灯はやはり罰ゲームを受けさせたくないがためにヒントを与えた。

 

「部屋と部屋を見比べろ。それから、私達の部屋には居ない」

 

「分かった」

 

如月はそれを聞くと、神無月神社の中へと入って行った。

 

***

 

如月は自分達が止まった部屋を見比べた。

 

しかし、どの部屋も同じ様になっていた。

 

(葵が誰が泊まっても不自由がない様にある程度の家具は揃ってるんだよな。……さて、『化けた』って事は何かが増えてる筈だ)

 

如月はそう考え、部屋を見比べ始めるが、よく分からなかった。

 

「何処も同じ気がする……でも、鬼灯のあのヒントは俺達が泊まらせてもらった部屋の事を示唆してた。なら、此処で合ってる筈なんだ」

 

如月はそう言いながらまた探し始めた。

 

……すると、

 

「ん?この枕……こんな柄だったか?」

 

其処は帝が泊まっていた部屋。

 

その枕の柄が微妙に違う気がしている如月。

 

如月は一度部屋から離れ、他の部屋の枕の柄を見比べ始めた。

 

「……やっぱり、アレだけ少し違う。となると、アレが……」

 

如月は違いがある枕を持ち、鬼灯に渡した。

 

「鬼灯、コレだろ?」

 

「ああ、正解だ」

 

鬼灯のその言葉と同時にその枕が狐へと戻ると、鬼灯の肩へと登った。

 

「しかし、多少の柄の違いでよく分かったな」

 

「というか、そうする様に鬼灯が指示したんだろ?」

 

「そうだ。流石に高難易度過ぎるのはな……」

 

鬼灯の言葉を聞くと、如月は葵達の方に顔を向けた。

 

「それで、次は誰?」

 

「いや、私達が出す」

 

「え?三人で?」

 

如月が驚いた顔をすると、三人とも頷いた。

 

そして、葵が両の掌を合わせると、結界の迷路が出来た。

 

「迷路?」

 

「はい。想起さんから教えてもらったもので再現してみました」

 

葵のその言葉の後、ルカがその迷路に氷の屋根を作った。

 

「で、こうやって迷路内を冷やす」

 

「ルカ、それは酷い。今の季節でそれは正に地獄だ」

 

「安心しろ。時間を掛ける度にドンドンと気温が低くなっていくからな」

 

「何も安心出来ないからな⁉︎」

 

「因みに、この迷路の中には英霊がいるよ。見つかったら確実に勝負を仕掛ける様に設定してるからね」

 

「マジかよ……」

 

「ほら、つべこべ言わずにさっさと入れ」

 

「はぁ……」

 

如月はルカに背中を強引に押されながら迷路に入っていった。

 

「……如月くん、ドンマイ」

 

竜希がその後ろ姿を見ながら、そんな言葉を言うが、誰の耳にも入っていなかった。

 

***

 

「さて、早く出ないとな」

 

如月はそう言いながら迷路を進む。

 

このルールには『迷路の壁を壊してはいけない』という規制がある為、如月は壁を壊す事が出来ない。

 

「……そういえば、こういう迷路の攻略方があった様な……何だっけ?」

 

如月は少し考え込むと、思い出した。

 

「確か、右手か左手を壁に当てて、それに沿って歩くんだったな」

 

如月はそう言いながら、右手を壁に当て、歩き出した。

 

すると、直ぐに曲がり角に当たった。

 

如月はそのまま曲がると、直ぐに何かが近付いて来る音が聞こえた。

 

如月は音がする左側に顔を向けると、想起が用意したであろう関羽が居た。

 

「アレが想起の言っていた英霊か‼︎」

 

如月は天羽々斬で横一線すると、英霊が消え去った。

 

どうやら、攻撃を受けただけで消える様に設定されている様だ。

 

「……進むか」

 

如月は壁に手を当てながら進んだ。

 

時々、行き止まりに入ってしまったり、英霊との勝負もあったりしたが、迷路から何とか抜け出せた。

 

「如月さん、迷路からの脱出、おめでとう御座います‼︎」

 

「ああ……本当にドンドンと気温が下がっていってたからから急ぎ足でやったしな」

 

「私はそうは嘘を吐かないさ」

 

そんな会話の後、如月は葵から鈴とお腹が空いた時様におにぎりを貰い、人里の方に降りて行った。

 

ミコトと竜希、それから帝はそれを見た後、レティシアが開いたスキマで其々の世界へと帰って行ったのだった。




化け狐は『東方茨歌仙』に出てくる『管狐』と同じ姿です

あの管狐が可愛いかったですからね‼︎

それでは!さようなら〜!
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