東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百四十一話

太陽の花畑に来るまでに妖精達に弾幕を撃たれていたが、それを全て躱して辿り着く事が出来た如月。

 

「ふぅ、流石にキツかった……数で攻めて来られたらキツイ」

 

如月はそう言いながら右肩を回す。すると、コキコキッと音がした。

 

気付かぬうちに肩が凝っていた様である。

 

「さてと、太陽の花畑に着いたが……やっぱり季節が季節なだけに、向日葵は咲いてないか」

 

今如月の目に映っている光景は、何もない地面であった。

 

その遠くには誰か……というか、幽香の家が見える。

 

「季節関係なく咲いてるのは、お前が生きるための鈴蘭ぐらいなんだな。メディスン」

 

「ええ、そうね。スーさんぐらいよ」

 

如月に近付いて来たのは、メディスンだった。

 

しかし、余り鈴蘭から離れない様にそれなりに距離は空いてるが。

 

「というか、鈴蘭達をビニールハウスの中に住まわせてるのか」

 

「幽香みたいに上位の妖怪なら害はないけど、妖精だとそうでも無いのよ。あと、普通の人間とか」

 

「なあ?それ何気に俺は普通の人間じゃないって貶めてないか?」

 

「あら?気付いたの?」

 

如月はそれを聞くと、若干落ち込んでしまった。

 

が、それから直ぐに立ち直り、メディスンを見据えた。

 

「それで、メディスンからは何が出されるんだ?」

 

「弾幕ごっこを所望するわ。最近、遊んでなかったしね」

 

「幽香とはしてなかったのか?」

 

「花の知識を披露してくれたり、花言葉教えてくれたり、花の名前だけでしりとりしたぐらいね」

 

「しりとりについては直ぐに終わりそうな気が……」

 

「所がどっこい、コレが中々終わらないのよね。まあ、私だって幽香から色々学んでるから、それなりに花の知識は入ってる。だから、やる回数が増える度に長くなるのよね〜」

 

「それでも物足りないと?」

 

「やっぱり弾幕ごっこは楽しいからね〜。流石、この世で一番無駄なゲーム。楽しませてくれるわ」

 

メディスンはそう言うと、臨戦態勢に入った。

 

如月もそれを見てとると、天羽々斬を構えた。

 

「それじゃあ、始めるよ‼︎」

 

***

 

メディスンからの弾幕を如月は避ける。

 

一度、弾幕で撃ち落としたのだが、その弾幕には毒が付属されていた様で、結構危険だった。

 

そのため、今は撃ち落とさずに飛んで避けるだけに留まっているのだ。

 

「は〜い、じゃあ一枚目‼︎霧符『ガシングガーデン』‼︎」

 

すると、大量の米粒弾がばら撒かれ、それと同時に毒霧が如月に向かって来た。

 

如月はそれを避けようとするが、毒霧に当たると別段何処が痛いとかはないが、動きが鈍くなった。

 

直ぐに毒霧から離れるが、丁度其処に弾幕が飛んで来て、如月に当たり、毒霧へと押し戻された。

 

まあ、押し戻されても、関係なく出て来るのが如月なのだが。

 

如月が弾幕を避け、時には毒霧に入ってしまい避けづらくなったり、弾幕をグレイズしたりしていると時間は経ち、弾幕と毒霧は消えてしまった。

 

「はあ、不注意で毒霧に入ってしまった。まあ、何とかなったけど」

 

「貴方、普通の毒霧でも生きていけそうね」

 

「いや、流石にそれは死ぬからな⁉︎」

 

喰龍の力さえ使えばそれも容易いが、本人への負担が計り知れない。

 

「じゃあ、次ね‼︎譫妄『イントュデリリウム』‼︎」

 

メディスンが宣言した後、そのメディスンは大弾幕と丸弾、それに加えて先程の毒霧を全方位に向けて放って来た。

 

(弾幕は兎も角、毒霧を避けるのは無理だな)

 

如月はそう考えると、毒霧に当たることに対しての躊躇を消し、弾幕だけを躱す事に集中した。

 

そのまま時間が来た為、メディスンの弾幕が止んだ。

 

「さて、じゃあ反撃に……」

 

「あ、しなくて良いよ」

 

「……は?」

 

如月は惚けた顔でメディスンを見た。

 

そのメディスンはと言うと、まるで空中に地面でもあるかの様な態勢で手で支えながらも座っていた。

 

「私、毒の使い過ぎで疲れたから私の負けで良いよ」

 

「……え?どういうこと?」

 

「冬だからなんだけど、最近、スーさんの毒の量が少ないんだよね〜。冬以外なら年中無休で平気何だけど、冬だとどうにも……」

 

メディスンはそう言うと、本当に疲れがピークな様で、欠伸をした。

 

「ふぁぁ……まあ、そう言うこと。あ、でも、幽香には気を付けてね。彼女が好きな向日葵が枯れるこの季節、荒れてるから」

 

まあ、私は初体験だけど、とメディスンは言った。

 

彼女が此処に移り住む様になったのはあの幽霊大量発生の異変の時からだ。

 

まだ一年も経っていない。だから、幽香のそんな状態を見たのは初なのだ。

 

「……ああ、うん。分かった」

 

如月はなんとも言えない気持ちを抱えながらも、幽香の元へと移動するのだった。

 

***

 

そのまま幽香の家まで歩いて来た。

 

現在の居場所はその家のドア前だ。

 

「さて、ノックするか」

 

如月が二回ノックする。つまりは来客の合図だ。

 

が、ノックして秒も経たずに何かの砲撃が放たれた。

 

それは速過ぎたのだが、一応は何とか避けれた如月。

 

その右頬が若干焦げてる気がしないでもないが気にしないでおこう。

 

そして、家の中からはのっそり、ゆっくりと、しかし黒いオーラを発しながら出て来る幽香が見れた。

 

「ゆ、幽香……?」

 

「貴方ね?こんな不機嫌極まりない時に訪れた哀れな来客は」

 

幽香は黒い笑みを浮かべながら如月の方に傘を向けた。

 

「えっと、何かあったのか?」

 

「あったわよ。今もあり続けてるわよ。私の大好きな花達が枯れるこの季節そのものが、私にとっては苛立つ原因よ‼︎」

 

「いや待て⁉︎それは仕方が無いことだろ⁉︎」

 

「ええ、そうね。仕方のないことだわ」

 

如月はその言葉にホッと一息吐く。

 

しかし、そんな如月の右真横を光線が通って行った。

 

「……」

 

「けど、それでも、私の大事な花達が居ないのもまた事実。四季の花の所へと行きたい所だけど、それをあのスキマ妖怪が何度も邪魔してくる始末」

 

今の所、この幻想郷では冬の花は一応は確認されている。

 

しかし、其処へと移動しようとした幽香を、紫は止めた。

 

まあ、本来は止めなくても別に問題はないし、何時もは止めてくる事もなかった。

 

しかし、今回はこの競技があることを紫はレティシアから以前から聞いていた。

 

それが何時になるとも限らないからと言われ、抑える他無かったのだ。

 

まあ、聡明な紫が本来する筈が無いことをしている最もな理由としては、レティシアからの今年の修行課題の中に『幽香を自分が言う時期まで移動させないこと』というのがあった所為なのだが、しかし、この場の誰もそんな事実を知る者はいない。

 

如月も頭を捻るだけである。

 

「と言うわけだから、貴方。私の憂さ晴らしの為に弾幕ごっこを付き合いなさい‼︎」

 

「まあ、元から其のつもりだったから別に良いぞ」

 

如月は幽香に向けて好戦的な笑みを向けた。

 

対して幽香もまた、獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

***

 

「……とまあ、ああは言ったけど、実際、私の持ってるスペルカードって少ないのよね〜」

 

「ああ、そっか。そう言えばそうだったな」

 

二人して空中で相手の出方を伺いながらもそんな会話をしている。

 

戦闘において一番大事な最初の攻撃(ファーストアタック)。それを二人はちゃんと当てる為にも伺っているのだ。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「殺り合いましょうか」

 

「冗談でもそれは辞めてくれ」

 

「本気なのだけれど?」

 

幽香は真顔でそう言った。

 

「……」

 

そこで如月は思考を走らせ、一つの提案をした。

 

「ならさ、先に相手に一撃与えた方の勝ちで良いんじゃないか?」

 

「それもそうね。とっても分かりやすいルールだわ」

 

幽香はそう言うと、自身の妖力を外に少しだが放出した。

 

対して如月も霊力を放出した。

 

その力のぶつけ合いに、近くにいた妖精は離れ、如月が離れた後、寝ていたメディスンも強制的に起こされた。

 

そんな状態ながらも二人は動かない。

 

しかし、その緊張状態から少し経った後、幽香が痺れを切らした様で弾幕を撃ってきた。

 

如月はそれを避けるも数が多く、左に避けたり、弾幕を弾幕で撃ち落としたり、グレイズしたりして何とか当たらずに済んだ。

 

しかし、如月が避けた為に、幽香の弾幕が当たった後ろの地面は抉れてしまっていた。

 

「どれだけ妖力注ぎ込んでるんだ……」

 

「あら?そこまで注ぎ込んでないわよ?一割か二割ぐらいよ」

 

「……レティシアの特訓、受けたのか?」

 

「彼女との勝負で、勝った方の言うことを聞くって言う命令権を掛けたことがあってね。その時に負け、無理矢理だけど特訓させられたわ」

 

「……」

 

自分が今受けてるこれも特訓の一つだと分かっている如月は、自分がこれでどれだけ強化されたのかと少し気になった。

 

「……それで、幽香はどんな特訓をさせられたんだ?」

 

「力のコントロール、能力の使い過ぎは御法度と言われて能力禁止にされ、挙句は飛ぶの禁止、避けるの禁止、打ち消すの禁止、反撃禁止……まあ、動きを全て封じられて、果ては体や足を縛られて絶対に避けられないそんな状態での弾幕の嵐を浴びたわね」

 

「彼奴、悪魔だろ」

 

「それは合ってるじゃない。まあ、お陰で打たれ強くなったわけだけど」

 

あと、武術とかの特訓もさせられたわね、と幽香は少し思い返す様に言った。

 

「まあ、そんな特訓を受けても彼女に勝てたことは一度として無いのだけどね」

 

「そんな特訓させられてもか……」

 

「真偽がどうかは知らないけど、あのスキマ妖怪も彼女に何回も投げ飛ばされたり、海に何故か沈められたりしたとか言ってたわね」

 

(紫も投げ飛ばされたのか……と言うか、よく生きてたな)

 

若干、紫に同情する如月であった。

 

「そんな立ち話は終わりにして、さ、続きをやりましょう?」

 

「そうだな‼︎肉体強化『神雷』‼︎」

 

如月はスペルを宣言すると、そのまま幽香に近付いた。

 

普通の人間なら追うのも無理なスピードだが、幽香は如月の動きが見えていた様で、如月からの素早い攻撃を止めていた。

 

「そんなスピード、彼女と比べたら遅過ぎるわ‼︎」

 

「此処で最強と呼ばれる所以が今日で分かった気がする‼︎」

 

如月はそう叫ぶと、一度後ろへと下がった。

 

しかし、幽香もそう簡単には逃がさない。

 

そのまま如月に近付き、妖力込みの回転蹴りを浴びせようとするが、それは如月が降度を落とすことによって当たることは無かった。

 

それを見てとった幽香は直ぐ様弾幕を作り、如月へと放ったが、それは後ろへと下がられ、回避された。

 

如月は一度と幽香と同じ高さまで戻ると、素早い動きで幽香へと攻撃を入れ様とした。

 

しかし、やはりと言うべきか幽香は如月の進路を邪魔するかの如く弾幕を撃ってくる。

 

今や如月の目の前は弾幕の壁である。

 

(これで終わり……な訳無いわよね?如月)

 

幽香がそう思った。そして、如月もまた、幽香の期待に答えるかの様に時空を斬り、幽香の後ろへと移動し、そのまま剣(鞘からは抜いてない)で攻撃しようとするが、幽香はそれを後ろすら振り向かずに傘で防いだ。

 

「くっ‼︎」

 

「貴方達みたいな剣士なら、ちゃんと相手の姿を見てしろとか良いそうだけど、生憎と私は剣士じゃなくて一妖怪。関係無いわ‼︎」

 

そのまま傘に力を入れ、如月を押し返し、其処へと向けて弾幕を撃つ。

 

しかし、如月も体制を立て直し、また避ける為に時空を使って場所を移動した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

如月の居場所を見てとった幽香は、何故か真上に弾幕を一つ撃った。

 

「?」

 

如月も最初こそ分からなかったが、それは空中で暴発し、まるで花火の様な鮮やかさを持ちながらも弾幕がばら撒かれ、それが如月を襲った。

 

「くっ‼︎」

 

如月はそれから避けようとするが、そこに幽香が外からの射撃。余計に避けづらくなってしまった。

 

如月はそれを紫のスキマ宜しく時空を斬り、その中に弾幕を入れ、幽香の後ろにお返しした。

 

幽香もそれに気付くと、射撃を辞め、避ける事に専念する。

 

が、その所為で如月への意識がなくなり、結果。

 

「終わりだ‼︎」

 

「しまった⁉︎」

 

如月からの攻撃を避けれなくなってしまった。

 

***

 

「はぁ〜、悔しいわね」

 

「いや、思いっきり疲れた」

 

如月と幽香は雪の上に座り込んでいた。幽香に至っては寝転がっているが。

 

如月達がいる場所は、被害があまり無いが、少し見渡せば直ぐに被害の酷い所が分かる様な場所に居た。

 

一番酷い所は、地面が抉れ、もうその場所で自然は育たないのでは無いかと思われるような悲惨さだった。

 

「なあ?あの場所、どうするんだ?」

 

如月はそう聞いて見た。

 

対して幽香はその場所を見ながら質問に答えた。

 

「鬼灯に頼むわ。彼女なら、この場所の再生ぐらいお手の物よ。私もその再生を手伝うつもりだけど、何処まで力添えが出来るかしらね?」

 

幽香はそう言うと、立ち上がり、如月に手を差し出した。

 

「ほら、立てるかしら?」

 

「ああ、でも、有難うな」

 

如月はそう言うと、幽香の手を借りて立ち上がった。

 

幽香は先ほどまでの獰猛な笑みとはまた違う、普通の少女らしい笑みを浮かべると、自身のポケットを探り始めた。

 

「えっと、確か此処に……あ、あったわ」

 

幽香はそう言うと、掌を如月に出した。

 

その掌の上には、鈴が乗っていた。

 

「私とメディスンからのお題をクリアしたら、貴方に渡す様にレティシアから言われてね。別に言うこと聞く理由も無いけど、戦いも楽しかったから良しとするわ」

 

「じゃあ、楽しく無かったら?」

 

「貴方にあげると言いながら鈴を壊してたわ」

 

「辞めてくれないか⁉︎」

 

「壊すつもりはないから安心しなさい」

 

如月はそれを聞くと、幽香から鈴を受け取ったのだった。

 

***

 

レティシアは二人の光景を見ながら何時も通り、クスクスと笑っていた。

 

そして、今は二人を映し出しているスキマでは、二人が話していた。

 

『ねえ?貴方、次は何処に行くつもり?』

 

『そうだな……残ってるのは白玉楼、永遠亭、博麗神社だしな……』

 

レティシアは幽香にだけ一つ言っていた。

 

この太陽の花畑の何処かに、白玉楼への行ける場所があることを。

 

幽香は勿論、如月にその事を伝え、如月は早速探し始めた。

 

今は既に太陽が真上に向いている。しかも、雪も降り始めている。

 

しかし、如月はそれを気にせず探し、スキマを見付け、その中へと入って行った。

 

「クスクス、さて、刀が折れし剣士の炎、貴方は灯すことが出来るかしら?」

 

レティシアはそう言うと、すぐ側に置いていた暖かい紅茶を飲み始めた。




*良く良く考えたらおかしかった部分があったので訂正しました
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