第百四十五話
冬が終わり、春が訪れ、そして去り、今現在の幻想郷は水無月の後半。初夏である。
そんなある日の博麗神社では、葵達が霊夢と何かを話していた。
「はあ?博麗神社が倒壊?」
「うん。予知夢を見た時に此処が地震で倒壊してたから間違いないよ」
「ふ〜ん、それは厄介ね。間違えば幻想郷が崩壊するわ」
「でも、葵は全て見たわけじゃないんだろう?」
丁度その場にいた魔理沙が葵にそう聞いてみれば、葵もそれに頷いて返した。
「そうだね。私も全部見たわけじゃなくて、所々だったよ」
「それだとまだ起こってないってことだろ?早慶過ぎないか?」
「魔理沙、これが早慶な訳がないだろう。タイミングを間違えば幻想郷が壊れる可能性が高い。お前はその時、責任を負えるのか?」
「うぐっ」
「外に出てしまえば、力の弱い妖怪達は消えてしまうだろう。力の強い妖怪でさえ、もしかしたら自分の存在を保たせることで精一杯になってしまう可能性がある」
「魔理沙の場合は、魔法が使えなくなったりか?」
「そうだな、その可能性も……」
「そんなの嫌だぜ‼︎霊夢‼︎今直ぐ解決に動くぞ‼︎」
魔理沙のその言葉を聞いた霊夢は流石に真剣な顔をして頷いた。
「そうね。けど、今はまだ準備が整ってないわ。早くて明日、遅くても明後日にしましょう」
「そうだね、それならまだ異変も起こらないと思うよ」
葵のちょっと不穏を混ぜたような言葉の後、歩と想起がお茶と冷えた西瓜を持って戻ってきた。
「はい、お茶を持って来たよ。それから西瓜も」
「ねえねえ!何だったらこれで西瓜割りしようよ‼︎」
「西瓜割りってアレ?目隠しした状態で西瓜を割る遊び」
「そうそう‼︎なんか夏って感じがするでしょ?」
「まあ、一応は初夏って言えば初夏だけど……まあいいわ。やりましょうか」
「私が一番最初にやってやるぜ‼︎」
「此処でやる前提はやめて‼︎せめて外で……」
「よっしゃ、やるぜーーー‼︎」
「魔理沙は話を聞いてよ‼︎」
「「はぁ……」」
「あんた達は本当に息がピッタリよね」
「「誰が此奴と」」
「否定出来ない材料を増やしながら否定しないでよ」
霊夢からの冷静のツッコミを受けた後、お互い少し見合い、外へと出て行くのだった。
***
その翌日。
「よっしゃ!準備万端だよな?」
「ええ、勿論。準備万端、妖怪が出たなら確実に倒せるわ」
「妖怪が出ても、害が無いなら攻撃は止めた方が……」
「そう言えば、萃香は何処に行ったんだ?」
鬼灯からのそんな疑問に霊夢は首を傾げた。
「さあ?昨日、あんた達と話した辺りから居なくなってたけど……」
「居なくなってたけどって、それはちょっと無責任な……」
「彼奴は犬じゃないんだから自由に動くのは当たり前でしょ?一々何処行く、何するって聞いてたらキリがないわよ」
「その例えはちょっと酷い気もするけど、的を得てる気もするな〜」
歩が若干、苦笑気味でそう言った。
「で……何であんた達まで居るわけ?早苗?龍?」
霊夢がジト目で想起の隣に居る早苗と、鬼灯の近くに居る龍を見た。
その早苗はと言うと、少し胸を張って答えた。
「だって、私はあなた達と同業者である巫女ですから‼︎異変解決をお手伝いするのは当然‼︎そして、そんな合間に信仰をして貰うために宣伝する為に‼︎」
「というか、誰よ。この馬鹿に教えた奴は」
「馬鹿とは何ですか馬鹿とは」
「あ、それは僕だよ」
霊夢からの質問に手を少し上げて答えた。
「早苗に前から頼まれてたんだよ。『異変があった時は教えて欲しい』って」
「まあ、異変の前兆らしいものも出てない異変だがな」
「せめて出てるのは葵の『予知夢』だけだな」
「葵さんの能力は流石ですね‼︎」
「そ、そうですか?」
早苗から褒められた葵は少し反応に困る様子を見せた。
「というか、それを許したわけ?鬼灯」
「ん?どういう事だ?霊夢」
鬼灯は霊夢が言いたい事が伝わっていなかったようで、首を傾げて聞き返した。
「だーかーら‼︎想起は葵の神社で居候してる身でしょう?それってつまり、あんたを信仰してるって事じゃないの?」
「ああ、そういう事か……」
鬼灯はそれを聞くと、少しちゃんと返答を返した。
「別に構わないさ。そもそも、どの神を信仰するかは人間次第だ。私達が強要するものではない。まあ、信仰しなかった所に神は恩恵は与えないがな。だが、私はそんな事をするつもりもないし、想起がどうするかは想起次第さ」
鬼灯はそう言うと、少し木の方を見た。
「?どうしました?鬼灯」
「……いや、何でもない。気にするな」
鬼灯はそう言うと、今度は龍の方をチラッと見て視線を戻した。
「……龍は、その様子だと鬼灯が教えたのね」
「まあ、そう取ってもらって構わないさ」
「龍、よろしくな」
と、霊夢と鬼灯が話してるのを他所に、歩は龍に手を差し出して握手を求めた。
「うん、よろしくね。歩君」
龍もそう言うと、手を差し出し握手した。
そんな風に一度顔合わせをすると、イマイチ先が分からない状態での異変解決に乗り出していった。